『ラストマン』スペシャルドラマが放送
2023年にTBS「日曜劇場」で放送されたドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』は、全話12%超えという高視聴率を記録した人気作品。2025年12月24日(水) からは初の劇場版となる『映画ラストマン -FIRST LOVE-』が全国の劇場で公開された。
そして、12月28日(日) には、2025年最後の「日曜劇場」枠でスペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』が放送された。時系列的にはドラマ『ラストマン』と『映画ラストマン』の間に位置する物語が描かれる。
今回は、スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』をネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末のネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』ネタバレ解説&考察
皆実の嘘と心太朗の傷
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』の冒頭の舞台は2023年のニューヨーク。ドラマ『ラストマン』のラストでは心太朗が交換研修生としてワシントンに行くことが決まっていたが、『映画ラストマン -FIRST LOVE-』の冒頭では皆実と心太朗のコンビがワシントンとニューヨークで活躍したことが紹介されていた。
ニューヨークのクラブでピアノの連弾を披露する二人。これは国際テロ組織ヴァッファに対する潜入捜査の一環なのだが、皆実がピアノを弾いて心太朗が歌うジャズバージョン「残酷な天使のテーゼ」が普通に良い。
二人とFBIのチームは幹部のヤレノを逮捕することに成功するが、日本の闇バイトと同じように指示役のプランナーの正体は不明のまま。心太朗が研修を終えて2年後、皆実がテレビ出演のために再び日本を訪れるところからスペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』の本編は幕を開く。
皆実と心太朗は帰国直前に大喧嘩したらしく、その理由は、皆実が余命半年の宣告を受けていると心太朗に明かし、それが嘘だったからだという。それだけでなく、皆実は心残りは弟の幸せだと言い、佐久良にプロポーズするよう心太朗に頼んでいた。
心太朗は唯一の肉親が死ぬと知り一晩中泣いたが、なんとかならないのかと医者を問い詰めに行った際に嘘であったことが分かったという。「ついて良い嘘と悪い嘘がある」という心太朗の言葉はほんとその通りで、一晩中泣いてアメリカまで医者を問い詰めに行った心太朗は、よっぽど皆実を失うことが怖かったのだろう。
一方、デボラ曰く、佐久良は心太朗について「意気地なし」と言っていたという。『映画ラストマン』では皆実の初恋が描かれたが、スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』では、心太朗と佐久良のロマンスも注目ポイントの一つになっている。
皆実、心太朗、佐久良、それぞれの動き
皆実は『情熱大陸』に出演することになったようで、TSVテレビの放送センターへ。時を同じくして五ノ橋総理が報道番組の生放送に出演していた。スペシャルドラマで鍵になるもう一人の人物が、松本若菜演じる報道キャスターの播摩みさきだ。播摩は不倫報道によって番組を降板させられることになっていた。
番組が進行する中、首都電力の変電所2箇所で爆発が起き、東京を大規模停電が襲う。テレビ局はガス発電を利用した自家発電設備があるため停電にはならなかったが、そこにテロ組織ヴァッファが爆弾を持ってスタジオを占拠。皆実も人質としてスタジオに閉じ込められてしまう。
ということで、スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』では、ほとんどの時間を皆実と心太朗が別々に行動することになる。今回は、付き添っていた警視庁総務部の広報課職員である渡辺宗也が皆実の相棒に指名されている。
スタジオに設置された爆弾を脅しに使い、犯人グループは生放送を続行させる。事件を受けて対応にあたる警視庁では吾妻と泉も登場。泉はドラマから二年を経て管理官になっており、随分しっかりした姿を見せていてちょっと感動してしまう。
