『ジェン・ブイ』シーズン2第4話はどうなった?
Amazonプライムビデオの人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) のスピンオフとして展開されている『ジェン・ブイ』は、本家のファイナルシーズンを前にシーズン2の配信がスタート。ゴドルキン大学のキャンパスを舞台に、若き能力者たちの青春とヴォート社の陰謀が描かれる。
今回はドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2第4話の内容について、ネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、本作は16歳以上を対象とした作品で、過激な暴力描写と性描写を含むためご注意を。
以下の内容は、ドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2第4話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ジェン・ブイ』シーズン2第4話ネタバレ解説
フェイクだらけの世界
『ジェン・ブイ』シーズン2第4話「袋」の脚本は、シーズン1で最終回の脚本を担当したブラント・エンゲルスタインが『ドゥーム・パトロール』(2019-2023) や『エージェント・カーター』(2015-2016) に携わってきたクリス・ディンゲスと共同で手がけている。エピソード監督は『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』(2003-) などのオルリック・ライリーだ。
前回、ジョーダンはアンドレの死と自らがケイトを襲撃したことを世間に明らかにし、同時にヴォートによる隠蔽を告発した。シーズン2第4話の冒頭では、すっかり『ジェン・ブイ』でもレギュラーになりつつあるファイアクラッカーがニュースで、ゴドルキン大学が「“目覚めた”思想」と戦っていると報じている。
「目覚めた」というのは、差別や不平等に“気づいた”人々を揶揄する意味で近年使われるようになった「Woke」という言葉を指している。元は左派が自称する言葉でもあったが、近年は嘲笑する意図をもって右派によって使用される。「キャンセルカルチャー」など、ホームランダー側のキャラクターに“オルタナ右翼の言葉遣い”をさせる演出は『ザ・ボーイズ』本編から地続きのものだ。
ジョーダンの告発はケイトが否定したため「いいねを集めるための嘘」とされてしまっていた。テロップには「ジョーダン・リーは心理的な問題を抱えている」という文字も。さらにジャスティンは女子トイレでジョーダンが男性器を露出していたと虚偽の告発をし、「トランスから被害」とテロップがつけられている。
そもそもバイジェンダーのジョーダンを「トランス」という設定にしたのはゴドルキン大学の広報だ。そこにトランスジェンダーの人々への差別に使用される典型的で悪質なデマである「トイレでの性犯罪」を乗せられ、ジョーダンは行き場を失ってしまっていた。
それでもジョーダンは、いざランキングの1位になってみたら偽りだらけで、真実を語りたかったと想いをマリーに吐露する。「フェイクニュース」とは少し前にオルタナ右翼が流行らせた言葉だが、都合が悪いことを全てフェイクだとして嘘で塗り固めるカルチャーは現実にも確かに存在する(というか国のトップが堂々とやっている)。
〇〇ベンダーとは?
サイファーの部屋には、『ザ・ボーイズ』にも登場したヴォート社広報のセス・リードが登場。世間に受けるヒーローの設定を考えるスペシャリストである。セス・リードが提案したのは逆境を利用した商品展開。Tシャツの中には「私の性別(Pronouns)はKICK/ASS」という文字も。「she/her」など自身の代名詞を名前と共に表記する近年の文化を踏まえたものだ。
ジョーダンはナンバーワンだが精神が不安定で虚言を吐く、マリーはベイビーフェイスで良心を持つ、その二人が「ジェンダー・ベンダーvsブラッド・ベンダー」としてトップの座をかけて戦う——それがセス・リードがもってきた提案だった。
「ジェンダー・ベンダー」というのは性別(gender)が曲がっている(bend)人、つまり性別が分からないような格好をする人を指す古い言葉。「ブラッド・ベンダー」というのはそのまま、血(blood)を曲げる(bend)などしてコントロールできるマリーの能力を指しているのだろう。
サイファーは、マリーが世間に嫌われたジョーダンを痛めつけて勝利するというストーリーをすでに作っていた。エマも人質にとられ、ジョーダンとマリーには選択肢は与えられず、マリーは決闘に向けてサイファーとの訓練も命じられるのだった。
エマ、ジョーダン、マリーは、サイファーがマリーに何かをさせたがっていることを見抜いていた。前話ではサイファーがマリーの出生に関わっている(生まれるマリーを取り上げたのがサイファーだった)ことも明らかになっている。
マリーはケイトの記憶や行動を操る能力を利用してサイファーの狙いを掴むことを提案。因縁の仲となったジョーダンとケイトだが、『ジェン・ブイ』の良心たるマリーが間を取り持ってくれるのがありがたい。「ザ・ボーイズ」フランチャイズ全体で見ても珍しいほどの人格者である。
一方のエマは、前回知り合ったコピー能力者のハーパー、そして下の毛を操れるというアリーとハイになっていた。そこに現れたのは、アリーの兄で飛行能力があるグレッグ。シーズン2第2話のモデスティ・モナークの授業で「あの羽で飛べるのかな?」とエマに話しかけていた人物だ。エマには思想や学生運動を通して新しい友達ができたようで良かった。
流れている曲の意味は?
