より良い未来を目指して Kaguya Future 2025発表! | VG+ (バゴプラ)

より良い未来を目指して Kaguya Future 2025発表!

より良い未来を目指して Kaguya Future 2025発表!

SF企業VGプラスより、〈Kaguya Future 2025〉を発表します。〈Kaguya Future〉は、SFにまつわる活動をしている人を対象とし、よりよい未来をまなざして活動している人やその人の取り組みを広く世の中に紹介するプロジェクトです。

毎年一回、前年の1月〜12月に発表された作品や実施されたプロジェクトの中から、社会に存在する問題や不公平、不正義に目を向け、それを解決したり改善したりするために行われている活動や、あるいは道を切り拓いて希望や展望をもたらす活動を取り上げ、その作品やプロジェクトを制作・実行した人を紹介します。Kaguya Futureについての詳細はこちら

Kaguya Future 2025 発表!

Kaguya Future 2025として、作家でイラストレーターの冬乃くじさん、科学コミュニケーターの宮田龍さん、翻訳家の吉田育未さんを紹介します!

 

作家の冬乃くじは2024年に惑星と口笛ブックスから短編集『猫の上で暮らす一族の話』を刊行した。猫の上で暮らすものたちを描いた表題作をはじめ、SF作品も収録されている。最大10,000字程度の短い作品ばかりだが、どの作品も読後には新しい世界の見方と出会ったと実感できる厚みがある。12編の収録作品のうち7編はブンゲイファイトクラブ(BFC)の作品だ。400字詰めの原稿用紙6枚を上限とし、ジャンル不問の文芸作品で戦うオープントーナメント・BFC。BFCの本戦に3回出場・うち一度は優勝という経歴を持つ冬乃は、短い作品で表現を研ぎ澄まし、ジャッジや読者からのフィードバックを踏まえて鍛え上げた文章力が強みの一つで、収録作品の射程の長さや細やかさを下支えしている。

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 また、音楽×小説の新しいイベント〈IMAGINARC 想像力の音楽〉では、アシスタントプロデューサー/小説家/アンソロジー編者として活躍。 IMAGINARCは、テーマに沿った音楽と小説を楽しむピアノの演奏会。ピアニストの森下唯がプロデューサーとして企画をまとめた。演奏される曲が、「魔法の庭」「懐かしい星」など、五つのテーマにあわせて、ジャンルを超えてセレクトされており、さらに、そのテーマに沿った書き下ろしの短編小説がパンフレットに収録されている。小説と音楽を融合させるという全く新しい演奏会で、菅浩江や森下一仁ら、SF作家も参加した。冬乃は、アシスタントプロデューサーとして企画・運営に参加したほか、メインの作家として五つのテーマすべてに短編小説を寄稿している。

 そして冬乃は、作家活動をしながらパレスチナへの連帯を表明してきた。IMAGINARCの広報でメディアに出る際にクーフィーヤを身につけたり、即売会に出店する際にはパレスチナ連帯のグッズを置いたりしている。イスラエルによる虐殺が止まらない中、自分のいる場所で意見を表明し続ける冬乃に心からのリスペクトを送る。

 宮田龍は科学コミュニケーターとして日本科学未来館で長年活躍し、現在は株式会社アラヤでニューロテックや身体拡張などに関する科学コミュニケーションを担当している。科学コミュニケーターとは、科学と社会の架け橋となる仕事。今よりも誰もが生きやすい社会が目標という宮田は、科学技術を実装していくための話し合いの場を、社会の中で取りこぼされがちなマイノリティや障害者の声も無視せずに作っていくことを目指している。科学コミュニケーションの場として開催するイベントでは、できるだけ多くの人に届けるために、手話通訳をつけるなど、参加への障壁を取り除く取り組みも行っている。

 2023年に開始した「Neu World SF×脳でつくる新しい世界」というプロジェクトでは、立ち上げからプロデューサーを務めている。「Neu World」は、ムーンショット型研究開発事業という国のプロジェクトの目標1である、「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放(IoB:Internet of BrainsInternet of Brains)」を進める研究開発プロジェクトと、人々の生活をつなぐ取り組み。漫画家や小説家をはじめとしたクリエイターと研究者が一緒になってSF作品を作り、関係する研究の解説などと一緒にサイトに掲載している。

「Neu World」では、研究者にビジョンや最先端の研究の話を聞くだけではなく、それを社会実装していく過程に、市民の声や実生活の中で生まれるナラティブを反映させていくということも大切にしており、いくつかの作品では、制作の過程で公開ミーティングやワークショップを行っている。

経済格差によるテクノロジー格差、個人情報の取り扱い、使う人間の倫理、法整備など、テクノロジーを実装する上では様々な課題が発生する。SF作品では、「こんな未来は嫌だ」というディストピアとしてテクノロジーを実装する際に起きうる課題を先取りし、作中で提示することもできる。「Neu World」では、プロパガンダではなく、コミュニケーションツールとしてのSF作品を作りたいという理念を共有して制作を進めているそうだ。

コミュニケーションを成立させる共通の基盤を整備することそのものが難しい社会において、2025年以降も続いていく「Neu World」がどのような役割を果たしていくのか、今後に期待したい。

2021年に初の訳書、エマ・ドナヒュー『星のせいにして』(河出書房新社)を刊行して以降、多数の海外文学の翻訳を行っている吉田育未は、2024年にはデーリン・ニグリオファ『喉に棲むあるひとりの幽霊』(作品社)の翻訳を手がけた。

