新たなる脅威“タイタンX”登場
2027年公開の『ゴジラxコング:スーパーノヴァ』を前に更なる広がりを見せているモンスター・ヴァース。それは映画の世界にとどまらず、ドラマにも進出している。長年、ゴジラたちを監視してきた秘密組織MONARCHとランダ家の奇妙な運命を描いた『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」がApple TV+で配信開始された。
第1話では、ゴジラやコングに匹敵する脅威であるタイタンXが世界軸(アクシス・ムンディ)から地上に解き放たれ、髑髏島の怪獣(タイタン)たちすら震撼した。そして第2話「共鳴」では、ゴジラやコングすらも警戒するタイタンXに人類が立ち向かわないといけなくなる。
本記事では、『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」の解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容は『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」の内容に関するネタバレを含みます。
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『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」ネタバレ解説&考察
混乱するMONARCH
タイタンX復活とその暴走により、現場を仕切っていたMONARCH副長官ナタリア・ヴェルデューゴが死亡。それにより、指揮権はエイペックス社とのパイプ役を担当していたティムに移行するも、もともと彼は閑職に追いやられ、地下室でファイル整理をさせられていた人物だ。監視船の指揮などできるはずがない。
それに対して、リー・ショウ大佐はタイタンXによる第二のG-Dayを防ぐべく、追跡を急げと責め立てる。このとき、長年、空洞世界〈ホロウ・アース〉にいたため、G-Dayを知らないケイコ・ミウラに対し、リーは「MONARCHの最悪のミス」と解説している。
リーはもともと叩き上げのアメリカ軍人だ。彼はMONARCHの創設メンバーとしてゴジラが危険な存在だと軍上層部に報告していたのにも関わらず、軍はビキニ環礁での核実験で処理しようとして失敗した。その後、自分たちを追いやった末に結局ゴジラの監視に失敗したMONARCHには、自分の責任もあると感じたのだろう。
結局、MONARC長官もリーの判断に概ね同意した。その一方で、命令には続きがあり、「リーを拘束せよ」とあった。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」の時系列、つまりリーによる前哨基地の武力制圧は2年経っても許されていないということだ。
リーはケイコにMONARCHは政府組織の色が強くなってからミスを犯すようになったというが、事実、リー拘束の命令をティムに出したのもミスだろう。そもそもティムは屁理屈をこねてゴジラと接触した人物だ。彼は対タイタンX作戦には先人のレガシーが必要不可欠だと判断し、「命令の半分は文字化けして読めなかった」とまた屁理屈をこねたのだ。
それにより、一丸となってタイタンX追跡ができるようになったと誰もが思った。しかし、本当の危険性に彼らは気づいていなかった。リーたちの乗ってきたヘリに三葉虫型の小型怪獣“スカラベ”がくっついており、既に船の中に忍び込まれていたこと。そしてスカラベがMONARCH職員を捕食しはじめていたことに。
最優先任務“タイタンXを追え”
MONARCH上層部はタイタンXを危険視し、その追跡を命じる。だが、ティムたちの乗る船は監視用のものであり、速度があまり出ないどころか武装もない。研究用の艦船なのだ。それにも関わらず、上層部が追えという相手はコングすら警戒する脅威。非武装で立ち向かえるはずもない。
彼らの武器はリーやケイコ、そしてヒロシ、ケイトたち三世代にわたって受け継がれてきたMONARCH創設時のレガシーだけ。知識で怪獣と戦う。それが『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」の一つのテーマではないかと考察できる。
タイタンXはMONARCHの船よりも素早く移動し、こちらの装備では追跡がままならない。それにも関わらず、輸送船が大渋滞を起こすマラッカ海峡へとタイタンXは近づいていた。このままではG-Day以来の最悪の事態は免れない。
ケイコは問う。現代のMONARCHの使命とは何か。それは「怪獣の時代における発見と防衛」だった。これは髑髏島で消息を絶ったビルの遺した言葉で、彼のレガシーだ。この言葉からビルがもういないことをケイコは悟った。そして、その使命のために船はスピードを上げる。
そして、リーとケイコはかつてタイタンXが超低周波に反応したことを思い出し、ドローンを使ってマラッカ海峡に行くことを阻止できると考察したのだ。ビルの言葉を胸にケイコとリーの知識で戦うMONARCH。やはり、『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」はレガシーこそ最大の武器だと教えてくれる。
長崎原爆の犠牲者
