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『紅の豚』声優キャストは？
1992年に公開された映画『紅の豚』は、宮崎駿監督がスタジオジブリで手がけた第5作目のアニメーション映画。ジブリとしてはその前年に公開された高畑勲監督作品『おもひでぽろぽろ』(1991) に続く第7作目にあたる。
『紅の豚』は1989年に公開された宮崎駿監督の『魔女の宅急便』が残した記録を塗り替える形で、当時のアニメーション映画の興行収入記録を更新。興行収入54億円はアニメ映画がヒットを連発するようになった現在を基準にしても大ヒットと呼べる数字だ。
今回は、映画『紅の豚』の声優キャストをまとめて紹介しよう。実はスタジオジブリが声優の起用を俳優中心にシフトしたのは、宮崎駿監督の次作『もののけ姫』(1997)からだ。同時に『紅の豚』はジブリと日本テレビの連携が大きく進んだ作品でもある。後のジブリの基盤が固まる起点となった映画『紅の豚』では、どんなキャストが起用されていたのだろうか。
映画『紅の豚』に出演した声優・俳優まとめ
ポルコ・ロッソ役 森山周一郎
主人公のポルコ・ロッソの声を演じたのは、声優で俳優の森山周一郎。劇団東芸の一期生として野沢雅子、大塚周夫などと共に吹替声優の黎明期を支えた俳優だ。本名は大塚博夫だが、先輩である大塚周夫から名前が被るから変えるように言われたことを、大塚周夫の息子である大塚明夫がドキュメンタリー映画『時には昔の話を/森山周一郎 声優と呼ばれた俳優』（2022）にて述べている。
森山周一郎は舞台俳優出身であり、声優と呼ばれることについて「嫌い」と語っている。また、声優養成所に関しても技術の向上に貢献こそしているが、画一的な演技の役者ばかり生み出す「諸悪の根源」と語るなど、吹替声優についても度々厳しい意見を述べている。
その一方、良い仕事とは事務所を通す仕事だと考えており、自宅に直接オファーをかけてくる仕事は断る姿勢を取っていた。『紅の豚』も宮崎駿監督自身が直接オファーをかけたことと、「アニメは子供の見るもの」という考え、そして宮崎駿監督のことを知らなかったことから断ろうとしたが、娘の猛反対でポルコ・ロッソ役のオファーを受けることになったという。
そのため、少し間違えば森山周一郎はポルコ・ロッソ役を辞退していたことになる。そのときの心情について森山周一郎は後年、「知らないとは怖いものである」や「記念すべき作品をくれたんだ。俺に。宮﨑さんは。感謝してるよ」と回想している。
英語版『紅の豚』でポルコ・ロッソの声優を担当したのはティム・バートン監督「バットマン」シリーズでバットマン/ブルース・ウェインで知られるマイケル・キートン。フランス語版『紅の豚』のポルコ・ロッソは『レオン』（1994）のジャン・レノが演じている。
マルコ・パゴット（青年期のポルコ・ロッソ）役 古本新之輔（現・古本新乃輔）
ポルコ・ロッソの青年期であるマルコ・パゴットを演じたのは古本新之輔。俳優・ミュージシャン・ラジオパーソナリティとしてマルチに活動しており、現在では読み方は同じだが芸名を古本新乃輔に改名している。俳優としては「北の国から」シリーズや「男はつらいよ」シリーズに出演した。
俳優としてだけではなく声優としても熱心に活動しており、1985年から1986年には『クマのプー太郎』のプー太郎役と『H2』の国見比呂役、『爆れつハンター』のキャロット・グラッセ役の3作品の主演声優としても活動していた。
その頃、ドラマ撮影も重なるなど、古本新之輔は多忙を極めていた。そのため、同時期に放送が予定されていた「らんま1/2」シリーズの響良牙役を降板することになり、すでに呪泉郷ガイドやガヤで参加していた山寺宏一が同役を演じることになった。現在はハワイ好きが高じ、ハワイアンショップの経営やウクレレ教室など、多岐にわたる活動をしている。
マダム・ジーナ役 加藤登紀子
マダム・ジーナを演じたのはシンガーソングライターの加藤登紀子。1966年に「誰も知らない」でレコードデビューして以降、「ひとり寝の子守唄」や「知床旅情」、「百万本のバラ」など数々の名曲を世に送り出してきた。『紅の豚』では主題歌「さくらんぼの実る頃」とエンディング・テーマ「時には昔の話を」も担当している。
ニューヨークのカーネギー・ホールでのコンサートや、フランス政府から芸術文化勲章（シュヴァリエ）を授与されるなど国内外でも高い評価を獲得している加藤登紀子。また熱心に学生運動に参加していたが、自身の本業は歌手であり、活動家ではないとしている。
現在は歌手活動の他に自然保護活動などにも尽力している加藤登紀子だが、『紅の豚』の収録時を振り返り、森山周一郎について「何とも言えない。いい気持ちで、二人で対話して、最初からジーナにさせてくれた人だと思います」と語っている。
