受賞作品

  • 大賞

    アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ

    吉美駿一郎

    「エッセンシャルワーカー」「オンライン会議」「専務と社長」といった単語で口火が切られる本作。日本的な場所を舞台に、現実性と現在性の高いストーリーが展開していくのかな? と想像していたら、完全に足元をすくわれました。約4,000字の限られたテキストで、人間や人間性から遠く遠く離れた地平へ、私たちを連れていってくれます。SFが持つ大きな魅力のひとつが、読者を時間や空間を超えた何処かへ(半ば強制的に)運ぶ「連れ去り力」にあるとすれば、その点で傑出しており、かぐやSFコンテストの大賞にふさわしい作品であると言えるのではないでしょうか。見慣れた現実的で実際的な空間を、少しずつ少しずつ浮かせて歪ませて剥離させて、最後に大きく飛翔させる、稀有であると同時に堅実でもあるテクニックを評価したいです。
    今回の募集テーマであった「未来の色彩」は、終盤でみごとに昇華されています。結末はオープンエンディングだなと感じており、私は混乱と混沌の先にある一条の光を読み取りました。(奥村勝也)

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  • 読者賞

    境界のない、自在な

    枯木枕

    冒頭でガツンと衝撃的な設定を出してきたのも、難テーマを選んだのも大胆です。小説として完成度が高く、視覚的想像力に訴えるアイディアもわかりやすく印象的。子供たちやお年寄りの行動に翻弄されるスラップスティックな部分と、技術革新後も変わらぬ人類という現実味を兼ね備えていました。壊れた掃除機で時間経過を示す仕掛けのような細部まで楽しさが充実しています。曾祖母の存在も読みごたえを増していますが、少しカリカチュアが強い印象でした。未来という設定ですが、現在の東アジアからの感性的・文化的な距離が近いです。必ずしもNGではありませんが、好みが分かれる点でしょう。
    面白い小説を書こう、読ませようという意欲を大いに評価します。まだ理想とする小説を追求している途中だと思うので、今後さらなる高みを見せてほしいです。(橋本輝幸)

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  • 審査員特別賞

    熱と光

    一階堂洋

    一読して非常に上手い小説であると思いました。文章や構成、現代的なテーマの取り扱い方、達者な書き手だと感じます。恐らく水平社宣言に由来するであろうタイトル、アンソニー・ドーアの『すべての見えない光』のモチーフ、出産、出自、障害など、差別/被差別の構造が多層的に描かれているにもかかわらず、過不足なくまとめ、静かな余韻を残します。出産という種の存続にも繋がるテーマの対比に、個に帰結せざるを得ないラストを未来の形として描く展開に唸りました。あまりにも現実の諸問題を上手に汲みとりすぎている感じもあり、これだけの技量があるならば、この作者の一番書きたいもの、書いてみたいものに全振りした作品が読みたい気もしました。(坂崎かおる)

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最終候補作品

選外佳作

作品一覧

【選外佳作に選ばれた方へ】

選外佳作に選ばれた方で、該当作品をnoteやカクヨム、その他のプラットフォームで公開している方は、ご連絡いただけましたら、選外佳作リストにリンクを掲載いたします。Twitterとお問い合わせフォームにてご連絡を承っております。

審査員別の選外佳作リストはこちら

コンテスト概要

2,000~4,000字のSF短編小説を対象にした「かぐやSFコンテスト」を2021年も開催します!

かぐやSFコンテストは、日本のSFを世界につなげる架け橋になることを目指す短編小説のコンテストです。主催はSFメディアのバゴプラ大賞に選出された作品は英語・中国語に翻訳され、バゴプラ内に掲載されます。

また、最終候補に残った作品は読者投票の期間を設け、最多得票を得た作品には読者賞が授与されます。読者投票は筆者名を伏せた状態で実施されるため、純粋に読者が「面白い」と思った作品に読者賞が贈られます。かぐやSFコンテストは、読者と共につくっていくプロジェクトでもあります。

私たちは、”世界の人々に読まれる”という前提でSF小説を書いてもらうこと、短い作品でも評価される場所をつくりだすことも、日本のSFを更に前進させる契機になると信じています。

