スーパー戦隊は終わっても、東映ヒーローは止まらない
『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975-1977)から半世紀にわたり続いてきたスーパー戦隊シリーズは『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(2025-2026)をもって休眠期間に入った。しかし、東映特撮の歩みが止まるわけではない。東映は新たにPROJECT R.E.Dを始動。赤いヒーローたちがクロスオーバーする新シリーズを発表した。
その第1弾が、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』(2026-)である。本作は『宇宙刑事ギャバン』(1982-1983)の精神を踏まえつつ、“ギャバン”という存在を再定義した。かつて個人名だったその名は、各宇宙で一人しか名乗れない“称号”へと変わった。その名は、人々の平和を背負う象徴へとなったのだ。
多元宇宙(コスモレイヤー)にいる多種多様なギャバンたちの活躍を描く『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』。宇宙ごとによって人種も性別もまるで違う“ギャバン”が存在することは、バリエーション違いのギャバンを表現しているだけではない。異なる出自や価値観を背負う“ギャバン”の存在は、かつてのオープニングの歌詞のように「愛ってなんだ」とヒーロー像について問いかけてくる。
東映による新たなヒーロー像の更新、そして世界そのものの拡大の第一歩となる『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」について、ネタバレありで解説しつつ感想を記していこう。なお、以下の内容は『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」ネタバレ解説&考察
PROJECT R.E.D始動と多元宇宙構造
PROJECT R.E.D、そして『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」のはじまりは宇宙空間での艦隊同士の衝突であった。多元地球に迫りくる無数の宇宙船に立ち向かうのは銀河連邦警察のスペースシップ“コスモギャバリオン”。その上には赤いスーツを蒸着した宇宙刑事“ギャバン・インフィニティ”の姿があった。
敵の狙いは多元地球を“魔空空間”へ引きずり込むことだった。かつてのシリーズで描かれた異空間の概念を、『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」では現代的な解釈を加え、多元宇宙構造(マルチバース)へと拡張している。そのためコスモレイヤーのどこかに、旧シリーズの敵勢力“宇宙犯罪組織マクー”が存在していても不思議ではない。
ギャバンは3人だけではない?広がる称号の考察
もしかすれば、『宇宙刑事ギャバン』で描かれたように、旧作同様、魔空空間に飲み込まれた人類や“ギャバン”が存在する可能性も否定できない。そのような最悪の未来をギャバン・インフィニティは回避することができるのだろうか。
また、この最終防衛ラインまでに敵艦隊が迫ってきている場面では、ギャバン・インフィニティの他、キャストが発表されているギャバン・ブシドーとギャバン・ルミナスが登場している。このことから、ギャバン・インフィニティがコスモレイヤーを繋ぐ存在になることは明らかだ。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」冒頭では既に発表済みのギャバン・ブシドー、ギャバン・ルミナスに加え、別カラーのギャバンも確認できる。これは三人に留まらないギャバンという“称号”の存在を示唆している。それが過去なのか未来なのかは明示されないが、多元宇宙を繋ぐ存在としてギャバン・インフィニティが配置されているのは明らかだ。
21世紀の宇宙刑事とは何か
人類の科学は発展し、地球には多くの宇宙人が来訪した21世紀。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」で描かれたのは、多種多様な種族が暮らすようになった地球の姿だった。しかし、それに伴い、悪意ある宇宙人による犯罪も増加したことで銀河連邦警察が犯罪の抑止のために地球を守っていた。
しかし、この設定は扱いの難しいテーマを抱えている。それは宇宙から来た移民=犯罪者予備軍という排外主義になり兼ねない点だ。そこで『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』の鍵となるのが、感情によって活性化するエネルギー“エモルギー”だ。善意も悪意も増幅しうるこの力は、多元宇宙崩壊の危険性を孕んでいる。銀河連邦警察はそれを制御すべく、エモルギアを回収しているのだ。
