ネタバレ解説&感想『クレイフェイス』ラストの意味は? 俳優が抱える心の闇を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『クレイフェイス』ラストの意味は? 俳優が抱える心の闇を考察

© DC Studios. All Rights Reserved.

バットマンのヴィランが主人公のボディ・ホラー

DCコミックのBIG3の一人とされるヒーロー、バットマン。そのようなゴッサム・シティの闇の騎士が戦うヴィランの一人であるクレイフェイスを主人公にしたスリラー・ホラー映画『クレイフェイス』が、2026年10月30日(金)に全国劇場公開された。

バットマンのヴィランを主人公にした映画では、アカデミー賞を受賞した『ジョーカー』(2019)が有名だが、映画『クレイフェイス』は2026年10月31日現在で米映画評価サイトRotten Tomatoesにて、『ジョーカー』を超える批評家評価77%、観客評価94%を記録している。

ボディ・ホラーとして、DCUに新たなヴィランを産み落とした映画『クレイフェイス』。観客はどうして同作に惹きつけられるのか。本記事では映画『クレイフェイス』について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容は映画『クレイフェイス』のネタバレを含むため、本編鑑賞後に読んでいただけると幸いである。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『クレイフェイス』の内容に関するネタバレを含みます。
自傷行為注意
以下の内容は、自傷行為に関する表現を含みます。

映画『クレイフェイス』ネタバレ解説&考察

異色のボディ・ホラー、クレイフェイス

DCU(DCユニバース)は『スーパーマン』(2025)や『スーパーガール』(2025)など、立て続けにヒーローを中心とした映画を展開してきた。しかし、映画『クレイフェイス』はヴィランを主人公に据え、ヒーローが一切登場しない異色のボディ・ホラーだ。

主人公のマット・ヘーゲンは、アンチヒーローとして正義を成そうとする人物ではない。むしろ、自己愛と怒りを増幅させ、他者を傷つけていくナルシストとして描かれる。

この点で、本作はMCUの『ウェアウルフ・バイ・ナイト』にも通じる。超人的な能力を持つ存在がいる世界であっても、すべての物語がヒーローの活躍を描くわけではない。映画『クレイフェイス』が焦点を当てるのは、メタヒューマンとなった一般人が、その力によって必ずしも救われるわけではないという現実だ。

マットは能力を得たことで苦しみから解放されるどころか、もともと抱えていた自己愛や承認欲求をさらに肥大化させていく。つまり本作は、怪物が誕生する過程を描くと同時に、力を手にした人間の内面に潜む危うさを描いた作品でもある。

俳優マット・ヘーゲンを蝕む“故郷ゴッサム・シティ”

ゴッサム・シティのナローズ出身であるマット・ヘーゲンは、地元のユースセンターで演技を学び、“コースト・シティのニュースター”と呼ばれる俳優として成功を収めた。かつては虐待を受けていた少年も、今では注目を集めるスターとなり、故郷へ凱旋するまでになっていた。

しかし、マットはそこでギャングのマルコ・ザボの愛人ミア・トーレスと関係を持ち、報復として顔を切り刻まれてしまう。ザボは裁判関係者まで買収・恐喝し、マットは正当な救済を受けられない。さらに、ゴシップ誌によって世間からも悪者として扱われ、手術と裁判の費用で財産まで失っていく。

ここで重要なのは、マットが単に顔を傷つけられたのではなく、故郷で再び社会的な居場所を奪われたことだろう。彼は俳優として成功することで、かつての苦しい生活から抜け出したはずだった。しかし、ゴッサム・シティの腐敗は、過去の傷を再び呼び起こしてしまう。

マットにとって俳優としての成功は、単なる名声ではない。かつての自分を否定し、誰からも認められる――愛される存在になるための拠り所だったのだと考察できる。だからこそ、顔を失い、世間から見放された彼は、以前にも増して他者からの承認に執着していく。ゴッサム・シティはマットの肉体だけでなく、彼の自己認識まで蝕んでいったのだ。

コー博士の発明“ナノセル”

すべてを失ったマットに、一筋の光明が差す。それはケイトリン・コー博士が弟のハンチントン病治療のために研究開発したナノセルのニュースだ。ナノセルはES細胞に似たもので、本来の細胞に溶け込むとAIからの信号を感じ取り、自己修復を始めるという画期的な発明だった。

