『アンブレラ・アカデミー』シーズン4配信開始
NetflixのSFドラマ『アンブレラ・アカデミー』シーズン4が2024年8月8日(木) より配信を開始した。2019年から配信されてきた人気シリーズもシーズン4でフィナーレを迎える。原作コミックを追い抜くペースでドラマが制作されており、ドラマオリジナルの展開に注目が集まっている。
『アンブレラ・アカデミー』シーズン3のラストでは、レジナルド・ハーグリーブスが世界のリセットに成功し、アンブレラ・アカデミーのメンバーは別の世界へと飛ばされた。この時、アカデミーのメンバーの能力は消え去っていたが、シーズン4ではその能力はどうなったのだろうか。今回は、シーズン4で描かれたアンブレラ・アカデミーの能力について解説していこう。
以下の内容は、ドラマ『アンブレラ・アカデミー』シーズン4の内容に関するネタバレを含みます。
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『アンブレラ・アカデミー』シーズン4 能力はどうなった?
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4はシーズン3ラストの6年後が舞台で、アカデミーの面々は能力を失ったまま別の世界で新しい生活を送っていた。ところが、サイ・グロスマンを名乗る人物から誘拐された娘のジェニファーを救ってほしいという依頼を受け、アンブレラ・アカデミーは岐路に立たされる。
ファイブ/5号はジェニファーの荷物の中に、メンバーに能力を与えた物質マリーゴールドが入った瓶を見つける。マリーゴールドはオリジナルの時間軸でレジナルドが世界にまき、それを女性たちが摂取したこと能力を持った子ども達が誕生していた。シーズン4では、アンブレラ・アカデミーはマリーゴールドを飲んで能力を取り戻すのだ。
いや、取り戻すどころの話ではなかった。アンブレラ・アカデミーが飲んだマリーゴールドは、メンバーに新たな能力を付与することになった。その多くは元の能力のパワーアップバージョンだったが、中には謎のパワーも。その新たなスーパーパワーを、ルーサー/1号から順に見ていこう。
アンブレラ・アカデミーの新たな能力
ルーサー/1号
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4におけるルーサー/1号の能力は比較的単純なもので、強靭な肉体を取り戻すというものだった。防御力も上がったようで、シーズン4では兄弟たちの壁となり、背中で無数の銃弾を受け止める姿も見せている。
ルーサーの能力は元に戻っただけのように思えるが、注目したいのは、ルーサーが猿の体まで取り戻していることだ。シーズン4までルーサーの身体が猿のように毛むくじゃらだったのは、生まれつきではない。ルーサーが瀕死の重体を負った時に、レジナルド・ハーグリーブスが治療のために猿の血清を投与したことであの身体を得たのだ。
つまり、猿のような身体とマリーゴールドには元々関係がない。ルーサーが強靭な肉体だけでなく猿の身体まで取り戻してしまった理由として考えられるのは、シーズン4で飲んだマリーゴールドが新たに猿の力をルーサーに与えたというものだ。他のメンバーは能力が強化されるか、別の力が付与されており、ルーサーも強靭な肉体という元のスーパーパワーと、猿の身体という新しい能力を得たのかもしれない。
ディエゴ/2号
ナイフ投げの達人で、投げたナイフを自在にコントロールすることができたディエゴ/2号は、ナイフだけでなく敵が撃った銃弾まで自在に操れる能力を得た。シーズン4の序盤では宅配の仕事をしているディエゴが荷物の封筒を民家に投げ入れて窓ガラスを割ってしまうシーンがあったが、これは投げるものを自在に操れていたディエゴが能力を完全に失ったことを示す演出だった。
敵の銃弾を操るというディエゴの能力は、実は過去のシーズンで披露されている。シーズン2では少数の敵の銃弾をかわして相手に当てていた他、最終話では無数の銃弾をかろうじて止めて狙いを逸らす姿を見せていた。シーズン4では単純にこの能力がパワーアップして“自在に”操れるようになったと見ていいだろう。
アリソン/3号
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4で最も能力がパワーアップしたのは3号ことアリソンかもしれない。アリソンはこれまで、「噂を聞いたの」と囁くことで相手を操ることができた。シーズン3でもパワーアップし、そのフレーズを用いずとも相手を操ることができていたが、シーズン4ではテレキネシス(念力)の力を得ている。
ニュー・グランプソンの戦いでは、アリソンは敵の意識を乗っ取ることができるようになっており、娘と一緒にクラウスを探しに行った際には、目を光らせた後にドアを軽々と蹴破っている。その後のギャングとの戦いでは手を触れることなく椅子を動かしたり、敵を浮かせて壁に押し付けたりしている。さらにアリソンはテレキネシスで相手の“タマ”を潰した後、心臓も潰せると宣言している。
アリソンの能力強化は、マインド・コントロールからテレキネシスへと飛躍したようにも見える。だが、「望んだことを実現する」という意味ではその能力は一貫しているとも言える。
クラウス/4号
クラウス/4号は、アンブレラ・アカデミーのメンバーで唯一自分からマリーゴールドを摂取しなかった。元の能力は霊と会話ができて不死身というものだったが、クラウスは能力を失ったことを喜んでいた。瀕死の怪我を負ったクラウスを助けるためにアリソンがマリーゴールドをクラウスの体内に流し込んだことで、クラウスは新しい能力を得た。
それは、死んだ人物の霊を自分に憑依させるというものだ。さらに最終決戦ではルーサーの腕を掴んで2階へと浮遊している。クラウス自身も「飛べるみたい」とその能力に驚いている。