ピッコロのおやじ役 桂三枝（現・六代目桂文枝）H4見出しa
ピッコロのおやじの声を演じたのは落語家の桂三枝。「いらっしゃーい」や「オヨヨ」を持ちギャグとし、サニーちゃんと呼ばれるなど三枝の名で45年間親しまれてきたが、2012年に師匠の名を継ぎ六代目桂文枝となった。
若くしてタレント人気を獲得し、1971年から2022年にかけて放送された「新婚さんいらっしゃい」で同一司会者によるトーク番組の最長放送」としてギネス世界記録に認定されている。落語家としては創作落語を得意とし、300以上の演目を持つとされている。
そんな桂三枝が『紅の豚』に出演したきっかけは森山周一郎の推薦である。『紅の豚』製作当時に桂三枝が森山周一郎に吹替声優に挑戦してみたいと持ち掛け、それを受けた森山周一郎が宮崎駿監督に推薦した。これにより、宮崎駿監督はピッコロのおやじの役を大きく書き換えたという。
マンマユート・ボス役 上條恒彦
マンマユート・ボスの声優を担当したのは歌手で俳優の上條恒彦。ドラマ俳優としては「3年B組金八先生」シリーズの社会教師、服部肇などで知られるが、実写作品だけではなく吹替声優やアニメ声優などでもマルチに活躍している俳優である。
上條恒彦は他のスタジオジブリ作品にも声優として出演しており、『紅の豚』以外にも出演している。『もののけ姫』（1997）ではエボシの近侍ゴンザ、『千と千尋の神隠し』（2001）では父役を演じている。他にもディズニー作品の吹替声優を担当しており、『リトル・マーメイド』（1991）ではセバスチャン役を演じた。
歌手としては第23回NHK紅白歌合戦に出場するなど、高い歌唱力を持つ。特に「木枯し紋次郎」シリーズの主題歌「誰かが風の中で」は、代表曲となった。現在は長野県の八ヶ岳のふもとに移住し、その様子をつづったエッセイも出版されている。
フィオ・ピッコロ役 岡村明美
フィオ・ピッコロを演じたのは声優の岡村明美。「ONE PIECE」シリーズのナミ役で知られる岡村明美だが、声優としてのデビューは『紅の豚』である。『紅の豚』出演後、『金田一少年の事件簿』（1997-2000）の「天草財宝殺人事件」での演技が注目され、『ONE PIECE』（1999-）のナミ役のオーディションに参加した。
2024年の第18回声優アワードで、富山敬・高橋和枝賞を受賞するなど、第一線で活躍する声優だが、『ONE PIECE』の現場では先輩が多いため、連絡係を買って出るなどしている。特技は書道であり、書道師範の免状を持っている。
ミスター・カーチス役 大塚明夫
ミスター・カーチスの声を演じたのは声優の大塚明夫。ポルコ・ロッソ役の森山周一郎とは家族ぐるみの付き合いであり、大塚明夫の父親で俳優であり声優、そして森山周一郎の先輩であった大塚周夫が森山周一郎の芸名を大塚姓から森山姓に変えさせている。
『紅の豚』について大塚明夫は演技する上で楽しかったと後年語っており、スタジオジブリ作品で語られることの多い自然破壊への警鐘などの説教の要素が無かったとも語っている。ミスター・カーチス役はオーディションであり、最後は山寺宏一との一騎打ちになったとのこと。
英語版『紅の豚』でミスター・カーチスを演じたのはケイリー・エルウィス。ケイリー・エルウィスは『紅の豚』の他にも、『耳をすませば』（1995）や『猫の恩返し』（2002）などの作品にも出演している。
バアちゃん役 関弘子
バアちゃんの声を演じたのは関弘子。関弘子は劇団俳優座に一期生として入座し、劇団青年座の立ち上げに参加した。舞台やドラマだけではなく、朗読劇にも力を入れており、朗読劇指導などのカルチャーセンターの講師も務めた。
スタジオジブリ作品には『紅の豚』以外にも出演しており、『魔女の宅急便』（1989）で老婦人に仕えている使用人の老婆バーサを演じている。他にも関弘子は多くの海外ドラマの吹替声優も担当した。
フェラーリン役 稲垣雅之
ポルコの戦友フェラーリンの声を演じたのは稲垣雅之。1970年代から声優として活動し、1980年代からは俳優としてもドラマや映画に出演。アニメでは、『宇宙戦艦ヤマトIII』(1980-1981) に幕之内勉役でレギュラー出演するなど活躍した。
俳優としては、映画『の・ようなもの』(1981)、『エイトレンジャー』(2012)、『天空の蜂』(2015)、「ＳＰＥＣ」シリーズなど、堤幸彦監督作品には複数出演している。ポルコ役の森山周一郎も出演した映画『1リットルの涙』(2005) にも出演した。
以上が、映画『紅の豚』の主な声優キャストだ。本作に参加した声優・俳優たちを思い浮かべながら改めて鑑賞してみてはいかがだろうか。
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