第4の“ギャバン”登場
東映特撮を半世紀の間、牽引してきたスーパー戦隊シリーズ。その後を継いだPROJECT R.E.D.『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』(2026-)のテーマは、感情と合同捜査だ。宇宙で“ギャバン”の名を名乗っていい刑事はただ一人。その一人であるギャバン・インフィニティ/弩城怜慈は様々なコスモレイヤーに赴き、エモルギア事案を解決していく。
現在、登場している“ギャバン”は怒りを代わりに買うギャバン・インフィニティ、哀しみの代弁者ギャバン・ブシドー、謎の解決と犯罪者の更生を喜ぶギャバン・ルミナスの3人だ。そして『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」では、第4の“ギャバン”が登場する。
本記事では、第4の“ギャバン”が登場する『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容は『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」の内容に関するネタバレを含みます。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」ネタバレ解説&考察
多元地球Σ3302(シグマ サンサンマルフタ)
重要施設が建物ごと地底へと消失する怪事件を、エモルギア事案だと考えて介入する弩城怜慈。この多元地球Σ3302は彼の多元地球Α0073(アルファ マルマル ナナサン)と似ているようで、異なる進歩を遂げたコスモレイヤーだった。
それは昆虫と人類というまったく異なる種族による共存関係である。この地球の内閣総理大臣はカブトムシの兜山源三、アリやショウリョウバッタの警察官などが活動しており、今回の事件を担当する捜査官もアリの有本未空朗だ。
多元地球Α0073は宇宙から来た移民たちが多い“宇宙共生時代”に突入したコスモレイヤーとされるが、宇宙人は人類に擬態していた。これでは共生ではなく、同化政策だ。そのような移民たちの容姿を拒み、自分たち好みの容姿にする差別的なものは批判の対象となっており、その後の「移民が増えたことで犯罪者が増えた」という旨のナレーションもあり、共存を本当に描くつもりがあるのか指摘する声も多かった。
それに対して、今回のコスモレイヤーは昆虫たちがありのまま姿で暮らしいるなど、多元地球Α0073よりも進んだものとなっている。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」のテーマは「ありのままの自分でいい」というものだ。
つまり、第1話で問題視された設定を別のコスモレイヤーでは解決されている問題としているのだ。それどころか、「ありのままの自分でいい」というテーマを活かし、「ありのままの自分だからできることがある」「自分の感情を大切にする」というところにまで設定を広げている。これは差別問題に向き合う上でも大事なことだ。
“ギャバン・アーマイゼ”と“コスモギャバリオンWK-2”
多元地球Σ3302の“ギャバン”はアリの有本未空朗だった。確かに、第2話の時点で、人工生命体の哀哭院刹那がギャバン・ブシドーに蒸着している。そのため、ギャバンになるのは人間でなくてもいいことは既に解説されていたのだ。ギャバン・アーマイゼの存在は「誰でも訓練を積み、素質があればギャバンになれる」ことを体現した存在だろう。
また、ギャバン・アーマイゼが相手を投げ飛ばす大技は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のアントマンの戦い方を思わせた。アントマンは原子同士の間隔を縮めて小型化しているので、小さくても質量などを維持することが出来る。そのことから、東映特撮はアメコミヒーローの要素も『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』では取り入れているのかもしれない。
スーパー戦隊シリーズで一時期、東映はマーベルと提携していたこともあった。そのため、ある意味ではギャバン・アーマイゼのアントマン的な戦い方は、先祖返りと呼べるかもしれない。
ギャバン・アーマイゼに現場を託し、主犯の大地深治が操縦する超採掘ドリルマシン・グランドアースを止めに向かうギャバン・インフィニティ。この超採掘ドリルマシン・グランドアースはよく見ると、『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006)のゴーゴービークルNo.6であるゴーゴードリルの模型を改造しているものである。
大地深治の地下迷路を攻略するため、コスモギャバリオンは黄色のドリルユニット“ギャバリオンドリル”と“シリタインダーWK-2”と合体し、“コスモギャバリオンWK-2”になる。そして、“地底戦車”同士の戦いが始まるのだった。“ギャバリオンセイバー”と“オンニキール10Q”は多元地球Α0073の装備だったが、こちらは多元地球Σ3302の装備だった。
コスモレイヤーごとにエモルギアや魔空空間に関する理解度に差があることは、これまでの記事で述べたが、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」で描かれる多元地球Σ3302は、エモルギアを研究し、それにより警察装備品の開発が進むなど、エモルギアの理解が進んでいるコスモレイヤーであることが考察できる。
