『アガサ・オール・アロング』「魔女の道のバラッド」に注目
2024年9月19日から10月30日にかけて全9話が配信されたMCUドラマ『アガサ・オール・アロング』は、高い評価をもってファンから迎え入れられた。マーベルドラマのディズニープラスシリーズでは最も少ない予算で製作されたという本作だが、予測できない展開とキャストの好演、そして何よりも特徴的な“歌”の演出によって唯一無二の作品となった。
『アガサ・オール・アロング』の主題歌「魔女の道のバラッド」は第2話から「聖歌バージョン」が登場すると、その後いくつかのパターンで歌われ、物語の核を成していった。「魔女の道のバラッド」は配信直後にビルボードのデジタルソングセールスで全米22位を獲得するなど、曲そのものもファンから愛されている。
米マーベル公式では、「魔女の道のバラッド」の制作秘話が明かされている。ここからは、『アガサ・オール・アロング』本編の内容に触れながら、同曲に込められた意味をチェックしていこう。
以下の内容は、ドラマ『アガサ・オール・アロング』最終話の内容に関するネタバレを含みます。
『アガサ・オール・アロング』「魔女の道のバラッド」の裏側
ストーリーを牽引した「魔女の道のバラッド」
ドラマ『アガサ・オール・アロング』では、第2話で“魔女の道”を開こうとするアガサ達が「魔女の道のバラッド」聖歌バージョンを歌い、同曲がデビューを果たす。しかし実は、第1話の“刑事モノ”のアガサの世界でも「魔女の道のバラッド」の別バージョンが流れており、この曲が常にアガサと共にあるということが示されている。
最終話では、「魔女の道のバラッド」はアガサが息子のニコラスと一緒に作った童謡であり、魔女の道は存在しないという事実が明かされた。アガサとニコラスの曲をビリー・マキシモフ/ウィリアム・カプランが強大な魔力で現実にしてしまったというのが実際に起きたことだったのだ。刑事モノの世界でニコラス・スクラッチの子ども合唱コンクールの優勝盾が置いてあったのは、歌がうまかったというニコラスに対するアガサの記憶が表現されたものだったのだろう。
第4話ではアガサとニコラスの曲が世間に広く知られるきっかけになったローナ・ウーのロック・バージョンも披露される。第9話ではニッキー・バージョン、アガサ・スルー・タイム・バージョン、エンディングでジャパニーズ・ブレックファストが歌うポップ・バージョンが披露されている。
曲に込められたアガサのテーマ
『アガサ・オール・アロング』のストーリーに多大な貢献を果たした「魔女の道のバラッド」は、クリステン・アンダーション=ロペスとロバート・ロペスの夫妻によって制作された。二人は『アナと雪の女王』(2013) の「レット・イット・ゴー」と『リメンバー・ミー』(2017) の「リメンバー・ミー」でアカデミー歌曲賞を受賞したことで知られる。ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) にも参加しており、挿入歌の「アガサ・オール・アロング」も手がけている。
米マーベル公式によると、ロペス夫妻には物語を通して変化する様々な形のメロディーを作ることを求められたという。そんなチャレンジの中にあっても、ロペス夫妻は自分たちが小さい頃にバラッドを作ったことを思い出して、本曲を制作したとしている。
第4話で披露された1970年代ロック風の「魔女の道のバラッド」では、アリスと母ローナ・ウーの母子関係が曲の中で強調された。このロック・バージョンについてクリステン・アンダーション=ロペスはこう語っている。
特定の言葉を強調して、70年代のラブソングに仕立てました。「この関係に留まっていられるのか、そうではないのか?」というテーマのものです。それは究極的にアガサが抱える大きなテーマであり、アガサはいつも「私は脆い、本当の意味で誰かと繋がれることはあるのか?」「私は独りで歩き続けるのか?」という問題に直面しています。それをラブソングにすることは簡単でした。
“元ネタ”と工夫
また、このロックバージョンでは、フリートウッド・マックの楽曲「シルヴァー・スプリングス」(1976) や、同曲のライブバージョンを収録したライブ・アルバム『ザ・ダンス』(1997) での演奏を参考にしたという。確かにその映像を観ると、『アガサ・オール・アロング』第4話の演奏シーンと近いヴァイブスを感じることができる。
それぞれの「魔女のバラッド」には特徴を持たせる必要があり、ブルースバージョンにはギター、聖歌バージョンには鐘の音、ロックバージョンにはイーグルス「ホテル・カリフォルニア」(1976) のような12弦アコースティック・ギターを用いたことも明かされている。
ロバート・ロペスは「魔女の道のバラッド」に取り入れた工夫について、以下のように語っている。
バラッドを作るにあたって、私はアガサのことを決して本当の姿を見せないアンチヒーローだと考えていました。彼女はいたずら好きで、時には優しさに驚かされるし、時には意地悪になります。その明暗を活用したかったので、曲のモードをメジャーにしたりマイナーにしたりしています。そうすることで、このシンプルな曲に豊かさを与えることができ、単なる童謡や誰かのスタイルを真似て作られた曲以上のものになるんです。
一つの曲からいくつものバリエーションを編み出したクリステン・アンダーション=ロペスとロバート・ロペスだが、この曲に魔法をかけたのは、ほかでもないキャストだったという。クリステン・アンダーション=ロペスは、アガサ・ハークネスを演じたキャスリン・ハーンのリーダーシップについて「皆を一つにした」と賞賛している。
様々な努力と工夫によって編み出された名曲「魔女の道のバラッド」。ロペス夫妻が手がけた『アナ雪』「レット・イット・ゴー」は旋風を起こしたが、「魔女の道のバラッド」はこれからの賞レースシーズンでどのような評価を受けるのだろうか。まだまだ目が離せない。
ドラマ『アガサ・オール・アロング』全9話はディズニープラスで独占配信中。
『アガサ・オール・アロング』サウンドトラックは発売中。
映画『デッドプール&ウルヴァリン』は12月11日発売の4K UHD+3D+Blu-rayセットの限定版が予約受付中。
楽曲「魔女の道のバラッド」は配信中。
『ワンダヴィジョン』のBlu-rayは、4K UHD コレクターズ・エディション スチールブックが発売中。
Source
Marvel.com
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