チョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」、ウェブで先行公開開始! ソ・ユンビン「ルナ」、無料で一般公開開始!
作家や翻訳者たちが、韓国SFの新しい風を紹介する企画「ニュー韓SFプロジェクト」。最初の取り組みとして、ウェブマガジンKaguya Planetにて短編小説を掲載していきます。第四弾はチョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」です。翻訳はかかり真魚さんです。
また、第三弾として会員向けに先行公開していた、鉱石を採集する海女たちを描いたソ・ユンビン「ルナ」(翻訳:廣岡孝弥)は、全文を無料で一般公開しています。
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ニュー韓SFプロジェクトの第四弾はチョン・へジンさん
ニュー韓SFプロジェクトの第四弾はチョン・ヘジンさんです。チョン・ヘジンさんは、2007年、大元C.I.第1回issue novels公募展当選作であるライトノベル『月下の洞事務所』でデビュー。『レディー・ディテクティブ』などの漫画のストーリーを手掛ける一方、アンソロジー・ノンフィクションや共著を含め、100冊以上を出版しています。また『マリ物語』『ヨンヒ物語』などの長編も発表しています。2021年には女性にまつわるSF短編集『アトランティス少女』を、2023年には実際にあった労働者の大量整理解雇事件をモチーフに、舞台を宇宙エレベーター建設に移した表題作を含むSF短編集『針の先に人が』を出版しています。
『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』(Kaguya Books)に、ユン・ソンニョル大統領の弾劾を求めるデモの続く中で、韓国SFにおけるSF純情漫画(日本における少女漫画に当たるジャンル)の果たした役割について綴った「闘争と前進のさなかで」を寄稿しました。
2026年10月14日に刊行される『日中韓SFアンソロジー[1] 猫SF 滅亡が言った、ニャーと』(皓星社)に、短編小説「うちの猫は化ける」 (廣岡孝弥訳)を寄稿しています。
『日中韓SFアンソロジー[1] 猫SF 滅亡が言った、ニャーと』
翻訳を手がけるかかり真魚さんは、2018年にフード性悪説アンソロジー『燦々たる食卓』を企画・編集しました。食べるという行為に伴う負の側面や露悪的な演出等に注目したオルタナティブな文藝作品を集めたアンソロジーで、自身も民話「食わず女房」の語り直し「食はずの姉さん」を寄稿しています。2024年にはKaguya Planetに女性の抑圧をテーマにしたホラー短編「夜盗花」が掲載されました。また、『日韓SF交換日記』に交換日記への応答となる小説「エコーズ」を寄稿しています。現在は韓日翻訳者としての仕事を並行して進めています。
暴力を語る言葉から浮かび上がる「何か嫌な感じ」
チョン・ヘジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」は、ガイノイド(女性型ヒューマノイド・ロボット)による顧客の男性器切断という事故に対する取材に企業側が答えるという体裁の小説です。そこから浮かび上がってくるのは、女性に対する性差別の深刻さと「モノ化」した相手に対する振る舞いのおぞましさです。舞台は韓国となっていますが、この小説で提起されている問題は日本とも通じるものがあるのではないでしょうか。
さらに、一見穏やかな口調ながらも、どこか端々にパターナリスティックな目線やアジア圏への蔑視が感じられる点は、語りの技巧が光るとともにチョン・ヘジンさんの問題意識が反映されています。9月5・6日に行われた青江大学のSFワークショップでは、学生に向けたメッセージとして、手塚治虫の言葉を引用しながら「刺激的な内容を描写するにしても、基本的人権を侵害してはいけない。犠牲者をからかう行為は本当に醜い。文章を書く人なら自分が書かなければならないことを書き切る勇気と、書いてはいけないことを書かない分別が必要です」と述べたチョン・ヘジンさん。本作でも、ショッキングな事件を扱いながら、女性への暴力とその加害者、そしてそれを眺める「上から目線」という二重の抑圧が鋭く描かれています。
チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)
《あらすじ》女性型ヒューマノイド・ロボット、ガイノイドによる性器切断事件が起こる。搭載するカーネルを無理に変更したことを発端とする事故の報告から浮かび上がるのは、さまざまな手を使って欲望を満たそうとする男たちの姿だった。
チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)を読むには
①Kaguya Planetの会員になる
月額500円〜、Kaguya Planetの有料会員になると会員向け先行公開にて、チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)を読むことができます。有料会員には、Kaguya Planetのサイトにてアカウントを作成していただいたあとに、「定期購読」からプランを選択してご登録いただけます。
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②無料公開で読む
ニュー韓SFプロジェクトの作品は、約一ヶ月の会員向けの先行公開期間を経て、無料で公開いたします。チョン・へジン「不法改造ガイノイド性器切断事件」(かかり真魚訳)は11月7日(土)に一般公開予定です。
ニュー韓SFプロジェクトの第三弾、ソ・ユンビン「ルナ」(翻訳:廣岡孝弥)を一般公開中!
