映画『八犬伝』大ヒット公開中
『南総里見八犬伝』の作者・滝沢馬琴と江戸時代の絵師・葛飾北斎の交流と『南総里見八犬伝』の物語を描く映画『八犬伝』が2024年10月25日(金) より劇場で公開。初週末首位発進のヒットを記録している。山田風太郎の同名小説を実写映画化した作品で、主演の役所広司をはじめ、豪華キャストが集結している。
今回は、映画『八犬伝』の“虚”のパートに登場した『南総里見八犬伝』の八犬士の面々について、ネタバレありで解説していこう。それぞれどんな力を持っていて、どんなキャストによって演じられたのだろうか。以下の内容は『南総里見八犬伝』のネタバレを含むのでご注意を。
以下の内容は、映画『八犬伝』及び原作『南総里見八犬伝』の内容に関するネタバレを含みます。
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映画『八犬伝』八犬士はどう描かれた? ネタバレ解説
犬塚信乃/演・渡邊圭祐
犬塚信乃は「考」の珠を持つ八犬士で、『南総里見八犬伝』における主人公的な立ち位置のキャラクターだ。牡丹の痣は左腕についている。原作では成人になるまで女性名を与えられて女装で育てられた。母と死別した後に父が後追いで自害しており、その後は大塚蟇六(ひきろく)&亀篠(かめざさ)夫婦に育てられ、二人の養女であった浜路が許婚となっている。映画『八犬伝』では、信乃の養母はヴィランの船虫に改変された。
映画『八犬伝』で犬塚信乃が持っていた名刀・村雨は父の自害時に渡されたものだ。信乃が初登場時に墓前で村雨を持っているのはその背景があってのこと。映画『八犬伝』では、犬飼現八との芳流閣の戦いや玉梓(たまずさ)との決戦で活躍を見せた。衣装は赤の割合が多く、立ち位置的にも戦隊モノの“レッド”を思わせる活躍を見せる。
原作では、戦いの後に里見家の浜路姫が妻になり、信乃は東条城の城主になった。ちなみに原作では信乃の許嫁の浜路と最後に登場した浜路姫は別人で、見た目が酷似しているという設定になっている。
犬塚信乃を演じたのは渡邊圭祐。実写版「鋼の錬金術師」シリーズでは2022年公開の完結編二部作でリン・ヤオ/グリードを演じた。同シリーズは『八犬伝』と同じ曽利文彦監督が手掛けており、短いスパンで曽利文彦監督作品で主人公格のキャラクターを演じることになった。
渡邊圭祐がデビューしたのは『仮面ライダージオウ』(2018) でのこと。仮面ライダーウォズ役で注目を集め、『チェイサーゲーム』(2022) でドラマ初主演、映画『三日月とネコ』(2024) で映画初主演を務めた。2024年9月からスタートした大河ドラマ『光る君へ』では藤原頼通を演じる。『八犬伝』での好演で、今後も時代劇に引っ張りだこになるかもしれない。
犬川荘助/演・鈴木仁
犬川荘助は信乃を兄のように慕う八犬士で、「義」の珠を持ち、牡丹の痣は背中にある。荘助の父は北条の荘官(領主のために働く役人)だったが主君を怒らせ切腹させられた。その後、母も倒れて大塚蟇六の家で引き取られることになる。そして、同じく大塚家にやってきた犬塚信乃が珠と痣を持っていることを知り、兄弟の契りを交わすことになる。
信乃が村雨を足利家に返すために旅に出た直後、荘助は、信乃から村雨を盗んで浜路を斬った網乾左母二郎と対峙した、犬山道節と出会う。犬山道節もまた珠を持っており、信乃と自分以外にも珠を持っている人物がいるということを知る。映画『八犬伝』における荘助のイメージカラーはブルーで、レッドの信乃を支える副官という印象を与えている。
犬塚荘助を演じたのは鈴木仁。信乃を演じた渡邊圭祐とは同じ事務所のアミューズに所属している。鈴木仁はドラマ『リバース』(2017) でドラマデビューを果たし、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(2018) の成宮一茶役で注目を集めた。2020年には映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020) で映画初主演、2022年にはドラマ『モトカレ←リトライ』でドラマ初主演を務めている。
フジテレビの「木曜劇場」ドラマ『大奥』(2024) では久我信通役を演じており、渡邊圭祐と同じく時代劇ドラマや映画で今後も活躍していくことになるだろう。
犬山道節/演・上杉柊平