このエモルギアの回収のために銀河連邦警察が動いている設定と、エモルギーは銀河の中心部で発見された新しいエネルギーという設定が、あくまでも銀河連邦警察は地球の警察では対処しきれないオーバーテクノロジーや特殊能力者に対応している可能性が考察の余地を残す。
もしかすると、今後は「反宇宙人感情による怒り」と「差別に対する怒り(義憤)」という同じ怒りを根っこに持ちながら、異なった怒りへと切り込んでいくのかもしれない。それをヒーロー作品としてどう描くのかに注目だ。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』において危険なエモルギアの回収の役割を担っていたのが、多元地球Α0073(アルファ マルマル ナナサン)ではギャバン・インフィニティ/弩城怜慈(どきれいじ)である。なお、表向き、弩城怜慈は銀河連邦警察の窓際部署である資料課に所属していることもあってか、他の刑事からは栄光ある“ギャバン”の称号を汚す存在として嘲笑されている。
他の部署の捜査官から“ギャバン”の称号は名誉とされているため、多元地球Α0073でかつてギャバンの称号を持つ宇宙刑事が活躍した可能性が高い。弩城怜慈は他の多元宇宙を救いに行く際、喪った先輩刑事のことを思い出しているので、もしかすれば彼こそが先代の“ギャバン”なのかもしれない。
多元地球Λ8018(ラムダ ハチマル ヒトハチ)
弩城怜慈がネガティブ波動を感知して向かったコスモレイヤーの一つ、Λ8018はギャバン・ブシドー/哀哭院刹那(あいこくいんせつな)がいる多元地球である。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」にて「ギャバンがいても、すべてのコスモレイヤーがエモルギアに対抗できるわけではない」ことが解説される。
Λ8018では、搾取と隷属を強いた政府に対抗する組織によるテロ活動が発生しており、銀河連邦警察との衝突していた。注目すべきは、弩城怜慈が葛見仁志の主張そのものは否定していない点だ。彼が問題視したのは“声の上げ方”であり、感情の押し付けだった。
この設定も微妙なバランスの上にある。弩城怜慈の設定は確かに正しいところはあるが、トーン・ポリシング(発言の内容ではなく、口調や論調を非難することによって、その妥当性を損なう行為)につながる可能性がある。
今後のエピソードでは、そこも深掘りされるのかもしれない。ギャバン・インフィニティが戦うのは葛見仁志ではなく、彼から生まれた異形の怪物・エモンズである。このエモンズは暴力的な感情に飲み込まれて本質を見失ってしまう状況を表しているのかもしれない。事実、弩城怜慈は葛見仁志が搾取と隷属の世界を変えたいと訴えながら、自分の妹を傷つけてしまったことに気付いていない点を指摘している。
弩城怜慈が葛見仁志から飛び出してきたエモンズを止めるために変身するのが、ギャバン・インフィニティだ。赤いギャバンは怒りのエモルギー“ゲキドー”で蒸着するギャバンとなっている。怒りの感情をもとにしつつも、その怒りを犯人には向けず、罪に向ける。
これは「罪を憎んで人を憎まず」を体現したヒーロー像だ。今回の場合は葛見仁志の主張を否定しないが、身近な愛する人のことを見失ってしまった彼を止め、暴力的な感情から解放するために戦うのだと考察できる。また、変身時に蒸着のプロセスを解説するのが『宇宙刑事ギャバン』の頃の懐かしさを感じさせる。
怒りそのものは否定されない。問題は、その向け先だ。弩城怜慈は“人”ではなく“罪”に怒りを向ける。それこそが、本作が掲げる“宇宙刑事”の在り方である。罪なき人を巻き込んでしまっては、どんなに素晴らしい思想を掲げていても、暴力として一蹴されてしまう。『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」では、現代ならではの犯罪との向き合い方をしていると考察できる。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」ネタバレ感想
スーパー戦隊休眠後の東映特撮はどこへ向かうのか
「スーパー戦隊の跡を継ぐ新たな東映特撮ヒーローとはどのような存在なのか」。多くの特撮ファンをはじめ、幼少期にスーパー戦隊を観てきた人々の期待と不安を一身に背負った『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」は迫力ある宇宙での艦隊同士の衝突からはじまった。スーパー戦隊のロボと怪人同士のバトルを彷彿とさせつつ、「スターウォーズ」シリーズを思わせる三次元的な戦闘が冒頭から視聴者を作品世界に引き込んだ。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」で監督・アクション監督を務めたのは『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001)から多くのスーパー戦隊レッドのスーツアクターを務めた福沢博文。それもあってか、派手なアクションや火薬の爆破など、見応えのある演出となっていた。