また、黄色の地底戦車という設定から、“ギャバリオンドリル”と“シリタインダーWK-2”は『サンダーバード』(1965-1966)のジェットモグラがモデルになっていると思われる。巨大怪獣エモンズ・タマシーとコスモギャバリオン10Qとの戦いでも述べたが、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』は特撮の集大成を目指しており、それは日本特撮ではとどまらず、イギリス特撮も入っていると考察できる。
巨大怪獣エモンズ・タマシーvsギャバリオン10Qは「モンスターハンター」シリーズを思わせる尻尾切断などの部位破壊があったが、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」は往年の特撮で頻繁に登場したドリルが先端に着いた地底戦車を強調した展開となっている。敵が20年前の地底戦車であるゴーゴードリルを改造したものなのを踏まえると、1960年代と2000年代の特撮を現代風にリフォーマットしたと考察できる。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」ネタバレ感想
虫に関する差別表現
今回の怪事件の犯人である大地深治は、過去に有本未空朗によって逮捕された人物であり、すべては有本未空朗への復讐だった。興味深いのは、大地深治が有本未空朗を罵る際、「アリンコ」「虫けら」など、虫に関する表現を中心に用いていることである。
これはおそらく、昆虫と共存する多元地球Σ3302において、これらの表現は差別発言にあたるため、彼は敢えてこの言葉を選んでいるのだろう。コスモレイヤーが変われば、差別の形も変わる。特にこのコスモレイヤーは昆虫との共存が進んだ宇宙であるため、昆虫に関する表現はセンシティブなものになっていると考えられる。
このような演出は多様性により、表現の幅が狭まったと叫ぶ人々に対して、実際は昔からその表現で傷ついている人々がいたということを表しているのかもしれない。事実、もし昆虫が言葉を話したとすれば、虫を罵倒の表現として用いていることに傷ついていると声をあげるだろう。これは単に多様性をテーマにしたのではなく、その先の多様性の難しさを描いると思われる。
これは表現の幅が狭まったというより、昆虫視点に立てば長年自分たちを苦しめた問題に対する正当な抗議だ。注意すべきは弩城怜慈も有本未空朗に対して、「任せるって言ったって、アリだろう?」と言い、“ギャバン”に蒸着するのは人間の羽村翔子だと勘違いしている点だ。これは差別問題に対し、「ギャバン=人間」という視聴者のイメージを逆手に取ったうまい表現だ。
犯罪者の暴言などに長年向き合ってきたベテラン捜査官の有本未空朗だから流してくれたが、実際はこの発言は差別と取られてもおかしくない。このことから、無意識のうちに他者を傷つける発言をしてしまうことを汲み取ることができる。そのような現実とどう向き合うのかを『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」は描いていると考察できる。
「ありのままの自分でいい」
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」のテーマは「ありのままの自分でいい」ということだった。弩城怜慈の言葉を受け、新人捜査官の羽村翔子は“ギャバリオンドリル”と“シリタインダーWK-2”を現場に出すことを決意する。
ベテラン捜査官の有本未空朗も、ありのままの自分を活かして羽村翔子に成長してほしいと考えているなどメンターとして、本当の自分の感情を大事にしてほしいと思っていた。また、ギャバン・アーマイゼはギャバリオンブレードが羽根として装備されるなど、備品などからも「ありのままの自分でいい」ということを読み取れるエピソードだった。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」を通して、制作陣は第1話で描かれているのは共存ではなく管理された共存ではないかという矛盾について、別のコスモレイヤーで答えを出したと考察できる。
ベテラン捜査官の有本未空朗の眼差しを通して、同化政策に近い状況に対して「ありのままの自分でいい」「誰でも正義のヒーローになれる」という一つの答えのだ。大事なのはそのときの自分の感情を大切にすることなのだ。
今回は自分の感情を大切にすることで成長できることを描いたが、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第5話「刀と銃弾」では、その後の多元地球Λ8018が描かれる。鴉麿逮捕以降も進まない捜査とその最中でも密売が横行する歯がゆさを描いている。
東映特撮は犯人逮捕して勧善懲悪で終わりというフェーズから、その後の人権を守る制度の重要性と、それによって組織犯罪の取り締まりが遅れるという制度の矛盾を描くフェーズに入っている。ヒーローでありながら、犯罪が起きていても待機命令が出ていれば出動できない“ギャバン”ならではの葛藤。刑事ものゆえの悩みを描く『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』の今後に注目したい。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」は2026年3月8日9:30より放送開始
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」のネタバレ解説&考察はこちらから。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第2話「二つの刃」のネタバレ解説&考察はこちらから。
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