『教場 Requiem』公開
映画『教場 Requiem』が2026年2月20日(金) より全国の劇場で公開された。長岡弘樹の人気小説を原作として、木村拓哉が主演、君塚良一が脚本、中江功が監督を務めた人気シリーズの最新作で、「最終章」と銘打たれた初の劇場版映画となっている。
今回は、話題を呼んでいる『教場 Requiem』から、林遣都演じる平田和道にスポットライトを当てて解説&考察してみよう。第1作目『教場』(2020) から登場し、Netflix配信された『教場 Reunion』(2026) でもその姿を見せた平田は『教場 Requiem』ではどう描かれたのだろうか。
以下の内容は結末の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、自殺に関する内容を含むのでご注意を。
以下の内容は、映画『教場 Requiem』の結末に関するネタバレを含みます。
Contents
『教場 Requiem』平田とは誰か
『教場』での平田和道
映画『教場 Requiem』で重要な役割を担うことになった平田和道。第1作目『教場』の前編で第198期生として登場し、宮坂定と共に『教場』における最初の事件のキーパーソンになった。
平田和道は飲食店やビルの管理会社で働いていたが、その後、警察に転職。飲食店は残業が多すぎて、ビルの管理会社は同僚から嫌がらせを受けて辞めたとしている。ビルの管理会社での仕事というのも、トイレ掃除などをしていたようで、いわゆるデスクワークではなかったようだ。
平田和道の父は、宮坂が警察学校に来る4年前に雪山で死にかけていた宮坂を救出した平田国明だった。平田国明は息子に手紙を送るのが照れ臭く、宮坂に手紙を送っていた。その縁もあり、宮坂は警察学校の落ちこぼれだった平田に寄り添うのだが、これが仇になる。
『教場』前編の冒頭では、筧利夫演じる教官の植松に詰められる平田の姿が描かれる。『教場 Requiem』でも挿入された職務質問の授業のシーンだ。平田は怒鳴られ、「そんなザマじゃ親父さんが泣くぞ」と耳打ちされ、反省文を原稿用紙20枚(約8,000字)書くよう指示される。宮坂が叱責される際には「平田も下手だが」と名指しされる始末だ。
「教場」シリーズで最初に詰められていたのが平田だったというのは示唆的だ。その後、平田がトイレで泣いている姿も描かれており、平田は『教場』の冒頭時点から精神に無理をきたしていたことが窺える。そして植松が体調を崩し休職となったことで、平田は新たに赴任してきた風間公親と出会うことになる。
『教場』で描かれた事件
宮坂は平田を不憫に思い寄り添っていたが、風間はそれを見抜いていた。宮坂は植松教場の職務質問でわざと下手なふりをして平田だけが槍玉に挙げられるのを避けようとしており、宮坂は「植松教官への背任行為」として、風間から退校届を突きつけられている。『教場』で最初の退校届も平田絡みで登場しているのだ。
宮坂の誤った優しさは平田にも気づかれており、平田は自分に哀れみをかける宮坂を嫌っていた。同時にシャツに書かれた名前が滲んでいたことでペナルティーを受けるなど、厳しい規則と罰則にも辟易していた平田。授業で風間から胸ぐらを掴むよう言われた時には、それを拒否して「辞めたっていいです」とまで発言していた。
さらに食堂では、菱沼羽津希から「あの暗いの何とかなんないの?」と陰口も叩かれている。そうして宮坂の精神は追い詰められていったのだろう、ついに平田は宮坂との無理心中を試みたのだった。
平田が死のうとした理由は「自信と気力」がなくなったということだったが、宮坂を道連れにしようとした理由は、宮坂が平田を見下していると感じたからだった。「人から哀れみを受けるのって相当しんどいぞ」という言葉は『教場』における平田の名言だ。
平田が宮坂と心中しようとした方法は、硫黄入りの入浴剤と酸性の洗剤を混ぜて硫化水素ガスを発生させるという方法だった。平田からトイレの洗剤がなくなっているという報告を受けていた風間は、生徒にのランニングのペナルティーを与えると、ランニングの間に洗剤を水にすり替え、平田の試みは未遂で終わっている。