犬塚荘助と出会う犬山道節は、「忠」の珠を持ち、左肩に牡丹の痣がある。映画『八犬伝』では袈裟を着ているのが特徴で、火遁の術を操る姿が印象的だ。原作では浜路の異母兄という設定。犬山家に生まれた道節は、父の妾(=浜路の母)に毒を盛られて殺されかけたが墓の中から復活し、妾と浜路は犬山家を追い出されることになる。浜路が大塚家の養女になったのはこうした経緯が理由だが、映画版では浜路=浜路姫(里見家の姫)として描写されているため、この設定はないことになっていると思われる。
映画『八犬伝』では犬山は、当初はヴィランのように描かれているが、原作でも短気なキャラとして描かれている。道節は八犬士との出会いを経て変化していくキャラだ。戦いの中で荘助と珠を交換することになり、網乾左母二郎から奪った村雨を用いて父の仇・扇谷定正を討とうとするがこれに失敗。八犬士から助けられ、八犬士に加わることになる。イメージカラーは黒だと思われる。
犬山道節を演じたのは上杉柊平。2020年には大河ドラマ『麒麟がくる』で一色藤長役を演じた。2022年にドラマ『ワンナイト・モーニング』第1話の主演を務めてテレビドラマ初主演、2023年に『ワンルームエンジェル』で連続ドラマ初主演を務めた。映画『シン・仮面ライダー』(2023) では、ハチオーグに仕えて日本刀を振るう黄色い背広の男役で印象的な演技を見せた。Netflixの実写ドラマ版『幽☆遊☆白書』(2023) では桑原和真役を演じている。
犬坂毛野/演・板垣李光人
犬山道節が扇谷定正を討とうとするシーンで登場するのが犬坂毛野で、「智」の珠を持ち、牡丹の痣は右腕にある。女田楽師である母に育てられ、女装をして旦開野(あさけの)という名の女田楽師になった。
映画では『八犬伝』では道節と同じく定正を仇としていたが、原作では毛野の仇は馬加大記と籠山逸東太という人物である。また、毛野は女田楽師として犬田小文吾に結婚を申し込んだことがある。最終決戦の関東大戦後は里見家の七女である小波姫と結婚している。
犬坂毛野を演じたのは板垣李光人。2002年生まれで、10歳の頃から俳優やモデルとして活動しており、映画『八犬伝』の公開時点で22歳。映画『約束のネバーランド』(2020) でノーマン役、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023) で手塚颯馬役などを演じ、2024年公開の映画『陰陽師0』では帝役を演じている他、実写版『ブルーピリオド』で高橋世田介役、『はたらく細胞』で新米赤血球役など、2024年だけで5本の映画に出演している。
『仮面ライダージオウ』(2022) ではウール役、ドラマ『カラフラブル〜ジェンダーレス男子に愛されています。〜』(2021) では主人公・相馬周を演じた。映画『八犬伝』では犬坂毛野を見事に演じ、色々な意味で八剣士の中で最も注目を集めるキャストになったと言える。
犬田小文吾/演・佳久創
原作で犬坂毛野と結婚の約束をする犬田小文吾は、巨漢の相撲取り。「悌」の珠を持ち、牡丹の痣は尻にある。映画『八犬伝』では、芳流閣の戦いで川に落ちた信乃と現八を助け、三人は共に珠と牡丹の痣を持つことを知る。怪力を持ち味として最終戦でも大活躍を見せた。
原作では妹の沼藺とその夫の房八の間に生まれる子どもが犬江親兵衛で、小文吾ち親兵衛は叔父と甥という関係にあたる。また、毒虫に命を狙われる展開もあるが、映画『八犬伝』では省略されている。
犬田小文吾を演じたのは佳久創。元ラグビー選手で、日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(2019) の里村亮太役で注目を集めると、2022年には大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022) で弁慶役を演じた。2023年には『王様戦隊キングオージャー』でブラックに相当するハチオージャーことカグラギ・ディボウスキ役、Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』では角界のプリンス・龍貴役を演じた。映画「キングダム」シリーズでは竜川役を演じている。
犬村大角/演・松岡広大
犬村大角は「礼」の珠を持ち、左の胸に牡丹の痣がある。嵐の日に金碗大輔(丶大法師)が泊めてもらった場所が大角の父・赤岩一角の道場だ。赤岩一角は化猫に取り憑かれており、金碗大輔と大角は剣の達人である赤岩一角と戦うことになる。