ちなみにクラウスの能力については、シーズン1の時点でまだ隠された力があるとレジナルドが指摘していた。シーズン2の時点でも兄弟のベンを憑依させることができており、シーズン4ではその可能性が開花したということになる。
ファイブ/5号
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4の中心人物でいて、その能力との向き合い方に最も苦労したのが5号ことファイブだ。これまでのファイブは自在に時間と空間をジャンプすることができた。しかし、シーズン4でマリーゴールドを飲んで能力が復活した後は、この基本能力をうまく使いこなせなくなっている。ジャンプをすると、意図せずマルチバースをつなぐ地下鉄に出るようになってしまったのだ。
ファイブについては、能力を取り戻したメンバーの中では唯一、パワーアップではなく単に能力が変化したと見ることができる。シーズン2では時を巻き戻す力を覚醒させていたが、クラウスとは対照的にファイブはこうした力を取り戻すことはなかった。
その代わり、ファイブはマルチバースの地下鉄に乗って真実に近づいていく。皮肉にも、ジャンプができなくなったことでファイブはゆっくりと流れる時間の中でライラとの絆を深め、別れを経て自分と向き合うことになっていく。ファイブにとってこの時間は、どんなスーパーパワーよりも必要なものだったはずだ。
ベン/2号(スパロー・アカデミー)
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4のベンは、スパロー・アカデミーの2号ことベンである。アンブレラ・アカデミーの6号ことベンと同じく、こちらのベンも身体から触手を出す能力を持っている。マリーゴールドを飲んだ後のベンは、背中から尻尾のような触手が生えるようになっている。
ところがベンもファイブ同様、能力の制御に苦労しており、予期せぬタイミングで触手が出たり、元に戻せなくなったりする。一方で、ジェニファーを救出する際には「スパイダーマン」のドクター・オクトパスのようにこの触手を操れるようになっており、強力な能力であることを見せつけている。シーズン4の最後にベンは怪物に変身するが、これはデュランゴとマリーゴールドが融合したからで、ベンの能力とは直接の関係はないものと思われる。
ヴィクター/7号
7号ことヴィクターは大きく能力を進化させたアンブレラ・アカデミーメンバーの一人だ。オリジナルの能力は音をエネルギーに変換するというもので、制御が難しいためレジナルドからは薬で能力を抑制されていた。元々世界を破滅に導くほどの力を持っていたが、シーズン4でマリーゴールドを飲んだあとは能力が洗練され、エネルギーを制御してビームとして放出できるようになっている。
ちなみにヴィクターのエネルギー波はシーズン3までは青色だったが、シーズン4からはオレンジ色になっている。この色はシーズン2とシーズン3でヴィクターが能力を与えたハーランが発していた色と同じである。ハーランの能力は強力で、かつそれをコントロールできていたため、ヴィクターもシーズン4で同じ領域に足を踏み入れたと見ることができる。
ライラ
『アンブレラ・アカデミー』シーズン4で重要な役割を果たすライラも、アカデミーのメンバーと一緒にマリーゴールドを飲んで能力を取り戻した。しかし、ライラが奇妙なのは、ライラだけは元の能力と新しい能力に何の関係もないように見えることだ。ライラが新たに得た能力は、目からレーザーを放つ能力だったのだ。
ライラは、マーベルの「X-MEN」に登場するサイクロップスことスコット・サマーズのように突如として目からビームが出るようになり、アーサーが再建しようとしていたアンブレラ・アカデミーの館を破壊してしまう。ファイブと同じく、ライラも能力の制御に苦労している。
一方で、他の人の能力をコピーするというライラのオリジナルの能力も戻っており、シーズン4でもファイブのジャンプ能力や、ヴィクターのエネルギー操作をコピーしている。ライラにレーザーという強力で新しい能力が与えられた理由は不明だが、最後までこの力を活用しなかったことには意味がありそうだ。
新能力が持つ意味を考察
ここまで見てきたように、『アンブレラ・アカデミー』シーズン4で登場人物達に付与された新しい能力は、けれど一部のキャラは制御に苦労している。とりわけ、ベン、ファイブ、ライラは能力との付き合い方に苦労し、後者の二人は最後まで能力を使いこなすことができていない。この展開は、三人の心理的な状況も関係していると考えられる。
ベンにとっては、自分の能力を活用して世界を救うよりも、ジェニファーと一緒になることが重要だった。当初能力を使いこなせなかった理由は、その能力の使い道について葛藤があったからではないだろうか。ベンは監禁されたジェニファーを助けるために能力を使いこなせるようになったが、ファイブとライラはそうではなかった。
ファイブの場合は能力が“劣化”し、遠回りを強いられることになる。能力を失ってもCIAのエージェントとして活躍していたファイブだったが、むしろ足を止め、自らの正義について考え直すことを必要としていた。世界を救うためにファイブがやるべきことは、一歩引いて、自分たちが世界を救うという考えを改めることだったのだ。
ライラはディエゴとの結婚生活に刺激を感じられず、新しい冒険を求めていた。故にファイブと一時的に結ばれることになるのだが、その危険な旅路はライラがとどまるべき道ではなかった。だからライラは強力で刺激的で危険なレーザービームという能力を使いこなそうとせず、家族であるヴィクター達と能力をコピーして戦うという道を選んだのではないだろうか。
能力の変化だけでも、考察のしがいがある『アンブレラ・アカデミー』シーズン4。全6話の中でも見どころは満載だ。シーズン1から観返して、キャラクター達の変化と成長を楽しむのもいいだろう。
『アンブレラ・アカデミー』はNetflixで全4シーズンが独占配信中。
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