皆実はアイカメラを通してモールス信号で警視庁の心太朗と放送センター内に潜伏している佐久良と連絡を取り合い、事件解決へ向けて動き出す。意外にも『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』では佐久良が実働部隊として現場で動くことになる。
アレを思い出す総理の罪
スタジオを占拠した犯人の要求は10億(約1,558億円)ドルを用意すること。渋谷の街が6箇所映し出され、そのうちの一つで爆発が起きる。爆弾捜査にあたる機動隊として、ひょうろくがサプライズ出演する展開も。だいぶ挙動不審だったが、ただの警察だったようだ。
そんな中、心太朗が宮益坂で爆弾を発見。処理の時間がなく爆発が起きてしまうが、心太朗はヘッドフォンをして屋上にいたビルの従業員を助けることに成功する。この辺りの大胆な行動力もFBI研修の成果が出ているのだろう。
犯人グループはこうして本気であることを示すと、5年前に厚生労働大臣だった五ノ橋総理が、海外から感染症の特効薬を大量に購入し、結果として4,000億円以上の薬を廃棄することになったと指摘。業者の言い値で443億円の契約を結び、8,300万枚の在庫を残した“アベノマスク”を思い出させる展開だ。
総理は海外の製薬会社からマージンを受け取っており、そのスキャンダルの証拠を掴んだ播摩キャスターについて、週刊誌を使って不倫記事を書かせ、降板に追い込んだと指摘される。播摩は五ノ橋総理によってキャスター人生を断たれていたのだ。
正直に認めなければスタジオの爆弾を爆発させるという脅迫により、総理はマージンを受け取ったこと、局に圧力をかけたこと、不倫記事を書かせて播摩を辞めさせたことを認める。おそらく脅されて話しているので証言に証拠能力はないものの、生放送で発信されていることが重要なのだろう。
真犯人の正体と動機
さらに犯人グループは、上野駅、東京駅、銀座四丁目交差点、新宿駅、国会議事堂、警視庁の爆弾が爆発すると予告。10億ドルを振り込むよう迫る。そんな中、防犯カメラの映像から、カメラを設置していたのは播摩と不倫関係にあったと報道された元番組スタッフの栗原だということが明らかになる。
心太朗から警視庁にいるように言われた泉管理官だが、自ら栗原の自宅へ向かっている。この辺りの無鉄砲さは心太朗の影響だろうか。一方、佐久良は左腕を撃たれながら放送センター内の制御室を奪取。防犯カメラは心配しなくて良くなったのだが、ここで皆実は播摩キャスターが犯人グループの一味であると指摘する。
五ノ橋総理がスタジオから逃げようとした時に、播摩は「防犯カメラで見ている」という犯人グループからのメッセージを読み上げた。しかし、五ノ橋総理が動いてからメッセージを読み上げるまでが早すぎたため、一連の流れを音で聞いていた皆実が播摩自身の言葉で喋ったことを見抜いたのだ。
そして播摩は自分が今回の事件の首謀者であることを明かす。栗原とはホテルのロビーで打ち合わせをしただけだったが、不倫として報道され、播摩のは母は心労が祟り亡くなっていた。栗原も妻と離婚し、それを受けて週刊誌は播摩のせいだと書きたて、SNSで批判が起こる——。恐ろしいのは悪に染まった人間ではなく、自分が正義だと勘違いした人たちであり、自分たちの正義がいかに曖昧なものなのかを伝えたかったというのが播摩の主張だった。
吾妻がいる警視庁を含む6箇所で爆発が起きたかに思われたが、実際には爆発は起こっておらず、映像はテレビ局で働く栗原が作ったフェイク映像だった。視聴者が真実だと思い込んでいることが事実ではないということを証明したかった、それが播摩と栗原の動機だったのだ。
「真実を見抜く目」を育てる方法
ところが、スペシャルドラマ『ラストマン』にはもう一展開用意されていた。播摩がテログループとして雇ったのはヴァッファだったが、ヴァッファは金を手に入れて用済みになったため、スタジオを播摩ごと爆発するつもりだった。
播摩と栗原は渋谷の爆弾も偽物だと思っていたが本物で、スタジオの爆弾もヴァッファが用意した本物だった。播摩自身が真実が見えていなかったという逆転の展開で、播摩はスタジオに残って責任を取ろうとするが、ここで皆実だけが播摩のもとに残って説得を試みる。
