映画『罪人たち』公開
「ブラックパンサー」シリーズで知られるライアン・クーグラー監督の最新作『罪人たち』の日本での緊急公開が2025年6月20日(金) より始まった。『罪人たち』は4月18日に米国で封切りを迎えると、国内興収は2億7,600万ドルを突破し、原作を持たない完全オリジナル映画としては『インセプション』(2010) 以来の大ヒットを記録している。
『罪人たち』は1932年のミシシッピ州デルタを舞台に、マイケル・B・ジョーダンが一人二役で演じる双子の兄弟・スモークとスタックが一攫千金を狙ってダンスホールを開業する物語。二人は順調に仲間を集めていくが、“招かれざる客”の登場により、人生最高の夜が一変する。
『罪人たち』はブルースを中心とした黒人音楽にスポットライトを当てた作品でもある。「音楽に魔力を宿す者」の存在が物語の鍵となり、時空を超えた音楽の競演も見どころになる。
『罪人たち』の舞台となるミシシッピはブルース発祥の地として知られる。もともと労働歌や黒人霊歌(スピリチュアル)をベースに発展し、米南部で歌われていたブルースを1903年のミシシッピでW・C・ハンディが“発見”。2003年には米議会が1903年を「ブルースの年」と定めた。
ブルースはギターでの弾き語りを中心とした音楽だ。スモークとスタックはミシシッピに帰ってくる前にはシカゴに働きに出かけていたが、シカゴで発展したジャズもブルースにルーツを持つ。
ライアン・クーグラー監督は自身が脚本を手がけたブルースの物語の舞台をミシシッピに定めたが、実は監督自身もミシシッピにルーツがあるという。
ライアン・クーグラー監督のミシシッピとの関わり
ライアン・クーグラー監督はカリフォルニア州オークランド生まれ。映画『ブラックパンサー』(2018) では、オークランドはマイケル・B・ジョーダン演じるキルモンガーが幼少の頃に過ごした場所として登場する。
米デモクラシー・ナウのインタビューでは、クーグラー監督は自身の一族が“大移動 (Great Migration)”の第2波でカリフォルニアへ移住したことを明かしている。大移動とは、アメリカの黒人たちが人種差別が苛烈だった南部から他の地域へと移住した動きのことだ。1863年の奴隷解放宣言後も90%のアフリカ系アメリカ人が旧奴隷州に残っていたが、1910年代から1950年代にかけて大移動が行われた。
クーグラー監督の家族の中にはかつてミシシッピに住んでいた人もいたといい、叔父はミシシッピの出身だと明かしている。ちなみその叔父はクーグラー監督の祖母の妹・サミーと結婚したらしいが、『罪人たち』でマイルズ・ケイトンが演じるブルースシンガーの名前のサミーは、彼女からとった名前だという。
ライアン・クーグラー監督は、叔父は仕事が休みの日にはブルース・ミュージックを聴き、ウイスキーを飲みながらラジオでサンフランシスコ・ジャイアンツの野球中継を聴くのが好きだったと話している。クーグラー監督は当時、ブルースは上の世代の人々の音楽だと思っていたが、叔父の死後に彼のことを思い出そうと古いレコードを聴くようになったという。
すると、そこに叔父がいるような、魂が呼び起こされているような感覚になり、その経験が『罪人たち』のアイデアのベースになった。本作では、音楽が様々な魂を呼び寄せるという描写がある。ライアン・クーグラー監督による完全オリジナル作品は、同監督のルーツにヒントを得た物語だったのだ。
また、ライアン・クーグラー監督は、「アメリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)のもとで、日常的に人間性を否定されて生きてきた人々が作った音楽が、その時代以降、世界の文化に影響を与えるような芸術的に優れたものを生み出したということは大きな発見でした」と話す。
その上で、「個人的で真実でありながら、壮大で神話のようなものを作りたかった。私はホラーの文学や映画で育ったから、それを組み合わせたんです」と制作の経緯を明かしている。
舞台となったクラークスデール
カナダメディアのCBCによると映画の舞台となったミシシッピ州の人口約1万4,000人の町クラークスデールでは、映画公開から1ヶ月以上が経過してから『罪人たち』の公開試写が行われたという。というのも、この街には映画館がなく、住民の多くが『罪人たち』を鑑賞できないままでいたという。
そこで、ライアン・クーグラー監督とキャスト・スタッフが出演するクラークスデールの上映イベントが企画され、町人たちの署名が集まった結果、イベントは実施された。イベントにはライアン・クーグラー監督とサミー役のマイルズ・ケイトン、音楽と製作総指揮を務めたルドウィグ・ゴランソンが出演し、Q&Aコーナーも設けられたという。企画を支援したビジネスオーナーは、『罪人たち』をきっかけとして町に投資が集まることに期待しているとも話している。
音楽とホラーの融合により、ルーツを辿り、未来を見据える映画『罪人たち』。2025年最注目作品の一つだ。未見の方はぜひ劇場で。
映画『罪人たち』は2025年6月20日(金)、IMAX®及び2D字幕、Dolby Cinema®で劇場公開。
邦題:罪人たち(※よみ:つみびとたち) 原題:Sinners 映倫:PG12 上映時間:2時間17分 配給:ワーナー・ブラザース映画
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『罪人たち』オリジナルサウンドトラックは配信中。
Source
Democracy Now! / CBC
『罪人たち』キャラクタービジュアルと登場人物紹介はこちらから。
ライアン・クーグラー監督が続編について語った内容はこちらから。