ネタバレ解説 アイアンハートはどう描かれた?『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』リリ役ドミニク・ソーンが今後を語る | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説 アイアンハートはどう描かれた?『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』リリ役ドミニク・ソーンが今後を語る

© 2022 Marvel

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』リリに注目

MCU映画第30作目となる『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が2022年11月11日(金) より公開。2022年に逝去した故チャドウィック・ボーズマンへの追悼作でもある本作だが、同時に今後のMCUを背負っていく重要な新キャラクターも紹介されている。

中でも作中では貴重なアメリカ合衆国からの新キャラとして存在感を発揮したのがアイアンハートことリリ・ウィリアムズだ。リリを演じたのはドミニク・ソーン。MCUでモニカ・ランボーを演じるテヨナ・パリスも出演した『ビール・ストリートの恋人たち』(2018)、『ブラックパンサー』(2018) でウカビ役を演じたダニエル・カルーヤ主演の『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(2021) への出演で知られる。

ドミニク・ソーンは、2023年秋にDisney+で配信予定のドラマ『アイアンハート(原題:ironheart)』で再びアイアンハートことリリ・ウィリアムズを演じることが決定している。『ワカンダ・フォーエバー』で描かれた物語を経て、リリはどんな風に描かれていくことになるのだろうか。本作での描かれ方と製作陣のコメント、ドミニク・ソーンの発言をチェックしてみよう。

以下の内容は映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の内容に関するネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の内容に関するネタバレを含みます。

アイアンハートはどう描かれた?

アイアンハート誕生まで

映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』では、リリ・ウィリアムズはヴィブラニウム探知機を開発したMIT(マサチューセッツ工科大学)に通う学生として登場。ヴィブラニウムは金属探知機に反応しない素材であり、これは世紀の発明だ。リリはボストン出身の19歳で、公式では「シュリに匹敵する頭脳を持つ」と紹介されている。

『ワカンダ・フォーエバー』では、同級生の課題をやる代わりに700ドルという高額報酬を受け取り、ガレージで研究開発を行う姿を見せている。タロカンやワカンダを危機に陥れるヴィブラニウム探知機の発明は授業の課題で作っただけで、CIAによって悪用されていたというのが実際のところだった。

ネイモアの要請で身柄確保に来たプリンセス・シュリに一目で気が付いたリリだが、その後、データを持っていくためにガレージへ。ヴィブラニウム探知機の開発をノートパソコンだけで完遂させたといい、天才ぶりを見せている。このガレージにはリリが継父から受け継いだ古い車も置かれている。

ガレージにFBIが到着すると、リリはアイアンハートのスーツを披露。数年をかけて完成させたと話し、アイアンハートの目撃映像を特集するYouTubeチャンネルの存在を紹介している。その姿を見たFBIのメンバーからは「アイアンマンスーツだ」と言われているが、この時のアイアンハートスーツは、配線も剥き出しの最低限の装備になっている。マスクもなく、イヤーマフ(耳当て)にゴーグルを付けているだけだ。

そんな装備でFBIのドローンに対峙したリリは、酸素がなくなるまで高度を上げてドローンを撃退。これは映画『アイアンマン』(2008) でトニー・ストークがアイアンモンガーになったオバディアを高高度まで上昇させて氷結させた展開のオマージュだろう。トニーはエネルギーを失って落下していくが、リリは酸素不足で意識を失って落下していく。

ワカンダ製のアイアンハート

その後、一行はタロカン人に襲撃され、リリは一時タロカンに監禁されている。現時点でタロカンに足を踏み入れた唯一のアメリカ人ということになる。リリはナキアの救出によってワカンダで保護されるが、リリを狙うタロカンがワカンダを襲撃し、リリを助けたラモンダは殺されてしまう。このストーリーラインは、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013) でソーの母フリッガがジェーン・フォスターを守った展開とよく似ている。

自身が開発した技術によってワカンダとタロカンの戦争に巻き込まれたリリ。シュリの助けを借りてフルバージョンのアイアンスーツを開発し、ワカンダの重要な戦力としてタロカンと戦う。このスーツはアイアンマンと同じ赤色が使用されている。

活躍を見せたリリだが、戦争の終結後、シュリはリリにワカンダで開発したスーツをアメリカに持ち帰らせることはしなかった。ここで作られたアイアンハートのスーツは戦争を戦う兵器だ。一方で、ワカンダ王国はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) ではサム・ウィルソンにキャプテン・アメリカのスーツを提供しているし、バッキーのサイバネティック・アームも所有を許している。ワカンダのスーツは門外不出ということではなく、リリの状況を鑑みての判断だったのだろう。

気になる“継父”

また、シュリはFBIに追われる時に横転したリリの継父の車をピカピカに修理して返している。リリは継父が自身にとって大切な存在であることを示唆しており、ドラマ『アイアンハート』でも重要な要素になるだろう。原作コミックではリリの継父はどんな日でも「今日はいい日だ」と言ってくれる良き父であり、その死がリリにとって大きな転機となる。

原作コミックではリリが目指すヒーロー像は幼い頃の継父の記憶に基づいており、MCU版でもこの設定が引き継がれるのかどうかに注目したい。何度も喪失を経験し、それに向き合ったシュリとの出会いが今後のリリにとってターニングポイントになるのかもしれない。

アイアンハートはどうなる?

