シーズン5第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』最終シーズン開幕、あの二人を分けたものとは あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン5第1話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』最終シーズン開幕、あの二人を分けたものとは あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』最終シーズン配信開始

エリック・クリプキが手がけるAmazonプライムビデオきっての人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019) が、いよいよクライマックスを迎える。2026年4月8日(水) よりファイナルシーズンとなるシーズン5の配信が始まった。

ガース・エニスとダリック・ロバートソンの原作コミックをベースに、腐敗したヒーローとそれに立ち向かう一般人たちというコンセプトをスーパーヒーローコンテンツ全盛の時代に描き、さらに大きく変化していく米国を先取りした作品として大きな注目を集めた本作。それも残すは8話のみとなった。

今回は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5の第1話をネタバレありで解説し、考察していこう。以下の内容はネタバレを含むので、必ずプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、以下の内容は児童への虐待についての言及を含むのでご注意を。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第1話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン5第1話「15インチの強烈なダイナマイト」ネタバレ解説

MAGAすぎるホームランダー

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第1話は、グロ場面の詰め合わせとともに現時点での重要な要素が紹介されていく。ヒーローの腐敗、Aトレインの改心、対能力者用ウイルス、ニューマンの死とカルフーンの大統領就任、そしてホームランダーによる支配。シーズン4のラストではブッチャーとスターライト/アニー以外のザ・ボーイズメンバーが捕まっている。

一方、2025年に配信されたスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2では、スターライトがレジスタンスとして抵抗の活動を続けていることが明かされた。一方で、マリー、エマ、ジョーダンら若手組がスターライトとチームアップ。シーズン4でホームランダーの手先として動いていたケイトとサムも加わっている。

そして、『ザ・ボーイズ』シーズン5の舞台になるのは、『ザ・ボーイズ』シーズン4から1年後、『ジェン・ブイ』シーズン2から半年後だ。序盤ではヴォート社の株主総会の様子が描かれる。会場にはMAGA(Make Amarica Great Again)を思わせる赤いキャップを被った観客の姿も確認できる。

ホームランダーは演説で「アメリカで勝手は許さない」と言っているが、米国の呼び方には「America(アメリカ)」と「United States(合衆国)」があり、ホームランダーは「America」を使っている。リベラルも保守も両方使うものの、「America」は感情的な表現の中でよく使用され、「Make America Great Again (MAGA)」に代表されるように、スローガンとしては保守派が用いる場合が多い(MAGAを保守と呼べるかどうかはともかく)。

スターライターはテロ組織に指定されたとも発言しているが、現実ではドナルド・トランプ大統領が反ファシスト運動のアンティファ(ANTIFA)をテロ組織に指定する大統領令に署名している。アンティファは正式な組織が存在しているわけではないが、テロ組織に指定されると、その組織への支持を表明した人間を逮捕することができるようになる。

スターライターというのもスターライトを支持している人々のことであり、その思想によってテロリストに指定しているということになる。共産主義を目の敵にした“赤狩り”の時代もそうだったが、レッテルによって気に食わない相手を逮捕することも可能で、自由なアメリカとは真逆の思想検閲が行われていると言える。

株主総会では、新統合参謀のジェネラル・メイヘム映画『G-MEN』の興行収入20億ドル突破、EBITDA(イービッタ:利払い前・税引き前・減価償却前利益)のマージンが堅調であることが紹介されている。『G-MEN』は原作でも登場する『X-MEN』のパロディだが、興収20億ドルというのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) など、現実ではごく一部の映画だけがクリアした基準だ。

アメリカが神を崇拝する国になったと喜ぶホームランダーだが、その会場に潜入していたのはスターライトことアニーで、ブラック・ノワールの攻撃をかわしながら、総会の会場で37便の映像をリークすることに成功する。37便の事件はシーズン1で描かれたもので、飛行機トラブルで全員を助けられない状況の中で、生存者がいては困るとホームランダーが乗客全員を見殺しにしたという一件だ。

