ネタバレ解説&考察『フォールアウト』シーズン2第1話感想 流れた音楽は? 資本主義が生み出したカオスとは | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『フォールアウト』シーズン2第1話感想 流れた音楽は? 資本主義が生み出したカオスとは

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大人気ゲーム『Fallout』、実写ドラマ版、待望のシーズン2配信開始!

レトロフューチャーな近未来を舞台に、核によって荒廃したウェイストランドで生き抜く人々を主人公にした世界的大ヒットゲーム『Fallout』。その実写ドラマ化作品である『フォールアウト』(2024-)のシーズン2が、2025年12月17日(水)よりAmazonプライムビデオにて配信開始された。『フォールアウト』のシーズン1は全8話世界同時配信だったが、シーズン2は毎週水曜日配信となっている。

『フォールアウト』はシーズン1がプライムタイム・エミー賞新興メディアプログラム賞やサターン賞スポットライト賞を受賞するなど高い評価を獲得しており、その結果、シーズン2は批評家や視聴者からの期待値が高い作品となっていた。その期待を受けてAmazonプライムビデオは『フォールアウト グールのクリスマス』(2025)という特別番組を制作している。

本記事では、そんな多くの人々、そしてゲームプレイヤーが待ち望んだ『フォールアウト』シーズン2エピソード1「革新者」の解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容はドラマ『フォールアウト』シーズン2エピソード1「革新者」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『フォールアウト』の内容に関するネタバレを含みます。

『フォールアウト』シーズン2エピソード1「革新者」 ネタバレ解説&考察

資本主義がもたらしたカオス

核戦争によってカルフォルニアが焦土にされるより少し前のこと。ロボットによって人間の仕事が奪われ、労働者たちからの反発を招き、各地でストライキなどが起きていた。テレビでは、ロブコ工業の創設者ロバート・ハウスが自身の経済的な正当性を語っている。

ここでミュージカル映画『トップ・ハット』(1935)の名曲「チーク・トゥ・チーク」が流れる。その天国のような幸福な歌詞と裏腹に、社会は混乱の中にある。このような30年代から50年代の音楽を選曲しているところも、『フォールアウト』の世界がレトロフューチャーという止まった時の中にあることを表現している。

バーで労働者たちがテレビに文句を言うのを、一人の男が笑う。この男こそ、本当のロバート・ハウスその人であり、彼はこの混乱もすべて自由市場によってもたらされた結果でしかないと語るのだった。ロバート・ハウスの言葉は利益を上げることこそが正義だというもので、行き過ぎた自由市場の問題点を体現したかのようなものだ。

今の時世に自由市場と資本主義の負の側面を代表するようなアメリカの実業家のロバート・ハウスをヴィランとして出したのには、政治的に深い意義があると考察できる。何故ならばシーズン2が配信される2025年のアメリカ合衆国の大統領は、利益を上げることこそが最良であると考え、そのためならば社会保障などを切り捨てるドナルド・トランプ氏だからだ。

Vault33居住者とグールの奇妙な旅

それから時は流れ、核戦争後の世界。Vault-Tec社にとって従順な人々を生む実験的なシェルター・Vault33の住人だったルーシーと、賞金稼ぎのクーパーの旅路はどうもぎこちない。平和主義者のルーシーに対し、荒廃したウェイストランドで200年近く過ごしてきたグールのクーパーは意見が合わないのだ。

グールに変化してまで、妻子を探す旅を続けてきたクーパーからすれば、周囲の人間は殺すべき敵か、自分にとって利益のある存在かの2択でしかない。ある意味では、彼もまた、自分が嫌っているロバート・ハウス同様、周囲の人物を利益になるかどうかで判断していると言える。

ごろつきたちをクーパーが始末するとき、マーティ・ロビンスが1959年に発表した「Big Iron」が流れる。この楽曲はニューメキシコ州のアグア・フリアでのガンマン同士の銃撃戦を歌ったもので、クーパーの西部劇で有名な俳優だった過去と、実際に銃撃戦に身を投じるようになった未来を表現していると考察できる。

クーパーの思い出の中で、核戦争の避難テストが行われ、街がパニックになっているときに流れている楽曲はエディ・アーノルドの「Make the World Go Away」だ。この楽曲は比喩として世界を消し去ってと歌っているが、この回想での避難テストの後、Vault-Tec社は核の炎で本当に世界を消し去った。

Vault33とVault32

ルーシーは地上のウェイストランドに旅立ったが、他の人々はVault33とVault32に残っている。ここで流れる楽曲はザ・デル・ヴァイキングスが1957年に発表した「カム・ゴー・ウィズ・ミー」だ。この曲はドゥーワップで、あなたが必要と歌っている。しかし、この場面は他のVaultの監督官となるべく冷凍保存されていたVault31出身者たちがVault33とVault32の人々の無能さに辟易している場面で流れている。

Vault33とVault32はVault-Tec社が自社に従順な人々を生み出すべく、何世代もかけて教育してきたシェルターであるため、戦前からの生き残りであるVault31の人々が緊急時に無能になる人々にしてしまったと言える。大企業にとって都合の良い人間たちを生み出すつもりだったのかもしれないが、結局は失敗に終わったように見える。

社会とは時計のように小さな歯車の均一的な集合体ではなく、それぞれが自由意志を持った個人の集まりだ。一人ひとりに個性があり、一人ひとりが考えて行動するから社会は進歩する。それに対してVault33とVault32の人々はVault-Tec社に従順であるように教育されているため、それがない。そのため、2つのVaultは何世紀も発展が無かったと考察できる。

