『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』公開
原作メーブ、作画 恵広史による同名漫画を実写ドラマ化した『ACMA:GAME アクマゲーム』(2024)、その最終章となる『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』が2024年10月25日(金) より全国の劇場で公開された。間宮祥太朗、田中樹、古川琴音、竜星涼、嵐莉菜、小澤征悦、金子ノブアキ、志田未来ら豪華出演陣と共に、『ごくせん THE MOVIE』(2009) や映画「カイジ」シリーズを手掛けてきた佐藤東弥監督が巨大スケールの“アクマゲーム”に挑んだ。
今回は『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』のラストの展開について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。なお、以下の内容は本作の結末に関する重大なネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』の結末に関する重大なネタバレを含みます。
Contents
『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』ラストをネタバレ解説
「最後の鍵」の意味
『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』では、原作漫画とは異なる完全オリジナルのストーリーが描かれた。アイギス教団の黒田光輝&黒田蘭との鍵と大量破壊兵器のジラーニエを賭けた戦いに勝利した織田照朝だったが、99個目の鍵をかけた崩心とのアクマゲームに敗れてしまい、全ての鍵を失ってしまった。
しかも、織田照朝は99個の鍵を手に入れれば、何でも願いが叶うと言われていたが、それは事実ではなかった。99個の鍵を集めると悪魔がこの世に顕現(けんげん:形を持って現れること)してしまうというのが真実であり、崩心は自らの身体を捧げて悪魔のガドと一体になった。そして、悪魔が支配する世界が生まれるまで残り2日となってしまう。
しかし、黒田蘭は100個目の鍵が存在すること、兄の光輝がその事実を示した石板を破壊したことを明かす。100個目の鍵をかけた悪魔とのアクマゲームに勝てば、全ての鍵を消し去ることができるという。サブタイトルの「最後の鍵」とは、崩心が持っていた99個目の鍵ではなく、世界の命運を握る100個目の鍵のことだったのである。
ラッキーマンとは
織田照朝、初、悠季、潜夜、紫、蘭の5人は、キルタン王国のクレーシャ遺跡で崩心/ガドとの最後の戦いに挑む。この場所に辿り着くために協力してくれたのは、ドラマ版第1話の冒頭に登場した人物だ。東南アジアの某国で鍵を探していた照朝は、ある集落で捕えられたにもかかわらず、その集落が水不足であることを知ると、掘ると水が出る場所を教えてあげた。
運が良くなるという悪魔の鍵の力を活用したもので、この時、照朝は「ラッキーマン」と名乗り、集落の人々から感謝された。劇場版『アクマゲーム』でも、この人物は照朝を見かけるなり「ラッキーマン」と呼んでいる。
冥王剣闘士/The Gladiator
ガドが用意した最後のゲームは「冥王剣闘士/The Gladiator」。ゲームマスターを務めるのは白いフクロウのような姿をしたコルジァだ。「冥王剣闘士/The Gladiator」は、トランプの「大富豪」にも似たルールで、1〜5個の宝石が埋め込まれた剣が両者に1本ずつ配られる。各ターンで互いに剣を選んで宝石が多かった方がポイントを得るというルールだが、1の剣は5の剣に勝り、更に1の剣を出したプレイヤーがその瞬間にゲームの勝者となるというのがミソだ。