ニュー韓SFプロジェクトの第三弾として、Kaguya Planetで先行公開していた、ソ・ユンビン「ルナ」(翻訳:廣岡孝弥)を一般公開中! 会員登録も必要なく、全文を無料で読むことができます。
ソ・ユンビンさんは2022年、『ルナ』で第5回韓国科学文学賞中短編部門の大賞を受賞しデビュー。済州島の海女の生活を宇宙に置き換えた本作は、審査員のキム・ボヨンさんから「宇宙遊泳を海女の潜水に例えて文学的に美しく変奏した作品で、韓国でしか生まれない作品」と高く評価されています。
著書に、短編集『波が着く未来』『翼の切除手術』、長編『永遠なる黄昏の恋人たち』『ユニバーサル・シェフ』などがあります。自身の小説をファンタスチカ(現実世界の規則を超越・再構成する思弁小説・幻想小説で、レムやストルガツキー兄弟の作品に代表される)に連なるものと位置付けるソ・ユンビンさんは素晴らしいユーモアの持ち主でもあります。昨年のSF作家ソンや今年の大分SF大会では、ご本人曰く「オタク日本語」を駆使して交流。『日韓SF交換日記』では、ソ・ユンビンさんを「家来にしている」猫の視点から、大統領弾劾デモに参加する日々やシュレーディンガーの箱に閉じ込められた猫を思い描くソ・ユンビンさん自身を描きました。
宇宙に響く磯笛の音は、海女たちの生存を知らせる
ソ・ユンビンさん「ルナ」は、船外活動服と命綱一つで宇宙へ「潜水」し、自身の吸う酸素を推進力としても使いながら、貝やウニを獲るように衛星群の鉱石を採集する海女たちを描いた作品です。日本では四・三事件やリゾート地としても知られる済州島は、農地に適した場所の少ない火山島であったため古くから素潜り漁が行われ、現在でも多くの海女が生活しています。ソ・ユンビンさんはそんな海女の生活の舞台を宇宙に移し、若者の成長と存在起源を問う物語として再構成しました。
主人公は、宇宙を遠くまで「潜水」することを夢見る見習いの海女の「ルナ」。意地っ張りで無謀なところもあり、同期で同じくハルマンに育てられたイオをいつも心配させています。レム『ソラリス』やキューブリック『2001年宇宙の旅』といった古典SFを織り込みつつ、先輩海女のハルマン(おばあさん)たちにどやされながら宇宙へ飛び込むルナたちの海女仕事の日常が細やかに描かれています。
ルナを見守る三人のハルマンの名前にも工夫が凝らされています。ルナたち若い海女の育成と全体の号令・指揮を行うフヨ・ハルマンは百済の首都「扶余」と「付与する」をかけています。「風紀担当」でルナたちの育ての親でもあるマニョン・ハルマンは、韓国語の魔女(マニョ)とも発音が似ているフランス語のmignon(小さい・かわいらしい)から。ハルマンのアイデンティティを韓国に限定しないのが狙いです。三人目のヒウォン・ハルマンは「希願(희원/ヒウォン)」で、ルナの目標が望み薄く、遥か遠くにあるというニュアンスが込められています。
とはいえ、ここでもユーモアは健在です。宇宙を遊泳する海女たちの生活を描く美しい描写の一方、宇宙遊泳しながら手にはマンサリとビッチャン(ともに海女の使う採集道具)を持っているというビジュアルを思い浮かべると、韓国の読者は爆笑してしまうのだそうです。
ソ・ユンビン「ルナ」(廣岡孝弥訳)
《あらすじ》衛星の表面を掘り、鉱石を採集する宇宙の海女・ルナ。まだ見習いだから命綱はたったの30mで、ルナはそれが不満だ。ある日の船外活動中、ルナは見知らぬ宇宙服を着て漂う人を見つけるが……。
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チョン・へジンさん、ソ・ユンビンさんも参加している『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』好評発売中!