ケイトは能力を失ったことを隠しているため、前からサイファーの考えが読めないと説明する。それでも、ケイトはサイファーが家に機械音がする部屋を隠していると明かし、三人はマリーの訓練中にそのサイファーの家に踏み込むことを決断するのだった。
CMでは、かつてゴドルキン大学でクイーン・メイヴ vs ディープ、イーグル・ジ・アーチャー vs ブラインドスポットの試合が開催されたことが明かされている。イーグル・ジ・アーチャーはシーズン2に登場した弓を武器とするヒーローで、名前に「イーグル」と入っているが飛ぶことはできない。ブラインドスポットもシーズン2で登場した目の見えないヒーローでセブンメンバーの候補にもなったが、ホームランダーに鼓膜を破壊されている。なお、二人のマッチには「飛べない者 vs 見えない者」というコピーが付けられている。
また、「戦いがレジェンドを生み、レジェンドが神になった」としてホームランダーの姿も映し出される。『ジェン・ブイ』シーズン2ではまだホームランダー本人の登場はないが、様々な形でホームランダーを崇拝する演出が取り入れられている。メディアでしか登場しないが故の不気味さというか、今やさらに遠い存在となったことが感じ取れる演出となっている。
ジョーダンはヴィランとして、マリーはヒーローとして紹介され、「ブラッド・ベンダー vs ジェンダー・ベンダー」というコピーは「考え直す」と言っていたのにそのまま採用されている。しかも二人がリングに上がる映像は生成AIで制作されたという。おそらく『ジェン・ブイ』の制作現場としては生成AI風の映像を撮影していると思われ、だとすればなかなか手が込んでいる。
サイファーの家の前まで来たケイトとジョーダンは罵り合いながらも、過去の思い出を共有し、互いに怒りあい続けることにウンザリして和解を果たす。ケイトの能力はまだ戻っていなかったが、不完全な形で相手に影響を与えることはできるようだ。守衛から鍵を盗んだ二人は厳重なセキュリティの部屋に侵入。この部屋でレコードから流れている曲はアソシエイションの「Cherish」(1966) だ。
「あなたは私が何度あなたに伝えたいと思ったか想像もつかないでしょう/何度抱きしめたいとと思ったか」等と歌われているのだが、ポイントはこの曲が1966年に発表されて全米ナンバーワンのヒットを記録したことだ。『ジェン・ブイ』シーズン2第1話の冒頭では1967年を舞台にトーマス・ゴドルキンが登場しており、この部屋でカプセルに入っていた人物がゴドルキンと関係のある人物であることを匂わせている。
訓練とイーロン
エマはハーパーと小さくなる練習。友達ができて、「ひらめきを与えてくれる」と言ってくれる。エマが自分の能力を操れない背景には自己肯定感の低さがあり、新しい友人を通して自分に自信を持つことでエマはヒーローとしてレベルアップできるかもしれない。
一方のマリーもサイファーと血を操る訓練に取り組む。マリーはサイファーに対し、「落ち着いてくださいヨーダ」と、「スター・ウォーズ」シリーズの“マスター”の名を引用している。また、訓練のために連れてこられたヤギには「イーロン」という名が付けられている。
もちろんXのオーナーでいわゆる“テックライト(IT右翼)”の代表であるイーロン・マスクから取られた名前だ。イーロン・マスクは支持者から「GOAT(Greatest Of All Time=史上最高)」と呼ばれているのだが、『ジェン・ブイ』シーズン2第4話では、文字通り「Goat=ヤギのイーロン」というギャグでイジられている。サイファーも「この名なら罪悪感も少ないだろ」と言い、しまいには「イーロン・マスクを浮かせろ」と言ってしまっている。
ここでサイファーは、オデッサ計画とこの大学の目的はマリーを作ることだったとあっさり認める。トーマス・ゴドルキンが目指したのは最強の能力者を生むことだった、とも。「どのヒーローよりも強い能力者」というのはホームランダーを超えるということになるが、マリーから受けた指摘をサイファーは誤魔化している。
そんな中でヤギを体内の血ごと浮かせるという訓練は案の定、閲覧注意な結果に。マリーは集中しきれずヤギのイーロンを破裂させてしまったのだった。サイファーが「ジュリア・フォックスを連れてこい」と言うのは、ジュリア・フォックスがジョーダン・ピール監督の『GOAT』というホラー映画に出演する予定だったからだろうか(後に『Him』に改題され、9月19日に米国で公開された)。
サイファーの秘密