そして、宇宙人を侵略者ではなく良き隣人として描いた点も興味深い。多文化共生社会における“犯罪”というテーマは、「宇宙刑事」シリーズを現代社会に合わせて更新している。その一方でナレーションで移民の増加に伴い、移民による犯罪が増えたと明言したこと、そしてその設定には注目したい。
なぜならば、排外的に受け取られかねない要素も含んでいるからだ。だからこそ『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』は、単純な善悪ではなく“感情の行き先”を描こうとしているのではないか。ヒャクトー星出身のパトラン捜査官も活動するなど、銀河連邦警察は異星人同士による協力で成り立っていることが示唆されている。それと合わせて、この設定は今後の描き方次第で印象は大きく変わるだろう。
宇宙”刑事”ギャバンとしての正義とは何か
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」で興味深いのは、ギャバン・インフィニティ/弩城怜慈が反政府組織トップの葛見仁志の「政府指導者が搾取と隷属を強いているので反抗する」という姿勢そのものは否定していないところだ。どちらかと言えば、自分の妹を傷つけてしまっていることに気づかないところに対して怒りを見せている。
おそらく、ギャバン・インフィニティが蒸着に用いる怒りのエモルギアの怒りとは、罪を憎んで人を憎まずに基づく犯罪そのものへの怒りなのだろう。これは刑事という職業が抱える“職業的な怒り”に近い。しかし、権力者側が反政府組織を批判する際の言動はトーン・ポリシングとも読み取れる構図を孕んでいる。もしかすると、Λ8018のギャバン・ブシドーではなく、別宇宙のギャバン・インフィニティに言わせることで、「彼はこの世界をまだ知らない」というフックにつなげるのかもしれない。
怒りで変身するギャバン・インフィニティに対し、Λ8018のギャバンであるギャバン・ブシドーは哀しみのエモルギアで変身する。これはおそらく被害者への哀しみや、罪を犯してしまった人々への哀しみが源になると考察できる。これらは公開前のインタビューで語っていた刑事っぽさを突き詰めた結果の設定ではないだろうか。
新たな東映特撮の幕開けとして、宇宙っぽさを突き詰めたクオリティの高いCGによる艦隊同士の衝突と、刑事っぽさを突き詰めた感情の昂りを描いた『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』。福沢博文監督によるアクションや爆破も特撮ファンとしては満足のいく仕上がりだった。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第2話「二つの刃」では、哀しみの宇宙刑事、ギャバン・ブシドー/哀哭院刹那の物語が描かれる。Λ8018は過去に大戦があり、戦争用の人工生命体が生み出されたコスモレイヤーだ。彼がギャバンを務めるということは、Λ8018の銀河連邦警察は思想統制をしている可能性がある。そこに外部から来たギャバン・インフィニティの存在が起爆剤となって、宇宙を変えていくのかもしれない。
また、 前述の通り、Α0073の銀河連邦警察は宇宙人の犯罪を取り締まっているが、それは一歩間違えれば排外的に受け取られる可能性もある設定だ。そして、Λ8018の銀河連邦警察が政治批判をする過激派との衝突する場面は、描き方次第では、トーン・ポリシングや思想統制をしているという印象も生まれうる。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第2話「二つの刃」にて、戦争の爪痕が残るコスモレイヤーで、宇宙刑事たちは何と向き合うのか。本作が描こうとする“感情と正義”の物語は、ここから本格的に動き出す。怒りも哀しみも否定せず、それでも暴力に堕ちない正義を描けるのか。スーパー戦隊休眠後の東映特撮が掲げる次のヒーロー像は、そこにかかっている。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第1話「赤いギャバン」は2026年2月15日(日)9:30より放送開始。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第2話「二つの刃」のネタバレ解説&考察はこちらから。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第3話「キキとコト」のネタバレ解説&考察はこちらから。
『超宇宙刑事ギャバンインフィニティ』第4話「地底の要塞」のネタバレ解説&考察はこちらから。
