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【レビュー】『未来のミライ』から読み取る「他者への想像力」—「家族の物語」を越えて

『未来のミライ』が教えてくれる「他者への想像力」

遂に封切り! 気になるテーマは?

先週末、細田守監督最新作『未来のミライ』がいよいよ封切りとなった。週末だけで約30万人を動員し、本格的な夏休みシーズンを前にして、順調なスタートを切っている。一方で、気になるのがその評価である。同作では子育てや兄妹の関係に焦点を置いていることから、ネット上では、「若年層や独身の人々には感情移入できない」という意見が多く見られる。夏休み前で、まだ客層に家族連れが多くないということも影響しているのかもしれない。だが、『未来のミライ』が伝えてくれるものは、「家族の絆」というようなシンプルなテーマだけなのだろうか。

「家族の物語」を越えて

『未来のミライ』のテーマは、「家族の絆」だと言われているが、果たして本当にそうだろうか。公式サイトに掲載されている、「最小のモチーフを用いて、最大のテーマを語り切りたい」という細田監督のコメントを見逃すべきではないだろう。
家族が社会における最小単位であるという建前は、ジャン・ジャック・ルソーの『社会契約論』の中でも述べられていることであり、人類は長らくこの言説に依拠してこの社会を運営してきた。近年では多様なコミュニティの在り方が広がると共に、「家族」という言葉の定義も拡大され始めている。それでも、大きな社会を描くにあたって、「家族」という単位が最もシンプルで、描きやすい題材だということに異論はないだろう。では細田監督は、この「家族」という題材を用いて、作品にどんなメッセージを込めたのだろうか。

若年層には共感しづらい設定か

『未来のミライ』のプロットは、妹の”未来ちゃん”の誕生以降、家庭内で疎外感を感じている4歳児の”くんちゃん”が、不思議な世界へと旅立ち、様々な経験を通して家族との軋轢を克服していくというものだ。物語の冒頭で、この作品はリベラルなインテリ中流家庭の話だということが分かる。今時こんな若き中流家庭が存在するのかという疑問も浮かぶほど、「共感」を狙うには少々ハードルが高い設定のようにも思える。「若くして一軒家を持つ四人家族」が非現実的な存在になってしまった若年世代にとっては、やはり絵空事だと感じるのも無理はないだろう。

他者の物語に対する想像力

だが、上述の通り、「家族」というモチーフを扱ってはいるものの、それはあくまでも社会の中の「最小のモチーフ」という風に捉えることもできる。この物語に込められたより大きなメッセージは、「他者との対立をどう乗り越えていくか」ということであり、「他者の物語に対する想像力」を持つことの重要性なのだ。強く見える母の心にも傷があり、無責任に思える父もいくつもの「初めて」を乗り越えて成長してきた。自らの生は戦争を生き延びた人々の歴史の先にあり、今は会話できない幼い妹にも感情豊かな人間に育つ未来が待っているのだ。

4歳児の“くんちゃん”に必要だったもの

つまるところ、『未来のミライ』に込められたメッセージは、ごく当たり前のものなはずだ。個々人がそれぞれの物語を抱えて、共同体の中で生活している。そして「他者同士」が共存するコミュニティは、他者の置かれている立場への想像力なくしては成り立たない。だが、4歳児はもちろん「他者性」を持っていない。故に、”くんちゃん”は、過去との繋がりや他者の痛みといった抽象的で観念的なものを、SF/ファンタジーという手法を通して直接的に学んでいくのだ。

「共感できない」の向こうへ

このようにして『未来のミライ』を読み解いていくと、先に挙げた「若年層や独身の人々には感情移入できない」という意見にも、一つの答えを与えてくれる。立場の違う相手が置かれている状況に思いを寄せ、互いを尊重することで衝突を乗り越えていく—それこそが『未来のミライ』の劇中で描かれた営みではなかっただろうか。私達は作品に、「共感させてもらう」ことを期待しすぎているのかもしれない。『未来のミライ』が、まさにその「共感できない相手への想像力」について説いているのだとすれば、「共感できない」というところで足踏みしてしまっている私たちは、そうした感覚を十分に身につけているとは言い難いだろう。「戦争の時代を生き抜いた人々がいる」、「親も苦労して育った」、という至極当然のことを、SFを通して、まだまだ学んでいく必要がある。もしかすると、私たちは皆、「不思議な世界への冒険」を必要とする”くんちゃん”なのかもしれない。
『未来のミライ』は7月20日(金)より、全国でロードショー。

『未来のミライ』公式サイト

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via: © 2018 スタジオ地図

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