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TIFFCOM 2025で日本企業がピッチ
第38回東京国際映画祭と併設のコンテンツマーケット「TIFFCOM 2025」が2025年10月29日から31日にかけて開催され、3日間で4,592名が参加、前年比112%の参加者が集まる賑わいを見せた。2025年のTIFFCOMでは46の国と地域から322の団体が出展し、セミナーや商談を行っている。
TIFFCOM初日の29日の午前には、日本のIP(知的財産権、コンテンツ)の映像化作品製作をサポートするTokyo IP Market: Adaptation & Remakeが開催。KADOKAWA、講談社、主婦と生活社、スクウェア・エニックス、東映、日本文芸社の6社が、海外のバイヤー向けに自社IPの映像化権とリメイク権のオープンピッチを行った。
KADOKAWAのイチ押しは『今夜、世界からこの恋が消えても』
膨大なコンテンツを抱えるKADOKAWAがピッチでイチ押ししたのは一条岬原作の『今夜、世界からこの恋が消えても』。眠ると1日の記憶を失ってしまう高校生と、その同級生の切ない恋愛を描く作品で、日本では2022年に映画化されている。
『今夜、世界からこの恋が消えても』は韓国でも大ヒットを記録。韓国ではミュージカル版が2025年6月より上演され、韓国での映画リメイクも決定している。全世界累計部数は130万部を突破しているといい、KADOKAWAの担当者は韓国以外の国と地域でのアダプテーション(映像化などの翻案)をアピールした。
また、KADOKAWAからは20224年に国内で映画化された内田英治の小説『マッチング』なども紹介されている。小説を中心に幅広いコンテンツのアダプテーションとリメイクをアピールしていた印象だ。
『私のアリカ』を推した講談社はスタジオ設立を発表
同じく数多くのIPを保有する講談社は、まずは『寄生獣』や『のだめカンタービレ』の韓国ドラマリメイクや『攻殻機動隊』や『進撃の巨人』のハリウッド映画リメイクといった実績をアピール。『進撃の巨人』のハリウッドリメイクは2018年に発表された後は詳報は伝えられていないが、企画はまだ生きているようだ。
講談社がイチ押ししたのは、藤沢もやし原作、隈屑。が漫画を手がけた『私のアリカ』。人気アイドル・真宮アリカの失踪をきっかけに、その親友である宮嶋ナナが新メンバーの候補生として潜入し、事件の真相を追うとともにアイドル業界の光と闇に触れていくという作品だ。
ピッチでは、スリラードラマとしての実写化のポテンシャルについても触れられ、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のヒットに代表されるように、アイドル業界への世間の関心が高まっていることにも触れられた。だが何よりも、アイドルの成長譚でありミステリーでもある、『私のアリカ』のドラマ性の高さがアピールされていた。
このピッチの一週間後、講談社は映像制作会社「Kodansha Studios」をハリウッドに設立することを発表。最高クリエイティブ責任者に『ノマドランド』『エターナルズ』のクロエ・ジャオ監督が就任することも発表された。リリースでは「講談社は本スタジオを通じ、日本で出版された多種多様なマンガや小説の海外実写映像化およびグローバル展開において、より主体的な役割を担ってまいります」としており、講談社作品の“海外実写化”がさらに進むことになりそうだ。
小説・漫画が急成長の主婦と生活社
小説部門と漫画部門が急成長している主婦と生活社は、様々な小説と漫画作品を紹介。「異世界ネイルファンタジー」として人気を集める、まるかわ『異郷の爪塗り見習い』を皮切りに、小説投稿サイトから書籍刊行、そして漫画化という流れを汲む多数の作品がアダプテーション&リメイク候補の作品として案内されている。
