『スパイダーマン』1976年に性教育の教材となったコミックが話題に | VG+ (バゴプラ)

『スパイダーマン』1976年に性教育の教材となったコミックが話題に

via: Robinson, Ann, writer, “The Amazing Spider-Man vs. The Prodigy! [Marvel/Planned Parenthood Federation of America comic book],” Social Welfare History Image Portal,

性教育用『スパイダーマン』その内容とは?

スパイダーマン作者が紹介

今や世界中で愛されるスーパーヒーローとなったスパイダーマン。そんな彼のコミックが、1976年に性教育の教材となっていたことが注目を集めている。Twitterで注目の投稿を行ったのは、『マイルス・モラレス: スパイダーマン』(2018-)などの作者として知られるサラディン・アフメド。過去にNGO団体プランド・ペアレントフッドの性教育教材として、『スパイダーマン』の特別コミックが発行されていたことを紹介した。ツイートには、研究大学であるバージニア・コモンウェルス大学のデータベースへのリンクが掲載されており、当該作品の一部が閲覧できるようになっている。

その内容は?

性教育用の教材として制作された『スパイダーマン』の特別編は、『The Amazing Spider-man vs. The Prodigy!』と銘打たれたもの。人間に擬態したエイリアンである“プロディジー”とスパイダーマンの対決を通して、避妊推進を訴える作品だ。前述の通り、バージニア・コモンウェルス大学のデータベース上で、当該作品の一部が閲覧できる。

『The Amazing Spider-Man vs. The Prodigy!』Social Welfare History Image Portal

プロディジーの屋敷に忍び込んだスパイダーマンは、そこでプロディジーが10代の少年少女を集め、性教育の指導を行っている姿を目撃する。教室のような部屋で講義を行うプロディジーは、「性行為をせずにどうやって大人になるんだ?」「誰もが通る道だ」と少年少女達に教え、“責任”など気にするなと嘯く。それを目撃したスパイディーは、窓の外から「愛し合ったり子どもができたりすることは何も間違ったことじゃない。だけど、それには責任が伴うんだ」と、その指導内容に懸念を示す。

プロディジーの陰謀

プロディジーの演説に対し、クラスの少女は「中学校で正しい知識を教えてくれますよ」、少年は「ドラッグストアで避妊具は買えますよ」と正論を返すが、プロディジーは余裕の表情だ。「そんな面倒なことはいいんだ。妊娠することは良いことなんだ」と子ども達を諭す。
この光景に衝撃を受けたスパイダーマンは、「奴の目的は子ども達を正しい情報から引き離すことだ。子ども達は、この歳で妊娠することは、母親だけでなく子どもにとってもリスクが高いということも知らないだろう」「子ども達が奴の操り人形になってしまう!」と、子どもを産ませて労働力を得ようとするプロディジーの陰謀を阻止することを決意する。

性の知識に関するファクトシートを掲載

『The Amazing Spider-Man vs. The Prodigy!』は、その物語で子ども達の意識をリードするだけでなく、性に関するファクトシートを掲載。1976年当時の認識のものではあるが、性病や性差別についての知識が得られるようになっている。
同作の制作をリードしたプランド・ペアレントフッドは、1916年から100年以上続くNGO団体だ。人工中絶の擁護や避妊を推進する活動を行っており、政界にも強い影響力を持っている。また、同誌には「Stan Lee presents:」の文字も入っており、スパイダーマンの生みの親の一人であるスタン・リーお墨付きの作品であることも分かる。
投稿者のサラディン・アフメドは、近年の「SJW*がコミックにフェミニズムを持ち込んでいる」という声に向けて、1976年にスタン・リー自らがこうした活動に取り組んでいたことを指摘している。

*SJW=ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー、社会正義・ポリコレを掲げる人への批判的な呼称

実は、1986年にはスパイダーマンとヒーローユニットのパワーパックがコラボした、「性的虐待からの逃れ方」を子ども達に教育する教材コミックも発刊されている。今回は、1976年当時から『スパイダーマン』が様々な形で社会貢献を行っていたことに、ネット上では改めて驚きと賞賛の声が上がっている。

いまだ現役の“親愛なる隣人”

アメリカで2019年3月に発売を予定しているスパイダーマンの新シリーズ『スパイダーマン: ライフ・ストーリー』は、ベトナム戦争を題材とした作品になる。日本ではアニメ映画『スパイダーマン: スパイダーバース』が2019年3月8日(金)より全国ロードショー、MCU映画『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム』が2019年夏に公開される予定だ。
様々な形で社会にメッセージを発し続けてきた“親愛なる隣人”は、今でも世界中の人々に勇気を与え続けている。

Source
Saladin Ahmed

VG+編集部

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