 『喉に棲むあるひとりの幽霊』の主人公は二十一世紀を生きるアイルランド女性。育児に追われる主人公は十八世紀の詩人アイリーン・ドブ・ニコネルの詩に魅せられ、アイリーンの詩を翻訳し、彼女の人生の軌跡を追うことにのめり込んでいく。記録に残されず、不可視化されがちな女性たちの人生が、時を超えて哀歌(クイネ)という形式の詩を媒介に掬い上げられ、響き合っていく、不思議な読み心地の作品だ。同時に、たとえ記録に残されなくても、彼女たちの人生も悲しみも喜びも、なかったことにはさせないという強い思いも感じる。

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 作品の持つ文体やリズム、更にはその背後に潜む作家の〝声〟まで写し取るような、翻訳文学を読む醍醐味を存分に楽しめる翻訳が魅力の翻訳家だ。

 カナダで暮らし映画製作に携わっていたが、2020年に東京に引っ越すことに。コロナ禍で託児がままならず悶々としていた中、出会った一冊の小説をきっかけに文芸翻訳家としての道を歩み始めた吉田。著名な翻訳者のもとで腕を磨くというルートが多い日本語の文芸翻訳の中で、独自のルートを切り開いている。翻訳家の一つのロールモデルになるだろう。様々な背景/経歴の翻訳家が増え、より多様な文脈を背負った作品が日本語圏に紹介されるということは、読者にとっても嬉しいことだ。また、翻訳家を取り巻く労働環境や社会問題等について、自身のSNSやニュースレターで言及している点も紹介しておきたい。

 「誰が・どういう文脈で書いた・どんな内容の作品を日本語に翻訳・紹介するか」ということは、非常に政治的な選択だ。『喉に棲むあるひとりの幽霊』をはじめ、独自の声を響かせている作品を翻訳してきた吉田が今後どのような作品を紹介してくれるのか、非常に楽しみだ。


冬乃さん、宮田さん、吉田さんによるコメントと、齋藤隼飛さんによる2024年の振り返りを掲載した『Kaguya Planet No.4』が、明日1月19日(日)に刊行されます。現在、公式オンラインショップにて予約受付中です。

マガジン『Kaguya Planet No.4 プラネタリウム』を予約する

Kaguya Future

対象となる人:広義でのSFに携わっている人

※作品を制作している人・作品制作の過程に携わっている人・紹介する人など、関わり方は問いません。

対象となる業績:前年の1月から12月発表された作品・行われたプロジェクト・受賞歴等

※作品やプロジェクトは、前年に開始/完結している必要はありません。また、制作・実行した人がSFに携わっている人であれば、作品やプロジェクトがSF/SFに関するものである必要もありません。

選考方法:VGプラス合同会社のメンバーが、対象となる業績をもとに、総合的に判断する

※選出する人の人数は1人〜5人程度を目安とします。

選考基準

①新規性…プロジェクトの制度や設計、書籍の刊行形態などにおいて、従来の慣行を打ち破り、後進に希望を与えるような方法を見つけている。あるいはそれを目指して模索している。

②社会性や政治性……理念や問題意識が不正義の是正や問題解決、より良い未来に寄与していると考えられる。

③今後への期待……持続可能であり、今後のさらなる発展が見込まれるか。あるいは、社会に対する長期的な影響が見込まれる。

Kaguya Future 2025は、社外の方にも対象となる人・業績についての意見を募りながら決定いたしました。Kaguya Future 2026以降では、より開かれた形でアンケートを募るということも検討しております。

『Kaguya Planet No.4 プラネタリウム』に紹介とコメントを掲載

2025年1月19日刊行の『Kaguya Planet No.4』にて、Kaguya Future 2025のメンバーと活動を紹介します。『Kaguya Planet』は、Kaguya Future を主催するVGプラス合同会社が刊行しているSFのマガジン。毎号テーマを決めてSF短編小説やブックレビューを掲載しています。No.4 のテーマは「プラネタリウム」。プラネタリウム100周年を記念して、小説やコラムを通してプラネタリウムの魅力を掘り下げます。

マガジン『Kaguya Planet No.4 プラネタリウム』

【概要】
プラネタリウム百周年! プラネタリウムの出てくるSF短編小説やブックガイドを掲載します。

⚫︎小説

田畑祐一「マッチングアプリ」

南木義隆「星と巡り合う者たち」

早海獺「袋のなかはビッグバン」

⚫︎ブックガイド

鬼嶋清美「プラネタリウム小説いろいろ」

⚫︎ブックレビュー/コラム

⚫︎インタビュー

吉田育未

柞刈湯葉

⚫︎連載企画

持続可能な同人誌作りを考える

⚫︎Kaguya Future 2025

⚫︎VGプラスの活動報告

サイズ:A5

ページ数:150ページ

一般価格:1650円(税込)

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SF企業VGプラスとは

SF企業VGプラスは、SFにまつわる様々な事業を行っている会社です。月間PV数270万のウェブメディアVirtualgorilla+(バゴプラ)、SFのウェブマガジンKaguya Planet、そしてSF書籍のレーベルKaguya Books等を運営しています。

バゴプラでは、映画・ドラマ・小説・ゲームなど、さまざまなジャンルのSF作品の紹介記事や考察記事を毎日配信中。Kaguya Planetでは、珠玉のSF短編小説を毎月掲載しています。また三ヶ月に一回、マガジン『Kaguya Planet』を刊行。Kaguya Booksでは、「SFをもっと」を合言葉に、《地域SFアンソロジー》シリーズや、『野球SF傑作選  ベストナイン2024』など、さまざまな切り口でSFを楽しめる書籍を刊行しています。

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