渋谷の爆発が本物であり、転じてスタジオの爆弾も本物であることを播摩に知らせてくれたのは、SNSにアップされた映像だった。皆実は、SNSははたまには真実を伝えてくれる、必要なのは「真実を見抜く目」であり、それを育てるためには誰かが真実を伝え続けるしかないと訴えかける。『報道特集』という権力と真実に切り込んでいく報道番組を持つTBSのドラマだからこそ説得力のあるセリフだ。
そして皆実は播摩に、「目の見えない人を助ける」という逃げるための口実を与える。「私をスタジオの外に連れ出してください」と命懸けの交渉に打って出るのだ。そして播摩は皆実を連れて走り出し、間一髪のところで脱出に成功したのだった。
皆実は五ノ橋総理の成敗も忘れていない。播摩への同情が集まりやすくなるように、五ノ橋総理を煽って暴言を吐かせると、アイカメラでそれを録画していたのだった。抜かりないのもそうだけど、最後はやっぱり弱い人の側に立ってくれるから皆実という人は嫌いになれない。
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』ラストをネタバレ解説&考察
皆実の嘘の真実
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』のクライマックスでは、スタジオでの事件は解決したものの、ヴァッファは逃走している。渡辺という新しい相棒を連れてヴァッファを追っていた皆実だったが、渡辺が犯人グループの一味であったことが明らかになる。演じる上川周作の悪役顔が素晴らしい。
一方の心太朗はデボラから、皆実と心太朗がヴァッファの幹部を次々と逮捕したことで、ヴァッファは皆実と心太朗に懸賞金をかけようとしていたと聞かされる。皆実は心太朗を守るために離れる決意をし、それでもう命が長くないと嘘をついていたのだった。そして皆実だけに懸賞金がかけられたのだという。その誰かを守る独善性、本当に皆実らしいよ……。
デボラは、靴に入れているGPSの情報を心太朗に教え、心太朗は渡辺に捕えられていた皆実の元に到着。助けに来たシンディが躊躇なく発砲したのは、FBI研修の成果とされている。嘘をつかれて傷ついていた心太朗の心のモヤモヤが晴れたところで、ようやく今回のスペシャルドラマで最強バディが合流することになった。シンディが皆実の目になり、二人は銃撃戦を制していく。やっぱり皆実の相棒は心太朗でなくては。
佐久良救出作戦
皆実と心太朗は、10億ドルの身代金の要求には無理があると考えていたところ、宝石店に火事場泥棒が入ったことが明らかになる。大規模停電はセキュリティ装置を解除するための作戦で、総理を人質にしたのも、爆発を起こしたのも目眩しだったのだという。ヴァッファが政治性のない金稼ぎの集団であることを示す演出だ。
だがここで、佐久良が渡辺に拘束されていることが知らされる。心太朗が予告で言っていた「死んでも助けてやるから」は、皆実ではなく佐久良に向けての言葉だった。二人は佐久良を助けに向かうが、渡辺の狙いは三人まとめて爆破することだ。
現場の映像を遠隔で見ていた渡辺は二人が佐久良を助けに来たところで現場を爆破するが、実はこの映像はフェイク映像だった。渡辺たちが出て行った直後に泉たちがアジトに踏み込み、カメラで撮影した映像を3分遅れで再生していた。つまり、渡辺は3分前の映像を見ていたのである。
実は皆実は最初に渡辺と会った時、広報課なのに火薬の匂いがしていたため、渡辺は警察官ではないと判断していた。皆実はスタジオの時点で渡辺の襟にGPSを仕込んでおり、それで泉たちがすぐに現場に駆けつけることができたのだ。
渡辺は最後の悪あがきを見せるが、心太朗が早撃を披露。もう日本の警察とは思えないほど銃を撃ちまくっている。「私は日本の警察です」と言って皆実から預かった銃を使わなかった佐久良とは正反対だ。
『映画ラストマン』では、泉も躊躇なく発砲する姿勢を見せているのだが、スペシャルドラマのこの場面の心太朗が、援護に駆けつけた泉に影響を与えたのかもしれない。泉は銃を持って駆けつけ、犯人を包囲したにもかかわらず、既にその場にいた心太朗の発砲に救われたからだ。
渡辺は「これでお前にも懸賞金がつく」と吐き捨てるが、シンディは「望むところだ。佐久良を痛めつけたお前らを絶対に許さねぇ」と受けて立つ。前段は兄・皆実を一人にしないという宣言であり、後段は愛する佐久良の仇を討つという宣言のように聞こえる。
ラストの意味は?