しかし、コー博士の研究データは盗まれてしまい、彼女の会社の資産は差し押さえ寸前。マットはそれを知ると、自分が治験者になると申し出るも違法行為だと一度は断るが、彼が自分と同じゴッサム・シティのナローズ出身者を勇気づける演技講座を観て、ナノセルによる治療を始める。

最初はマットの顔は治療できたが、ナノセルには重大な問題があった。それは投与された人物の強いストレスなどの感情に反応し、神経から発せられる電気信号を感じ取ると、ナノセルが変容を引き起こす――つまり、怒りや悲しみを覚えると顔の形を維持できなくなってしまう。

マットはコー博士に助けを求めるが、彼女の目を盗んで安全基準をはるかに超えた危険量のナノセルを自己判断で投与してしまう。マットの細胞はナノセルと深く溶け合い、緊急時のキル・スイッチがマットの細胞もろとも死滅する危険性を帯びるほどに融合していたのであった。

映画『クレイフェイス』ラストネタバレ解説&考察

復讐が“心身”ともに変えていく

ナノセルの過剰投与によって、マットの肉体は自己修復の域を超え、他人の顔や体格、さらには服装まで再現するようになる。傷ついても瞬時に修復できる一方、自分の肉体が本当に自分のものなのか確かめるように、自傷行為を繰り返すようになっていく。

映画『クレイフェイス』で恐ろしいのは、マットが単に姿を変えられるようになったことではない。肉体の境界が曖昧になるにつれて、自分自身の存在を確かめることさえ難しくなっていく点だ。

さらに、ナノセルによる自己修復は、マットにとって復讐の手段にもなる。肉体の一部を自在に変形させ、他人の姿に成りすますことで、犯行の痕跡を残さずに相手を殺害する完全犯罪ができるようになったのだ。そこには顔の変化に戸惑うマット・ヘーゲンの姿はなく、怪物“クレイフェイス”の片鱗が見え始めていた。

爆発する怒りと増長する自己愛

マットは親友コーリーの裏切りを知り、過去の栄光を取り戻せない現実に直面するなかで、誰もが自分を愛するべきだという歪んだ自己愛を強めていく。自分を否定する相手に対しては、怒りを抑えられず、ナノセルの力を使って殺害するようになった。

映画『クレイフェイス』は、俳優という仕事に伴う二つの側面が歪んだ形で表現している。一つは、自分を売り込むためのナルシシズム。もう一つは、役柄に入り込むことで自己と他者の境界が曖昧になることだ。マットは俳優として培った能力を、他人の姿を演じるためだけでなく、復讐のために利用していく。

彼を追うのは、コー博士の恋人であるジョン・ボレリ刑事だった。ザボがジョン刑事を脅迫するためにコー博士を傷つけようとしたことで、マットの怒りが爆発する。コー博士は自分を愛すべきだと信じ込んでいるマットにとって、彼女を傷つけることは許しがたいことだった。そこには、コー博士を既に自分の恋人――というよりも所有物かのように見ているナルシズムから来る傲慢さが存在する。

そして、マットは殺人鬼を演じるように、次々とマルコ・ザボの部下たちを殺害していく。復讐と自己愛、怒りに独占欲……すべてが泥のように溶けて混じり合い、マット・ヘーゲンの心は演じていたはずの殺人鬼にして怪物“クレイフェイス”に飲み込まれていったのだ。

怪物“クレイフェイス”誕生

ナイト・クラブでの虐殺という第一の目的を達成したマットは、第二の目的を果たそうとする。それはコー博士に自分を愛していると認めさせることだ。そのためにジョン刑事を殺害。恋人に変身し、彼女の望む姿になれると自慢気に話すマットだが、それは愛ではない。支配だ。恐怖したコー博士はスタンガンで抵抗し、ナノセルのキル・スイッチを作動させる。マットの肉体は崩れ、泥のような姿となって下水道へ流れていく。

しかし、映画『クレイフェイス』はまだ終わらない。ラスト、すべてが終わり、コー博士が街を歩く場面では、彼女がマットの生存を恐れ、すれ違う人々の視線に恐怖しながら生き続けるしかないことが示唆される。一方、下水道で暮らすマットは、肉体の一部を使ってコー博士の姿を作り出し、彼女が自分を愛しているという妄想の世界に閉じこもっていた。

