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ドラマ『ストーブリーグ』が3月28日放送&配信開始
今月――2026年3月、国・地域別に世界最強の野球チームを決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催された。日本代表チームは準々決勝で敗退したものの、他のチームの1点をめぐる真剣勝負にさえ、野球ファンはもちろん普段野球観戦をしない人々も熱狂した。
野球の醍醐味とは何だろうか? 選手たちの鍛え上げた身体や技術から繰り出される鮮やかなプレー、他の野球ファンたちとの応援、グラウンドを離れたところで紡がれる選手やチーム首脳陣の物語――見る人にとって様々だろう。
ただ、わたしたちが野球を楽しみ、チームの勝ちやリーグ制覇の喜びを分かち合うために、見えない場所で野球を支える人々が存在していることを忘れてはならない。ジェネラルマネージャー(GM)をトップとして、チーム運営に関わる各球団のスタッフたちである。
Lemino・WOWOWで3月28日(土)から放送および配信される『ストーブリーグ』は、そんな人々の姿を全8話で描いたドラマだ。タイトルの〈ストーブリーグ〉とは、ストーブを焚く時期である冬――翌シーズンに野球に関わるすべての人が勝利の美酒を味わうため、チームの経営陣がチーム強化に励むオフシーズンを指す言葉だ。
『ストーブリーグ』の注目ポイントは?
チームを再建する野球未経験のGM
万年リーグ最下位で、チームの雰囲気も最悪なプロ野球チーム・豊橋ヤオシマドリームズ。様々な競技でチームを優勝に導いてきた〈優勝請負人〉であり、優勝後に必ずチームが消滅するというジンクスを持つ桜崎準(亀梨和也)が、チームを再建するべくGMに就任するところから物語は始まる。野球経験のない桜埼は、経営陣や選手の反発を受けながら独自の視点で球団の改革を進めていく――というのがストーリーの軸である。
この『ストーブリーグ』は、2019年に大ヒットした同名の韓国ドラマを原作とする。韓国版も、野球経験のない〈優勝請負人〉ペク・スンス(ナムグン・ミン)が韓国リーグの最弱チーム・ドリームズのGMとしてチームを変えていくというストーリーで、選手の解雇やトレード、年俸交渉、スカウトやドラフト会議、外国人選手の採用、データ戦略、キャンプ、親会社との確執など、オフシーズンに球団経営陣が直面する様々な問題が全32話に渡って描かれた。
韓国版から日本版へ移植するにあたって基本的な設定や序盤のストーリーに大きな改変はなく、原作ドラマを未見であっても、韓国で社会現象ともなった歯ごたえのある物語を味わえるはずだ。また、日本版の公式サイトでは、韓国版で強い印象を残した登場人物であるエース投手カン・ドゥギ(ハ・ドグォン)が、ヤオシマドリームズの臨時コーチとして登場することが発表されており、韓国版ドラマを楽しんだ視聴者にとってもうれしい要素も盛りこまれている。
プロ野球ファンには嬉しい要素も
それに加えて、日本版では日本プロ野球のファンが楽しめるポイントも多い。本作では現実の日本野球機構NPBはJPBと改称されており、リーグに所属するチーム名は、上記したように舞台となる球団・ドリームズをはじめ、韓国版を踏襲した架空の名称が用いられている。それらと実在NPBのチームとの対応を考えながら見るのも一興だろう。
韓国版ではソウル近郊の仁川を本拠地とする実在の球団SKワイバーンズ(2020年からSSGランダースに改称)が制作に全面協力し、ホームグラウンドである仁川の球場で撮影が行われた。日本版でも中日ドラゴンズや横浜DeNAベイスターズの協力の下、ナゴヤドームや横浜スタジアムがロケ地となっており、見慣れた風景の中で繰り広げられるドラマに胸が熱くなるはずだ。
第3話で描かれるドラフト会議では、実在の球団の方針や戦略を思わせる指名が行われており、こうした細部の描写もマニアにとってはたまらないだろう。かつては選手としてグラウンドで汗を流し、現在はスポーツキャスターとして野球関連番組で活躍する芸能人として野球ファンに馴染みのある亀梨和也が〈野球経験のないGM〉を演じるというキャスティングにも意外性がある。
『ストーブリーグ』韓国版との違いは?