後日、退校となった平田を迎えに来た父・国明は、被害者となった宮坂に頭を下げている。平田が凶行に及ぶ直前には、宮坂づたいに受け取った父からの手紙は読んだと言っていたが、そこに書かれていたのは「時には自分を殺すことも必要、だけど本当に死ぬなよ」という内容だった。もしかすると平田は、父にわざと迷惑をかけるために手紙に書かれたことと逆の行動を取ろうとしたのかもしれない。
『教場 Reunion』での平田
無事に警察学校を卒業した宮坂は、平田国明が勤務する交番に勤めることになり、宮坂が事故死した後も、国明はデスクに宮坂の写真を飾っていた。こうした父・国明と宮坂の擬似親子のような関係にも平田和道は嫉妬していたのかもしれない。一方で国明には宮坂には息子が迷惑をかけたという負目もあっただろう。
平田和道が次に登場したのは、映画『教場 Reunion』でのことだ。6年ぶりの登場となった平田は学校長の四方田に連れられて風間の前に現れた。四方田によると、父の葬儀が済んで挨拶に来たという。風間が葬儀に花を送ったことにも触れられている。
この時、平田はクリーニング店でバイトをしていると語ったほか、父の死因について風間から「肝臓の病気だったらしいな」と聞かれると、「この一年苦しんでいました」と答えている。また、「もっと頑張って卒業式に出たかったな」というフレーズも『教場 Requiem』での展開に繋がっていくことになる。
このシーンでは、風間を前にして目を泳がせていた平田だったが、『教場 Reunion』のラストでは、平田が十崎の妹・紗羅を誘拐したことが明かされている。『教場 Requiem』で印象的に使用される「ハレルヤ」という言葉を残して『教場 Reuion』を締めくくるのだ。
『教場 Requiem』での平田和道
平田の卒業式
映画『教場 Requiem』では、まさかのメインヴィランとして登場。第205期生の氏原を金で雇い、風間の情報や十崎の捜査状況について報告させ、風間へ復讐する計画を進めていたことが明らかになっている。
十崎を追っていた刑事たちも氏原の携帯のデータを復元したことで、卒業式の襲撃計画の情報を掴んでいたが、その計画を立てていたのは十崎ではなく平田だった。平田が雇った偽十崎に人員が割かれている中で、平田は堂々と卒業式の壇上の爆弾を起動。『教場 Runion』での「卒業式に出たかった」という言葉通り、卒業式を乗っ取ることに成功したのだった。
『教場 Requiem』のノベライズ版では、平田が式場に設置した爆弾が大規模なものではなかった理由について、誰かを殺す目的ではなく、恐怖を与える目的であったことに触れられている。それを見抜いていた風間は最後の爆発以外では死者が出ないことを見越して平田に計画を遂行させたのである。
この展開は、第1作目の『教場』前編で風間が敢えて平田に無理心中を実行させたのと韻を踏んでいる。結果、爆弾に用いたニトロを機能不全にする液体をスプリンクラーから浴びせることで最後の爆発も防いでおり、この点も洗剤の中身をすり替えてことなきを得た第1作目の事件に似た展開になっている。
父・国明の死の真相
平田は腹に爆弾を巻いて現れ、生徒達に敬礼などを要求するが、平田の要求には誰も従わない。信念を持った人を動かすのは恐怖ではなく尊敬だからだ。平田は承認欲求の塊のような人間だが、十崎について「処分した」というテキストメッセージを受けて、遺体も確認せずに十崎の死を確信するという脇の甘さも見せている。
さらに風間は平田の父親殺しを指摘する。風間は事務員の小野に平田国明の死体検案書を取り寄せてもらい、国明の肝臓からトリメチレントリニトロアミンという物質が検出されていたことを確認していた。平田国明はこの物質を長期にわたって摂取したことで、平田が『教場 Reunion』で言ったように「肝臓の病気」になって死んだのである。
