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ネタバレ解説&考察 最新情報と観る『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』オビ=ワンはなぜ…?

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最新情報と観る『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』

1977年に公開された映画『スター・ウォーズ』は、後に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』と改題され、長い長い歴史を紡ぐ人気シリーズの第1弾となった。2012年にはウォルト・ディズニー社が「スター・ウォーズ」を製作してきたルーカスフィルムを買収。映画は続三部作が制作され、『マンダロリアン』(2019-) を始めとする配信ドラマシリーズも開幕した。

配信作品では、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022) やアニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(2021-2024) で帝国時代の新たな物語も描かれた。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の公開から半世紀が経とうとしている今、改めて本作で起きている出来事の背景を解説してみよう。

なお、以下の内容は「スター・ウォーズ」の映画・ドラマ・アニメシリーズの重大なネタバレを含むため、ご注意を。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の内容及び結末に関するネタバレを含みます。

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』ネタバレ解説

『ローグ・ワン』から繋がる物語

「スター・ウォーズ」といえば冒頭の「遠い昔、はるかかなたの銀河系で…」というイントロ。「銀河系で」は英語で「in a galaxy」と表記されるが、2023年に配信されたドラマ『スター・ウォーズ:アソーカ』シーズン1では別の銀河が登場。「in a galaxy=一つの銀河で」の物語が前提だった「スター・ウォーズ」も、新しいフェーズに突入している。

オープニングクロールでは、反乱軍が帝国に対して隠された基地から奇襲を仕掛け、初めて勝利を収め、反乱軍のスパイが帝国軍の究極兵器の設計図を盗むことに成功したと紹介される。この戦いを映画化したのが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) だ。

帝国が究極兵器デス・スターを完成させた一方で、反乱同盟はデス・スターの設計図を盗み出すことに成功した。『エピソード4』のオープニングクロールで触れられる「反乱軍のスパイ」というのは、英語では「spies」と複数形になっており、キャシアン・アンドーとジン・アーソを中心とした部隊、ローグ・ワンのことだと分かる。

映画『ローグ・ワン』に登場した反乱軍のキャシアン・アンドーを主人公にしたドラマ『キャシアン・アンドー』(2022-) は、シーズン2が4月23日(水)よりディズニープラスで配信されている。『ローグ・ワン』は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』に直接つながる作品だが、『キャシアン・アンドー』シーズン2は『ローグ・ワン』に直接つながるとされている。

追ってくるダース・ベイダー

『ローグ・ワン』のラストでは、デス・スターの設計図はレイア姫の手に渡った。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の冒頭では、レイアが「故郷(home)」に向かっているとされているが、実際にはレイアはオビ=ワン・ケノービがいるタトゥイーンを経由して故郷のオルデランに向かおうとしている。

というのも、『ローグ・ワン』ではレイアの育ての父ベイル・オーガナが旧友であるオビ=ワン・ケノービの力を借りようと、レイアをケノービの元に送っていたからである。ちなみにレイアはこの時点で惑星オルデランの王女であり、最年少の帝国元老院議員になっている。同じく元老院議員の父ベイルやモン・モスマ議員と共に反帝国の活動に取り組んでいる。

レイアが乗る反乱同盟の船〈タナヴィーIV〉は、『ローグ・ワン』ラストの展開から地続きでダース・ベイダーが乗るデヴァステーターに追われている。レイアとルーク・スカイウォーカーは後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの双子の子どもだが、この時点でダース・ベイダーは自分に双子の子どもがいることを知らない。

『エピソード4』の19年前を舞台にした映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) では、アナキンが暗黒面に落ちる一方で、ルークとレイアを産んだパドメは子どもを産む前に死んだと偽装された。それから22年間、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980) までダース・ベイダーは自分の子供の存在を知らなかったものと思われる。

帝国軍が迫る中、C-3POは「お嬢様も今度は逃げ切れないぞ」と言っているが、「今度は (this time)」と言っているのは、『ローグ・ワン』で一度は逃げることに成功したからだろう。船内にはストーム・トルーパーが登場する。

新三部作で活躍したクローン兵のクローン・トルーパーが人間のストーム・トルーパーに置き換えられた経緯は、アニメ『バッド・バッチ』で描かれた。主な理由は予算削減のためで、『エピソード4』の18年前にクローン兵が廃止され、人間の徴兵制が敷かれることになった。皇帝が作った表向きな理由は、帝国士官の行き過ぎた命令にクローン兵が盲従したためということになっている。