その場にいたメイヴは罪悪感を抱き続けており、このビデオの存在はホームランダーの暴走を抑える切り札でもあった。動画が上映されたことで、またもホームランダーは観客を皆殺しにしようとするが、今のホームランダーにはブレインのシスター・セージがいる。セージはこの動画がAI生成のフェイクだと発表したのだった。ご丁寧に若手ヒーローが踊る縦動画でニュースを忘れさせる演出も挿入されている。

そして、「副大統領」として登場したのはアシュリーだった。シーズン1でヴォートの広報、シーズン2で副社長、シーズン3でCEOになり、シーズン4ではセージにCEOの座を奪われながら、生き延びるために自らにコンパウンドVを打ったアシュリーだ。

アシュリーは『ジェン・ブイ』シーズン2でヴォートのCEOに復帰したことに触れられていたが、その後またセージがCEOに戻っている。アシュリー→セージ→アシュリー→セージという交代劇が起こっているのだが、セージはCEOに戻る前には「今の状態のアシュリーじゃ務まらない」と発言しており、アシュリーが何らかの問題を抱えていることを示唆している。

なお、アシュリーはスターライターを「マルクス主義者」と呼んでいるが、2024年の大統領選では、ドナルド・トランプも民主党大統領候補のカマラ・ハリスを「マルクス主義者」と呼んだ。

ホームランダーはシスター・セージの部屋で会議を行なっている(ほとんどセラピーだが)。セージが自慢しているグーテンベルク聖書は西洋で最初の印刷された聖書で、前の持ち主はマーティン・シュクレリとしている。

マーティン・シュクレリはMSMBキャピタルマネジメントの共同創立者として知られる。2015年に製造権を獲得した抗寄生虫薬の価格を56倍に引き上げ、同年に証券詐欺で逮捕され収監されるなど、資産家ではあるが悪名高い人物だ。このシーンは、そんな人物が歴史的に貴重な聖書を持っていたというギャグになっている。

とにかく顔が広いセージに、ホームランダーは嫉妬している様子で、イーロン・マスクと共にPayPalの創業者として知られるピーター・ティールや、元大統領のオバマもセージを頼ると認めている。全てを手に入れたように思われたホームランダーだが、世間の評判を気にしている。

息子のライアンとの関係についても報じられているが、ライアンはノルウェーの寮制の学校に行っているということにしているらしい。ライアンはシーズン4で対ホームランダーの武器として保護されそうになり、グレースを殺してしまった後、ブッチャーのもとにもホームランダーのもとにも戻っていなかった。まだフリーの状態なのだろう。

一方で、ホームランダーはスターライトの総会への侵入に怒っており、セージに「ゴドルキンに捨てられた」と指摘する。『ジェン・ブイ』シーズン2ではセージと組んでいたゴドルキンが復活を果たすと、能力者を“間引く”という独自のプランを実行しようとして暴走した。

ホームランダーの支持率は96%だというが、これも恐怖政治の賜物で、ホームランダー自身がそれを一番理解していた。人々の心の中にスターライターがいるという発言は芯をついている。よく分かってるじゃん。

しかしホームランダーが気にしているのは自分を馬鹿にするミームで、人々を自分に心酔させる必要があると、どこまでも矮小な考えを見せている。この点については、「力を手に入れても幸せになれない」とするセージの意見が正しい。

そんなホームランダーの矛先は、ザ・ボーイズに向けられる。スターライトとブッチャーが死ねば幸せになれるとして、3日後にヒューイとMM、フレンチーを処刑すると決定したのだった。

フリーダム・キャンプともう一人の“怪物”