このラストでは、同じ出来事が二つの異なる視点から描かれている。コー博士にとってマットは、自分の命を脅かすストーカーでしかない。しかし、マットは自分を彼女の愛情を受けるべき存在だと信じ、彼女との幸せな関係を一人で演じ続けている。一方的な視線に怯えながら生きなければならないストーカー被害者の女性と、彼女を見守っているつもりでいるストーカー加害者の男性、2つの世界が重なる瞬間なのだ。

やがてマットは下水道で妄想のコー博士と溶け合い、コミックで知られる泥の怪物“クレイフェイス”の姿へと変貌する。人間としての顔を失っただけでなく、他者の意思を受け入れることもできなくなった彼は、現実と妄想の区別さえつかない怪物になってしまったのだ。

映画『クレイフェイス』ネタバレ感想

ナルシストとストーカー

マット・ヘーゲンの恐ろしいところは、自分がヒーローであるかのように振る舞い、演じるところにある。俳優としての成功体験が彼の中に、自分は誰からも愛される存在であるという妄想を抱かせ、ナノセルの力がそれを増長させた。

そして、コー博士に対してもラストで自分を愛するように求め、ゴッサム・シティの様々な住民に変身し、コー博士をストーカーし続けるという行為に走ったのである。強大な力を持つようになり、ザボのような犯罪者や自分を裏切ったコーリーへの復讐をするうちに自分が正しいと疑わなくなる。それこそがクレイフェイスのヴィランとしての恐ろしさだ。

ラストのコー博士が街を歩くシーンではBGMも相まって、被害者として視線に怯えなければならない女性の世界と、自分はか弱い女性を守っているという妄想に囚われたストーカー男性の世界が見事に重なり合っている。そして、下水道での独り芝居の末、怪物“クレイフェイス”として最後に咆哮をあげるのは眉目秀麗な顔立ちを失い、異形の姿になったことに加えて、現実と妄想の乖離を象徴したシーンだと考察できる。本人が愛情だと思い込んでいるものが、相手にとっては恐怖になっているのだ。

『ジョジョの奇妙な冒険』のクリーム・スターター

また、映画『クレイフェイス』の演出として興味深いのが、肉体変化の表現方法だ。マットの肉体はナノセルの過剰投与によって粘土のように変化した。肉体の一部が千切れても、粘土のように再び肉片をくっつけることができる。そのせいで、飛行機内では瞼がつながるなど、問題も起きるが、この性質を利用してラスト、虐殺を行なうのである。

変身や肉体変化による武器化はもちろん、興味深いのはマルコ・ザボとその愛人のミア・トーレスの殺害方法だ。ミアには敢えて抵抗させ、自分の腕に噛みつかせることで肉を喉に詰め込んだ。マットの身体から分離した肉は口や鼻と同化し、呼吸器を塞ぐことで窒息させる。これは『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズPart7「スティール・ボール・ラン」のホットパンツのスタンド(超能力)、クリーム・スターターを思わせる。

『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』配信ページ

『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズPart7「スティール・ボール・ラン」のホットパンツのスタンドであるクリーム・スターターは、スプレー缶の姿をしている。そして、ホットパンツ自身の肉の一部をスプレーにして相手に吹き付けて、目・鼻・口を塞ぐことができるのだ。さらにはスプレーになる性質を利用して傷口に吹きかけて怪我を直す、人相を変える、隙間を通るなど使い勝手が良い。

これはどちらが真似をしたといったものではなく、映画『クレイフェイス』がヒーローに倒される単純な存在ではなく、主人公としてクレイフェイスの肉体設定を“解剖”していった結果として、表現上の収斂進化を果たしたのだと考察できる。また、自分の顔を敢えて切り刻んで血を浴びせることでナノセルが戻ろうとする性質でザボを殺す、自分の本質を知るために自傷行為を繰り返すなど、ボディ・ホラーの要素が強いのも設定を“解剖”していった結果だと言えるだろう。

あのヒーローたちはどこにいた?