マリー、エマ、ジョーダン、ケイトは、サイファーの家で高気圧治療装置に入れられていた老人の正体について話し合うが、それよりもマリーは先ほどの訓練でサイファーの血の流れを読み取り、サイファーの体内にVが流れていないことを見抜いていた。サイファーは能力者ではなかったのだという。
ケイトとジョーダンがサイファーの家に忍び込んだことは防犯カメラの映像からサイファーに漏れていたが、能力者でないのなら怖くはない。一同はマリー vs ジョーダンの試合の日にケイトがサイファーから真相を喋らせて撮影する作戦を採用したのだった。
試合の解説席にはシーズン2第2話で登場したバイコーが座っている。番組のテロップには、マリーの能力について「ヘモキネシス(Hemokinesis)」との表記が。「血」を意味する「Hemo」と「運動」を意味する「キネシス」を合わせた言葉で、元は「血流」を意味するが、ここでは「血を操る能力」という意味で用いられている。
エマはハーパー、アリー、グレッグの協力を得てサイファーの発言を録画するためのスパイ作戦を実行。エマがアリーに「ブッシュマスター」というヒーロー名をつけるのは、アリーがメデューサのように、つまり蛇のように“毛”を操れると言っていたからだろう。ブッシュマスターは蛇の一種で、マーベルにも同名のヴィランがおり、ドラマ『ルーク・ケイジ』(2016-2018) では実写化もされている。
ラストの意味は?
ジョーダンは試合前に自分の能力に気付いたのは6歳の時で、小さい頃から憎悪を受けてきたと明かす。会場ではジョーダンを“罰する”ことを望む観衆が詰めかけており、かつての状況が目の前に広がっていると弱気な姿を見せている。しかし、マリーは全てがフェイクであり、あなたは本物、それが大事だとジョーダンに言ってやる。たった一人からの肯定に元気づけられる時もある。
ケイトと面会したサイファーが高気圧治療装置の中の老人は父親だと話す一方、水道管を通ってサイファーの部屋を目指すエマだったが、職員が管に水を流してしまう。アリーが“毛”を操りなんとか水道管の栓を閉めるが、エマは流されてトイレの便器の中に行き着いてしまう。そこに入ってきたサイファーのトイレシーンが始まり、アリーとサイファーで謎のモザイクシーン畳み掛けが披露されている(日本オリジナルの加工だとは思うけど)。
マリーとジョーダンの試合が始まると、ジョーダンは「半分男、半分女で私たちを欺く」と紹介される。酷い仕打ちだが、マリーが大人なのに「少女(girl)」と紹介されている点もポイントだ。主催側ははなから二人を対等な人間として扱っていないのである。
エマはケイトとサイファーの会話を盗撮するカメラを置くことに成功。自分で元の大きさに戻ることにも成功していた。エマは新しい友と共に成長していて、シーズン2第4話においては唯一のびのびとしている。
ケイトはマリーから得た情報を使って能力が戻ったフリをし、サイファーが能力者ではないと指摘。合わせてマリーはジョーダンに口付けをして試合を終わらせようとする。ところが、サイファーにはケイトの能力が戻っておらず、血流にVが流れていないこともマリーから得た情報だと見抜かれていた。盗撮もバレている。なかなかの強敵である……。
さらにサイファーは能力を使って(?)ジョーダンを意のままに操りマリーと戦わせると、マリーはヤギのイーロンで練習した血を操って対象を浮かせるという技を披露し、不本意ながらジョーダンに勝利を収めたのだった。やっとサイファーを追い詰めたと持ったら、最後はサイファーの思い通りに……。やっぱり厳しいシーズン2、第4話の折り返しだった。
『ジェン・ブイ』シーズン2第4話ネタバレ考察&感想
新たな二つの謎
『ジェン・ブイ』シーズン2第4話では、前回ラストのジョーダンの決死の告白も“嘘”とされてしまい、ヴォートが新しいストーリーラインを作るためにマリー vs ジョーダンの試合を組まれてしまった。これにマリーが勝利したことで、サイファーの狙い通りにマリーがランキング1位の学生になるのだろう。
シーズン2第4話ではサイファーに関する謎が二つ提示された。一つはサイファーに家に隠されていた老人について。サイファーは「父」だと話していたが、これが本当かどうかは分からない。サイファーの自宅で父親に高気圧治療を受けさせていただけなら何の問題もないため、単にサイファーが嘘をついている可能性もある。