会見でアシュリーが「妄想」と存在を否定したフリーダム・キャンプは存在していた。お揃いの星条旗柄の服を着て、フランスロックの定番Telephone「Hygiaphone」(1977) を聞くフレンチーの姿を見ているとちょっと楽しそうだが、この施設は『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話でテックナイトことロバート・ヴァーノンが建設計画に取り組んでいたことが明らかになった、反体制の人間を閉じ込めるための強制収容施設だ。入り口の看板をよく見ると「VERNON CORRECTIONAL SERVICES(ヴァーノン管理局)」と書かれている。

ヒューイはすっかり髭が伸びて雰囲気も変わった感じがする。演じるジャック・クエイドはシーズン1配信時は27歳だったが、シーズン5配信時には33歳になっている。キャンプ内でザ・ボーイズの面々は37便の映像が世に出たことを知るが、一方でキャンプ内ではちょっと自由な刑務所くらいの生活を強いられていた。

そして登場するのは、シーズン2、シーズン3、そしてシーズン4にも登場したラブ・ソーセージだ。シーズン4のラストではMMはラブ・ソーセージに捕らえられている。長大なブツを武器にする能力者だが、相変わらずモザイクがない。なお、『ザ・ボーイズ』シーズン5第1話のタイトル「15インチの強烈なダイナマイト」は原作コミックでラブ・ソーセージを表現した言葉だ。

シーズン4のラストで逃げおおせていたブッチャーはと言うと、飛行機の乗り換えのついでにロンドンの実家に寄っていた。シーズン2第7話で登場した、かつてブッチャーと弟のレニーを虐待していた父である。

母はもう死んだといい、独りになったブッチャーの父は以前より弱々しい。ブッチャーも触れているが、母とレニーが死に、父とブッチャーが生き残っているというのは皮肉なものである。ブッチャーは、レニーがマジック大会で優勝したが、父がそれをバカにしたと振り返る。

そしてブッチャーは、殴ってくれたおかげで今の自分がある。父親そっくりになったと告げる。これはシーズン2第7話で父が、虐待によってブッチャーは強くなったと誇り、父を「怪物」と非難するブッチャーに父が「お前も同じだ」と言い返したやり取りをそのまま反転させた内容になっている。

スーパーパワーを手に入れたブッチャーは身も心も怪物となり、それを認めたのである。「悲鳴を聞けば最高に笑える」と口にするブッチャーは、確実にホームランダーと同じ性質を持っていると言える。

キミコのその後

ホームランダーはファイアクラッカーの番組『真実の爆弾』で37便の映像は捏造であると説明することに(ついでに『ジェン・ブイ』シーズン2で若返ったゴドルキンの映像もAIということにしている)。番組スタッフの誰もがホームランダーを恐れて鼓動が速くなっていることに不満を抱いている様子。人に優しくできないと解決できないことなのだが、自己愛しかないホームランダーには難しいのだろう。

ザ・ボーイズで唯一まだ姿を見せていなかったキミコは、フィリピンのマニラにいた。つまり、ザ・ボーイズメンバーは能力者は全員外にいて、非能力者がキャンプにいるという構図になっている。

キミコの部屋のコルクボードにはフレンチーの写真とニュースの切り抜きが貼っている。そのうちの一つは、「ACLU(アメリカ自由人権協会)が収容人数の限界に達したフリーダム・キャンプについてヴォートと戦う姿勢」という見出しになっている。米国内でも戦いを続けている組織はあるのだ。

3人の処刑を前にキミコに会いにきたのはブッチャーだった。ブッチャーはマニラに行く前にロンドンに寄っていたのだ。CIAのジェットを待たせているといい、元CIA副長官グレイス・マロリーの死後も良好な関係が続いていることが示唆されている。

ディープ、キミコ、アニーの変化

フリーダム・キャンプでは、シーズン3で能力者管理局の職員として働いていたアイビーが登場。能力者管理局で働いていた人間はもうキャンプから出られないと諦めている。ヒューイはニューマンの下で能力者管理局のシニアアナリストを務めていた。なんか、はるか昔のことのように感じる……。

