アニメ『ダンダダン』放送&配信開始
龍幸伸による同名漫画をアニメ化した『ダンダダン』が2024年10月4日深夜より毎日放送・TBS系列『スーパーアニメイズムTURBO』枠ほかにて放送を開始した。『ダンダダン』は少年ジャンプ+で連載されてきるオカルト怪奇バトル漫画で、高い人気を集めている。
アニメ化にあたっては、サイエンスSARUがアニメーションの制作、牛尾憲輔が音楽を担当し、『映像研には手を出すな!』(2020) で副監督を務めた山代風我がアニメシリーズ初監督を務める。オープニングテーマ曲は、R指定がひたすら「ダンダダン」で韻を踏んでいくCreepy Nutsの「オトノケ」だ。
今回は、ついにアニメ化された『ダンダダン』の第1話について、元ネタになった都市伝説と共に解説&考察し、感想を記していこう。なお、以下の内容は本編のネタバレを含むので、必ず放送か配信で視聴した後に読んでいただきたい。また、本エピソードには性暴力描写があり、記事内でもその内容に触れているので注意していただきたい。
以下の内容は、アニメ『ダンダダン』第1話の内容に関するネタバレを含みます。
アニメ『ダンダダン』第1話ネタバレ解説&考察
ペガサス計画とは
アニメ『ダンダダン』第1話「それって恋のはじまりじゃんよ」では、二人の主人公の出会いが描かれる。ギャルの主人公・綾瀬桃は初めての彼氏がクズ男で落ち込んでいた。桃がこの彼氏と付き合っていた理由は、自分が大好きな俳優の故・高倉健に似ていたからだった。この高倉健ファンという桃の特徴が、『ダンダダン』の物語が動き出すきっかけになる。
一方、もう一人の主人公であるオタクの健はクラスの“一軍”にいじめられている。ここで健が読んでいる雑誌の表紙は漫画版よりも明確にオカルト情報誌の『ムー』に寄せられており、早い段階で『ポー』という誌名であることが分かる。
桃に助けられた健は、桃が自分に話しかけてきた理由を“オカルト好き”だからだと勘違いし、『ポー』の「ペガサス計画」のページを見せる。ペガサス計画とは、アメリカ人がすでに火星に移住しているという都市伝説で、バラク・オバマ元大統領が学生時代に実験要員としてテレポートで火星のアメリカ基地を訪れているというトンデモなストーリーだ。
原作漫画では健が開いたページにはオバマそっくりな人物の絵が描かれており、健のセリフは「オバマ大統領はすでに“火星”に行っていた」となっている。しかし、アニメ化にあたってはモデルが特定できないように絵が変更され、単に「大統領はすでに〜」と名指しではない表現になっている。
UAPと宇宙軍
しかし、桃はUFOや宇宙人を信じていないと話す。桃が健を助けたのは正義感によるものだったのだろう。これに対して健は「UFO(未確認飛行物体)」ではなく「UAP(未確認航空現象)」と主張。米国はUAPの存在を認めて宇宙軍を再編成し、日本も航空宇宙自衛隊を新設すると語る。
実際に米国のNASAはUAPを科学的に研究するチームを2022年に発足し、2023年には米国防総省がUFOとUAPについての情報を開示するWebサイトをオープンさせている。ただし、米国防総省はUAPが地球外技術である証拠は見つかっていないと2024年3月に発表している。
ちなみに「航空宇宙自衛隊の新設」というのもテンションが上がった健によるミスリードだ。これは宇宙領域での活動を増やすため、日本の防衛省が2027年までに航空自衛隊の名称を「航空宇宙自衛隊」に改称すると発表したことに由来している。
また、健は「ジム・チャノン中佐」や「スキンウォーカー牧場」の新情報も雑誌に載っていると話す。ジム・チャノン中佐はアメリカの超能力部隊の隊長を務めたとされる人物で、2017年に亡くなっている。スキンウォーカー牧場は多数の超常現象が目撃されている米国の牧場で、『スキンウォーカー牧場の超常現象』(2020-) というリアリティショーがシーズン5まで制作されている。
トゥシャッシャイボーイの元ネタは?
そうして矢継ぎ早にオタクトークを繰り出す健に、だから友達がいないのだと桃は突き放すが、桃も祖母は霊媒師で幽霊は信じていた。UFOを信じない桃と幽霊を信じない健は、どちらがパシリになるかを賭けて、それぞれの“肝試し”に挑むことになる。
桃が向かったのはUFOの聖地と呼ばれる奈木病院。一方の健は心霊スポットのトンネルへ。お互いに電話を繋いで状況を確認し合っているが、互いにUFOと幽霊を見たことがないということも明らかになる。ちなみにこのシーンでは奈木病院で何者かの影が動いているのが見えるが、これはアニメオリジナルの演出だ。
怖がる健が歌っている「トゥシャッシャイボーイ/この瞬間に〜」という曲は、1992年にリリースされた観月ありさ「TOO SHY SHY BOY!」。小室哲哉が作詞作曲を手がけた楽曲だ。
桃は、両親がいなくて霊媒師の祖母にやるように言われたまじないのせいで男子からバカにされたこと、それでも祖母を信じているから幽霊を信じていることを明かす。知られざる桃のバックグラウンドが明かされたところで、健はついに怪奇に遭遇する。
ターボババア登場
健の前に現れたのはターボババア。「ターボばあちゃん」とも呼ばれる都市伝説上の妖怪で、車で走っていると猛スピードで走る老婆に並走されるという。『地獄先生ぬ〜べ〜』(1993-1999) では“ジェットババア”の名で登場し、事故を起こすか運転手を殺すという凶悪なキャラとして描かれた。
『ダンダダン』第1話では、「イチモツしゃぶらせろ」と迫ってくるキャラで、追い抜かれると呪われるという設定になっている。そのターボババアの声を演じるのは『ONE PIECE』(1999-) のルフィ役で知られる田中真弓だ。健がターボババアに追われるシーンのアニメーションは圧巻で、さすがはサイエンスSARUという仕上がりになっている。
セルポ星人の元ネタは?
