小松左京初の長編『日本アパッチ族』が新装版で登場
『復活の日』(1964) や『日本沈没』(1973) で知られる小松左京初の長編小説『日本アパッチ族』(1964) が角川文庫から新装版で登場した。新装版『日本アパッチ族』は、小松左京作品ではお馴染みの生頼範義によるカバーイラストが採用されている。2021年9月18日(土) より、文庫版と電子版が発売されている。
『日本アパッチ族』は、小松左京が1961年に短編「地には平和を」で第1回 空想科学小説コンテスト選外努力賞を受賞した後、東京オリンピックが開催された1964年に光文社から発売された。小松左京が父親の工場の立て直しに奔走していた頃に書かれた作品で、不憫な暮らしをさせていた妻を楽しませようと書き始めた小説である。
『日本アパッチ族』は「アンパンマン」で知られるやなせたかしによって小松左京初のコミック化が実現している他、小松左京初となる映像化も検討された。小松左京が逝去した2011年には「鉄になる日」というタイトルで毎日放送でラジオドラマ化され、ギャラクシー賞ラジオ部門大賞をはじめとする多くの賞を受賞した。また、『日本アパッチ族』の刊行は『日本沈没』誕生のきっかけにもなっている。
これらのエピソードは小松左京ライブラリで詳しく紹介されているので、以下のリンク先からチェックして頂きたい。
『日本アパッチ族』あらすじ
『日本アパッチ族』の舞台は1960年代の“もう一つの日本”。憲法改正によって「戦争放棄」も「為本的人権の保障」も蔑ろにされ、主人公の木田福一は失業罪で逮捕されてしまう。大阪城周辺の流刑地に追放された木田は、その地獄のような土地で山田という人物に助けられ、共に脱出の計画を進める。
脱出の計画は失敗に終わるが、追い詰められた木田を助けたのはアパッチ族そっくりの人物だった。アパッチは、鉄を食べて生きられるように進化した新たな人類で、元は軍による虐殺を逃れた社会から放逐された人々だった。陸軍と警察はアパッチの殲滅作戦に乗り出す一方、アパッチはその存在を世間に知らしめようと動き出す。
『日本アパッチ族』新装版は角川文庫より2021年9月18日(土)発売。
2021年は小松左京の生誕90年、没後10年に当たる。9月8日(水) には『現代思想2021年10月臨時増刊号 総特集=小松左京』が発売され、10月20日(水) には小松左京が製作・原作・脚本・総監督を務めた映画『さよならジュピター』が初めてBlu-rayで発売される。同月にはTBSの日曜劇場にて小栗旬主演の新ドラマ版『日本沈没ー希望のひとー』の放送がスタートする予定だ。