新たなヒーロー、ギャバン・ライヤ登場
東映による新シリーズPROJECT R.E.D.『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」では、『宇宙刑事ギャバン』(1982-1983)からはじまったメタルヒーローシリーズ第7作目『世界忍者戦ジライヤ』(1988-1989)をモデルにしたギャバン・ライヤが登場した。
「超邂逅」をテーマにまったく異なる存在としてギャバン・ライヤ/風波駆無を登場させた『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」。このエピソードを詳しく観ていくと、東映特撮が様々な作品の影響を受けて新しい演出に挑むエピソードであることも読み取ることが出来た。
本記事では、恐れで変身するギャバン・ライヤが活躍する『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」について、解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容には『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」の内容に関するネタバレを含みます。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」ネタバレ解説&考察
ギャバン・ライヤは東映版ヴィジョンになるか?
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」で登場した多元宇宙Ζ2066(ゼータ フタマル ロクロク)の銀河連邦警察星間諜報部に所属するギャバンが、ギャバン・ライヤ/風波駆無だ。彼はドアを開けるのが面倒ということで、壁を通り抜けてくる。これは忍者要素として考えられるが、もう一つの可能性がある。それがアメコミヒーローの影響だ。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)では、人造人間のヒーロー“ヴィジョン”が登場。彼は身体の分子構造を変化させることで物質透過する能力を持ち、ドアを使わず壁をすり抜けて現れることでも知られる。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」では蟻のギャバンであるギャバン・アーマイゼ/有本未空郎が登場し、蟻のサイズでありながらギャバンとしての腕力で相手を投げ飛ばすなど、『アントマン』(2015)を想起させる演出が行なわれている。また、ギャバン・レイヤがギャバン・インフィニティとギャバリオンセイバーで戦う場面は、ウィンターソルジャーのナイフアクションを想起させる。
新しいシリーズとして始まったPROJECT R.E.D.では、これまでの東映特撮ヒーローの要素を回収するだけではなく、現在の視聴者が慣れ親しんでいるアメコミヒーローの要素も取り入れているのではないだろうか。事実、「仮面ライダー」シリーズでは海外も含めた幅広いターゲットへの展開を目指す『THE KAMENRIDER PREMIUM』も始動している。
忍者として「五車の術」を操るギャバン・ライヤ
多元地球Ζ2066ではエモルギアの存在について、まだ解明されていない。そして、地球が無数に存在するコスモレイヤーへの理解も進んでおらず、自分たちの地球を1として番号で呼んでいる。だからこそ、次元超越者はより一層貴重な存在とされているのだ。
そのような多元地球Ζ2066でエモルギアによって、特殊能力を得るギャバンはどのように活動しているのか。そこにギャバン・ライヤ/風波駆無の忍者要素が関わってくる。史実の忍者には相手の感情を操る「五車の術」というものが存在する。ギャバン・ライヤのいる多元地球Ζ2066ではエモルギアが忍術のように理解されている。
これはマルチバース展開をする『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』だからこそできる展開だ。エモルギアの研究が進んでいる多元地球Α0073に対し、エモルギアと対話ができる祝喜輝がいる多元地球Ι5109など、エモルギアの理解度は宇宙によって差がある。つまり同じ能力であっても、それが“科学”か“忍術”かによって意味は大きく変わるのだ。
それを埋めるため、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』では合同捜査が行なわれるのだが、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」ではエモルギアを科学ではなく忍術として理解する宇宙を登場させ、新しい宇宙像を描いたと考察できる。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」ネタバレ感想
PROJECT R.E.D.で描かれる正義
こうした身体表現の変化は、新たな演出を超え、本作が描いてきた社会の複雑さにも繋がっている。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』は様々な多元宇宙が登場することで、それぞれの正義を描くことができる。第6話「怪盗フェイド登場」では、DVの被害者だが宇宙からの移民という境遇故に告発しては強制送還されてしまうことを恐れる母子が登場した。
そこでは、怪盗フェイドは娘が富豪の父親から盗んだ金品の奪還を依頼されるも、母子の境遇や警察に頼っても貧しい故郷での先行きの見えない生活が待っているだけとし、故郷へ帰るための船そのもの送った。これは裏社会を生きる者ならではの正義だと言えるだろう。
また、銀河連邦警察はそれぞれの宇宙に存在するため、一枚岩ではない。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」では、越境捜査を侵略と考える銀河連邦警察が登場。なおかつその内部には犯罪組織と繋がっているような人物も存在している。
ほかにも、ギャバン・ブシドーの銀河連邦警察では天羽琉唯が治安維持本部長に就いていることを、女性というだけでよく思っていない捜査官が描かれるなど、それぞれの銀河連邦警察が現実に通じる生々しい社会問題を抱えている。これをまとめて描くことができるのは、マルチバース設定ならではの展開だと言えるだろう。
この異なる価値観や世界観が同時に存在する複雑さをマルチバース展開で描く一方で、この社会の複雑さこそが、ギャバンたちの身体や能力を変化させている。それがアントマンのようなギャバン・アーマイゼや、ヴィジョンのようなギャバン・ライヤだったのではないだろうか。
メタルヒーローのオマージュも?
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」で、もう一つ注目なのがコスモギャバリオンの新強化ユニットの存在だ。造船所でつくられていたギャバリオンドルネードは、『宇宙刑事ギャバン』の電子星獣ドルがモチーフであることは明らかだ。
事実、ギャバリオンドルネードを捜査するエモルギアの名前は「リスペクトロン K.I.」でリスペクトと敬愛から来ており、先人たちがつくってきたメタルヒーローシリーズのオマージュを匂わせている。
他にも、ギャバンになることを決意したヒャクトー星人のパトランだが、マスコット的なキャラクターがヒーローになる展開はメタルヒーローシリーズ第16作目『ビーロボカブタック』(1997-1998)で見られた流れだ。これはメタルヒーローシリーズが持っていたヒーロー像の幅広さを示すものでもある。特にカブタックは現在、中国で爆発的な人気を博している。
今後、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』は過去のメタルヒーローへのオマージュをしつつ、複雑化していく現代社会の正義や一般化したアメコミのヒーロー像と向き合っていくことが予想できる。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』は、ヒーローとは何かという問いそのものを、改めて突きつけている。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第10話「忍びのギャバン」は2026年4月19日(日)9:30より放送開始
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」のネタバレ解説&考察はこちらから。
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『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」のネタバレ解説&考察はこちらから。