第二回となる今回は、「応募者には完全匿名で作品を応募していただく」というよりフェアな審査の仕組みを導入した上で、4名の審査員が応募作品の選考を行います。

 

New! 8月14日(土)、最終候補10作品を公開しました。

「アザラシの子どもは生まれてから三日間へその緒をつけたまま泳ぐ」
「黄金蝉の恐怖」
「オシロイバナより」
「境界のない、自在な」
「スウィーティーパイ」
「七夕」
「二八蕎麦怒鳴る」
「熱と光」
「ヒュー/マニアック」
「昔、道路は黒かった」
(五十音順)

8月14日(土) 〜8月25日(水)の期間、読者投票を実施しました。
投票で決定する読者賞と、審査員が選ぶ大賞、そして各作品の筆者は9月4日(土)に発表します。
お楽しみに!

スケジュール

  • 応募期間

  • 一次選考期間

    ※ 最終候補に残った作品の筆者には、8月8日から8月13日の間に、誤字脱字の確認や簡単なプロフィールの提出にご協力いただきます。

  • 最終候補作品を匿名で公開/読者投票期間

  • 審査員による最終選考期間

  • 選評および結果の発表/最終候補作品の筆者名公開

  • 大賞受賞作品の英語・中国語翻訳を公開

    秋頃

賞について

大賞は英語と中国語に翻訳!

🎊大賞

  • 受賞作品を英語と中国語に翻訳し、バゴプラに掲載
  • 海外メディアへの露出やオンラインイベントへの出演サポート
    受賞者が希望する場合のみ。露出を望まれない場合は主催者が広報を行います。受賞者が希望する場合、オンラインイベント/パネルでの通訳や、海外メディアへの記事の持ち込みなど、エージェントとして可能な限りのサポートを行います。期間は受賞から一年間です。

📖読者賞

読者賞図書カード 3万円分

⚠️各賞について

  • 大賞……審査員4名が最終候補の中から選出。
  • 読者賞……読者投票で最も得票数が多かった作品を選出。
  • 大賞と読者賞が同一作品になった場合、全ての賞品が同一の筆者に贈呈されます。

応募について

テーマは「未来の色彩」

対象となる作品

  • 「未来の色彩」をテーマに書かれたSF小説。日本語で書かれた自作未発表の作品。
  • ウェブ上や非商業同人誌など、いかなる媒体でも既に発表した作品は応募不可とします。

応募資格

  • 不問。プロ・アマ問わず、どなたでもご応募いただけます。

文字数

  • 2,000字~4,000字。

応募可能数

  • 一人につき一作品まで。

応募方法

  • ページの下部にあるフォームに、Eメールアドレスと作品タイトルと本文を記入の上ご投稿ください。

応募期間

2021年7月3日(土)~7月19日(月) 23時59分迄

選考方法

第二回かぐやSFコンテストでは、応募者には完全匿名で作品を応募していただきます。審査員は一次審査において、作品のタイトルと本文だけで選考を行います。審査員は、様々な種類のバイアスから自由になった上で選考を行い、純粋に「面白い」「海外に向けて発信したい」と思える作品を選出します。選考の流れと注意事項は以下の通りです。

選考の流れと注意事項

  1. 全ての応募者は無記名で、①作品のタイトル、②作品の本文(2,000-4,000字)、③Eメールアドレスをフォームに入力してご応募いただきます。
  2. タイトルや本文にご自身の筆名や本名が記載されていた場合は失格となります。ご注意ください。
  3. 応募者のEメールアドレスは事務スタッフが管理し、審査員には伏せられます。そのため、Eメールアドレスには筆者の名前が含まれていても構いません。
  4. 応募作品は各審査員に振り分けられ、一編につき二名の審査員が下読み(一次選考)を行います。
  5. 応募期間終了後、審査員4名による一次選考会議を行い、最終候補作品(10編)を決定します。
  6. 最終候補作に選ばれた作品の筆者には、事務スタッフより応募時に入力したEメールアドレスへ連絡が入ります。
  7. 最終候補に選ばれた作品は、読者投票の期間中、筆者名を匿名として特設ページ内に掲載します。
  8. 読者は投票期間中、一人一票だけ、好きな作品に投票できます。
  9. 投票期間終了後、最終候補作品の筆者名を公開します。最終候補に選ばれた各作品の筆者名は結果発表時(9月4日)に行います。
  10. 最終選考を経て、審査員に選ばれた「大賞」と、読者の投票によって選ばれた「読者賞」の二賞が選出されます。

