SF × 外来種!? 今注目の科学教育にも使える外来種の入門書とは?
SF × 外来種問題という、少し意外な取り合わせの外来種の入門書が今、注目を集めている。小学校高学年から大人まで幅広い年齢層を対象にした『外来種がいなくなったらどうなるの? SF思考で環境問題を考える』は、短くまとまったストーリーとコラムを中心に構成されているため、小学生・中学生の朝読書や科学教育にもオススメだ。
入門書として特徴的な「SF思考」とは?
『外来種がいなくなったらどうなるの?』は、図書館を中心に注文が相次いでおり、発売から一ヶ月経たずに第三刷が決定した。入門書として特徴的なのは、外来種問題の知識だけではなくて、どういう姿勢で考えていけばいいのかという、考え方のコツをSF思考で学ぶことができる点だ。
SF思考とはどういうことか。『外来種がいなくなったらどうなるの?』では、外来種問題という一つの課題について、「もしも〜だったら」という問いをきっかけに、その世界をシミュレーションしてみるSFのストーリーが始まる。例えば、「もしも外来種がいなくなったらどうなるの?」という問いから話が進み、合間のコラムで、その世界をリアルに想像してみるために、そもそも日本にいる外来種とはなんなのかを学ぶ。白菜などの身近な食べ物たちも外来種であることを知った上で、外来種がいなくなった世界をシミュレーションしてみることで、「いなくなればいい」とは簡単に言えない外来種問題の現実を知る。では、逆に外来種が倍増したらどうなるのだろうか?
本書ではこの「問いをたて、知識を学び、問いをシミュレーションしてみることで新たな疑問が出てくる」というSF思考のサイクルを通して、解決が難しい課題に長期的なスパンで取り組む力を身につけることができる。この本を入門書として読むことで、その後、自分の力で課題を考え続ける姿勢を学ぶことができるのだ。
書籍の巻末には、SF思考のサイクルを実践してみる「もしもワークショップ」の開催方法が収録されており、小学生〜大人まで、自治体や教育現場でも気軽に実践してみることができる。
編著者の宮本道人は「はじめに」でもしも〜を考えるSF思考のことを「外来種についてだけではなく、さまざまな問題に適用できるものだと思っていますので、ぜひ皆様も本書を参考に、一筋縄ではいかない現実に立ち向かう方法論を考えてみていただければ幸いです」と述べている。外来種問題の入門書としてだけではなく、科学教育や社会問題について検討する際にも応用が効くのではないだろうか。
研究者からもSF作家からも推薦
『外来種がいなくなったらどうなるの?』は、保全生態学者の五箇公一、SF作家の林譲治からも推薦されている。
学者だけではなく、SF作家からも推薦を受けているのはなぜなのか。林譲治は推薦文で、悪者というイメージが根付いている外来種について「外来種は駆除すればいい、と簡単に言えない奥深い世界を本書は示す」とコメントしている。一筋縄ではいかない現実の複雑さを伝えるという本書の入門書・教育本としての強みを生み出しているのが、もしも〜のSF思考だからこそ、SF作家にも評価されているのではないだろうか。
では、外来種問題はどのように考えたらいいのか。保全生態学者の五箇公一が「外来種問題の本質を分かりやすく解き明かす1冊。これを読んで正しい理解を!」と推薦しているように、まさにこの本を入り口として学び、考えてみてほしい。
『外来種がいなくなったらどうなるの?』は図書館だけではなく、学校図書館からも多数の注文がある。「学んだ知識でどう考えたらいいのか」ということが身につく外来種問題の入門書、教育現場、自治体、研究などいろいろな場面で活用されてほしい。
Kaguya Booksとは
『外来種がいなくなったらどうなるの?』を発行しているのは、VG+(バゴプラ)の主催であるSF企業VGプラスの運営するKaguya Booksだ。編集プロダクションとしても活動しており、『外来種がいなくなったらどうなるの?』の刊行とほぼ同時期に刊行された『鏡の国の生き物をつくる SFで踏み出す鏡像生命学』(日刊工業新聞社)の企画・編集も手掛けている。
『鏡の国の生き物をつくる』は、高校レベルの化学の知識があれば読むことができる、鏡像生命学の入門書。合成生物学者の藤原慶が監修・著をつとめ、茜灯里、柞刈湯葉、瀬名秀明、麦原遼、八島游舷と5名のSF作家が、鏡像生命学の最先端と可能性を描いたSF小説を寄稿している。