レイアは捕まることを見越してデス・スターの設計図とオビ=ワンへのメッセージをR2-D2に授け、R2-D2とC-3POは脱出ポッドでオビ=ワンの待つタトゥイーンへ。それに気づいたダース・ベイダーはテキパキと指示を出しているが、中身が闇堕ちアナキンだと思って見ると、立派な上司になっていて微笑ましくすらある。

また、レイアは初登場時からブラスターを使いこなしているが、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』では、9年前のレイアはオビ=ワンとレイアを助けて帝国と戦ったターラ・デュリスのホルスターを受け取っている。その経験はレイアがブラスターを好むようになったきっかけの一つだと考えられる。

オビ=ワンとオーウェン、レイアとの距離感

タトゥイーンでジャワに捕えられたR2-D2とC-3PO。ルーク・スカイウォーカーは当初、R2-D2ではなく「赤いの」ことR5-D4をジャワから購入しようとするが、R5-D4が気を利かせて故障しているフリをする。そうしてデス・スターの設計図を隠れジェダイに届けるというR2-D2の任務は達成されることになった。

実は重要な仕事を果たしていたR5-D4だが、ドラマ『マンダロリアン』ではタトゥイーンで宇宙船の格納庫と修理屋を営むペリ・モットーのもとにいることが明らかになった。『マンダロリアン』シーズン3ではマンダロリアンのディン・ジャリンとベイビー・ヨーダことグローグーの惑星マンダロアへの冒険にも同行した。

ルーク・スカイウォーカーが家で遊んでいるおもちゃはT-16スカイホッパーの模型。ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』では、オビ=ワンからルークに贈られたものであることが明らかになっている。オビ=ワンが一生懸命働いたお金でジャワから購入したものだ。

『エピソード4』の9年前を舞台にした『オビ=ワン・ケノービ』では、当初オビ=ワンはT-16スカイホッパーの模型をルークにあげようとしてルークの家の前に置いて帰っていた。しかし、ルークの里親でアナキンの義兄弟であるオーウェン・ラーズに「あの子に近づくな」と言われ突き返されていた。

オビ=ワンはルークにジェダイの訓練を与えないととオーウェンを説得しようとしたが、オーウェンはルークをアナキンのようにしたくなかったのだろう、「彼の父のように?」と皮肉っている。結局、『オビ=ワン・ケノービ』ではルークが尋問官のリーヴァに命を狙われ、オビ=ワンがこれを助けたことでオビ=ワンはオーウェンにルークとの面会を許可され、T-16スカイホッパーを持ってルークを訪ねている。

そして、R2-D2からレイアの「助けてオビ=ワン・ケノービ」のホログラムが起動。ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』では、9年前のオビ=ワンとレイアの冒険が描かれ、最後にオビ=ワンはいつか力を貸すと約束しつつ、「人に知られたら危険だ」と、二人の関係を伏せるよう忠告した。

だから『エピソード4』のレイアのメッセージでは、『オビ=ワン・ケノービ』での二人の冒険を無視して、頼った理由を「クローン戦争であなたは父に仕えてくれました」としている。オビ=ワンとの冒険をひた隠しにしたレイアだったが、オビ=ワンが死に、帝国が滅んだ後には当初オビ=ワンがレイアに名乗っていた「ベン」という名を自分の息子(後のカイロ・レン)に付けている。

『オビ=ワン・ケノービ』の脚本家ジョビー・ハロルドは、『オビ=ワン・ケノービ』の物語を経れば「『助けて、オビ=ワン・ケノービ。あなただけが頼りです』という言葉は、二人が共に歩んだ歴史の深さを知ると、単なる気まぐれな選択ではなかったということが分かります」と話し、ベン・ソロの名付け親がレイアであったことも明かしている。

ベン・ケノービはというと、ルークからは「変な老人」、オーウェンからは「変人」と呼ばれている。これも『オビ=ワン・ケノービ』を観ればよく分かるのだが、オビ=ワンはオーウェンの家の近くの洞窟に住み、双眼鏡でルークの生活を見守る日々を過ごしている。19年も。

