新たなアイデンティティで障壁を通過(トンネリング)せよ チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)ウェブマガジンで先行公開開始! | VG+ (バゴプラ)

新たなアイデンティティで障壁を通過(トンネリング)せよ チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)ウェブマガジンで先行公開開始!

チェ・イテクさん「ノントンネリング」、ウェブで先行公開開始! チョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」、無料で一般公開開始!

作家や翻訳者たちが、韓国SFの新しい風を紹介する企画「ニュー韓SFプロジェクト」。最初の取り組みとして、ウェブマガジンKaguya Planetにて短編小説を掲載していきます。第五弾はチェ・イテクさん「ノントンネリング」です。翻訳は吉良佳奈江さんです。

また、第四弾として会員向けに先行公開していた、チョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(翻訳:かかり真魚)は、全文を無料で一般公開しています。

ウェブマガジンKaguya Planetでは毎月、SF短編小説を配信中!

掲載した作品は、マガジン『Kaguya Planet』として刊行します。

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ニュー韓SFプロジェクトの第五弾はチェ・イテクさん

チェ・イテクさんは2021年、第一回韓国ムン・ユンソンSF文学賞にて「シュレーディンガーの子供」で大賞を受賞しデビューしました。『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』では自身の生活や執筆について綴った「誰かの存在理由を証明するSFは」を寄稿しました。

吉良佳奈江さんはチャン・ガンミョン『極めて私的な超能力』、キム・メラ『わたしを夢に見てください』、チョン・ボラ『とにかく、デモ!韓国路上アクション・ダイアリー』、デュナ『カウンターウェイト』、韓国SFアンソロジー『蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記』など、SFはもちろん、様々なジャンルの韓国文学・漫画・エッセイを多数翻訳しました。

平均・一般・普通・スタンダードとは何か? SF的な障害探究:ありのまま自分でいられる世界へ

チェ・イテクさんの「ノントンネリング」は全ての人類が「トンネリング状態」になった未来人と「ノントンネリング」状態の古代人類を対比させて、「普通」と言われることの時代的バイアスをさらけ出し、新しい定義を模索する作品です。

「トンネリング」が何かは未来人自身もあまりにも“普通すぎて”はっきり説明できない状態だといいます。ただし、障壁を通過するなどの形で移動が可能であることから「トンネリング」は量子状態の「ヒト」であることが分かります。一方「ノントンネリング」はドアなど決まった空間を潜り抜ける移動しかできないため、物語の舞台では古代人類同様の存在です。この対比を通して作家は平均・一般・普通と呼ばれるスタンダードな状態が何かを問いかけます。栄養を取って生きること、命を持続すること、相手と愛し合うこと、健康でいられること、存在すること、何が「普通」の状態なのか。物語は2026年に住んでいる現代の読者へ真逆の観点を提示し、普通ということがいかに特殊かを示します。

『日韓SF交換日記』に寄稿したエッセイ「誰かの存在理由を証明するSFは」でチェ・イテクさんは、先天性の筋疾患障害であり、中学二年生の時に脊椎矯正手術を受けたことを書きました。手術後「食欲不振、めまい、肺炎などの症状がひどく、文字通り延命する日々」だったという経験を述べていますが、「ノントンネリング」のイダが直面する場面と重なる表現です。

作家の考えの発案にも繋がる、チェ・イテクさんのエッセイの一部を紹介します。

「非障碍者にとって “可能”ということは、障碍者にとっては“可能かもしれない”に過ぎない。」

チェ・イテクのエッセイ『ともすれば最も普通の人間(어쩌면 가장 보통의 인간)』より

チェ・イテクさんは「マウスのカーソルを動かして画面上のキーボードのボタンをクリックし、文章を書く」と自身の執筆環境を説明しています。最近は「障害学を勉強しながらSFと障害をレゴブロックのように扱」いながら、SF的障害探究を試し、ありのまま自分でいられる世界であるSFへの愛情を表現しています。

チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)