ヒューイは4シーズン分の死闘を生き抜いてきたが希望を失わなかったか無事だったと説明。やっぱりたくましくなっている気がする。そんな中、脱走しようとした人間を監視台にいたシンディーが爆破。シンディーはシーズン2でセージ・グローブ・センターから脱走した能力者で、シーズン4最終回でヴォート側の戦力になっていたことが明かされている。

ディープはインセル系のインフルエンサーとしてポッドキャストを収録しており、部屋のポスターには「MEN’S LIVE MATTER(男の命は大事)」「男性に平等を」と書かれている。その割に下には「#MENFIRST(男第一)」と矛盾する言葉も並んでいる。

ディープが言う「ベータ男」というのは、力強いリーダー気質の「アルファ」気質の男性の対義語で、受け身で消極的な男性のことを指す。セクハラ野郎だったディープは、女性に相手にされなくなり、むしろ女性を遠ざけるようになっている。性に関する話に限らず、このディープのスタンスの変化はシーズン5のテーマの一つになりそうだ。

その配信を見ていたスターライトことアニーの前に現れたのはキミコとブッチャーで、キミコはペラペラに喋れるようになっていた。キミコは生まれつき話せないわけではなく、小さい頃に目の前で両親を殺されたトラウマで喋れないようになっていたのだが、言語セラピーにも通ったのとTikTokのおかげもあって喋れるようになったらしい。なお、シーズン4のラストではフレンチーが連れて行かれた際に「No」と声を発していた。

ここでキミコは、捕まった後に扱いに困ってマニラに追放されていたと明かす。英語では「看守の顔面を引き剥がしてたから」とかなり怖いことを言っている。アメリカに戻ろうと飛行機の車輪に忍び込んだこともあったが、上空1万フィートから落下してバラバラになり、復活するのに時間がかかったとも。キミコ、喋るとこんなにヘンなのか(褒めてる)。

ブッチャーが能力者3人を集めたのは、非能力者3人の処刑を阻止するため。アニーはすぐに、ブッチャーが対能力者のウイルス開発のためにフレンチーが必要になったことを見抜いている。

3人は処刑が37便のビデオを公開されたホームランダーの罠だと分かっていても救出に挑むことに。ちなみに「クロワッサンが好きか」と聞かれたキミコが最高の笑顔で「doy(ドゥイー)」と答えているが、これは「当たり前じゃん」という意味の英語のスラングだ。

閉鎖された機関の意味

ホームランダーは、スターライトの投稿とホームランダーのミームに「いいね」をした罪で顔を引きちぎられた舞台担当のギャビンの前でブラック・ノワールとディープを叱責。株主総会でスターライトによるビデオの上映を許したからだ。

ディープの喉仏を撫で続けるホームランダーは、よくここまで変態的な行為が思いつくなと感心してしまう。残念な部下を持つホームランダーは、部屋の中のカプセルで眠る父・ソルジャーボーイの姿を見ている。ソルジャーボーイはシーズン4のラストで生きていることが明かされていた。

このシーンでもこの後でも、ブラック・ノワールは一言も言葉を発しない。2代目ブラック・ノワールは1代目が死んだ後から役者が入っているはずだが、シーズン5第1話の冒頭のスターライト戦で敗れて気を失っていた。中身が入れ替わっていてもおかしくない。

アシュリーは結婚したオー・ファーザーとインタビューを受けている。オー・ファーザーを演じるのはラッパーで俳優のダヴィード・ディグスだ。ドラマ『スノーピアサー』(2020-2024) で4シーズンに渡り主演を務め、実写版『リトル・マーメイド』(2023) ではカニのセバスチャンの声を演じた。

ここではアシュリーの能力が「読心能力(マインドリーダー)」とされている。確かに会見でも質問される前に答えていたが、シーズン4のラストでは異形に変化する様子も捉えられており、本当に読心能力の使い手なのかどうかは怪しいところだ。