オビ=ワンを捜しに出かけたR2-D2を追ったルークはサンド・ピープルことタスケン・レーダーに捕まるが、これを助けたのはベン・ケノービだった。タスケン・レーダーは新三部作においてもアナキンの母シミを殺した野蛮な種族として描かれていたが、ドラマ『マンダロリアン』ではマンダロリアンと共闘し、ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) ではボバ・フェットを部族の一員に迎えた。

オビ=ワンの名言「Hello there(日本語吹き替えでは『もう大丈夫だぞ』)」が飛び出した後、R2-D2がオビ=ワン・ケノービを捜していると聞いたオビ=ワンは、それでも「こんなドロイドを持った覚えはない」ととぼけている。

R2-D2&C-3POとオビ=ワンは、アナキンと共に銀河を冒険した仲だ。それでもオビ=ワンが微妙に白を切っているのは、まだルークに全てを話していい時かどうかを見定めていたからだろう。レイアがオビ=ワンとの関係を微妙に伏せているのと同じニュアンスだと考えられる。

なぜルークの父は「死んだ」のか

R2-D2の登場をきっかけとして、オビ=ワンはルークに父アナキンのライトセーバーを渡す。この時、オビ=ワンはルークの父について、自分の弟子だったダース・ベイダーが殺したと話す。ルークの父アナキンとダース・ベイダーは同じ人物だが、ここでの表現についてもドラマ『オビ=ワン・ケノービ』で説明がつく描写がある。

『オビ=ワン・ケノービ』で10年ぶりにオビ=ワンと対峙したダース・ベイダーは、アナキンを殺したのはオビ=ワンではなくダース・ベイダー自身だと宣言した。オビ=ワンのせいではないとも話しており、あくまで自分の意志なのだと告げたのである。

それだけではない。アニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2020) のシーズン2では、ダース・ベイダーはかつての弟子であるアソーカ・タノと再会。この時も「アナキンは死んだ」「私が葬った」と語っている。

ダース・ベイダーは、『エピソード3』の10年後にかつての師匠オビ=ワンに14年後にかつての弟子アソーカにアナキンを殺したのは自分だと伝えていた。だから、アナキンは後に自分の意思でジェダイとして帰還を果たすことになる。『エピソード4』でオビ=ワンがダース・ベイダーについて、ルークの父を殺した人物だと説明した背景には、ダース・ベイダー自身の意見を尊重するオビ=ワンの意図があったとも言える。

会議で立ちっぱなしのダース・ベイダー

反乱運動を支援するベイル・オーガナが待つオルデランへの旅に誘われたルークだが、家のことがあると言って消極的な態度を見せる。革命に身を投じるのは簡単なことではない。反乱の時代を生きる市井の人々の群像劇でもあるドラマ『キャシアン・アンドー』でも描かれるコンセプトだ。

帝国の方はというと、皇帝パルパティーンが元老院の解散を宣言。『バッド・バッチ』や『キャシアン・アンドー』では元老院議会が独裁にブレーキをかけようとする様子も描かれたが、これで一気に独裁が加速することになる。それにしても、厄介になった議会を解散する首長とは、日本の地域政治にも通じる展開だ。

デス・スターでの会議に登場したターキン提督は、恐怖による支配を進めると語る。会議で唯一立ちっぱなしのダース・ベイダーは、帝国軍の中では偉いというわけではなく、皇帝のシスとしての弟子であり右腕という立場だ。現場に出て戦うことも多く、その見た目もあってちょっと浮いている。米政権におけるイーロン・マスクのような存在なのだろうか。

そもそもパルパティーンは帝国内で複数のプロジェクトを走らせており、各部署は縦割りで帝国内でも秘密主義を貫いていた。アニメ『バッド・バッチ』では、科学部門でパルパティーンのクローンを生み出す計画が進められ、ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2では保安局のオーソン・クレニックを中心としたエネルギー自給計画が進められている。

ストーム・トルーパー導入はターキンを大元としてエドモン・ランパート中将が指揮した。フォースを操れる尋問官たちはダース・ベイダーの直属の部下のような扱いでジェダイ狩りを進めていた。そして、星を破壊できる超兵器、デス・スターの計画はターキン総督の管轄にある。