平田和道は父・国明の飲み物などにこの物質を混ぜて死に至らしめた。『教場 Reunion』で平田が父について「この一年苦しんでいました」と話したように、平田はかなり長い時間をかけて父殺しに取り組んでいたようである。
さらに平田は父にかけた保険金を使って氏原のような手足になる人間を雇っていた。なお、映画『教場 Requiem』のノベライズ版では、氏原もまた雇われた相手が本物の十崎だと思っていたことが明かされている。
平田のもう一つの顔
映画『教場 Requiem』のノベライズ版では、もう一つ、平田に関する設定が詳細に語られている。風間曰く、平田の目的は“死の恐怖に怯える警察関係者の顔”を見ることだったという。故に、平田は『教場』で宮坂と共に死のうとしたのである。
ノベライズ版では、平田が父が死んだ日に半日付き添っていたということも、検視報告書を通じて明かされている。死に怯える警察関係者の顔を見るという目的は、第205期生の卒業式でも果たそうとしたことなのだろう。平田は最初の数発の爆弾に致死量の火薬を用いることはせず、警察学校の教官と生徒たちを恐怖に陥れ、その表情を見ることで欲求を満たそうとしたのだ。
平田は、『教場』前編で起こした事件の後、警察官の父にも見捨てられたと話していた。警察官の父を持ち、一度は警察を志すが、事件を起こして父に見捨てられたという経験が、警察学校相手にテロを起こすきっかけとなったのだろう。
一方で、風間は辞めた生徒も教え子だとして、平田がバイト先のクリーニング店のオーナーから信頼されていたということにも触れている。平田についても調査を行ったのだろう。だが、平田は過去や警察組織に執着して人生を棒に振ってしまったのだ。
平田は小学生の時に「早熟の天才」と呼ばれていたこと、中学ではいじめっ子を倒したこと、高校では生徒副会長を務めていたことも『教場 Requiem』のスピーチで明かしている。本来は正義感を持つ人間だったのかもしれない。そう考えると、どこで平田和道の生きる道を正せたのだろうかと頭を抱えずにはいられない。
平田は帰ってくる?
風間は平田が父・国明の遺体から検出されたトリメチレントリニトロアミンを用いるだろうと予想しスプリンクラーにそれを機能不全にする液体を含んで噴霧させた。結果、平田の爆弾は起動せず逮捕となった。
『教場 Requiem』のラストでは、平田は取り調べでもふざけてばかりいると報告されている。十崎を殺したと供述しているものの、その後には十崎が登場しており、実際のところ平田が殺したのは父・国明だけだと見られる(半グレの達は十崎が殺したものと見られる)。
国明の殺害についても立件できるかどうかは分からない。もしかすると、平田はいずれ仮釈放となって外に出てくるかもしれない。平田を演じた林遣都(はやし・けんと)の『教場 Requiem』での演技は凄まじく、もし「教場」シリーズが続くなら今後も登場してほしい強烈なキャラの一人になった。
林遣都といえば、2021年に大島優子と結婚を発表したことで知られる。『教場 Requiem』では楠本しのぶを演じる大島優子と共演することになったが、今後も風間教場出身の刑事と悪役として活躍を見ることができるだろうか。
映画『教場 Requiem』は2026年2月20日(金) より劇場公開。映画『教場 Reunion』はNetflixで独占配信中。
涌井学による映画『教場 Requiem』のノベライズ版は発売中。
今回の映画版の原作小説『新・教場』と『新・教場2』は発売中。
「教場」シリーズ最新作『教場Ω(オメガ) 刑事・風間公親』は発売中。
『教場 Requiem』ラストの解説&感想はこちらから。
十崎はどうなった?『教場 Requiem』ノベライズ版の描写も踏まえた考察はこちらから。
『教場 Reunion』の解説&感想はこちらから。
第1作目『教場』前編の解説&感想はこちらから。
第1作目『教場』後編の解説&感想はこちらから。
第2作目『教場Ⅱ』前編の解説&感想はこちらから。
第2作目『教場Ⅱ』後編の解説&感想はこちらから。