インタビュアーのファイアクラッカーは「多様性・公平性・包括性」を意味する「DEI」は「DEVIL」の綴りに含まれると主張しているが、並びも違うし、陰謀論者らしいめちゃくちゃな主張である。相変わらず陰謀論者の解像度が高い。

シスター・セージはホームランダーがより逮捕者を増やすよう求めているとアシュリーに告げる。アシュリーは、すでにCIA、DOJ(司法省)、FBI、FTC(連邦取引委員会)、CDC(疾病予防管理センター)、EPA(環境保護庁)、DHS(国土安全保障省)、HHS(保健福祉省)、USPS(郵便公社)が閉鎖されたと不満げな様子を見せている。

第二次トランプ政権では、ICE(移民税関捜査局)への巨額の予算をめぐって議会で予算案が不成立となり、国土安全保障省や国防総省などの連邦機関が43日間にわたって閉鎖された。『ザ・ボーイズ』では郵便まで止めているというのがギャグとして成り立っているが、現実でも絶対ないとは言えなくなってきているのが悲しいところだ。

アシュリーは外国人労働者の追放に影響力がある性的マイノリティの排除にも言及しており、意外と最後の防波堤になってくれそうな感じもある。セージはアシュリーが大統領を目指していることにも触れている。Aトレインはヴォートを出ることを選び、アシュリーは残ることを選択したが、アシュリーが内部での役割を果たす時が来るのかもしれない。

ホームランダーの疑問と嫉妬

Amazonプライムビデオで配信されているドラマ『ジャック・リーチャー -正義のアウトロー-』(2022-) の脚本を書いているのは能力者のワーム。ブッチャーに脅されると思ったワームは「ミランダ・コスグローブはあの時19歳だった」と口走っているが、ミランダ・コスグローブは子役時代から活躍するセレブだ。

キミコとアニーにクロワッサンを持ってきたのはAトレイン。『ザ・ボーイズ』シーズン4でセブンを抜けて逃亡生活に入った後、『ジェン・ブイ』シーズン2ではアニーを助けていることが明らかになっていた。

ここでAトレインは、マリーたちはどうしているかと『ジェン・ブイ』でレジスタンスに加わった若きメンバーの様子をアニーに聞いている。アニー曰く「まだまだ」とのことだが、半年が経っても頑張って戦っていることは事実のようだ。

だが、Aトレインは意外にもヒューイたちの救出作戦には参加できないと拒否する。理由は明確で、そこには確実にホームランダーがいるし、Aトレインには守る家族がいるから、ということだった。

『ジェン・ブイ』シーズン2のラストを見ると、てっきりAトレインはレジスタンスに加わったものだと思っていたが、ある程度距離を置いて家族の世話をしながらアニーを助けていたということなのだろう。確かに『ジェン・ブイ』ではマリーらに「君たちはもうレジスタンスだ」と言っており、「俺たちはレジスタンスだ」とは言っていなかった……。

ブッチャーがいなくなった後、ザ・ボーイズのリーダーだったMMは、けれどキャンプの中では「出られたとしても戦いに勝てない」と希望を失っているようだ。その分ヒューイがたくましくなっているのだが。

そんなヒューイたちの前に現れたのは、ホームランダーだ。シーズン5は第1話からザ・ボーイズとホームランダーが直接対決、という展開に。ホームランダーがビリーブ・エキスポで初めてヒューイ会ったとして振り返るのは、シーズン1第5話でのエピソードだ。

ホームランダーは、なぜヒューイのよう平凡な人間がスターライトやブッチャー、ニューマンから尽くされ、命をかけられるのかと不思議がっている。嫉妬に近い感覚だろう。ヒューイは「僕もそうするから」と、相互扶助の関係であることを伝えるが、ホームランダーには理解できない。ホームランダーの辞書にあるのは「受け取る(Take)」ことだけで、「与える(Give)」ことが欠落しているからだ。