タイタンXとスカラベに初めて出会った1957年のチリのサンタ・ソレダード島。「偉大なる海の神(エル・グランディオス・デルマール)」の存在を知るも、それ以上の情報を得られなかったリー、ケイコ、ビルたち。ビルは洞窟に回遊ルートがあったといい、追いかけるためにサンティアゴに行こうとする。
だが、ビルにケイコの不満が爆発した。それもそのはず、この時代のMONARCHの情報源は基本的にビルの調べてきた神話や伝承だ。その多くが眉唾物の話ばかりで、ケイコたちは振り回されてきたのだ。その結果、リーとケイコだけが島に残ることになった。
ここで重要なのは、ケイコが死んだ夫であり、ヒロシの父親について軍人のリーに語る場面だ。ケイコの夫の死因、それは長崎に投下された原爆によるガンだった。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン1でビキニ諸島での核実験を観光気分で観ていた軍上層部にケイコが反発した理由は彼女自身、親族が原爆の被害者だったからだ。
実は、モンスター・ヴァースのはじまりである『GODZILLA ゴジラ』(2014)から、広島と長崎に投下された原爆は一貫して語られてきたテーマだ。渡辺謙演じる芹沢猪四郎は被爆二世であり、父親は広島の原爆投下による後遺症で死亡している。そのため、彼は対ゴジラ作戦のために核を使うことに徹底して反対しているのだ。
これは『GODZILLA ゴジラ』の軸になるかもしれない重要なシーンだったが、残念ながらカットされている。その理由は時間の都合などではない。製作に協力していたアメリカ国防総省の抗議によるものだ。これはアメリカ文化における原爆使用の神聖化という根強い問題に繋がっている。
広島平和研究所の講師であるロバート・ジェイコブスはアメリカ人が教えられる原爆について、2006年に講義をしている。そこで語られたのはアメリカ文化の中における「原爆投下の2つの物語」の存在だ。
1つ目は原爆が戦争を早期に終了させたというもの。実際は、原爆投下以前の段階で日本政府が米国から降伏の条件を取り付けようとしていたのだが、アメリカ軍は広島と長崎に原爆を投下した。それにより、アメリカ人の中には「原爆によって日本が降伏した」という物語が生まれたのだ。
そして2つ目の物語が、原爆は日米双方の人命を救った「人道的な判断」だったというものだ。これ以上戦争が長引けば米軍と日本軍の本土決戦が始まる。日本軍が降伏するのに1年以上かかり、100万人以上の犠牲者が出るはずなので原爆で済んだのは人道的だという判断だ。
この2つの物語はアメリカ文化と深く絡み合っている。原爆はアメリカでは大昔の伝承のような存在になってしまった。ホロコーストのジョークを言えば、アメリカでは職を追われることだろう。しかし、原爆はジョークとして広く浸透している。最近では『バービー』(2023)と『オッペンハイマー』(2024)を絡めた「バーベンハイマー」の記憶が新しい。
ゴジラとは反戦・反原爆である
「バーベンハイマー」が流行したとき、アメリカ側と日本側の反応はまるで違った。アメリカの『バービー』の公式アカウントは「バーベンハイマー」の画像に「忘れられない夏になりそう」と原爆をジョークにしたリプライを投稿。それに対し、日本側ではバービーの吹替を務めた高畑充希が「ジャパンプレミア試写会の登壇を辞退することまで考えた」と声明を出している。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』はアメリカ文化における原爆像に真っ向から切り込む作品だ。シーズン1では核実験が行われるビキニ諸島にリゾートへの観光気分で訪れた軍上層部と、最後まで反対するケイコを対比的に描き、アメリカ軍人としてのリーは葛藤することになった。
そして、今回の『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」では、原爆は投下後も被爆という爪痕を残し、命を奪うものだと視聴者に語り掛ける。再びリーは愛するケイコを前に、アメリカ軍人の代表としてどうすべきかで葛藤する。それを踏まえると、リーがG-Dayを最大のミスと評した意味が変わってくる。
リーが考える最大のミス、それはMONARCHがサンフランシスコでの核使用を止められなかったことだったのだ。『ゴジラ』(1954)はビキニ諸島での核実験と第五福竜丸事件を受けて制作された映画だった。そのため、『GODZILLA ゴジラ』で広島原爆への言及をアメリカ国防総省に言われてカットしたのは、ある意味本末転倒だ。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』は原爆の言及をカットしたりはしない。それから怪獣目当てで見に来た視聴者たちに「ゴジラは水爆実験によって目覚めた怪獣」だと思い出させる。そして、ゴジラは怪獣という形をもって現れた原爆の恐怖に迫っていく作品なのだと考察できる。
タイタンXの眷属“スカラベ”
これまで、東宝怪獣映画では巨大怪獣の出現に伴い現われる小型の甲殻類型の怪獣が度々登場した。最初に登場したのは『空の大怪獣 ラドン』(1956)に登場した巨大トンボの幼虫(ヤゴ)の怪虫メガヌロンだろう。メガヌロンは阿蘇山の炭鉱に出現し、人間を捕食した。