映画『クレイフェイス』は単独作として高い完成度を誇るボディ・ホラーで、グロテスクなシーンも非常に多かった。その一方で気になるのが、本作がDCUに属しているということだ。そのため、マット・ヘーゲンがいる世界にはスーパーマンたちヒーローもいることになる。では、ゴッサム・シティが腐敗していたとき、ヒーローたちはどこにいたのだろうか。

まず、時系列としては映画『クレイフェイス』でのラストシーンは『クリーチャー・コマンドーズ』以前の出来事だとされている。『クリーチャー・コマンドーズ』のテロ事件が配信時期と同じ2024年の出来事だとした場合、マット・ヘーゲンが怪物“クレイフェイス”になったのは2023~2022年頃の可能性が高い。なぜならば、同作でクレイフェイスは雇われヴィランとして活動するなど、ある程度活動歴があるように描かれていたからだ。

『スーパーマン』では、クラーク・ケントがスーパーマン活動歴3年目とされているため、ちょうどデビューしたばかりの頃にクレイフェイスの事件が起きた可能性が考察できる。しかし、スーパーマンは映画本編でも新人ヒーローとして扱われており、未熟ながら自然災害や紛争解決に奔走していたため、ペーパーカンパニーなどを隠れ蓑にしたギャングたちの巧妙な犯罪を解決するのは、まだ難しいと思われる。

『ランタンズ』では、コースト・シティ出身のハル・ジョーダンが2016年にグリーンランタンを辞め、ガイ・ガードナーが次のグリーンランタンに選ばれている。しかし、彼ら宇宙の警察官たちが地球のギャングの事件に介入するのは難しい。

これは『ランタンズ』本編でも語られていたが、先代のハルが掟を破って内政干渉と思われかねないヒーロー活動をしていたため、ガーディアンがガイの行動を厳しく取り締まっていた。そしてハルが起こした事件で落ちた信用を取り戻すために、ガイはジャスティス・ギャングに所属し、CM出演などをしなければならず、ヒーロー活動はかなり制限されていた。

だが、2人以上に注目すべきなのはゴッサム・シティの闇の騎士であるバットマンの存在だろう。バットマンはこの頃にはすでに活動しており、『クリーチャー・コマンドーズ』の回想シーンでDr.フォスフォラスを逮捕している。そのため、バットマンはゴッサム・シティの腐敗と戦っていた可能性は非常に高い。

そのため、今後計画されているバットマンと彼のサイドキックであるロビンの活躍を描く『The Brave and The Bold(原題)』や、元ロビンであるナイトウィングとレッドフードの活躍を描く『Dynamic Duo(原題)』で、空白期間について語られるのかもしれない。いくらバットマンが街を愛しているとはいえ、一人で街の腐敗すべてを救うのは無理がある。映画『クレイフェイス』は、そのようなヒーローの手から零れ落ちる人々を描いたと言えるのかもしれない。

映画『クレイフェイス』は2026年10月30日(金)より全国劇場公開。

映画『クレイフェイス』公式サイト

Source
Rotten Tomatoes

DCU映画『スーパーガール』ラストネタバレ解説&考察記事はこちらから。

DCU映画『スーパーマン』ラストネタバレ解説&考察記事はこちらから。

DCUドラマ『ピースメイカー』シーズン2第1話ネタバレ解説&考察記事はこちらから。

DCUドラマ『グリーンランタン』第1話ネタバレ解説&考察記事はこちらから。

映画『クレイフェイス』公式アンバサダーのUTAが主演を務める『ガス人間』ラストネタバレ解説&考察記事はこちらから。

映画『クレイフェイス』公式アンバサダーのUTAが主演を務める『ガス人間』のキャラクター解説記事はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
お問い合わせ

関連記事

  1. ギレルモ・デル・トロ監督も参加! 原点『ウルトラマン』をフィーチャーした『THE ORIGIN OF ULTRAMAN(仮)』制作決定

  2. 『MIRRORLIAR FILMS Season8』本予告映像と新場面写真が公開 「岡山フィルムプロジェクト上映祭」では先行上映を実施

  3. 『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVSブンブンジャー』エンディング映像が「50年間ありがとうver.」として期間限定で公開!

  4. 『マイティ・ソー5』の監督はジョージ・ミラー? 『マッドマックス:フュリオサ』後もクリス・へムズワースと共演を熱望