韓国のSFをもっと! 「ニュー韓SFプロジェクト」始動!
韓国のジャンル小説、特にSFをもっと日本に紹介したい!という思いのもと、作家や翻訳者による新しいプロジェクト「ニュー韓SFプロジェクト」が2026年7月に始動する。プロジェクトを運営するのは作家のファン・モガ、かかり真魚、正井、翻訳者の廣岡孝弥。また、吉良佳奈江らが翻訳者として参加するほか、SFレーベルのKaguyaが協力している。
韓国SFの翻訳・紹介に加えて、韓国SFの盛り上がりや韓国と日本の交流を作っていくことを目指している「ニュー韓SFプロジェクト」。一番最初の取り組みとして、SFウェブマガジンKaguya Planetで毎月一編程度、韓国のSF短編小説を翻訳・掲載していく。
「ニュー韓SFプロジェクト」とは?
韓国の小説、特にSFなどのジャンル小説をもっと日本に紹介、翻訳したい!という思いのもと始まった「ニュー韓SFプロジェクト」。SFというと、宇宙やロボットといったイメージが強いが、現実とは異なる「可能性」を描いたジャンルというより幅広い捉え方もできる。特に韓国SFでは、未来の可能性やちょっと不思議な出来事や改変した歴史などを巧みに使いながらフェミニズム的なテーマを描く「フェミニズムSF」が盛んで、SFの入り口としてもピッタリだ。その他にも、社会問題に応答する形で書かれた作品も多い。
日本と韓国のSFを通した交流は近年盛んになっており、韓国と日本の二つのSF作家団体の交流から生まれた、日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯編『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』がKaguya Booksから刊行された。30名以上の韓国と日本のSF作家が参加している本書は、「個人的なことから社会的なことまでを率直に語り合った日記を交換することで、お互いをもっと身近に、顔の見える存在に感じられるのではないか」というのが企画の動機の一つであり、作品は未邦訳の韓国の作家も多く参加している。「ニュー韓SFプロジェクト」ではこの日本と韓国の交流の流れを引き継ぎ、『日韓SF交換日記』に参加している韓国の作家の作品も翻訳して行く予定だ。
また、今後の可能性として、韓国のジャンル小説に特化した韓日翻訳者のネットワーク作ることなども視野に入れているという。Kaguya Planetでの短編小説の掲載を始め、「ニュー韓SFプロジェクト」の今後の活動にぜひ注目してほしい。
ニュー韓SFプロジェクトのメンバーを紹介!
「ニュー韓SFプロジェクト」の発起人は、作家のファン・モガ。ファン・モガは、2019年、他人の記憶が取引される仮想空間を舞台にした短編「モーメント・アーケード」で第4回韓国科学文学賞中短編部門で大賞を受賞しデビュー。その後も社会におけるさまざまな不平等や問題をSF世界に昇華しつつ、人々の生へとまっすぐ目を向けた作品を発表している。著書に都市伝説をモチーフに日韓の友情を描く『透明ランナー』(廣岡孝弥訳)、日本オリジナル短編集『地上適応困難症』(廣岡孝弥訳)などがある。
廣岡孝弥は、2021年に応募した「第5回日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」で、ファン・モガさんのデビュー作『モーメント・アーケード』を翻訳し最優秀賞を受賞。『モーメント・アーケード』はクオンから出版されている「きむふなセレクション韓国文学ショートショート」シリーズの第17巻として刊行され、翻訳者としてデビュー。
SF関係では、日本語文学の普及と、海外に眠る煌めく原石の発見のための文芸誌『jem』vol.2に収録されているキム・ヘユン「ブラックボックスとのインタビュー」、イ・ジヨン「韓国SF—ジャンルの固有性と現代的テーマ意識」の翻訳を手がけている。そのほか、Netflixドラマ『D.P. −脱走兵追跡官−』の原作コミックであり、韓国軍隊の人権問題を正面から取り上げた話題作、キム・ボトン『DP DOG’s DAY』や、イ・ジョンスほかによる『100曲でわかる!K-POPヒストリー 1992-2020』などの翻訳も手がけている。
韓国のエッセイもフィクションを多数翻訳している吉良佳奈江だが、SF・幻想小説では、『蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記』、キム・メラ『わたしを夢に見てください』、チャン・ガンミョン『極めて私的な超能力』などを翻訳している。キム・メラ『わたしを夢に見てください』は、クィアな女性たちを中心に描いた短編集。同性愛者の女性や、病気や障害を持つ女性たちの生活に焦点が当たり、日本による植民地支配や現在の社会の設計が、その生活に及ぼす影響を浮かび上がらせる。
作家のかかり真魚は、ウェブマガジンKaguya Planetに短編小説「夜盗花」を寄稿している。地元に戻って夫と結婚した有里子が、近所の吉崎さんから教わった茄子の酢の物を夕食に出すと、夫は気に入ったようだった。アホな夫を、有里子とさよは笑うのだった──。積み重なった違和感が最後にほどける怪異譚。その他、『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』に、抵抗と連帯のための言葉がこだまする「エコーズ」という短編小説を寄稿している。
作家の正井は、ウェブマガジンKaguya Planetに怪異譚「宇比川」とジェンダーSF「優しい女」を寄稿している。2045年の大阪を舞台にした『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編者を務め、自身も短編小説を寄稿している。短編小説「よーほるの」が第一回かぐやSFコンテスト最終候補に選出。『Kaguya Planet vol.8 小さなオブジェ』にチョン・ボラ『呪いのウサギ』(関谷敦子訳)のブックレビューを寄稿している。
ウェブマガジンKaguya Planetとは
「ニュー韓SFプロジェクト」では、一番最初の取り組みとして、SFウェブマガジンKaguya Planetで毎月一編程度、韓国のSF短編小説を翻訳・掲載していく。Kaguya Planetは、SF企業VGプラスの運営するウェブマガジン。毎月、SF短編小説やインタビューを配信している。現在は、十三不塔による日本手話のラップを描いた「サイレント・ヴァース」を連載しているほか、特集Y2Kを開催している。
Kaguya Planetに掲載している小説はいずれも無料で読むことができるが、月額500円〜の有料会員になると、先行公開期間に小説が読める、VGプラスのイベントに割引価格で参加できる等の特典もある。「ニュー韓SFプロジェクト」で掲載する作品も、会員向けの先行公開期間にいち早く読めるようになる予定だ。Kaguya Planetの特典についてこちらに詳しく掲載している。
『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』好評発売中!
日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯編『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』が、Kaguya Booksから好評発売中!
『日韓SF交換日記』には、韓国と日本のSF作家24名12組による〈日韓SF交換日記〉に加えて、ミン・ジヒョンさんによるフェミニズムと韓国SFについての講演録、双方から見た韓国/日本のSFや連帯の可能性について語り尽くした座談会などを収録。総勢30名以上の作家や翻訳者が小説への思い、社会へのまなざし、そしてより良い世界を目指すためのたくさんの言葉を紡ぐ。書籍の詳細はこちら。
「ニュー韓SFプロジェクト」の最新情報は、Kaguya PlanetのSNSで発信していく。また月に一回程度、最近の活動や最新情報をお知らせする〈Kaguyaのニュースレター〉にも活動内容を掲載していく。
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