製作陣が語るリリ・ウィリアムズ

そんなアイアンハートことリリ・ウィリアムズを演じた俳優のドミニク・ソーンは、実は前作『ブラックパンサー』でオーディションを受けていたのだという。米マーベル公式によると、結局シュリ役はレティーシャ・ライトが演じることになったが、製作陣の頭の中にはドミニク・ソーンの存在が残っていたという。

そして、リリ・ウィリアムズのキャスティングを行なうにあたり、プロデューサーのネイト・ムーアをはじめとする制作チームは、リリ役に起用する俳優はドミニク・ソーンしか頭になかったという。リリ役のオファーがマーベル・スタジオからドミニク・ソーンへの唯一の電話であり、前回のオーディションから2年が経過していたという。ムーアはソーンについて「本当に聡明」「ドラマとコメディの両方を演じられる」と称賛している。

ネイト・ムーアは、シュリは同じ才能を持つ黒人の若い女性であるリリの中に自分との共通点を見出したと説明している。不思議な縁を持つ次世代の二人が、今後のMCUを担っていくことは間違いないだろう。「ブラックパンサー」シリーズを手掛けるライアン・クーグラー監督は、MCUのリリ・ウィリアムズについて、以下のように語っている。

リリの才能は非常に特化したものだと言えます。機械やロボット、速く動くものを作らせれば世界一の人物です。彼女は最初、自動車の整備工場を利用したラボで作業をしています。彼女は継父と一緒に自動車を整備していて、大きくて力強い内燃機関(エンジン)を作っていたことが分かります。

プロデューサーのネイト・ムーアは、リリとシュリの関係についてこう語る。

リリ・ウィリアムズは、コミック版では悲しみとトラウマを持つ魅力的なキャラクターです。この二人のキャラクター(シュリとリリ)には親和性があり、それがすぐに明らかになったので、私たちとしても仕事がやりやすかったですよ。シュリが憧れるくらい野心的な人を見つけられたら本当に面白くなると思ったんです。二人のライバル関係と親密さの両方が、この映画とMCU自体にも作用すると思います。

原作コミックではアイアンマンことトニー・スタークがメンターになり、初期の活動を支えたが、やはりMCUのリリにとってはシュリが特別な存在となっていきそうだ。

『アイアンハート』でリリはどう描かれる?

では、今後リリ・ウィリアムズはどのように描かれていくのだろうか。演じたドミニク・ソーンは、米Varietyで、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で描かれたリリと、今後『アイアンハート』で描かれる側面について話している。

この映画は、彼女が何者なのかという点について、一つの側面をうまく見せることができています。時にハスラーであり、ちょっといじめっ子だったり、かと思えば怖がりだったり、彼女の中に存在するさまざまな表情を見ることができます。しかし、(本作では)彼女は主に混乱した状況に置かれています。彼女自身の世界ではなく、彼女にとって居心地の良い場所とは真逆の状況です。私たちが見るリリは、戦うか逃げるかというモードなんです。

見る人にとっては、『アイアンハート』の前の良い機会になると思います。なぜなら、『アイアンハート』では彼女の本当の姿が見れるからです。背景に戦争がない状態のね。彼女が日常生活においてどのような人物であるかを知れるだけでなく、そもそも彼女をこのような状況に追い込んだ原因であるその才能についても知ることができるでしょう。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』と共に幕を開けたアイアンハートとリリ・ウィリアムズの物語。アイアンマンとトニー・スタークの要素がどのように取り入れられるのかにも注目だ。

また、ウォーマシンことローディ・ローズが主人公となり「トニー・スタークの技術が悪の手に渡ったら?」という物語が描かれる映画『アーマー・ウォーズ(原題:Armor Wars)』にもアイアンハートは絡むことになるだろう。アイアンハートがMCUの各作品を自由に飛び回る姿に期待しよう。

映画『アイアンハート(原題:Ironheart)』はDisney+で2023年秋配信予定。

映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日(金)より劇場公開。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』公式サイト

リリ・ウィリアムズが主人公に据えられたコミック『インビンシブル・アイアンマン:アイアンハート』は 吉川悠による日本語訳版が発売中。

Source
Marvel.com / Variety

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のサントラは配信中。CDは11月18日発売で予約受付中。

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アナログレコード版は2023年2月3日(金)発売予定で予約受付中。

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シュリがブラックパンサーになる原作コミック『ブラックパンサー:黒豹を継ぐ者』は中沢俊介による翻訳が発売中。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ラストのネタバレ解説はこちらから。

シュリがブラックパンサーになった経緯と製作陣&俳優が語る裏側はこちらの記事で。

ネイモアの過去とタロカンの歴史についての解説はこちらの記事で。

ヴァルとサンダーボルツの今後についての考察はこちらから。

エムバクはワカンダの王になったのか、演じたウィンストン・デュークが明かした答えはちらの記事で。

製作陣の音楽へのこだわりについてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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