また、ゲームには5人の剣闘士が参加する必要があり、まけた剣闘士は実際に命を落とすことになる。「冥王剣闘士/The Gladiator」は映画オリジナルのゲームであり、シンプルながら知力のみならず胆力や冷徹さも求められる難易度の高いゲームだ。
剣闘士として亡霊(+黒田兄)を使うガドに対し、仲間を失いたくない照朝は一人目の潜夜に4の剣を持たせ、それを読んでいたガドは2の剣を出した。照朝は4-2でポイントを先取したものの、最もリスクが低く使い勝手の良い4の剣を、最も使えない2の剣で消費してしまったことになる。照朝の心境としては、特に潜夜は失いたくないという気持ちもあったのかもしれない。
第2ラウンドでは、ガドが先に5の剣を出すと宣言。これに対して照朝は二人目の初に、5に勝てる1の剣を出させたが、ポイントはガドに入ってしまう。ガドは悪魔の力で3の剣の見た目を5の剣に偽っており、実際には3-1だったのだ。これで照朝は親友の初を失うことになってしまった。
まさかの欺き合い
しかし、照朝は弱者が理不尽に殺されていく世界を変える、欲望に打ち勝つと宣言すると、最後にどんでん返しが待っていた。三人目のプレイヤーは悠季vs黒田兄。手元の剣は照朝が2・3・5、ガドが1・4・5だ。照朝が圧倒的に不利な状況だが、悠季が出した剣は1、黒田兄が出した剣は5だった。
先ほどのラウンドで照朝は1の剣を消費したかに思われていたが、実は黒田兄が妹の蘭にガドと崩心の作戦を密告しており、初は2の剣の宝石の一つをモグチョコで隠して提示していた。つまり、第2ラウンドの勝負はガドのポイントで間違いはないが、結果は3-1ではなく3-2だったのだ。
初は人類のために自分が犠牲になることを選んだ。勝つために欺くのではなく、次の人が勝てるように負け方を工夫するという智慧がそこにはある。互いに見た目を偽装し、5-1かと思ったら結果3-2だったという欺き合い。故にガドと崩心は照朝の手元に1の剣があるとも知らず、一発KOされるリスクがある5の剣を出してしまったのだ。
これぞアクマゲームという感じだが、一方で、一人で解決できないことは次の人や世代に繋いでいくという人間らしさも感じられる戦いだった。この時点でクリティカル、このアクマゲームは照朝の勝利となる。
勝利までの二つの壁
だが、真の勝利までには二つの壁があった。一つは、悠季が黒田光輝を殺さなければならないということ。ドラマシリーズ第1話で照朝が丸子を死なせたという罪を背負ったように、悠季もまた罪と十字架を背負うことになる。
けれど、初と黒田は、自分が死んでも誰かに託せばいいという考えのもと自己犠牲を選んだ。悠季もその思いに応えるようにして、黒田兄を斬るのだった。黒田光輝は映画オリジナルの登場人物だが、やはり照朝という人間に惹かれて、後を照朝に託すことにしている。人たらしの織田照朝は劇場版でも健在だ。
次の壁は、崩心が持つ悪魔の力だ。99個目の鍵を賭けた戦いで見せた通り、崩心はゲームのプレイヤーを対象として時間を逆行させる悪魔の力を持っていた。第3ラウンドがやり直しになれば、手元の剣は照朝が1・3・5、ガドが1・4・5で仕切り直しとなり、照朝側が不利になる。
崩心が第3ラウンドを巻き戻そうとした時、照朝に語りかけてきたのは吉川晃司演じる父・清司だった。金子ノブアキの見せ場から吉川晃司の見せ場へ、音楽ファンにはたまらない場面だ。加えて仮面ライダー然ともしている清司は、照朝に全ては「認知」の問題であると伝え、照朝の覚醒を促す。
すると照朝は悪魔の力「一分間の絶対固定(リミテッド・パーフェクト)」を発動。触れた物質を1分間固定できるという能力だが、なんと照朝が掴んだのは時空だった。照朝が時を固定したことで時間の逆行はキャンセルされ、照朝達の勝利が確定。勝利確定演出の音楽もあいまって、最高に昂るシーンだった。
ラストの意味は?
