ネタバレ考察 ベルモットの〇〇の意味は?『名探偵コナン 黒鉄の魚影』「イチョウ色の初恋」に繋がる要素を解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察 ベルモットの〇〇の意味は?『名探偵コナン 黒鉄の魚影』「イチョウ色の初恋」に繋がる要素を解説

©2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』公開

2023年4月14日(金)に劇場公開された映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』はアニメ『名探偵コナン』(1996-) の劇場版第26作目。今回のコナン君は八丈島の海洋施設パシフィック・ブイを訪れてある事件に巻き込まれる。

『名探偵コナン 黒鉄の魚影』では、コナンと共に黒の組織と灰原哀が中心的に描かれる。今回は、特に劇中における灰原哀とベルモットの気になった点についてネタバレありで考察していきたい。

以下の内容は本編のネタバレを含むので、必ず本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の内容に関するネタバレを含みます。

キーになったイチョウ

灰原哀が譲った整理券

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』で物語が動き出すきっかけになったのは、冒頭で灰原哀が限定のブローチを買おうとして販売の整理券をもらったことだ。最後の整理券を受け取った灰原哀は、自分のすぐ後ろにいたおばあさんが残念がっているのを見つける。そして、灰原哀は自分の整理券をそのおばあさんに譲ってあげるのだった。

その様子を見ていた鈴木園子は灰原哀へのご褒美として、八丈島にある鈴木財閥のホテルに一同を招待する。そしてコナンが八丈島で白鳥警部の姿の姿を見つけ、コナンはいつも通り事件に巻き込まれていく。

今回注目したいのは、灰原哀が購入しようとした限定ブローチが、イチョウの葉をかたどったフサエブランドのアクセサリーだったという点だ。フサエブランドとは、フサエ・キャンベル・木之下という人物が立ち上げた人気ブランドで、灰原哀がフサエブランドの新作モデルを欲しがるなど、作中でもしばしば名前があがる。

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』では、灰原哀が整理券を譲ったおばあさんの正体が黒の組織のベルモットがだったことがラストで明らかになる。変装の天才であるベルモットはシェリー=灰原哀の正体が黒の組織にバレるのを防ぎ助けてくれたわけだが、最後にはイチョウの限定ブローチを身につけている。

ベルモットはイチョウのブローチを譲ってくれた灰原哀を助けてくれたという予測も立てられるが、『黒鉄の魚影』でフサエブランドのイチョウのブローチを登場させたことには、それ以上の意味もあるように思われる。その考察に入る前に、まずは『名探偵コナン』におけるイチョウの意味をおさらいしておこう。

「イチョウ色の初恋」の物語

フサエブランドの創設者であるフサエ・キャンベル・木之下が初めてシリーズに登場したのは、コミックの第40巻収録、アニメシリーズでは第421話・第422話にあたる「イチョウ色の初恋」というエピソードでのこと。「イチョウ色の初恋」では、阿笠博士が40年前に初恋の相手からもらったハガキを見つけたことからお話は始まる。

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その相手こそ小学生時代のフサエ・キャンベル・木之下で、彼女は髪が金髪であることを理由にいじめられた経験から、自分の金髪がコンプレックスになっていた。少年時代の阿笠博士は、そのフサエに「僕は好きだよ、イチョウの葉っぱみたいでキレイじゃない」と伝え、フサエはそのことをずっと覚えていた。

後にフサエブランドがイチョウをモチーフにしたのは、おそらくこの経験があってのこと。阿笠博士の優しい言葉を忘れられなかったフサエ・キャンベル・木之下は、10年ごとに同じ日にこのイチョウの木の下で阿笠博士を待ち、再会を望んでいた。

結局、ビリーという友人を連れたフサエと、少年探偵団を連れていた阿笠博士は、再会を果たすも互いに連れ合い/孫がいると思い込んであっさりとした別れを迎える。それでも、阿笠博士は走り去る車に向かって「今でもイチョウは大好きですよ」と大声で伝えた。

ビリーは、フサエの母の再婚相手の友人であると同時に、妻がフサエブランドの大ファンであることから、フサエが10年ごとに阿笠を待つ行事に付き合っていた。フサエはそのビリーに10年後もまた付き合ってくれるかと聞くのだが、ビリーは「次に会うのは、そんなに時間がかからないんじゃないかな」と告げて物語は幕を閉じる。

「イチョウ色の初恋」は『名探偵コナン』の中でも人気のエピソードなのだが、この一連のストーリーには、今回の『黒鉄の魚影』と共通するテーマがある。

『黒鉄の魚影』に繋がるテーマ

同じ境遇にあった三人

それは、人種差別に対するメッセージだ。「イチョウ色の初恋」では、親の片方が外国人で金髪を周囲の子ども達に揶揄されていたフサエについて、灰原哀が自身も母親がイギリス人で、アメリカに住んでいた時に東洋系の顔のせいで嫌がらせをされていたと明かす場面がある。