応募規約

ご応募する前に必ずお読みください

  • 他の文学賞と重複して投稿した作品は失格といたします。
  • 審査に関するお問い合わせには応じられません。
  • 本コンテストで入手した個人情報は、他の目的には使用いたしません。
  • 本コンテストでは、完全匿名で応募を受けた作品を対象に審査を行います。応募に関連した審査員への直接の連絡や、公の場において自作のタイトルや内容を匂わせる行為は失格の対象となります。
  • 応募は一人一作品のみです。不正が発覚した場合は失格となります。
  • 最終候補作品への読者投票を匿名で行うため、全ての応募者は、どのようなタイトルと内容で応募を行なったかについて、最終候補作品のタイトルが発表されるまで公言しないでください。
  • 最終候補に残った作品の筆者は、最終候補に残ったということは公言して頂いて構いません。ただし、どの作品が自分の作品かは、8月26日(木) 0時に読者投票が締め切られるまで9月4日(土) に運営から各作品の筆者名を公開するまで*は秘匿していただきます。不正が発覚した場合は失格となり、最終候補への選出は取り下げとなります。

*8月8日(日)に実施した一次審査会議での審査員と運営による議論の結果、最終候補作品の筆者名公開は読者投票終了時点ではなく、大賞および読者賞を発表する9月4日(土)に行うことにいたしました。 これにより、審査員は最終選考期間も作品の筆者を知ることなく、作品名と本文のみで審査を行うことになります。可能な限り審査に匿名性を残すための措置となっています。

審査員

井上彼方

1994年生まれ。VG+合同会社クリエイティブ・ディレクター。2020年、第1回かぐやSFコンテストで審査員を務める。同年よりSF短編小説をオンラインで定期掲載するKaguya Planetでコーディネーターを務める。編著書に『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』(2020, 社会評論社)。

奥村勝也

1982年生まれ、小説の編集者。近年の担当書籍は柞刈湯葉『人間たちの話』や竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』(それぞれ2020、ハヤカワ文庫JA)など。2018年、2019年に第3期、第4期「ゲンロン 大森望 SF創作講座」で講師を勤める。

坂崎かおる

2020年、第1回かぐやSFコンテストで審査員特別賞を受賞。受賞作「リモート」が「Remote」としてDaily Science Fictionに掲載(訳 Toshiya Kamei)。2021年、SFウェブメディアバゴプラとSF同人誌『SFG Vol.03』に姉妹編のSF短編小説「パラミツ戦記」と「常夜の国」を掲載。『小説すばる』2021年6月号にエッセイを寄稿。『電信柱より』が第3回百合文芸小説コンテストでSFマガジン賞を受賞。

橋本輝幸

1984年生。SFウェブジン「Rikka Zine」を主催。2008年より「S-Fマガジン」などでSF小説の紹介者/書評家として活躍。編著書『2000年代海外SF傑作選』(2020, ハヤカワ文庫SF)、『2010年代海外SF傑作選』(2020, ハヤカワ文庫SF)。2020年、第一回かぐやSFコンテスト審査委員長を務める。

よくある質問

誤字脱字の修正は可能ですか?
基本的には対応致しませんので、あしからずご了承ください。 ただし、最終選考に残った作品は誤字脱字の対応をいたします。
手書きによる応募は受け付けていますか。
手書きでの応募は受け付けておりません。応募フォームにてご応募ください。
自作品が最終候補として掲載されたが、取り下げたい。
掲載前の作品取り下げは受け付けます。掲載後、コンテスト期間中の作品取り下げは原則受け付けておりません。掲載後でも、2022年1月1日以降は取り下げを受け付けます。
どのような作品が「SF」にあたりますか?
あなたがSFだと思った作品がSFです。自由な発想でご応募ください。

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