《あらすじ》惑星から消滅してしまった古代人類。「超紀元」と呼ばれた時期から誕生した未来人は「トンネリング」と呼ばれる。古典物理学を専攻したイダは、ある日「超凝縮」事故に遭い「ノントンネリング」状態になってしまう。「普通」だと思っていたアイデンティティが一晩で逆転されてしまったのだ。

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チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)を読むには

①Kaguya Planetの会員になる
月額500円〜、Kaguya Planetの有料会員になると会員向け先行公開にて、チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)を読むことができます。有料会員には、Kaguya Planetのサイトにてアカウントを作成していただいたあとに、「定期購読」からプランを選択してご登録いただけます。
ニュー韓SFプロジェクトを応援したいという方や、作品をいち早く読みたいという方はぜひ、Kaguya Planetへの登録をお願いいたします。

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②無料公開で読む
ニュー韓SFプロジェクトの作品は、約一ヶ月の会員向けの先行公開期間を経て、無料で公開いたします。チェ・イテク「ノントンネリング」(訳:吉良佳奈江)は12月5日(土)に一般公開予定です。

ニュー韓SFプロジェクトの第四弾、チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)を一般公開中!

ニュー韓SFプロジェクトの第三弾として、Kaguya Planetで先行公開していた、チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)を一般公開中! 会員登録も必要なく、全文を無料で読むことができます。

チョン・ヘジンさんは、2007年、大元C.I.第1回issue novels公募展当選作であるライトノベル『月下の洞事務所』でデビュー。『レディー・ディテクティブ』などの漫画のストーリーを手掛ける一方、アンソロジー・ノンフィクションや共著を含め、100冊以上を出版しています。また『マリ物語』『ヨンヒ物語』などの長編も発表しています。2021年には女性にまつわるSF短編集『アトランティス少女』を、2023年には実際にあった労働者の大量整理解雇事件をモチーフに、舞台を宇宙エレベーター建設に移した表題作を含むSF短編集『針の先に人が』を出版しています。

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』(Kaguya Books)に、ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求めるデモの続く中で、韓国SFにおけるSF純情漫画(日本における少女漫画に当たるジャンル)の果たした役割について綴った「闘争と前進のさなかで」を寄稿しました。

2026年10月14日に刊行される『日中韓SFアンソロジー[1] 猫SF 滅亡が言った、ニャーと』(皓星社)に、短編小説「うちの猫は化ける」 (廣岡孝弥訳)を寄稿しています。

『日中韓SFアンソロジー[1] 猫SF 滅亡が言った、ニャーと』

翻訳を手がけるかかり真魚さんは、2018年にフード性悪説アンソロジー『燦々たる食卓』を企画・編集しました。食べるという行為に伴う負の側面や露悪的な演出等に注目したオルタナティブな文藝作品を集めたアンソロジーで、自身も民話「食わず女房」の語り直し「食はずの姉さん」を寄稿しています。2024年にはKaguya Planetに女性の抑圧をテーマにしたホラー短編「夜盗花」が掲載されました。また、『日韓SF交換日記』に交換日記への応答となる小説「エコーズ」を寄稿しています。現在は韓日翻訳者としての仕事を並行して進めています。

かかり真魚「夜盗花」

暴力を語る言葉から浮かび上がる「何か嫌な感じ」

チョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」は、ガイノイド(女性型ヒューマノイド・ロボット)による顧客の男性器切断という事故に対する取材に企業側が答えるという体裁の小説です。そこから浮かび上がってくるのは、女性に対する性差別の深刻さと「モノ化」した相手に対する振る舞いのおぞましさです。舞台は韓国となっていますが、この小説で提起されている問題は日本とも通じるものがあるのではないでしょうか。

さらに、一見穏やかな口調ながらも、どこか端々にパターナリスティックな目線やアジア圏への蔑視が感じられる点は、語りの技巧が光るとともにチョン・ヘジンさんの問題意識が反映されています。9月5・6日に行われた青江大学のSFワークショップでは、学生に向けたメッセージとして、手塚治虫の言葉を引用しながら「刺激的な内容を描写するにしても、基本的人権を侵害してはいけない。犠牲者をからかう行為は本当に醜い。文章を書く人なら自分が書かなければならないことを書き切る勇気と、書いてはいけないことを書かない分別が必要です」と述べたチョン・ヘジンさん。本作でも、ショッキングな事件を扱いながら、女性への暴力とその加害者、そしてそれを眺める「上から目線」という二重の抑圧が鋭く描かれています。

チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)

《あらすじ》女性型ヒューマノイド・ロボット、ガイノイドによる性器切断事件が起こる。搭載するカーネルを無理に変更したことを発端とする事故の報告から浮かび上がるのは、さまざまな手を使って欲望を満たそうとする男たちの姿だった。

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チェ・イテクさん、チョン・ヘジンさんも参加している『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』好評発売中!

チェ・イテクさん、チョン・ヘジンさんも参加している、日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯編『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』はKaguya Booksから好評発売中! 総勢三十名以上のSF作家・翻訳者が集って、「SFの魅力」「フェミニズム」「病気や障害と創作」「作家として大切にしているもの」「クリエイターと政治」など、様々なトピックについて綴った一冊です。

チェ・イテクさんは自身の障害のことと、SFと出会う中で自分のことを見つめ直していった過程について執筆されています。

チョン・へジンさんはユン・ソンニョル大統領の弾劾を求めるデモの続く中で、韓国SFにおけるSF純情漫画(日本における少女漫画に当たるジャンル)の果たした役割について綴った「闘争と前進のさなかで」を寄稿しました。

『日韓SF交換日記」はその他にも、『僕の狂ったフェミ彼女』などで知られるミン・ジヒョンさんによる講演録「フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか」や、両団体の作家24名が二人一組になって言葉を交わした〈日韓SF交換日記〉などを収録。

〈日韓SF交換日記〉では、「韓国/日本女性SF」、「フェミニズムSFと韓国/日本のマンガ」、「韓国SFの歴史と傾向」、「闘病経験を作品に盛り込む」、「ハードSFとテクノロジー」、「SF作家になるまで/なってから」など、社会的な話から個人的な話まで、様々なテーマについて執筆しています。

また、、『となりのヨンヒさん』などで知られるチョン・ソヨンさんと、池澤春菜さんが、作家団体の代表をする苦労や翻訳と執筆の相互影響、複業の秘訣や大好きなSF作品などについて語り合対談「わたしとあなたのエンカレッジ!」、ソ・ユンビンさん、ファン・モガさん、へ・ドヨンさん、ミン・ジヒョンさん、藤井太洋さん、そして司会の堀川夢さんによる座談会「日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性」、かかり真魚さんによる短編小説「エコーズ」も収録しており、充実の一冊です。

SF、フェミニズム、みみっちい喧嘩、醜くなる自由…… 韓国と日本、社会と個人、フィクションと現実。あなたとわたしの間で呼応する、よりよい明日を目指すためのたくさんの言葉たちを詰め込んだ一冊、ぜひお手に取ってみてください。

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』
編:日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯
イ・コンヘ/イ・サンファ/イ・シド/イ・ソヨン/ソ・ユンビン/チェ・イテク/チョン・ソヨン/チョン・ドギョム/チョン・ヘジン/チョンイェ/デイナ/ファン・モガ/へ・ドヨン/ホン・ジウン/ミン・イアン/ミン・ジヒョン/揚羽はな/池澤春菜/井上雅彦/白井弓子/上田早夕里/かかり真魚/吉良佳奈江/立原透耶/田場狩/中野伶理/長谷敏司/林譲治/廣岡孝弥/藤井太洋/堀川夢/溝渕久美子/八島游舷
サイズ:四六判
ISBN:978-4-911294-09-3
ページ:304ページ
価格:2700円+税

収録しているコンテンツ
講演:フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか ──ミン・ジヒョン
日記:韓国と日本のSF作家24人12組による交換日記
対談:わたしとあなたのエンカレッジ! ──チョン・ソヨン×池澤春菜
座談会:日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性
小説:かかり真魚「エコーズ」

VG+編集部

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