ネタバレ解説『世にも奇妙な物語』の「BLACK ROOM」ラストの意味は? 木村拓哉主演の名作を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『世にも奇妙な物語』の「BLACK ROOM」ラストの意味は? 木村拓哉主演の名作を考察

© Fuji Television Network, Inc.

2001年に公開された「BLACK ROOM」

「BLACK ROOM」は2001年の正月に放送された『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』の作品の一つで、木村拓哉が主演を務めた。「世にも奇妙な物語」では多くのSF短編が実写化されてきたが、「BLACK ROOM」は中でもSF色が強い作品だ。

「BLACK ROOM」の監督・脚本を担当したのは石井克人で、後に映画『キューティーハニー』(2004) の特別演出や『キル・ビル Vol.1』(2003) のアニメパートの演出などを手がけるようになる。「BLACK ROOM」ではどんな物語が描かれたのか、今回はネタバレありで解説&考察していこう。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『BLACK ROOM』の内容及び結末に関するネタバレを含みます。

『世にも奇妙な物語』「BLACK ROOM」ネタバレ解説

実家の変化

『世にも奇妙な物語』で木村拓哉が主演を務めた「BLACK ROOM」は、アメリカに留学していた湯ノ本ナオキが実家に帰省するところから幕を開ける。ナオキはタクシーを使っており、外の世界に異変はないようだが、かつて実家があった場所は真っ暗になっており、ハッチのような場所から入る作りになっていた。

かつてキッチンだったと思われる空間にはテーブルセットだけがあり、父カズオは退職金で「少し改築した」と話す。母カズコもとぼけており、ナオキは徹底的にツッコミに回ることを余儀なくされる。ほとんど木村拓哉が素でツッコミを入れている感覚で見られるのが「BLACK ROOM」の面白いところだ。

豪華キャストの競演

主人公ナオキを演じる木村拓哉は、2001年の正月に「BLACK ROOM」が放送された時点で、『ロングバケーション』(1996) や『ビューティフルライフ』(2000) を経てドラマスターになっていた。「BLACK ROOM」は『世にも奇妙な物語』の「SMAPの特別編」だが、1999年には「古畑任三郎 vs SMAP」も放送されている。

また、「BLACK ROOM」が放送された1週間後にはドラマ『HERO』の放送が始まっている。バラエティー番組『SMAP×SMAP』(1996-2016) も人気番組になっており、「BLACK ROOM」での木村拓哉の演技も、同番組でのコントを思わせる空気になっている。

なお、木村拓哉は『世にも奇妙な物語』では、1992年から1999年にかけて「言葉のない部屋」「トイレの落書」「パパラッチ」に出演しているが、「BLACK ROOM」が最後の出演作になっている。

マサコを演じた樹木希林は言わずと知れた大俳優だが、2018年に75歳で逝去している。カズオを演じた志賀廣太郎も名脇役として知られるが、2020年に71歳で逝去した。「BLACK ROOM」はほとんどが三人の掛け合いで構成された作品で、木村拓哉、樹木希林、志賀廣太郎という名優が競演を見せる貴重な作品になっている。

妹の謎

明らかに様変わりした実家に対し、ナオキは駅から実家の方に近づくにつれてどんどん電灯がなくなり暗くなっていると指摘する。家だけでなく家までの近所の環境自体が変わったというのだ。

疑問が拭えないナオキだったが、両親からは家のことについては聞かないように言われると共に、妹のマサコの存在を知らされる。町にあった「身寄りがない子どものための施設」について言及されると、ナオキは問題を抱えていたナオキのために両親が養子をもらおうとしていた幼い頃の記憶を思い出す。

父と母の会話を鑑みると、ナオキの母は不妊治療に取り組んでおり、ようやく生まれた子どもがナオキだったようだ。ナオキは妹なんていないと思っていたが、両親がナオキのために養子をもらおうとしていたことを思い出し、それ以上の追求をやめるのだった。

とはいえ、その時養子をもらっていたとすればナオキは妹と一緒に育っているはずだ。ナオキがアメリカに行った間に養子をもらっていたとすれば、その行為はナオキのためとは思えない。実はナオキはこの時点で、今の状況について深入りして欲しくない両親のペースに飲み込まれているのである。

ラストの意味は?

