『ホウセンカ』アヌシー映画祭でプレミア開催
フランス・アヌシーで開催された「アヌシー国際アニメーション映画祭 2025 (Festival international du film dʼanimation dʼAnnecy 2025)」にて『ホウセンカ』がワールドプレミアを迎えた。 『ホウセンカ』は、予測不能なストーリーで話題をよんだオリジナル TV アニメ 「オッドタクシー」を手掛けたクリエイタータッグ・木下⻨(監督・キャラクターデ ザイン)×此元和津也(原作・脚本)と、国内外の映画祭で注目を集めた『映画大好きポンポさん』『夏へのトンネル、さよならの出口』を手掛けた制 作スタジオ・CLAP により生まれたオリジナルアニメーションだ。
本作は昨年開催された「アヌシー国際アニメーション映画祭 2024」にて、制作途中のプロジェクトを監督自ら紹介するプログラム「Work in Progress」にも選出された。ついに完成を迎えた今回、長編コンペティション部門で満を持しての初披露となり、ワールドプレミアの公式上映では約900席が満席に。舞台挨拶には、木下⻨監督・松尾亮一郎プロデューサーが登壇し、作品に込めた想いを語った。
上映中はテンポよく笑いが起こる場面も多く、やがて静かな感動が会場を包み込んだ。上映後にはスタンディングオベーションが巻き起こり、観客の熱気は冷めやらず、監督がその場でサインに応じる一幕もあった。さらに翌日には公式のサイン会が行われ、各国から集まった老若男女のファンで⻑蛇の列をなし、『ホウセンカ』や木下監督への国際的な注目度が色濃く表れていた。
『ホウセンカ』はあるヤクザの男の人生と愛の物語。 独房で孤独な死を迎えようとしていた無期懲役囚の老人に、「ろくでもない一生だった な」と 声を掛けたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。“会話”の中で、老人は自身の過去を 振り返り始める。男が人生を懸けた“大逆 転”とは何か。そしてその先に浮かび上がる物語とはーー。
ワールドプレミア オフィシャルレポート
▲公式上映に登壇した木下⻨監督・松尾亮一郎プロデューサー/公式上映会場の様子
フランスの現地時間 6 月 8 日(日)より開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭 2025 にて、現地時間 6 月 12 日 (木)13:00(日本時間 6 月 13 日(木)20:00)に木下⻨監督の『ホウセンカ』がワールドプレミア上映され、木下⻨監督、松尾亮一郎プロデューサー(株式会社 CLAP)が登壇した。
世界最大規模のアニメーション映画祭として知られるアヌシー国際アニメーション映画祭。TV アニメ「オッドタクシー」で一躍話 題となった木下監督が⻑編映画を手掛けるのは今回が初めて。昨年、制作中の作品をプレゼンテーションする Work in progress 部門での本作出品に続き、今年の⻑編コンペティション部門にて 2 度目のアヌシー国際アニメーション映画祭参加 となる。1 年ぶりの凱旋に、多くのファンが期待とともに作品を出迎えた。
ワールドプレミアとなる公式上映の会場は映画祭最大のスクリーンとなるボンリュー劇場。949 席のチケットは受付開始とともに 即完売し、当日券を求める人々が会場前に列を成す盛況振り。上映前にはステージへ作品の期待を込めて紙飛行機を飛ば すのが恒例だが、本作でもたくさんの紙飛行機が数多く飛ばされていた。
木下監督、松尾プロデューサーは本作の重要なキャラクターであるホウセンカのぬいぐるみとともに舞台へ登壇。会場に詰めかけ た観客から大きな歓声と拍手で迎えられた。まずはじめに松尾プロデューサーが 2022 年に『夏へのトンネル、さよならの出口』 でもこのステージに立ったことに触れつつ、「『ホウセンカ』という作品は日本では企画が成立するのがなかなか難しい作品なんで すけども、アヌシーで『夏へのトンネル〜』が賞を獲ったことが後押しになり実現できました。」と、感慨深く語り、「木下⻨監督のア イデアと脚本の此元和津也さんのストーリーテリングによって、とても見応えのある素敵な映画になったと思っていますので、皆さ ん楽しんでいってください。」と観客にメッセージを贈った。
