【インタビュー】ゲーム『Dead by Daylight』相次ぐコミカライズに映画化、制作陣が語った背景と今後とは | VG+ (バゴプラ)

【インタビュー】ゲーム『Dead by Daylight』相次ぐコミカライズに映画化、制作陣が語った背景と今後とは

左から:デイブ・リチャード、齋藤隼飛(インタビュアー)、マシュー・コート

『Dead by Daylight』映画化、コミカライズを制作陣が語る

今や世界的な人気を誇るゲーム『Dead by Daylight』。4対1でオンライン対戦を行うマルチプレイヤーホラーゲームで、約6,00万人のプレイヤーが世界中に存在している。ホラーの名作とのコラボは度々話題となっており、9周年を迎えた2025年も『東京喰種』『Five Nights at Freddy’s』『ウォーキング・デッド』『ウィッチャー』といった人気タイトルとの競演が続々発表されている。

注目を集めているのはコラボだけではない。『Dead by Daylight』に登場するオリジナルのキャラクター達もプレイヤーから高い人気を誇り、コミカライズや映画化といったアダプテーション(他媒体での展開)も進められている。

2023年にはハリウッドでの実写映画化が発表され、2024年には日本で『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』が発売されると、北米でも『Dead by Daylight』の中でも高い人気を誇るキラー“リージョン”のバックストーリーを描くコミックが発売された。そして、2025年9月26日(金) には、その邦訳版である『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』がKADOKAWAより発売。リージョンを構成する4人のティーンエイジャーのオリジンが明らかになる。

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ゲームの枠を超えてますます広がりを見せる『Dead by Daylight』。今回は、『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』で暴力と破滅の運び手と共訳を手がけた齋藤隼飛が、Behaviour Interactiveパートナーシップ責任者のマシュー・コートと、『Dead by Daylight』シニアクリエイティブディレクターのデイブ・リチャードにアダプテーションとフランチャイズの今後について聞いた。

左から:デイブ・リチャード、齋藤隼飛(インタビュアー)、マシュー・コート


——『Dead by Daylight』のコミカライズや映画化といった、他のメディアへのアダプテーション(翻案)について聞かせてください。日本では、2024年に『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』(KADOKAWA) が発売されました。

マシュー・コート:(『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』を手にして)実物を手にするのはこれが初めてなんです。とてもクールですね! こうしたコミックや映画、あるいは『The Casting of Frank Stone』や『Hooked on You』といった他のゲームへのアダプテーションが進むのは、とても楽しいことです。プレイヤーの皆さんはストーリーやキャラクターを愛してくれていますから、より多くの方法を通してキャラクターと関わり、ストーリーを深掘りする機会を作りたいと思っています。

デイブ・リチャード:とりわけ『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』は特別です。なぜならファンの方々が描いてくれたストーリーだからです。「翻案(adapted)」というより「創造(created)」と言えます。ファンでありアーティストである皆さんに、私たちのキャラクターを用いて好きに創作してもらった。素晴らしい試みです。

——2024年は、日本で『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』、北米で『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』が刊行されました。2025年9月に『リージョン・ストーリー』の邦訳版が刊行されています。『Dead by Daylight』が次々と他のメディアにアダプテーションされている状況についてどう感じていますか?

マシュー・コート:私の立場としては、もっともっと出来ればと願っています。アダプテーション専門の部署がないため、映画やその他の仕事については、私とデイブとあと数名で他のやるべきことを済ませた後に時間をとって取り組んできました。他メディアでの展開は成長させていきたい考えているので、今はアダプテーションに関する仕事を担当する人間を置いており、将来的にはもっとアダプテーションを増やしていきます。なぜなら、とっても楽しいからです(笑)

デイブ・リチャード:ただ、注意深くはありたいと思っています。こうした急速な拡大の中にあっても、『Dead by Daylight』の世界観には忠実でありたいと。

マシュー・コート:その通りだね。

——「楽しい」という言葉も出ましたが、アダプテーションの醍醐味はどこにありますか?

マシュー・コート:非常に才能ある人たちが『Dead by Daylight』のストーリーを伝えるためにそれぞれのメディアを使ってくれることです。それにより『Dead by Daylight』のキャラクターは拡張され、私たちが他の人たちにどんなインスピレーションを与えたかということも見えてきます。

デイブ・リチャード:私には子どもがいるのですが、子どもが親である私の行動を見て、インピレーションを受けて行動に移したとき、自分が創り出した何かが他の誰かの中で生きているような感覚になるんです。それが、最初にトラッパーのフィギュアを見た時に感じたことでした。自分が創ったものが新しい形、さらに優れた形で現れる。自分では作れなかったような形でね。素晴らしいことです。

——特に漫画やコミックは若い人たちや次の世代への影響も大きいと思います。2026年に10周年を迎えるにあたって、次の世代への『Dead by Daylight』の影響力についてどう考えていますか?

デイブ・リチャード:……素晴らしい質問ですね(笑)。私たちは三つの柱を中心として『Dead by Daylight』を開発してきました。その一つがフェローシップ・カルチャー(同胞文化)と呼んでいるもので、文化に対してポジティブな影響を与えることを目指してきました。その影響が良いものであったことを願っていますし、全てのファンとプレイヤー、映画ファンや漫画読者に私たちの物語が素晴らしくて楽しいもので、人々をつなぎ合わせることができるものだと知ってもらい、それがポジティブな経験になることを願っています。

——『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』はリージョンのオリジンにスポットライトを当てています。リージョンは長くファンに愛されていますが、リージョンが人々を惹きつける理由はどこにあると思いますか?