原作では大角の父・赤岩一角と化猫は別々に存在している。原作では船虫が赤岩一角に成り変わった化猫の後妻となり義理の息子である大角を苦しめたが、映画『八犬伝』では、船虫は化け猫に取り憑かれた一角の後妻という設定になっている。犬村大角の衣装は緑が中心になっており、落ち着いた雰囲気も感じられる。
犬村大角を演じたのは松岡広大。『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012) で俳優デビューを果たした後、Amazonドラマ『ベイビーステップ』(2016) でドラマ初主演。2017年には映画『雪女』で映画初主演を務めた。実写版「沈黙の艦隊」シリーズでは映画とドラマに入江覚士役で出演、2024年公開の映画『赤羽骨子のボディガード』には嘉柄譲役で出演している。映画『八犬伝』では化猫となった父・赤岩一角との見事な殺陣を披露した。
犬飼現八/演・水上恒司
犬飼現八は「信」の珠を持ち、牡丹の痣は右の頬にある。映画『八犬伝』ではハイライトの一つである芳流閣の決闘で登場。村雨が偽物であったことから間者(スパイ)と疑われた信乃に放たれた刺客で、これは原作と同じ展開だ。現八は足利成氏に仕え、獄舎の長に任命されていたが、捕えた者に拷問を行わなければならないことや成氏の苛政に疑問を持って職を辞退しようとして投獄されていた。
原作では生まれてすぐに母が病死した後、父が現八と無理心中しようとしていたところを犬飼見兵衛に助けられた。小文吾の実家である旅籠屋・古那屋で小文吾の母から乳を与えられて育っており、小文吾の母が現八の乳母ということになる。映画『八犬伝』でも、芳流閣の決闘で川に落ちた後、その古那屋に連れて行かれて信乃と小文吾と八犬士の珠と痣の存在を共有する。
犬飼現八を演じたのは水上恒司。2022年までは岡田健史名義で活動しており、『中学聖日記』(2018) でメインキャラクターの一人・黒岩晶として俳優デビューを果たす。2021年に大河ドラマ『青天を衝け』に渋沢平九郎役で出演すると、2022年に『死刑にいたる病』(2022) で映画初主演を務める。2023年公開の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』でも主演を務めるなど、今最も注目を集める若手俳優の一人である。
犬江親兵衛/演・藤岡真威人
犬江親兵衛は最年少の八犬士で、「仁」の珠と脇腹に牡丹の痣を持つ。映画『八犬伝』では終盤に登場し、最後の一人として八犬士に合流する。里見家に仕えていた世四郎とおとねが八犬士を探しに出た後に森の中で親兵衛を見つけ、「仁」の珠を持っていたことから大人になるまで育てたという設定になっている。
原作では、姨雪世四郎と音音(おとね)は犬山家の家臣として登場、音音は犬山道節の乳母だった。原作の親兵衛は前述の通り、犬田小文吾の妹の沼藺と山林房八のもとに生まれたが、幼い頃に伏姫神(守護神となった伏姫)によって神隠しにあう。伏姫神によって富山で育てられた後、伏姫神に導かれた世四郎と音音が親兵衛を拾って育てることになる。
また、映画『八犬伝』では、網乾左母二郎に斬られて川に落とされた浜路は親兵衛が見つけて助けたことになっており、終盤で信乃との再会を果たす。前述の通り、原作では浜路と浜路姫は別人で浜路は左母二郎に殺され、信乃は見た目が酷似している浜路姫と結婚することになる。なお、映画版の親兵衛は縞模様の派手目なコスチュームが特徴だ。
犬江親兵衛を演じたのは藤岡真威人。映画『八犬伝』公開時点で20歳、収録時は18歳でメンバーの中では最年少の演者になる。2021年に映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』で、かつて父・藤岡弘、が演じた本郷猛役で出演すると、ドラマ『恋に無駄口』(2022)、『テッパチ!』(2022)、『クールドジ男子』(2023) など、ドラマ作品に次々出演している。
以上のように、映画『八犬伝』では魅力的なキャストと共に、原作からは多少改変されて描かれた八犬士たち。この機会に未読の方は原作もチェックしてみてはいかがだろうか。
映画『八犬伝』は2024年10月25日(金) より劇場公開。
山田風太郎の原作小説『八犬伝』は角川文庫から発売中。
滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』は白井喬二による現代語訳版が発売中。
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