また、『ゴジラ』(1984)ではゴジラに寄生していたフナムシが放射能で突然変異したショッキラスが登場。人間を襲って血を吸い、ミイラ化させていた。『モスラ2 海底の大決戦』(1997)にはオニヒトデに似たベーレムが登場し、海洋汚染を広めた。
これらの設定は後の怪獣映画に受け継がれたのか、『クローバーフィールド/HAKAISHA』や『パシフィック・リム』(2013)でも怪獣の寄生虫が登場。寄生虫でありながら、人間を襲いかねないサイズ感が怪獣をより一層強大に見せている。
しかし、それらと比較するとスカラベには大きな違いがある。それはタイタンXを呼び寄せる信号を発し、まるでタイタンXに餌を与えるような行動をするということだ。メガヌロンはラドンにとって餌であり、ラドンの雛に群れごと捕食されていた。ショッキラスもゴジラにくっついているだけだった。
それに対して、スカラベはタイタンXに従っていると考察できる。1957年のチリでは、タイタンXを信奉する村民たちが、巨大魚を生贄に捧げる祭りを行うとスカラベたちが出現。それに呼応するようにタイタンXが海に浮上してきた。この様子はまるで眷属のようだ。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」ネタバレ感想
タイタンXとダガーラ、そしてデストロイア
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」で登場したスカラベは、これまでの小型の東宝怪獣のメガヌロンやショッキラスと異なり、巨大な怪獣に仕える眷属のような存在だ。これは『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第1話「因果関係」の記事でも述べたように、タイタンXにクトゥルフ神話の要素があるためだと考察できる。
しかし、タイタンXが東宝怪獣のオマージュだった場合、話は変わってくる。例えばニライカナイ文明を滅ぼした魔怪獣ダガーラは、海洋汚染物質を体内で取り込むと肩から濃縮してベーレムを生み出し、海洋汚染を広める。ベーレムはダガーラが活動停止しない限り、無尽蔵に生み出される存在だ。
そのため、もしかするとタイタンXが何らかの目的で生み出した存在がスカラベなのかもしれない。また、ダガーラの名前の由来はアッシリア神話の神ダゴンであり、偶然にもクトゥルフ神話に取り込まれた神と同じ名前に由来している。
ダガーラをモデルにした可能性より怖いのが、『ゴジラvsデストロイア』(1995)のデストロイアをモデルにしていた場合だ。デストロイアはゴジラを殺した怪獣として有名だが、その正体は最初にゴジラを殺した兵器オキシジェン・デストロイヤーなどで異常進化した先カンブリア時代に生息していた微小生命体だ。
最初は微小体として活動し、増殖・合体によって甲殻類に類似したクロール体に成長する。さらにカニのような脚部に長い首を持った幼体になると人間を襲いはじめ、集合体、飛翔体を経て、最後はドラゴンのような完全体になるのだ。
もしかすると、スカラベはタイタンXにとってのクロール体であり、集合して増殖・合体することで「偉大なる海の神(エル・グランディオス・デルマール)」へと進化するのかもしれない。その場合、人類に止める手はあるのだろうか。やはり、怪獣の王であるゴジラたちに頼るしかないのだろうか。
戦後81年、原爆を風化させない
1945年8月15日、日本がポツダム宣言を受諾し、太平洋戦争が終結した。日本は単なる被害者ではない。多くのアジアの国に深い傷跡を残した。そんな日本がすべきことは何かと聞かれたら、多くの人がこのように答えるかもしれない。「核の根絶」と。
日本は長崎と広島に原爆を投下され、その悲惨な現状を目の当たりにした。だからこそ、原爆の恐ろしさを語ることができる。『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」では、「ゴジラ」シリーズの根幹にある核の根絶というテーマを描いた。
ケイコの夫は善人であり、医者だった。しかし、長崎に住んでおり、戦後もそこで医療行為を続ける中でがんを発症し、帰らぬ人となった。原爆が恐ろしいのは被爆することで発がんリスクを高めるということだ。街を焦土と化すだけでは飽き足らず、近隣で暮らしていた人々にまで牙をむく原爆。
前述の通り、アメリカ文化では、原爆は軽く扱われることが多い。それでも、『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』はシーズン1から一貫して核や原爆と向き合い、落とされた側のケイコと落してしまった側のリーの対比から、その爪痕を描いてきた。戦後81年目、それでも原爆を風化させない。そこにこそ、ゴジラの存在意義がある。製作陣の強い意志が感じられるエピソードだった。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン2第2話「共鳴」は2026年3月6日よりApple TV+にて配信開始
Source
広島平和研究所「広島・長崎への原爆投下に関する米国人の見方とその背景」
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』シーズン1第1話のネタバレ解説&感想はこちらから。
モンスター・ヴァースの年表はこちらから。