Aトレインとディープの差

Aトレインはフランスで家族を匿っていた。兄は自分を救ってくれたとAトレインを認めるが、そこに現れたのはディープだ。幸い家族を逃すことには成功し、Aトレインはディープにいずれ自分が追われる立場になると警告する。

ホームランダーを恐れて何も見えなくなっていると指摘されたディープは、「怖くない」と主張するが、Aトレインは自分も同じことを言ったとして、「情けない」と言い残して去って行ったのだった。Aトレインとディープは共にシーズン1第1話で問題を起こし、その後も何かと競り合う関係だったが、ファイナルシーズンでここまで差がつくことになるとは。

Aトレインの協力をとりつけられなかったアニーは電子タバコをふかすようになっており、ストレスの大きさを物語っている。一行はAトレインなしでフレンチーを優先的に助けることを確認するが、アニーは1年のレジスタンス生活の中で冷徹になってきており、キミコもそれに気がついている。

そんな中、喋れるようになって加減が分からないキミコがワームに「その声死ぬほどキモい」と言い放つシーンは和むが、一行はいよいよフリーダム・キャンプへの潜入を実行する。ワームはミミズのように土を食べて穴を掘ることができる。協力を渋るワームに、アニーは脅しを使って協力させている。極端な状況に置かれると皆が荒んでいく、今の世相を反映しているかのようだ。

また、ブッチャーはアニーがその居場所を知りながら1年間ヒューイたちを助けに行っていない理由について、闘争の成果が出せていないからだろうと指摘する。闘争の中で冷徹になりながらも、状況を改善できないアニーの罪悪感はシーズン5のテーマの一つになりそう。ブッチャーは「恥じることはない」と言ってくれているが、現実を生きる私たちにも共感できる部分があるテーマだ。

ホームランダーの歓喜と告白

ブッチャーたちはホームランダーが待ち伏せするキャンプ内に到着。ホームランダーがMMの由来を「マザーズミルク(母乳)」だと知って喜び、唇をペロリと舐めるというファン待望のネタも披露される。

ホームランダーは一瞬でキミコの胴体を真っ二つにする(デッドプール並の回復能力があるので死にはしない)と、透視能力でブッチャーの体内を見て「毒蛇の巣」と形容する。スーパーパワーを手にいれたブッチャーの体内で触手が蠢いているのを目にしたのだろう。「美しい」と称賛した上で、「私と渡り合うために……」と勝手に喜んでいる。

「それは信仰!」と勝手に認定したホームランダーは、二人は対等ではないが唯一自分に挑んできた人間として認めざるを得ないと告白。ホームランダーがブッチャーを「ウィリアム」呼びする数少ない人間であったこともリマインドされる。

だからこそ殺してしまうのは残念だと、ホームランダーが一人で情緒不安定に盛り上がっているところに、スターライトが閃光を放って奇襲を仕掛ける。スタングレネードのような効果で敵陣に隙が生まれると、ザ・ボーイズは囚人たちと共に逃走を開始するのだった。

再開したキミコとフレンチーが熱い口付けを交わすシーンは感動的だが、キミコは上半身だけというシュールな状態だ。アニーは計画通りにフレンチーから先に逃すが、置いていかれたと思ってパニックになったアイビーがホームランダーに見つかって殺されるという展開を迎える。

そんな中、MMは逃げずにラブ・ソーセージに戦いを挑むと、彼の“先っちょ”に刃物を突き刺す痛々しい展開を経て、二人の4シーズンを跨いだ戦いはついに決着。ラブ・ソーセージの最後は自分のアレに締め殺されたのだった。

ラストの意味は?