ポイントはあの部屋で1966年に発表されたアソシエイションの「Cherish」が流れていたことで、シーズン2第1話の冒頭で1967年を舞台に登場したトーマス・ゴドルキンとの繋がりを連想させる。あの人物がゴドルキンその人で、サイファーの本当の父であったか、能力者としてのサイファーを生み出したという意味で“父”と呼んでいる可能性は大いにある。
もう一つはの謎はサイファーの能力について。マリーはサイファーの血中にコンパウンドVを感知できなかったことから能力者ではないと判断したが、サイファーはジョーダンを意のままに操るという力を発揮した。触れた相手を操れるケイトのように。
シーズン2第2話では、サイファーは退院前にケイトの病室を訪れていたが、そこで何をしたかは描かれることがなかった。サイファーはもしかすると、ケイトの力を奪ったのではないだろうか。だがそうだったとしても、あるいはサイファーが元々他者を操れる能力の持ち主だったとしても、問題になるのはVが血中に流れていないということだ。
コンパウンドV以外の方法が…?
そもそも「ザ・ボーイズ」フランチャイズの能力者たちは、フレデリック・ヴォートが開発したコンパウンドVによって能力を得ている。フレデリック・ヴォートは元々ナチスの科学者で、世界初の能力者はその妻でナチスのメンバーであったストームフロントだった。
コンパウンドVは生まれてすぐに投与されることで被験者は安定して能力を得られるが、大人に使用するにはリスクがある。そこで開発されたのが即効性V(V24)で、寿命と引き換えにヒューイやブッチャーが能力を得ている。
一方、最強のヒーローを作り出すために設計して生み出されたのがホームランダーとライアンだ。ホームランダーはソルジャー・ボーイの、ライアンはホームランダーのDNAを用いて誕生している。つまりはVを引き継いでいるということだ。
サイファーの場合は血中にVがないのに能力が使える。そして、『ジェン・ブイ』シーズン2第4話ではマリーがかつてのホームランダーと同じように計画的に作り出されたことも明かされた。
考えられる仮説は、フレデリック・ヴォートの右腕と紹介されていたトーマス・ゴドルキンが実はフレデリックと対立していた、あるいは別々の道を歩んでいたというものだ。フレデリックはコンパウンドVとともに製薬会社だったヴォート社を拡大していったが、ゴドルキンはコンパウンドV以外の方法で能力者を生み出すためにゴドルキン大学を作ったのではないだろうか。
1967年の場面では、ゴドルキンがVのような薬を投薬しようとする成人男性たちを必死に止めているシーンもあった。ゴドルキンが開発した“Vを使わない方法”で能力者になったのがサイファーで、その方法を転用してホームランダーに対抗できる最強のヒーローを作るために設計されたのがマリーだったとしたら……。マリーとホームランダーは、大学と企業、アカデミズムと資本主義の代表として産み落とされた最高(最低)傑作なのかもしれない。
他の面々に視線を移すと、マリーとケイトらが和解した一方で、エマに新しい友達ができたのは良かった。グレッグの飛行能力もどこかで役に立つのだろう。エマのチームは一人一人の能力は強力ではないものの、協力することで目標を達成できるようなチームであってほしい。それにしても、サムは一体どこへ……。
ドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2はAmazonプライムビデオで独占配信中。
『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
『ジェン・ブイ』のベースになったチャプター〈We Gotta Go Now〉(23話〜30話)は日本語版の第2巻に収録されている。
『ジェン・ブイ』シーズン2第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。
シーズン2第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。
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『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。
キャストが登壇した2025年のサンディエゴ・コミコンの『ジェン・ブイ』パネルの模様はこちらから。
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『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。
