「やるならマイルスで」スパイダーバースとMCUスパイダーマン制作の経緯をエイミー・パスカルが明かす | VG+ (バゴプラ)

「やるならマイルスで」スパイダーバースとMCUスパイダーマン制作の経緯をエイミー・パスカルが明かす

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「スパイダーマン」の制作秘話が明らかに

2018年に米国で公開され、アカデミー賞も受賞したアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』と、2017年公開の映画『スパイダーマン:ホームカミング』から始まったMCU「スパイダーマン」シリーズは、今やソニー・ピクチャーズを代表する映画シリーズとなった。2023年に『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダバース』が公開された「スパイダーバース」シリーズからは、第3弾『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の公開も控えている(公開日は未定)。

また、2024年7月に開催されたサンディエゴ・コミコンでは、マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギがMCU版『スパイダーマン4』について、新しい監督を探すこと、脚本の草稿が間もなく上がってくることを米CinemaBlendに明かした。ソニー「スパイダーマン」シリーズのプロデューサーであるエイミー・パスカルと共に準備に取り組んでいるという。

SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)からも、「ヴェノム」シリーズ最終作と目されている『ヴェノム:ザ・ラストダンス』が2024年11月1日(金) より日本で公開される。話題が尽きないソニーの「スパイダーマン」フランチャイズだが、快進撃が始まった意外なきっかけを、その立役者であるエイミー・パスカルが語った。

MCU合流の経緯は?

ソニー・ピクチャーズ エンターテインメントの共同会長、コロンビア・トライスター・モーション・ピクチャー・グループの会長を歴任してきたエイミー・パスカルは、2015年のソニー退社後にパスカル・ピクチャーズを立ち上げた。その後は映画『スパイダーマン:ホームカミング』や『ヴェノム』(2018)、そして『スパイダーマン:スパイダーバース』等の「スパイダーマン」映画のプロデューサーを務めている。

2024年8月1日、「スパイダーマンの日」に日本で『スパイダーマン:スパイダーバース』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のオフィシャルガイドが刊行された。その中でエイミー・パスカルは、ソニーが手がけていた旧「スパイダーマン」シリーズからMCU合流に方向転換し、アニメ映画「スパイダーバース」シリーズをスタートさせた経緯を明かしている。

ソニーの「スパイダーマン」映画は、サム・ライミ監督の「スパイダーマン」三作と、マーク・ウェブ監督の「アメイジング・スパイダーマン」二作を経てMCUに合流した。その理由について、エイミー・パスカルはこう語っている。

スパイダーマンの実写映画では大きな成功を収めることができたけど、初期のソニー版は行き詰まっていたんです。ある日クモに噛まれて〜っていうお話は何度でもやれるわけじゃないから、実写版のピーターをMCUに参加させることにしたんです。彼を他のマーベルキャラクターもいる世界に置いたら何が起きるか、それを見る必要がありました。 (原書から訳出)

ソニーで行き詰まりを見せていたという「スパイダーマン」シリーズをMCUに合流させたのは、スパイダーマンを新たな環境に置くためだったという。確かにトム・ホランドが演じたMCUのスパイダーマンは、クモに噛まれるオリジンのストーリーは描かれていない。初登場も『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) で、多くのマーベルキャラの中でデビューを果たした。これまでと違うスパイダーマンの物語を見せるために、MCUへの合流という判断を下したのだろう。

その後、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) では、ソニーの旧シリーズでスパイダーマンを演じたトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドが登場。この展開も、先輩ヒーローたちの中で輝きを見せるトムホ版スパイダーマンが生んだミラクルとも言える。

「スパイダーバース」制作にあった条件

一方、「スパイダーバース」シリーズについても、スパイダーマンのMCU参戦を画策していたのと同じ時期に企画を走らせ始めたという。エイミー・パスカルは、過去にソニーでアニメ映画「くもりときどきミートボール」などを手掛けていたクリストファー・ミラー&フィル・ロードにアニメ版「スパイダーマン」の話を持っていったのだとか。

つまり、この時期のソニーは、MCUに参戦する形での実写「スパイダーマン」の仕切り直しと、アニメ「スパイダーマン」のスタートを同時に模索していたということだ。クリストファー・ミラー&フィル・ロードは、このオファーに当初は難色を示していたというが、ある条件のもとで制作の提案を受け入れたという。

クリスとフィルの説得には少し手間取ったけど、最後にはアイデアを気にってくれました。「よし、やろう。ただし、やるならマイルスで」と言われ、「そうね、マイルスでやりましょう」って答えたんです。

クリストファー・ミラー&フィル・ロードが出した条件とは、2011年にコミックに登場したばかりのマイルス・モラレスを主人公にすることだった。実は、エイミー・パスカルはソニーで二人の監督デビュー作『くもりときどきミートボール』(2009) の、コロンビアで『21ジャンプストリート』 (2012) の制作時に二人と一緒に仕事をした経験があった。クリストファー・ミラー&フィル・ロードを信頼していたエイミー・パスカルはこの提案に乗り、「スパイダーバース」の幕が開かれたのである。

同時にエイミー・パスカルは、アフリカ系アメリカ人の父とプエルトリコ系の母を持つマイル・モラレスを主人公に据えることについて、「世界の実際の姿を映画にも反映させる時だと思ったし、それは本当に大事なことだと思う」とも話している。

様々な条件のもとで、MCU「スパイダーマン」と「スパイダーバース」という名作シリーズが誕生したことが分かる。『スパイダーマン:スパイダーバース』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のオフィシャルガイドでは、「スパイダーバース」の制作秘話が多数収録されている。第三作目『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』に備えて予習・復習してみるのもいいだろう。

『スパイダーマン:スパイダーバース マーベルムービーシリーズ オフィシャルガイド』および『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース マーベルムービーシリーズ オフィシャルガイド』は、カドカワムックより発売中。

『スパイダーマン:スパイダーバース』と『アクロス・ザ・スパイダーバース』は、4K ULTRA HD&ブルーレイセットが発売中。

Source
CinemaBlend / 『アクロス・ザ・スパイダーバース』オフィシャルガイド

二冊同時刊行された「スパイダーバース」オフィシャルガイドの詳細はこちらから。

『アクロス・ザ・スパイダーバース』ラストの解説はこちらの記事で。

エイミー・パスカルはマイルス・モラレスの実写映画とスパイダーウーマンの単独映画の存在について明かしている。詳しくはこちらの記事で。

『マダム・ウェブ』ラストの解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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