ダース・ベイダーはデス・スターもフォースの力には敵わないと言い張る。「設計図の一つも奪い返せないくせに」というモッティ提督の正論に耐えられなくなったダース・ベイダーはフォースで首を絞めるフォース・チョーキングを披露。イーロン・マスクと閣僚が罵倒しあっているという今の米政権もこんな感じなのだろう。

「ケッセルまで12パーセク」の意味

脱出ポッドで逃げたR2-D2とC-3POを追ってきた帝国軍によってルークは養父オーウェンと養母ベルーが殺され、ルークはジェダイになることを決心。宇宙港の酒場でルークに絡むのは『ローグ・ワン』でもジンに絡んできたドクター・エヴァザンとポンダ・バーバだ。

酒場では、利き腕のパイロットとしてハン・ソロとチューバッカが登場。ソロが操るミレニアム・ファルコンは、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018) でランド・カルリジアンとの賭けに勝利して手に入れたものだ。

ソロは「ケッセルまで12パーセクでいける」と話しているが、パーセクとは天文学の距離の単位で、『ハン・ソロ』では20パーセクかかると言われていたケッセルまでのルートを、ソロが12パーセクで飛んだ姿が描かれた。同作のラストでは犯罪王が仕事を用意しているとしてソロはタトゥイーンに向かっており、『エピソード4』ではソロはジャバ・ザ・ハットの下で働いている。

ルーク達がミレニアム・ファルコンでタトゥイーンを離れた頃、デス・スターはレイアの故郷オルデランに到着。ターキンは反乱同盟の秘密基地について黙秘を続けてきたレイアに対し、オルデランを人質に取る。ターキンは既に『ローグ・ワン』で惑星スカリフをスーパーレーザーで消滅させている。

ここでレイアは秘密基地の場所を「ダントゥイン」だと答えるが、いずれにしてもターキンはデス・スターでオルデランを破壊するのだった。ちなみにダントゥインの基地は既に放棄されており、反乱同盟の新たな拠点はヤヴィン4にある。

このシーンでレイアは「締めつけるほど反乱は広がる」と主張しているが、ドラマ『キャシアン・アンドー』でも、「支配は不自然であり、専制は普段の努力を要する」という反乱のマニフェストが紹介されている。支配のあるところに反乱は生まれるのだ。

オビ=ワンとダース・ベイダー、9年ぶりの再会

一方、オビ=ワンはルークにジェダイの目隠し訓練を施している。『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) ではレイが、ドラマ『アソーカ』ではサビーヌが目隠しをしての訓練に取り組んでいる。

先ほどまでオルデランがあった場所に到着したミレニアム・ファルコンは、その惑星を消し去ったデス・スターに牽引ビームで吸い込まれてしまう。ここでオビ=ワン・ケノービとダース・ベイダーは再会を果たすことになる。

牽引ビームの動力を切る任務にオビ=ワンが一人で出向くことを決めたのは、オビ=ワンがアナキン/ダース・ベイダーとの決着をつけるためだ。ダース・ベイダーの方もオビ=ワンのフォースを感じ取っている。

ターキンがジェダイは全員死んだはずと言っているのは、クローン兵によるジェダイ殲滅プログラムが作動したオーダー66の後、尋問官によるジェダイ狩りが進められたためだ。しかし、帝国時代に生き残っていたジェダイは、オビ=ワンの他にもヨーダ、カル・ケスティス、ケイナン・ジャラス、グンジーなどが存在している。ジェダイ聖堂から逃げたグローグーと、それを助けたカレラン・ベクもおり、ターキンには全然情報が入っていなかったことが分かる。

ダース・ベイダーもまたかつての師であるオビ=ワンの意図を汲み取り、一人でオビ=ワンと対峙することに。描かれているストーリーの中では『オビ=ワン・ケノービ』以来、9年ぶりの再会ということになる。

ただし、新三部作でアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンは、2025年4月に日本で開催されたスター・ウォーズ セレブレーションにて、今後ダース・ベイダーを再演したいという意向を示した。歳を重ねたヘイデン・クリステンセンが帝国時代のダース・ベイダーを再演するとすれば、この空白の9年でオビ=ワンとダース・ベイダーの絡みも描かれる可能性はある。

オビ=ワンと対峙したダース・ベイダーは、「かつては自分が弟子だったが、今では自分がマスターだ」と宣言。英語では「When I left you, I was but the learner. Now I am the master.(最後に会った時、私は弟子だったが、今は私がマスターだ)」と言っている。