心太朗は、助けた佐久良に、これは貸しであり、ご飯を二人で奢るようにとすっごい遠回りにデートを申し込み、受け入れられる。「デートおめでとう」と高笑いする皆実とデボラは楽しそうだ。
デボラの情報によると、渡辺の正体はエリック・アラキで、ヴァッファの最高幹部とされるグレン・アラキの弟だった。『映画ラストマン』ではグレン・アラキが二人の前に立ちはだかることになる。ただし、この時点でグレン・アラキがプランナー(組織のボス)なのかどうかは分からないという。
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』のラストでは、王林演じる難波望海が資料を持って登場。ドラマ版のラストでは、ホテルのバトラーと思われていた難波が米国のエージェントであったことが明らかになっている。その任務は、心太朗がFBIの交換研修生として適任かどうかを見極めることだった。そして心太朗はそのことを知らない。
心太朗は、今回の事件は米国側も犯人グループに目をつけて内偵していたと指摘。実は皆実もヴァッファの動きを掴んでおり、懸賞金をかけられているため、狙われた時のためにGPSを靴に入れていたという。
皆実が捕えられた時も、米国のチームがスタンバイしていたはずなのに自分に丸投げされたと、心太朗は怒り心頭。でもきっと、皆実は心太朗に助けてもらいたかったんだと思う。
この世は「嘘と欺瞞に溢れている」という結論で片づけられ、三人は心太朗と佐久良のデートのお店と日取りを決める場面でスペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』は幕を閉じる。この続きの物語は、『映画ラストマン -FIRST LOVE-』で描かれる。
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』ネタバレ感想&考察
改めて証明された絆
スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』は、心太朗と皆実がバラバラに行動する時間が長かったが、冒頭で明かされた皆実の嘘を通してむしろ二人の強い絆が証明された作品でもあった。皆実の余命半年という嘘は国際テロ組織に狙われる心太朗を守るためで、心太朗がその嘘に傷ついたのは、一晩泣き明かすほど皆実を大切に思っていたからだった。
一方でドラマ版から2年を経て、泉の成長も描かれた。泉と吾妻のカップルにも注目が集まるが、なんせ登場人物が多いので事件を扱いながらそれぞれの関係を進展させるのは簡単ではないのだろう。やっぱりまたドラマで1シーズンやってもらうのがいいと思う。
一方で、犯人が確固たる動機(社会的な意味を持つ)を持っていたが、実は間違っていたのは犯人の方だった、という『ラストマン』のストーリーのパターンはやや食傷気味でもある。レギュラーキャラ同士の関係性が非常に魅力的であるだけに、どこかでパターンから抜け出すような展開にも期待したい。
ヴァッファと今後
ヴァッファは時系列的にはスペシャルドラマで初めて登場することになったが、心太朗がアメリカに派遣された2年前から、やり合っていた相手であったことも明らかになった。少なからぬ因縁を持っていて、ヴァッファから皆実と心太朗の二人に懸賞金がかけられた状態で迎えた『映画ラストマン』ではどんな展開が描かれたのか、すでに映画を観た人ももう一度観たくなるような、うまい演出だったと言える。
ヴァッファ関連で気になるのは、『映画ラストマン』の終盤に登場したグレン・アラキのある要素がスペシャルドラマでは回収されていなかったことだ。すでにその要素を回収するための続編やスピンオフを構想しているということなのだろうか。
同時に、グレン・アラキが「弟」と言及していた渡辺ことエリック・アラキを演じた上川周作の演技が素晴らしく、良いキャラなのでぜひ今後も獄中からでも登場してもらいたい。“ラストマンズ”とヴァッファを中心とした、今後のシリーズ展開にも期待したい。
なお、心太朗と佐久良のロマンスの行方、デートの結果も『映画ラストマン -FIRST LOVE-』で描かれることになる。未見の人にお勧めしたいのはもちろんのこと、すでに観た人も見え方が変わることは請け合いだ。
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