チョン・へジンさん、ソ・ユンビンさんも参加している、日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯編『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』はKaguya Booksから好評発売中! 総勢三十名以上のSF作家・翻訳者が集って、「SFの魅力」「フェミニズム」「病気や障害と創作」「作家として大切にしているもの」「クリエイターと政治」など、様々なトピックについて綴った一冊です。
チョン・へジンさんはユン・ソンニョル大統領の弾劾を求めるデモの続く中で、韓国SFにおけるSF純情漫画(日本における少女漫画に当たるジャンル)の果たした役割について綴った「闘争と前進のさなかで」を寄稿しました。
ソ・ユンビンさんはSF作家の八島游舷さんと共に、SFとは何か、ということについて日記を綴っています。ソ・ユンビンさんを「家来にしている」猫の視点から、シュレーディンガーの猫の比喩などを交えてユーモラスに書かれた日記をお楽しみください!
『日韓SF交換日記」はその他にも、『僕の狂ったフェミ彼女』などで知られるミン・ジヒョンさんによる講演録「フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか」や、両団体の作家24名が二人一組になって言葉を交わした〈日韓SF交換日記〉などを収録。
〈日韓SF交換日記〉では、「韓国/日本女性SF」、「フェミニズムSFと韓国/日本のマンガ」、「韓国SFの歴史と傾向」、「闘病経験を作品に盛り込む」、「ハードSFとテクノロジー」、「SF作家になるまで/なってから」など、社会的な話から個人的な話まで、様々なテーマについて執筆しています。
また、、『となりのヨンヒさん』などで知られるチョン・ソヨンさんと、池澤春菜さんが、作家団体の代表をする苦労や翻訳と執筆の相互影響、複業の秘訣や大好きなSF作品などについて語り合対談「わたしとあなたのエンカレッジ!」、ソ・ユンビンさん、ファン・モガさん、へ・ドヨンさん、ミン・ジヒョンさん、藤井太洋さん、そして司会の堀川夢さんによる座談会「日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性」、かかり真魚さんによる短編小説「エコーズ」も収録しており、充実の一冊です。
SF、フェミニズム、みみっちい喧嘩、醜くなる自由…… 韓国と日本、社会と個人、フィクションと現実。あなたとわたしの間で呼応する、よりよい明日を目指すためのたくさんの言葉たちを詰め込んだ一冊、ぜひお手に取ってみてください。
『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』
編:日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯
イ・コンヘ/イ・サンファ/イ・シド/イ・ソヨン/ソ・ユンビン/チェ・イテク/チョン・ソヨン/チョン・ドギョム/チョン・ヘジン/チョンイェ/デイナ/ファン・モガ/へ・ドヨン/ホン・ジウン/ミン・イアン/ミン・ジヒョン/揚羽はな/池澤春菜/井上雅彦/白井弓子/上田早夕里/かかり真魚/吉良佳奈江/立原透耶/田場狩/中野伶理/長谷敏司/林譲治/廣岡孝弥/藤井太洋/堀川夢/溝渕久美子/八島游舷
サイズ:四六判
ISBN:978-4-911294-09-3
ページ:304ページ
価格:2700円+税
収録しているコンテンツ
講演:フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか ──ミン・ジヒョン
日記:韓国と日本のSF作家24人12組による交換日記
対談:わたしとあなたのエンカレッジ! ──チョン・ソヨン×池澤春菜
座談会:日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性
小説:かかり真魚「エコーズ」