このセリフの「最後に会った時」は、映画『エピソード3』でオビ=ワンがアナキンを倒した時のことだと思われていたが、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』ではその10年後、『エピソード4』の9年前に二人が会っていたことが明かされた。そのシーンではダース・ベイダーはオビ=ワンのことを「マスター」と呼んでおり、9年前の時点でダース・ベイダーはオビ=ワンを“マスター”と認識していたことが示されている。しかも9年後には「あの時の私は弟子だった」と認めているのである。

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の戦いでは、ダース・ベーダーはオビ=ワンに「力が衰えたな」と言い放つ。しかし、その9年前に『オビ=ワン・ケノービ』で戦った際には、オビ=ワンが序盤でフォースの力を失っていたこともあり、「力が戻ったようだな」とオビ=ワンを評価している。オビ=ワンは力を失い、その後力は戻ったが、その戻った力も衰えた、というプロセスが垣間見えるし、ダース・ベイダーがオビ=ワンの19年間を把握しているというのも熱い展開だ。

また、英語では、オビ=ワンはダース・ベイダーのことをアナキンではなく「ダース」と呼んでいる。『オビ=ワン・ケノービ』では当初「アナキン」と呼んでいたが、ダース・ベイダーから「アナキンは死んだ」と告げられ、オビ=ワンは最後に「ダース」と呼んでいる。「アナキン」呼びから「ダース」呼びに切り替わったのは、『エピソード4』の9年前の再会がきっかけだったのだ。

ダース・ベイダーはオビ=ワンに「殺されに戻ったか」と聞くが、おそらくその通りで、オビ=ワンはルークが逃げるまでの時間稼ぎのためにダース・ベイダーと戦っていたのだろう。オビ=ワンはルークがレイアを連れている様子を見ると戦うのをやめて、自らダース・ベイダーに斬られるのだった。

オビ=ワンの行動の意味

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』では、アナキンに執着するオビ=ワンの姿が描かれた。ルークを見つめるオビ=ワンの視線には、アナキンの影があったことは確かだ。だが、同作ではオビ=ワンは最後にルークとレイアという次世代のために戦うことを決める。

そして、アナキン/ダース・ベイダーには謝罪の言葉を伝え、ダース・ベイダーもオビ=ワンのせいではなく自分で選んだ道だと応えた。だからオビ=ワンはアナキンに別れを告げた。そして、『エピソード4』のオビ=ワンは、アナキンを取り戻したいというエゴではなく、ルークとレイアという“新たなる希望”を未来に繋げる任務を達成して、ダース・ベイダーとの最後の戦いを終わらせたのである。

ルーク、ハン・ソロ、チューバッカは捕えられていたレイアを救出していた。レイアが「ベン・ケノービ」の名前を聞いて「ベン・ケノービ!?」と驚く姿は、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』で育まれた二人の間の信頼関係を思うと、グッとくるシーンになっている。9年の時を経てもベンは約束通りレイアを助けに来てくれたのだ。

出会った時は仲が悪かったハン・ソロとレイアだが、ハン・ソロはレイアの気の強さに惹かれ始めている。後に二人は結婚してベン・ソロを育て、ルークはベンをジェダイの弟子にとることになる(そして、ベン・ソロは闇堕ちしてハン・ソロを殺すことになる)。

ルーク達が飛び去る際には、ルークが扉の操作盤を撃って向かってくるダース・ベイダーを足止めする。『オビ=ワン・ケノービ』ではダース・ベイダーがフォースの力で飛び立とうとする船を引き摺り下ろすシーンが描かれており、結果論だがルークとソロの『エピソード4』での判断は正しかったと言える。

ヤヴィンの戦い

ルークはベンを失ったことで落ち込んでいるが、レイアはそうでもない。一方で、レイアは帝国に探知機を取り付けられていることに気がついている。このあたりは、レイアが若くして反乱運動に身を置いてきたことに背景があると考えられる。

ドラマ『キャシアン・アンドー』では、「反乱が最優先 」という標語が紹介された。家族であれ、幼馴染であれ、仲間であれ、どんな犠牲を払ってでも反乱を成就させるという鉄の掟だ。同作では反乱に関わる人々が多くのものを失いながら対帝国の戦いを進める姿が描かれる。