家は父カズオがバイクで移動する広さになっており、時折南極の宇宙人のような映像も挿入され、両親は一日50本のビールを飲んでいるという。謎が増え続ける中、南極に“ガストン”が出現したという報告が入り、ナオキの母は「国際特務機関ユノモト」の「非常勤戦闘員・湯之本マサコ」を自称する。

ナオキが留学している間に湯之本家は国際特務機関となり、危機に対応していたのである。ガストンとは一つ目の巨大なクモのような怪獣で、目からビームを放つ様子も捉えられている。湯之本家、いや国際特務機関ユノモトは戦闘形態に移行してガストンの対応にあたるのだった。

マサコが座っていた椅子はオペレーションを行う司令室になると、ヒーロースーツのようなものを身にまとった妹のマサコが登場。マサコを演じるのは個性は俳優として知られる我修院達也だ。

父カズオもスーツを見にまとうと、二人は巨大ロボに乗って出動。ここでようやく“実家”の全容が明らかになる。ナオキの実家は巨大ロボットを射出するレールガンを含む基地になっていたのである。

突然のSF展開。驚きを隠せないナオキだったが、母マサコは「時期がくればあなたも忙しくなるわよ」と、ナオキもいずれ国際特務機関ユノモトの戦闘員として戦うことになると示唆される。ナオキはそれを受け入れて敬礼し、「BLACK ROOM」は幕を閉じる。

『世にも奇妙な物語』「BLACK ROOM」ネタバレ感想&考察

『エヴァンゲリオン』との類似点と違い

『世にも奇妙な物語』の短編ドラマ「BLACK ROOM」は、多くの謎を散りばめ、最後にSF展開で全てを回収する。本作が公開された2001年は、90年代後半の「エヴァンゲリオン」ブームの後で、同作からの影響も感じられる。登場人物の下の名前がカタカナなのも同作と同じだ。

アニメ『エヴァンゲリオン』(1995-1996) では、主人公シンジは第1話で父ゲンドウから呼び出され、エヴァンゲリオンに乗るよう言い渡される。「BLACK ROOM」も実家に帰ったら両親が怪獣と戦う機関に所属していたという設定になっているが、それが前提の設定ではなくオチになっているのが『エヴァンゲリオン』との違いだ。

そもそも主人公のナオキは、ガストンのような怪獣が出現する世界となっていることを知らなかったようだ。ナオキはガストンの映像が出た時に「なんだあれ、ガストン?」と発言している。

怪獣が出現していることも知らず、実家が基地になっていることも知らなかったナオキは、けれど一家が団結して戦う姿を見て現実を受け入れたのかもしれない。母マサコも「非常勤戦闘員」を名乗っており、この点も父から戦うことを押し付けられる『エヴァンゲリオン』との違いだ。

妹とビールは何だった?

「BLACK ROOM」の謎を考察していくと、妹のマサコは湯之本家に加わったというよりも、戦闘員として国際特務機関ユノモトに加わったのだろう。時折挿入されていた南極を監視している映像はマサコの視点で、ガストンが出現するとマサコは監視室から飛び出している。

両親が大量に飲んでいたビールは謎のままだが、おそらく戦闘員として必要なエネルギーを摂取するための飲料だったと考えられる。ナオキにもこれを飲ませたのは、将来的にナオキが戦いに加わることを期待してのものだろう。

名優たちのコント風の流れから、ラストでのいきなりのSF展開で視聴者に衝撃を与えた「BLACK ROOM」。多くの人の記憶に残る作品である。

『世にも奇妙な物語』公式ページ

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『世にも奇妙な物語』で実写化された星新一「ああ、祖国」の解説はこちらから。

小松左京の「戦争はなかった」も『世にも奇妙な物語」で実写化された。同作の詳細はこちらから。

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