ついにホームランダー vs ブッチャーも実現するが、そこに現れたのは協力を拒んでいたAトレインだった。恐怖に支配されたディープの姿を見て、ホームランダーを恐れて逃げ隠れることを終わりにしようと考えたのだろう。

Aトレインがホームランダーのビームで殺されそうになっているヒューイを助けるシーンは、映画『X-MEN:アポカリプス』(2016) のクイックシルバーの名シーンを想起させる。ついに描かれたAトレインのヒーローとしての姿。シーズン1第1話でヒューイの恋人の命を奪ったAトレインが、今度はヒューイの命を救ったのだ。

Aトレインがホームランダーの囮になっている間にザ・ボーイズは脱走に成功。戻ってきたアニーにヒューイが「どこにいた?」と怒りを滲ませるのは、アイビーを救うことができなかったからだろうか。一方のアニーは、「どこにいた?」という言葉を「この一年」に対するものだと受け取ったかもしれない。

ホームランダーを引きつけるAトレインは、その途中で若い女性を轢きそうになり、咄嗟に避けたことで負傷する。もうヒューイの恋人を死なせた時の悲劇を繰り返したくなかったのだろう。その結果自分が命を落とすことになったとしても、Aトレインは悔いのない正しい生き方/死に方を選んだのだ。

最後にAトレインは、ホームランダーに空っぽだと言い放つ。能力がなければ何も残らない負け犬だと言って微笑むのだ。ホームランダーにとっては、平凡なのに愛されるヒューイと真逆の立ち位置にいると言われたようなものだ。しかもその能力というのは憎んでいる大人たちに与えられたものにすぎない。

ホームランダーはAトレインの首を折って殺すが、これでもうAトレインに言葉を取り消させることもできない。Aトレインの言葉はホームランダーの心に癒えない傷として残り続けるだろう。Aトレインはここで退場となったようだが、Aトレインの勝利と言えるラストだった。

『ザ・ボーイズ』シーズン5第1話ネタバレ感想&考察

Aトレインとディープの教訓

ドラマ『ザ・ボーイズ』の優れている点は、シーズン1第1話でAトレインとディープの罪を提示した後、4シーズンをかけて二人のその後を追い、ここまで違う結果を描き切ったことだ。保身と正当化に走ったディープと、真の反省と変化を受け入れたAトレインは、本当に自由になれたのはどちらだっただろうか。

ディープは性の問題を抱えていたが、端的に言えばディープは拗ねてしまい、女性を遠ざけるという道を選んだように見える。それは自分の中の問題を認めようとせず、外部に責任を見出す矮小な行為だ。

世間ではいまだに「キャンセル・カルチャー」という語を用いて、問題を起こした人物の復帰を要求したり、批判を防ごうとする人々がいる。批判を受けた側でその立場に回るのは大抵、自分の非を認め、学び、反省するのではなく、自責を認められず開き直ろうとする人々だ。

だが、本当に大事なのは当人が問題と向き合って真に反省したかどうかだ。そこが曖昧なままに復帰しても同じ問題を繰り返すだけなのだから。問題を起こした人間がヒーローになるまでの物語として、『ザ・ボーイズ』のAトレインのストーリーラインはとてもよくできていたように思う。

そしてのその反省と贖罪の過程は、ドラマというフォーマットとシーズンが何度も更新される人気作品という、長期的に物語が展開できる条件が揃っていてこそ描くことができたと言える。Aトレインの退場は寂しいが、『ザ・ボーイズ』特有の理不尽さの中ではなく、誇りの中で最期を迎えられたことには拍手を送りたい。

『ザ・ボーイズ』シーズン5の第1話は、第2話と同日配信となっている。続けてシーズン5第2話も見ていこう(シーズン5第2話の解説&考察記事の更新は4月9日(木)の夜を予定しています)。

ドラマ『ザ・ボーイズ』とスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』はAmazonプライムビデオで独占配信中。

『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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【ネタバレ注意】『ジェン・ブイ』シーズン2最終回の解説&考察はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。

『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

 

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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