具体的には、メノタ『メリー・ウィッチーズ・ライフ ~ベルルバジルの3人の未亡人~』、原作・宮前葵、漫画・夏川そぞろ、キャラクター原案・ののまろの『貧乏騎士に嫁入りしたはずが!? 野人令嬢は皇太子妃になっても竜を狩りたい』、 原作・漂月、漫画・飛鳥あると、キャラクター原案・sakiyamamaの『マスケットガールズ!~転生参謀と戦列乙女たち』、 原作・Syousa.、漫画・倫理きよ、キャラクター原案・jimaoの『あなたの未来を許さない』といった作品が紹介された。
スクエニは漫画タイトルをアピール
スクウェア・エニックスは、「ファイナルファンタジー」シリーズや「ドラゴンクエスト」シリーズ、「NieR:Automata」など、世界的な知名度を誇るゲームIPの保有会社であることをアピール。その上で漫画IPに注力してピッチを行った。
2025年に国内で映画化された陽東太郎の漫画『遺書、公開。』、アニメ化されている藤近小梅『好きな子がめがねを忘れた』、隈浪さえ『推しが兄になりました』などを紹介。ドラマ・映画・アニメ化された豊田悠『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』は「LGBTQ+」の作品としても紹介されている。
東映は共同製作の強みも
映画会社である東映は、映像作品のリメイク権をピッチ。武田一義の漫画をアニメ映画化する『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』、永井紗耶子の小説を映画化する『木挽町のあだ討ち』など、今後公開される作品が紹介された他、東映の国際企画戦略部による第1号作品として日台米合作で製作された『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』も紹介すると共に、アダプテーション&リメイクにあたって海外で共同製作、共同出資、共同開発が行える体制もアピールしている。
また、中国でのリメイク版が全世界興収740億円超を記録した『百円の恋』、国内でのNetflixリメイク版が高い評価を得た『新幹線大爆破』、清水崇監督によるホラー映画『犬鳴村』、米国では「パワーレンジャー」シリーズとしてリメイクされた「スーパー戦隊」シリーズ、そして1979年に放送された石森章太郎原作のスポ根ドラマ『燃えろアタック』も紹介されている。
日本文芸社は人気の2作を紹介
日本文芸社からは、2024年5月に代表取締役社長に就任した竹村響社長がピッチ。雑誌「週刊漫画ゴラク」やウェブコミック配信サイトの「ゴラクうぇぶ!」を運営する同社からは、二宮正明の漫画『ガンニバル』がドラマ化されディズニープラスで配信、河部真道『鬼ゴロシ』はNetflixで映画化され、共に高い視聴数と大きな話題を呼んだ。
今回のピッチでは、山本晃司『撲殺ピンク〜性犯罪者処刑人〜』と高橋よしひろ『銀牙伝説WEED』を中心に紹介。「ゴラクうぇぶ!」作品である『撲殺ピンク』は台湾では既に買い手が見つかっているそうだ。「週刊漫画ゴラク」で連載されている『銀牙伝説WEED』はフィンランドで高い人気を誇り、著者の高橋よしひろは7月に開催されたフィンランドのアニメコンベンションにゲスト・オブ・オナーとして参加、同国での権利は既に売れているという。
刻一刻と変化するIP戦略
以上、6社による英語でのピッチが実施された、TIFFCOM 2025のTokyo IP Market: Adaptation & Remake。小説をベースに国内でのアダプテーションを成功させ、さらに海外展開を狙うパターンや、紙媒体とウェブ配信の双方でヒットを生み出し海外展開を狙うパターンなど、各社がそれぞれの戦略でしのぎを削っている。
その中で、11月6日にはKADOKAWAが2026年3月期中間連結決算を発表し、出版事業からコミック・ライトノベル事業を独立させる形で組織再編を行い、同ジャンルへの注力と収益最大化を図ることが明かされた。講談社によるスタジオ設立の発表と合わせ、各社のIP戦略は刻一刻と変化している。
それでも、コンテンツを創り出すのはクリエイターであるという原則は変わらない。引き続き、時代の流れに沿った迅速な意思決定と、クリエイターへの積極的な投資が重要になるだろう。
© TIFFCOM 2025
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