韓国版にあった兵役というテーマ
このように、韓国ドラマ『ストーブリーグ』を日本でリメイクするにあたって細かなローカライズが施されていることがわかるが、韓国版と日本版とでは、おそらく兵役と財閥という社会的な要素も大きな違いとなるだろう。
韓国では、国民皆兵制の原則に基づいて18歳以上の韓国籍の男性に兵役が義務づけられており、20歳から28歳の間に一定期間を軍隊で服務しなければならない。WBCなどの国際大会で大きな実績を残した選手には〈芸術体育要員〉として代替服務の特例があり、兵役中も警察野球団に所属して練習や試合に従事することもできるものの、キャリア形成の中でもとりわけ重要な時期に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
韓国版『ストーブリーグ』では、兵役を逃れてアメリカで市民権を取得してプレイすることを選択した投手が登場し、彼の韓国球界復帰の際に〈兵役逃れ〉問題が再燃する様子が描かれている。兵役が存在しない日本で、日本人選手が直接この問題に巻き込まれることはないだろう。しかし、日本版の公式サイトでは、韓国人投手イム・ミンジョン(チャ・ジュノ)が豊川ドリームズにルーキーとして所属することが明らかにされており、彼に兵役の問題がどのように関わってくるのかが見どころの一つとなるかもしれない。
財閥の要素はどう変わる?
また、現在の日本には存在しない財閥と球団との関係が、日本版リメイクでどのように改変されるかも注目ポイントである。斗山ベアーズ、LGツインズ、サムスン・ライオンズ、ロッテ・ジャイアンツといった韓国プロ野球(KBO)リーグのチーム名を見てもわかるように、リーグを構成する10球団のほとんどの親会社は家族経営で成長した財閥である。
韓国社会での財閥の影響力は大きく、政治との癒着や経済格差といった現実世界での社会問題を生み、韓国のドラマの定番の題材ともなっている。原作ドラマの終盤でも、親会社である財閥での親族間の争いがペク・スンスのGM採用やドリームズの存続に大きく関わっており、韓国社会やKBOの状況と〈韓国ドラマ〉という媒体が必然的に結びついた展開だと言える。
日本版でも序盤で親会社内での確執や、それが櫻崎を雇った理由であることがほのめかされている。財閥が存在しない日本で、球団オーナーたちと球団の経営陣たちの対立がどのようにローカライズされて描かれるのか気になるところである。
本記事の筆者・溝渕久美子による、送りバントを題材にした近未来SF「サクリファイス」を収録した『野球SF傑作選 ベストナイン2024』は発売中。
溝渕久美子も参加した『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』は5月1日発売で予約受付中。
ドラマ『ストーブリーグ』は、3月28日(土)よりLemino・WOWOWにて放送・配信開始。
2019年に韓国で社会現象を巻き起こしたドラマ『ストーブリーグ』が、ついに日本版として登場する。亀梨和也演じる野球未経験のGMが、万年最下位のプロ野球チーム「ドリームズ」の再建に挑む。編成本部長・蒔田理紗(長濱ねる)をはじめとする運営スタッフと、時に衝突し、時に力を合わせながら、常識を覆す大胆な改革でチームに変化をもたらしていく。球団オーナーの思惑も交錯する中、プロ野球オフシーズンを舞台に、チーム強化に奮闘する「ドリームズ」の勝負のシーズンが幕を開ける。
●あらすじ●
熱く、そして冷静なチーム・ビルディングの行方を描く逆転劇。
万年最下位に沈むプロ野球チーム「ドリームズ」。チーム内の派閥争い、守備のミスを連発する選手たちなど、その内部は崩壊寸前の状態だった。そんなドリームズの再建を託されたのが、野球未経験のゼネラルマネージャー・桜崎準だ。彼は競技経験こそないものの、これまで複数のスポーツチームを優勝へ導いてきた「優勝請負人」として知られる存在だった。
桜崎は問題の根本に切り込むべく、選手やフロント陣と衝突しながらも、常識にとらわれない改革を次々と打ち出していく。そして彼が最初に下した決断は、球団の象徴とも言えるスター選手のトレードだった。勝利とは何か。チームとは何か。選手だけでなく球団スタッフをも巻き込みながら、その問いに向き合っていく。
●作品概要●
■話数:全8話
■監督:瑠東東一郎(『おっさんずラブ』『ビリオン×スクール』『極主夫道』ほか)、松下敏也(『推しが上司になりまして』『ビリオン×スクール』ほか)、塚田芽来(『御曹司に恋はムズすぎる』『ビリオン×スクール』ほか)
■脚本:吉髙寿男(『ミッドナイト屋台』ほか)、中村允俊(『Re:リベンジ-欲望の果てに-』ほか)
■音楽:宮崎誠(『ビリオン×スクール』『SPY×FAMILY』『ワンパンマン』ほか)
■出演:亀梨和也、長濱ねる、葉山奨之、梶原善、木村柾哉(INI)/板尾創路、勝地涼、甲本雅裕、剛力彩芽/吉田鋼太郎/野村萬斎 ほか
●主題歌●
「Diamond」亀梨和也
作詞・作曲・編曲:友成空
●ドラマ『ストーブリーグ』配信・放送情報●
放送・配信:Lemino・WOWOW
2026年3月28日(土)13:00スタート
©FANY Studio