レイアはヤヴィン4にある反乱軍の基地でR2-D2に格納していたデス・スターの設計図を届け、反乱同盟がそれを分析。大規模な攻撃には強いが小型戦闘機の攻撃を想定していない、小さな排気口が原子炉に直結しているためそこを攻撃すれば消滅するという弱点が発見される。『ローグ・ワン』でのジンやキャシアンの戦いが実ろうとしている。

オビ=ワンを倒し、反乱同盟の基地も見つけてちょっとテンションが上がっているダース・ベイダー。一方、反乱軍にパイロットととして加わったルークはかつてのアナキンのようにR2-D2と共に出動する。

デス・スターはミレニアム・ファルコンに取り付けた探知機を追ってヤヴィン4まで来ている。ここで描かれる戦いがいわゆる「ヤヴィンの戦い」だ。「スター・ウォーズ」の年号はヤヴィンの戦いを基準として数えられ、ヤヴィンの戦い以前は「BBY(Before Battle of Yavin)」、以後は「ABY(After Battle of Yavin)」と表記される。例えば『オビ=ワン・ケノービ』の物語は『エピソード4』の9年前なので、9 BBY(ヤヴィンの戦いの9年前)が舞台ということになる。

Xウィング部隊がデス・スターに挑むシーンは、現在シーズン2が配信されている『キャシアン・アンドー』を観ながらだとちょっと信じられない気持ちになる。資金も支援も仲間も武器も得て、反乱同盟は堂々と帝国軍と戦う勢力になっているのだ。その戦いはタトゥイーンを出たことがないルークの耳にも届いていた。支持を広げていった反乱グループの戦いの詳細は、4シーズンが制作されたアニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』に詳しい。

ルークがオビ=ワンからフォースの声で助言を受ける一方、落ち着きなく廊下を歩き回っているダース・ベイダーはついに自ら出動。流石の腕でXウィングを撃墜していくが、最後にはソロが操るミレニアム・ファルコンが援護に到着。助けられたルークがフォースを使ってプロトン魚雷を排気口に誘導し、デス・スターの破壊に成功したのだった。

『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』(2017) と『エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』でも、ミレニアム・ファルコンは救世主級の活躍を見せる。それらのミレニアム・ファルコンの活躍はいずれも最後の最後に現れた『エピソード4/新たなる希望』のオマージュだと考えられる。

デス・スターを破壊するという大規模な勝利を収めた反乱同盟は、ルーク・スカイウォーカー、ハン・ソロ、チューバッカの三人を反乱軍に迎え、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』は幕を閉じる。こうして『ローグ・ワン』で描かれたデス・スターの設計図を奪取する作戦は実を結ぶことになった。

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』ネタバレ考察と今後

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のラストでダース・ベイダーよりも位が高かったターキン総督がデス・スターと共に宇宙の塵になったことで、『エピソード5』からはダース・ベイダーは実質的に帝国のナンバー2になる。

一方で、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』では皇帝パルパティーンは、オビ=ワンと会った後のダース・ベイダーの中に残る弱さを見抜いている。それもあってか、パルパティーンはパルパティーンで、ダース・ベイダーをよそに自身のクローンを作る計画を進めていた。その結果が『エピソード9』での復活だ。

クローン計画の全容はまだ明かされていないものの、過程やヒントはアニメ『バッド・バッチ』やドラマ『マンダロリアン』で描かれている。観れば観るほど背景が見えてくるのが「スター・ウォーズ」だ。

現行の「スター・ウォーズ」からは、2026年5月に映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』、2027年5月に『エピソード9』の5年後を舞台にしたライアン・ゴズリング主演の映画『スター・ウォーズ/スター・ファイター(原題)』の公開が決定している。『マンダロリアン』や『アソーカ』の新共和国時代を舞台にした別作品『エピソード9』の後を舞台にした別作品、そして『エピソード1』の1万年前を舞台にした作品も劇場公開を控えている。

ドラマやアニメ、ゲームも続々と新作が登場する予定で、まだまだ「スター・ウォーズ」から目が離せない。

「スター・ウォーズ」シリーズはディズニープラスで配信中。

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「スター・ウォーズ」コンプリート・サーガ ブルーレイBOXは発売中。

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【ネタバレ注意】ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン2第1話から第3話のネタバレ解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』の解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』の解説&感想はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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