松尾プロデューサーからマイクを受け取った木下監督は「Bonjour!(こんにちは)」と完璧な発音のフランス語で会場に挨拶。 会場からも「Bonjour!」と返ってくると、今度は「Ça va?(元気?)」「oui(元気!)」と、流れるようなコール&レスポンスに会 場は大盛り上がり。大きな拍手に応えながら「本当は賢いんですけど、この後は日本語で喋りますね」と会場の笑いを誘った。 一転、「今日は見に来てくれてありがとうございます」と観客への感謝を伝えながら「この作品は、美しさと純真さを大切にして作 りました。美しさは人生を豊かにします。美しさは日常生活の身の回りに実はありふれています。しかし、我々は見過ごしてしまう ことが多いんです。ただ、この映画はそこに向き合って、美しさとはなにか、純真さとはなにかを突き詰めて考えた作品です。これ を見た人は今日はとてもいい気持ちになると思います。今晩、寝る前にまた思い出して欲しいのですが、今日はいい日だったな、 と思うはずです。僕はその自信があります。」と映画に込めた思いを語り、出来栄えへの自信が垣間見えた。
上映が始まると、テンポのよい会話劇に会場からは大きな笑いが何度もあがった。笑いばかりではなく、衝撃の展開に没頭して いた観客が息を呑む場面も。終盤では思わず涙する人の声で溢れ、心に残るストーリーであることが伺えた。上映終了後は、 会場中央で見ていた木下監督、松尾 P を割れるようなスタンディングオベーションが迎えた。また、会場に残るファンの熱は引き きらず、その後も異例となる形でその場で囲まれサインをする一幕もあった。会場で作品を見た観客は「素晴らしい芸術品で す。」「美しいストーリーで構成が素晴らしかった。」「最後まで見ると、大逆転に至るまでの全ての過程が理解できます。終わり は本当に最高潮に達し、感動的でした。」「とても感動し、息を呑むような体験でした」と大絶賛。ヤクザと花の物語が国を問わ ず多くの人々の心を震わせた。
また、翌日にはサイン会が実施され、老若男女様々な 100 人を超える多くの人が詰めかけ、⻑蛇の列をなした。サインを求め る人々の中には「オッドタクシー」のファンも多く見られ、ファンアートや自身で手作りしたグッズなどを持参し、「今日のためにイギリ スから来た」という人も。それぞれ熱心に木下監督に 「オッドタクシー」『ホウセンカ』の感想を伝え、監督は身振り手振りを交えつ つ丁寧にその声に応えていた。フランスのみならず、イギリス、アメリカ、タイ、台湾など様々な国籍のファンが訪れ、多くの地域で 木下監督に注目が集まっていることが伺えた。
世界中のアニメファンを魅了し、注目が高まる『ホウセンカ』。今後の続報に期待しよう。
映画『ホウセンカ』は2025年秋公開。
©此元和津也/ホウセンカ製作委員会
■クリエイタープロフィール
・木下⻨ (https://www.pics.tokyo/member/baku-kinoshita/)
アニメーション監督/イラストレーター 多摩美術大学在籍時からイラストレーター/アニメーターとして活動。アニメーターや監督補佐を経て、オリジナル TV アニメーション「オッドタクシー』で 自身初となる監督、キャラクターデザインを担当。同作で Crunchyroll Anime Awards 2022 / Best Director、第 25 回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 新人賞などを受賞した。 アニメーションの演出やコンセプトアート、キャラクターデザインなど幅広く活動分野を広げている。 P.I.C.S.management 所属。
・此元和津也 (https://www.pics.tokyo/member/kazuya-konomoto/)
漫画家/脚本家
2013 年〜2017 年に連載した漫画『セトウツミ』が、映画化&ドラマ化の大ヒット作品となる。2019 年、映画・ドラ マ・Hulu オリジナルストーリー展開の『ブラック校則』で、本格的に脚本家としての活動を開始。2021 年に放送され た TV アニメ「オッドタクシー」でオリジナル脚本を手掛け大きな話題を呼んだ。現在は独自の作家性を生かして、漫画 以外の領域へも活動の場を広げている。P.I.C.S.management 所属。
・CLAP (https://clapclap.co.jp/)
2016年に映画「この世界の片隅に」を担当したアニメーションプロデューサーの松尾亮一郎が設立。映画作品を中心 に、高品質な映像作品を手掛け続けるアニメーションスタジオ。制作作品に、『映画大好きポンポさん』(2021 年)、 『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022 年)ほか。『夏へのトンネル、さよならの出口』は、2023 年アヌシー国 際アニメーション映画祭ポール・グリモー賞、第 32 回日本映画批評家大賞をそれぞれ受賞している。
第一報はこちらから。
同じくアヌシー国際映画祭で公開された『アイズ・オブ・ワカンダ』の情報はこちらから。
映画『大長編 タローマン 万博大爆発』の情報はこちらから。