そのエピソードが映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』で灰原哀が事件に巻き込まれる理由へと繋がっていく。年齢にかかわらず防犯カメラの映像から同一人物を特定することができる老若認証を開発した直美アルジェントは、そのシステムを利用して宮野志保(灰原哀の本名)を探し、灰原哀に行き着く。

直美アルジェントは父がイタリア人、母が日本人でアメリカで育ったという設定になっている。灰原哀は母がイギリス人、父が日本人ということでヨーロッパ系と東洋系の両親を持つという点で一致している。そしてアジア系であることで周囲の子どもからいじめられていた直美を助けたのが宮野志保こと後の灰原哀だった。

しかし、差別されていた直美を助けたことで、今度は宮野志保がいじめの標的になってしまう。この話はおそらく「イチョウ色の初恋」で出た灰原哀が東洋系の顔のせいで嫌がらせをされていたという話の原点にあるものだろう。

直美は自分が助けてもらったのに志保のことを助けることができず、ずっとそれが心残りになっていた。そして、差別された経験から人種による差別をなくすために老若認証を作ったのだった。そして、それが完成して日本の防犯カメラにアクセスできるようになった時にまず最初に志保を探し出したのだ。

交差する4人

人種差別といじめから自分を助けてくれた志保に再会したかったという直美の想いは、差別で生まれたコンプレックスから救ってくれた阿笠博士に再会したかったフサエの想いに重なる。形は違えど、小さな存在に寄り添う児童期の灰原哀と阿笠博士の優しさは直美とフサエの人生を変えたのだ。これは、灰原哀が直美に伝えた「子どもの言葉や行動で人生が変わることもある」というもう一つのテーマに説得力を与えるものになる。

黒の組織は当初は老若認証を自分たちの過去の痕跡を消すために利用しようと直美を拉致したが、宮野志保と灰原哀の認証が一致したことを知り人の指令で灰原哀のことも拉致する。

そこで二人は出会い、直美は灰原哀に幼少の頃の話を伝えるのだが、もちろん灰原哀はしらを切り通した。しかし、エンドロールの後には直美は灰原哀=宮野志保であることを確信しているようにお礼を言って日本を発っている。

ベルモットの意図は?

優しさへの対価

そして、その後に今回コナンと灰原哀を身バレから救ったベルモットが冒頭のイチョウのブローチを灰原哀から譲ってもらったおばあさんの正体だったことが分かり、イチョウのブローチが映って『黒鉄の魚影』は幕を閉じる。このシーンにはどんな意味があったのだろうか。

ベルモットは単にフサエブランドのファンで、それを譲ってくれた灰原哀の優しさに恩返しがしたかったのかもしれない。それは単純な答えのようにも思えるが、灰原哀の根底にある他者への優しさというテーマは『黒鉄の魚影』本編と「イチョウ色の初恋」に通底するものでもある。

また、ベルモットはかつて工藤新一に命を助けてもらったためコナンを庇って幼児化の薬(APTX4869)の存在を黒の組織に隠してもいる。助けてもらったことに対するベルモットの情は人一倍強いように思われる。

フサエの再登場も?

あるいは、同じ金髪を持つベルモットとフサエは親類で、フサエブランドに特別な思いがあったのかもしれない。ベルモットは変装の達人なので、ベルモット=フサエ説もあり得ただろうが、それだと今回おばあさんの変装をしてブローチを欲しがっていた理由が謎のままだ。最初から灰原哀に近づくための行動だったのかもしれないが、自分で借りを作って返すというよく分からない行動を取っていることになる。

有名なファンセオリーの中には、「イチョウ色の初恋」でビリーが一度だけフサエに対して「オーケー、ボス」と言い、『黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー』(コミック第42巻、アニメ第345話)でベルモットが「オーケー、ボス」と発言したことからフサエも黒の組織に近い人物であるという説もある。

「イチョウ色の初恋」のラストでビリーがフサエに意味ありげに「(阿笠博士に)次に会うのは、そんなに時間がかからないんじゃないかな」と言ったのは伏線で、フサエがいずれ物語に合流することを示唆しているとも考えられる。例えば、この限定版のイチョウのブローチが2024年公開の劇場版『名探偵コナン』第27弾の怪盗キッドが絡む物語に繋がる可能性もあるだろう。

ベルモットは最後に自分がコナンに味方する理由を突き止めて欲しがっていた。イチョウのブローチがアップになって映画が終わったということは、今後もベルモットとフサエブランドが絡む展開が登場する可能性は大いにある。そうなれば阿笠博士にも新たな展開が生まれることになりそうだ。今後の展開に期待しよう。

なお、イチョウの形をしたフサエブランドの限定ブローチは、『黒鉄の魚影』劇場公開後に実際に期間限定で予約販売を受け付けていた。フサエブランドは今後も重要な存在になるのかもしれない。

『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ラストの解説&考察はこちらの記事で。

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