ルーシーの父親で監督官のハンクが訪れた廃墟のVaultの一つが、アメリカ人を共産主義にする実験をするVaultだ。Vault-Tec社は自社に従順な人々を生み出すだけではなく、政治思想を無理矢理変える洗脳実験も行なっていたことがうかがえる。共産主義者を生み出そうとしたのは、アメリカとソ連の対立を煽り、核戦争のきっかけを演出するためだと考察できる。

Vault-Tec社は核戦争を演出し、シェルターに逃げ込んだ人々で壮大な社会実験や人体実験を行なってきた。そして、彼らを管理するため、一部の従業員をVault31で冷凍保存しておいたのである。だが、ルーシーを発端とする自立した人間たちの行動は止まらない。ルーシーの弟のノームはVault-Tec社の生んだ秩序を破壊し、敢えてカオスを巻き起こすためにすべての冷凍保存された人々を解凍するのであった。

監督官ハンクの狙い

ルーシーとクーパーがその痕跡を辿っていたとき、ハンクはVault-Tec社のラスベガス本社に到着していた。彼は優雅にコーヒーを飲み、スーツをあしらえ、まるで核戦争などなかったかのようにビジネスマンに変身する。そして、実験の末に放置された人々の死体から小型のチップを取り出すと、誰かに向けてメッセージを送信するのだった。

ハンクはVault-Tec社すら知らない任務についている。その任務のため、ロバート・ハウスが用いていた人間を遠隔操作し、頭を破裂させるVault24が開発した脳コンピューターインターフェイスの統合を試みている。すでにVault33などで従順な人々を生み出したのにもかかわらず、何故人間を操作する必要性があるのか。謎は深まるばかりだ。

ここで流れる楽曲はロイ・オービソンの「Working for the man」だ。“Working for the man”という言葉そのものに権力者に屈する、体制に服従するという意味がある。この楽曲自体はそれを皮肉った歌詞だが、この場面で流れるのはハンクがVault-Tec社よりも上の権力者に従属することを意味していると考察できる。

『フォールアウト』シーズン2エピソード1「革新者」 ネタバレ感想

ウェイストランドは未来のアメリカ?

『フォールアウト』シーズン2はロバート・ハウスという富豪の悪意ある笑いから始まった。彼の語る「使った1ドル1ドルが投票になる」という言葉は、自由市場と資本主義の負の側面を簡潔に表現したものだと感じた。また、彼の存在は現代社会に警鐘を鳴らすものではないだろうか。

現在のアメリカはMAGA(Make America Great Again)の旗印のもと、ヘイトクライムが日常茶飯事のように起き、経済は行き過ぎた自由市場と資本主義で混乱している。『フォールアウト』ではシーズン1で核戦争の元凶はVault-Tec社による利益を追求するための自作自演であることが明らかになった。

つまり、このカオスに満ちたウェイストランドはすべて行き過ぎた自由市場と資本主義の産物なのだ。そのVault-Tec社の出資者であり、ラスベガスを牛耳るロバート・ハウスにはドナルド・トランプ大統領の影がちらつく。事実、ドナルド・トランプ大統領はラスベガスに自分の名前を冠した高級ホテルを有している。

ある意味、現代のアメリカを皮肉るスタートとなった『フォールアウト』シーズン2だが、現実のアメリカではドナルド・トランプ大統領に真っ向から反対し、民主社会主義者を公言するゾーラン・マムダニ氏がニューヨーク市長選で当選するなど、行き過ぎた自由市場と資本主義に反対する動きもみられる。

行き過ぎた自由市場と資本主義は日本も他人ごとではない。経済的成長をするために社会保障や貧困層の切り捨てなどをするのは社会として本末転倒だ。『フォールアウト』シーズン2は、“こうなってはいけない”という現代社会のバッドエンドを見せているのだと考察できる。

50年代のアメリカを彩った名曲たち

『フォールアウト』シーズン2は2296年のカルフォルニアが舞台だ。だが、演出としてモデルとなった1950年代の名曲たちの中から、その場面にあった楽曲が選ばれている。その選曲センスは素晴らしく、作品の雰囲気をつくっているだけではない。楽曲の歌詞やタイトルが重要な意味を持っているなど、シーズン2で音楽は重要な要素だ。

エピソード1「革新者」は何度も場所や視点が変わり、回想も挟まれるという、一歩間違えれば情報過多で追いつけないものになりそうだが、それらが滑らかに繋がっているのが特徴だ。そして、楽曲がその瞬間、どのような状況なのかを演出し、ストーリーの邪魔をせずに花を添えるものとなっている。

レトロフューチャーな世界観を、音楽というカルチャーでより一層リアルにしている今回のエピソード1「革新者」。これまでゲーマーから熱視線を注がれていたドラマ『フォールアウト』だが、シーズン2は音楽とその楽曲の背景に注目しながら視聴するのも一興かもしれない。

『フォールアウト』シーズン2エピソード1「革新者」は2025年12月17日(水)よりAmazonプライムビデオにて配信開始。

『フォールアウト』シーズン2

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ドラマ『フォールアウト』シーズン1のファーストルックはこちらから。

Amazonプライムビデオ『ジェン・ブイ』シーズン2最終話の解説&考察、感想はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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