高貴なコルジァさんがちゃんと約束を守ってくれたお陰で照朝に勝利が言い渡され、悪魔の鍵は全て消え去ることに。悪魔も消え、今後二度とアクマゲームが行われることはないと宣言されたのだった。ありがとう、コルジァ。
空に浮かんだカウントダウンが消えていく中、これまでに登場した龍肝、兵頭、毛利、伊達、浅井らドラマに登場した面々がそれを見守っている。世界には少し優しくなった日常が戻ったが、初が死に、AIのおろちは止まってしまっていた。
しかし、照朝の前に現れたのはドラマ第1話でガドに消された丸子だった。照朝は丸子とのアクマゲームで勝利したら「丸子の命をいつでも散らせる権利」を要求していた。しかし、丸子が「負けたら即座に消してもいい」と発言していたことで、丸子が負けた瞬間にその存在が消されてしまっていた。
悪魔の鍵がなくなったことで、アクマゲームによって命を落とした人間は復活することになったようだ。原作コミックで丸子に相当するマルコ・ベルモンドは死んでいないため、最終章で原作設定に回帰したと見ることもできる。なんにせよ良いキャラなので生き返って良かった。
ということで、黒田兄と初も復活。「アクマゲームによって命を落とした人間」という縛りなので、ゲーム後に崩心に撃たれて死んだ織田清司は復活しないのだろう。崩心は悪魔と一体になったので鍵と共に消えたと思いたいが……。
黒田兄は罪を償っていくことを決意。悠季も黒田を殺したという罪悪感に苛まれずに済みそうだ。照朝と初、悠季は三人で一緒にまた新たな道を行くことを決意して『ACMA:GAME アクマゲーム』の物語は幕を閉じる。
エンディングで流れる曲はUVERworld「PHOENIX」だ。
そしてエンドロールの最後にはポストクレジットシーンが待っていた。探検隊のようなグループが、山のような場所で悪魔の鍵を見つけるのだ。全て消されたはずの悪魔の鍵は再び人類のもとに現れたということなのだろうか。今後の展開も示唆して『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム』は本当に幕を閉じる。
『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』ネタバレ感想&考察
続編はある? 原作では?
『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』は、ドラマ版から地続きの作品ではあるが、2時間の中で物語が3部に分かれていたり、ところどころ戦隊モノや仮面ライダーっぽいエンタメ感もあったり、海外の視聴者も含めてより広い層に作品を届けようという意欲が感じられる作品だった。
テーマとしては、世界の紛争や人間の欲望という大きなテーマを扱っているだけに普遍性はあったように思う。一方で、ディズニー『ウィッシュ』(2023) がイスラエル批判を思わせる内容であったように、より具体的なケースを想起させるのが“世界レベル”という見方もできる。曖昧な基準を置いてしまうと、それぞれが主張する正義に回収されてしまう恐れもある。
一方、織田照朝役の間宮祥太朗の演技だけでも2時間見ていられる迫力だった。レギュラー組では間宮祥太朗と古川琴音の演技が素晴らしく、声優陣も流石の演技を見せていた。竜星涼が演じた上杉潜夜は前半は見事な存在感を見せていたものの、原作コミックの流れを踏まえると更にトリックスター的な動きも見てみたかった。
原作コミックのラストは、潜夜が照朝を出し抜く形で幕を閉じる。漫画版は潜夜を主人公としたスピンオフ続編もあり得るような終わり方だったので、実写版で潜夜主人公作品が登場することに期待したい。
映画版は続編がありそうな終わり方だったが、実写版『アクマゲーム』は今後も作られていくのだろうか。『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』の制作は、ドラマの制作と共に決定されていたため、ドラマのヒットを受けて作られたという形ではない。映画『アクマゲーム』の公開までは最初から決まっていた流れであり、あとは本作のヒット次第ということになるのではないだろうか。
実写版では原作漫画の内容はほぼ描き切っている。漫画版はガイドと決着をつけて完結しているが、悪魔と戦い、悪魔の鍵が消え去るというところまで描いた実写版はかなり先(別)のところまで進んでいる状況だ。もし実写版の続編が作られるとすれば完全オリジナルの内容ということになるだろう。
照朝達は戻ってくるのか、『ACMA:GAME アクマゲーム』の今後に注目しよう。
『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』は2024年10月25日(金) より全国の劇場で公開。特別ドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム ワールドエンド』は10月25日(金) 夜9時より日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送。
百舌涼一による『劇場版 ACMA:GAME アクマゲーム 最後の鍵』のノベライズ版は講談社KK文庫から発売中。
原作漫画『ACMA:GAME』は全22巻が発売中。
ドラマ版『ACMA:GAME アクマゲーム』はHuluとAmazonプライムビデオで配信中。
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