第38回東京国際映画祭 審査員記者会見が開催
2025年10月28日(火)、東京の日比谷などで開催されている第38回東京国際映画祭のコンペティション部門の審査員記者会見が開催された。審査委員長のカルロ・シャトリアン（ジャーナリスト、作家、プログラマー）と共に、審査員のグイ・ルンメイ（俳優）、マチュー・ラクロー（編集者）、ヴィヴィアン・チュウ（監督／プロデューサー）、そして齊藤工（俳優／監督）が登壇し、今日における映画祭の意義や審査に向けた意気込みを語った。
2013年から2018年までロカルノ国際映画祭、2020年から2024年にはベルリン国際映画祭のアーティスティック・ディレクターを務めた審査委員長のカルロ・シャトリアンは、「今日において物語をシェアするということは、互いを理解するという上でもとても大切なことだと思います」と語る。
カルロ・シャトリアンの在任中、ベルリン国際映画祭では「男優賞」「女優賞」が廃止され、性別の区別のない「最優秀主演俳優賞」「最優秀助演俳優賞」が新設されたことは話題を集めた。監督や俳優出身ではない審査委員長であることについては、「あくまで5人の審査員のうちの一人」と謙遜しつつ、「インサイダー」ではない審査員ならではの視点での審査に意欲を見せた。
台湾の人気俳優であるグン・ルンメイは、「役者としては、世界各地から色々な映画が選ばれ、ジャンルも異なっていて、クリエイターの皆様がどういった見解で、どういう風に映画を撮っているのかというのを見ることを非常に楽しみにしています」と、東京国際映画祭に集った映画への期待を語った。審査員のバックグラウンドがそれぞれ異なることにも言及し、「私に撮っては忘れ難い経験になると思います」と締めくくっている。
フランス出身の編集者マチュー・ラクローは、審査で重視する点について、「演技やストーリーによって心を動かされるか、驚かされるか、予想していなかった新しいものがあるかを見たい」と意気込みを語った。
中国の著名な監督兼プロデューサーであるヴィヴィアン・チュウは、「どうやって物語を国際的なプラットフォームに紹介するか」という課題について、「東京国際映画祭はアジアの作品が紹介され、ヨーロッパの方々にも見てもらえるという重要な役割を果たしてきました」と語った。さらに「近年、映画にはさまざまな課題に直面しており、映画祭という場は以前よりも貴重な場所になっています」と付け加えている。
俳優だけでなく監督としても活躍する齊藤工は、審査員としての意気込みを「東京国際映画祭が今後どういう方向に向かっていくか、その兆しに関われたら」と語る。
その「方向」の感触について聞かれると、第38回東京国際映画祭の初日と重なったドナルド・トランプ米大統領の来日を念頭に「昨日いろんな事情で交通渋滞があったりして」と切り出し、こう語った。
国境というか、ボーダーというものを、意識せざるを得ない時代になっています。その違いだったり、国境線を越えられる一つの手だてが、僕は映画だと思っています。特に東京国際映画祭は映画の多様性と可能性を（広げて）、残してきた歴史もあります。昨日も吉永小百合さんの（特別功労賞の）表彰がありました。そんな日本映画が今後どこに向かうべきかと考えるにあたって、この（会見場の）TOHOシネマズ シャンテに来ることもありますが、いつも客席から眺めて自分の中で希望の光を持ち帰るっていうことを繰り返しています。
個人的には、もっとこの東京国際映画祭に同業者の俳優だったり、現場のスタッフなど、映画にまつわる現場の人間が——もちろん仕事があると思うんですけど——この映画祭により集まるということが大事だなと思っています。今回のコンペティション作品の多くが、その国々が抱える現在進行形の問題を含んだ作品を市山尚三（東京国際映画祭プログラミング・ディレクター）さんたちが長い時間をかけて選んでくださっていますので、その中で日本映画の存在感がどうなるのかということが、東京国際映画祭の未来がどうなるのかということにつながると思っています。
第38回東京国際映画祭コンペティション部門の15作品と上映スケジュールはこちらから。
第38回東京国際映画祭は2024年10月27日（月）～11月5日（水）、会場：日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
第38回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した『万事快調〈オール・グリーンズ〉』監督＆キャストの様子はこちらから。
レッドカーペットでの『てっぺんの向こうにあなたがいる』監督＆キャストの様子はこちらから。
