『エブエブ』続編orスピンオフはある？
ダニエル・クワン＆ダニエル・シャイナート監督による映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は2023年3月3日(金)より日本で劇場公開。米国での公開から1年遅れの公開ながらも、アカデミー賞作品賞最有力という前評判も手伝って注目を集めている。
『エブエブ』または『EEAAO』の通称で親しまれる本作は、家族でコインランドリーを営む中国からの移民の女性であるエヴリンが世界の脅威と出会い、マルチバースの世界に飛び込む物語。SF作品としても素晴らしい出来となっており、「アベンジャーズ」シリーズのルッソ兄弟がプロデューサーとして携わっている。
『エブエブ』を観た方が気になるのは、本作に続編やスピンオフがあるのかどうかということだろう。キャストや製作陣は、『エブエブ』の今後についてどのようなに話しているのだろうか。
以下の内容は、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の結末に関するネタバレを含みます。
『エブエブ』ラストは続編につながる？
映画『エブエブ』ラストの解説はこちらの記事に詳しいが、続編もあり得ることを匂わせる終わり方が待っていた。エヴリンは娘のジョイに手を差し伸べ、エブリシング・ベーグルに堕ちていくことを阻止。母娘は和解を果たし、家族で税金に向き合うエンディングを迎えた。
ラストシーンではエヴリンの意識に他のユニバースのノイズが混線する演出も見られた。結局エヴリンはこのノイズを振り払って、目の前の現実に対処することを選ぶ、というのが『エブエブ』の物語の決着の付け方だったように思われる。
一方で、他のユニバースがエヴリンに干渉しうるという可能性を残したことは注目に値する。マルチバースは今も残っており、他のユニバースに干渉するアルファ・バースのゴンゴンも生き延びている。エヴリンやジョイは、今でも装置がなくてもバース・ジャンプや現実改変ができるだろう。
ストーリー上は続編制作に向けて多くの足がかりを残した『エブエブ』。あとは、関わった人たちが続編を作りたいかどうかだ。
ミシェル・ヨーが語る
『エブエブ』で主人公エヴリンを見事に演じたミシェル・ヨーは、言わずと知れた大俳優。『ポリス・ストーリー3』(1992) や『シャン・チー／テン・リングスの伝説』(2021) など多数の作品で見せてきたカンフーアクションを『エブエブ』でも遺憾なく発揮している。
そのミシェル・ヨーは『エブエブ』の主人公エヴリンの名前をミシェルからエヴリンに変更させるなど、本作の設定にも関わっている。そのミシェル・ヨーは、2023年2月に開催された英アカデミー賞の授賞式で米Varietyのインタビュアーに「続編はありますよね？」と聞かれ、「いいえ」と即答。更に、「ミシェル・ヨーとしては続編をやりたいですよね？」と聞かれてこう語っている。
いいえ（笑） スピンオフはどうですか？ どうでしょう、私がロックスターになってるユニバースのお話とか（笑） 素晴らしい歌声を持っている人として、戻ってこなければならないなら戻ってきたいですね。それ（歌）がこの世界に欠けているものですから。平和と愛です。歌と素晴らしい声があれば、それを誰かに届けやすくなります。子どもたちの前で歌えば、子どもたちはをそれ感じるでしょう。全てはそこにあるのですから。
この後、「インスピレーションを受けたロックスター」として、アデル、エンヤ、レディー・ガガの名前を挙げ、「韓国や香港、アジアにも素晴らしいシンガーがいます」と付け加えている。すっかり音楽の話になってしまっているが、重要なのは、ミシェル・ヨーが『エブエブ』の続編についてはっきり「ノー」と言っていることだ。エヴリンとジョイの物語はこれで完結したと考えてよいのだろう。
確かに最後のエヴリンの選択が尊重されるべきで、アルファ・バースの人々のように、再びあのエヴリンをマルチバースの世界に連れ戻すのは酷である。一方で、ミシェル・ヨーが『エブエブ2』への代替案としてスピンオフの可能性に触れたことにも注目したい。裏返せばあのエヴリンの物語でなければ、やる可能性はあるということであり、ジョブ・トゥパキとマルチバースのことを知らない別のエヴリンが登場する物語なら、実現可能性はゼロではないようだ。
監督の返答は？
そして重要なのは、『エブエブ』を指揮した監督が続編についてどのように考えているかということだ。2022年7月には、米IndieWireが、監督のダニエルズには『エブエブ2』の計画があると報道。エヴリンとウェイモンドがSNSによって“過激化”し、ジョイが母を救おうとするストーリーになると報じた。しかし、ダニエルズの公式Twitterは即座にこれを否定した。
Not true at all.
Don’t even remember making this joke.
Must have been back in March when the idea of a sequel was especially comically far fetched to us. https://t.co/SHkBFDmuka
— DANIELS (@Daniels) July 3, 2022
全く事実ではありません。
こんなジョークを言ったのかどうかも覚えていません。
（米国で映画が公開される2022年）3月の時点では、続編のアイデアは滑稽で本当に突飛なものだったはずです。
上記の続編のアイデアは、ダニエル・クワン監督の発言とされていたが、発言自体を覚えていないとしている。そうした発言をしていたとしても、本気のアイデアではなかったということのようだ。
先のインタビューでミシェル・ヨーが続編について「ノー」と即答したことからも、『エブエブ』製作陣の間では、続編は作らないということで一致しているのかもしれない。確かに綺麗な終わり方をした『エブエブ』は、無理に続編を作ることもないと考えることもできる。
今後のフランチャイズ展開があるとすれば、既存のキャラクターは絡めないバース・ジャンプというSFアイデアのみを取り入れた作品ならあり得るだろうか。または、指がホットドックになったユニバースや、アライグマのラカクーニの物語など、『エブエブ』にはマルチバース展開を絡めなくても展開できる魅力的な世界が広がっている。
そこにダニエルズのストーリーテリングと映像演出が加われば、ファンも納得のスピンオフはいくらでも作れそうだが、果たして……。
映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は2023年3月3日(金) より、全国の劇場で公開。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』公式サイト
『エブエブ』のサントラは配信中。
Source
Variety Twitter / IndieWire
主演のミシェル・ヨーが主人公エヴリンに込めた思いと裏話はこちらの記事で。
『エブエブ』ラストのネタバレ解説＆考察はこちらの記事で。
『エブエブ』第95回アカデミー賞7冠の報はこちらから。