デイブ・リチャード:4人いるからです!(笑)

マシュー・コート:(笑)とても共感しやすく、自分の姿を重ねやすい存在なのだと思います。誰であれ、かつてはティーンエイジャーだったはずで、その時期には誰にも理解されていないと感じる瞬間もあったことでしょう。ティーンエイジャーであること、どこにも居場所がないと感じることはひどく困難なことです。そんなときに誰かと出会い、その人物から良くも悪くも影響を受け、自分にとって大きな存在になり、そして仲間ができる。まあ、リージョンの場合はとても悪い方向へ進んでしまうのですが、それでもその核にある物語は多くの人にとって共感できるもので、文化や場所の違いを超えて響くものです。誰もが多かれ少なかれ、“自分バージョンのリージョン”を経験してきているからです。

デイブ・リチャード:もちろん、カッコイイというのも人気の理由です。

マシュー・コート:そうだね(笑)。(ビジュアル面では)マスクをしていることで、プレイヤーが自分を重ね合わせやすくもなっています。マスクを取れば、そこにいるのは自分かもしれないってね。

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——『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』では、ジョーイの母子家庭という背景も描かれます。個人的な感想で恐縮ですが、私自身も母子家庭で育ったので、国は違えど自分の境遇と重ね合わせられる部分がありました。そうして物語がコミックで広がるというのはすごく良いなと思いました。

マシュー・コート:それこそ私たちがいつも努力していることであり、望んでいることです。ホラーがインパクトを与えるためには、地に足のついた要素、自分を重ね合わせられる要素が不可欠で、これまでも『Dead by Daylight』には身近に感じられる要素を置くことに努めてきました。通常はサバイバーの造形において意識することで、サバイバーはできるだけ多くの人がそのキャラを自分に引きつけられるように、「普通の人」と感じられるように作っています。ですが、リージョンは例外です。リージョンはおそらく私たちのキャラクターの中で最も地に足のついた、現実的なキラーだと思います。

——『Dead by Daylight』は実写映画化も進んでいると聞いています。進捗やお二人が期待することについて聞かせていただけますか?

マシュー・コート:えぇ、「進んでいる」ということはお伝えできます。定期的にパートナーである製作会社のブラムハウスとアトミックモンスターと話をしています。あくまで私の“希望”や“夢”ということで言うなら——本当に正直なことを言うと、怖さもあります。私は映画を作ったことはないし、作り方についても詳しくありません。それでも、素晴らしいものを作っている人たちの姿を見ていて、最後は誇りに思えるような、ファンの皆さんが楽しんでもらえるような作品になってほしいと願っています。

デイブ・リチャード:とてもワクワクするプロセスで、関われていることに感謝しています。私の日々の仕事というのは、ガイダンスを添えてチームにアイデアを出すことです。そして、大抵の場合は素晴らしい成果物が返ってきます。(映画化も)そのプロセスと大体同じです。映画の製作陣はプロで、映画の作り方を熟知しています。私たちはガイダンスを渡して——

マシュー・コート:最高の結果を期待するだけです(笑)

——今回はリージョンがコミック化されましたが、他にどのキャラクターがアダプテーションに向いていると思いますか?

デイブ・リチャード:おそらく、全てのキャラクターが向いていると思います(笑)。

マシュー・コート:それはそうだね(笑)。でも実は、次のコミックシリーズについてはすでに取り掛かっているんです。リージョンとは別のプロジェクトです。別のキャラクターで、同じくらい面白いものになるはずです。オリジンストーリー的な要素もある。

デイブ・リチャード:私はそのプロジェクトについては知らないという前提で質問に答えますね(笑)。あえて選ぶとしたら、鬼とスピリットです。

マシュー・コート:良いストーリーになるだろうね!

※このインタビューはファンイベント「Dead by Daylight:TADAIMA JAPAN」でのお二人の来日に合わせ、2025年3月に収録しました。

(聞き手・構成:齋藤隼飛)


コミック『Dead by Daylight リージョン・ストーリー』はKADOKAWAより2025年9月26日(金)発売。

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『Dead by Daylight ファンコミックアンソロジー』もKADOKAWAより発売中。

新たなオリジナルチャプター「Dead by Daylight: Sinister Grace(シニスター・グレイス)」は、2025年9月24日(水)よりSteam、PS5、PS4、Xbox One、Xbox Series X|S、Epic Games Store、Windows Store、Nintendo Switchにて発売中。

『Dead by Daylight』公式サイト

『Dead by Daylight™(デッド・バイ・デイライト)』について
Behaviour Interactiveが提供する『Dead by Daylight』は、4対1の非対称型でオンライン対戦を行うマルチプレイヤーホラーゲームだ。「サバイバルなかくれんぼ」をコンセプトに、ダークファンタジーを演出した本作は、総プレイヤー数6,000万人を突破。全世界を震撼させるゲームへと成長した。1日あたり約200万人のユーザーがPCやコンソール、モバイルで、ゲームの舞台である「殺戮場」にてキラーと呼ばれる殺人鬼1人と、殺人鬼からの逃亡を試みるサバイバー(生存者)4人に分かれてプレイしている。2016年の発売以来、TVや映画、ゲームにおける伝説的な作品と次々にコラボレーションし、“ホラーの傑作”が集結し再認識される場として世界観ができあがり、対戦ごとに異なる体験を楽しめるのが特徴。

「Dead by Daylight: Sinister Grace(シニスター・グレイス)」の詳細はこちらから。

「Dead by Daylight:TADAIMA JAPAN」のイベントレポートはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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