電話越しに健のピンチを知った桃だが、こちらも怪奇と遭遇。現れたのはセルポ星人だった。セルポ星人に関する都市伝説は、以下のようにまとめられる。
惑星セルポに関しては二つの太陽があったといい、惑星セルポの人々は同じ服装と顔をしていたともされている。また、その惑星にはクローン技術があったともされている。一方で、セルポ星人についての細かい設定は広く知られているわけではなく、第1話で登場したセルポ星人の設定の多くは『ダンダダン』オリジナルのものだと思われる。
また、『ダンダダン』でセルポ星人の声を演じているのは『ONE PIECE』でゾロ役を演じる中井和哉だ。ジャンプ+期待の新作に『ONE PIECE』からルフィとゾロの声優が駆けつけるという粋なキャスティングになっている。
セルポ星人に捕えられた桃は服を破壊されていた。さらに『ダンダダン』のセルポ星人はオスの個体しかおらず、クローン技術による複製では生物的進化が起きないため、生殖機能を取り戻すために人体を使って研究をすると話す。生殖行為に及ぼうとするセルポ星人に対し、桃は「まだ見ぬ高倉健のために守り抜いてきた貞操」を守ろうと念力に対抗する中、桃の電話が鳴る。
ターボババアvsセルポ星人
桃のスマホから飛び出してきたのはなんとターボババアだった。実際にはターボババアに呪われた健なのだが、ターボババアvsセルポ星人という日米オカルトの夢のバトルが実現する。ターボババアもセルポ星人も相手の性器を求めるという奇妙なキャラだ。
ここでセルポ星人は本当の姿を見せるのだが、 その身体の紋様は「ウルトラマン」シリーズのダダにそっくりだ。実は、怪獣ものや特撮へのオマージュも『ダンダダン』の見どころの一つである。セルポ星人はさらに手をT字に組んで「セルポ式測量法」でターボババアを捉えると、念力で相手を吹き飛ばす。この一連の動きもウルトラマンを連想させるものになっている。
そして健は、友達がおらず、宇宙人なら友達になってくれるのではないかとUFOを呼び続けていたという過去を明らかにする。人間からはいじめられ、宇宙人からは相手にされない、そんな日々の中で桃だけは自分を庇ってくれた。その桃を傷つけようとする者は許さないと健は怒る。
このシーンは、アニメ版では『ポー』を読む健少年に無数の紙屑が投げつけられ、そのまま小学生から中学生、高校生へと成長し、ある日突然桃が健の前に現れたという演出になっている。漫画版よりもドラマチックで、健にとっての桃という“ゲームチェンジャー”の存在がより強調されている。
目覚めた力
桃のためなら化け物にだってなると言い切る健だったが、けれど桃を救うのは健ではない。桃は小学生の時に祖母からの教えられた“氣”の出し方を思い出すと超能力が覚醒。セルポ星人の念力を受けたことでチャクラが開き、それに祖母の教えが加わったことで桃は超能力が使えるようになったのだ。ちなみにチャクラとはエネルギーが出入りする人間の中枢のことだ。
桃は祖母が本物の霊媒師であったことを確信し、「クズ男」をぶっ飛ばす。この時、アニメオリジナルの演出でセルポ星人が一瞬冒頭の元カレの姿になる。冒頭のシーンでは桃は彼氏にハイキックを繰り出したが防がれ、逆に蹴りを喰らってしまっていた。だが、祖母を信じてクズ男を倒す力を手に入れた桃はセルポ星人を倒すことに成功したのだった。
ところが、これで一件落着ではなかった。桃は健の身体からターボババアを引き剥がすことに成功したが、ターボババアは健のイチモツを持ったままトンネルへと帰ってしまった。連れ込まれていたUFOが墜落する中、二人には健の呪いを解くためにトンネルへ赴くという新たなミッションが課せられることになった。
二人は墜落したUFOから脱出すると、互いに宇宙人と幽霊の存在を認める。健は桃を巻き込んだ責任感から呪いは自分で解くと言うが、桃は一緒にやると主張する。ここで健が放った「ジブン、不器用なんで」という言葉で桃は心が揺らぐ。このセリフは1980年台に日本生命のCMで俳優の高倉健が放ったもので、正確には「ジブン、不器用ですから」と言っていた。
高倉健ファンの桃は自分がドキドキしていることに気がつくが、ここでさらに今まで「オカルト君」と呼んでいた彼の名が「高倉健」であることを知る。後ろでUFOが爆発するのはアニメオリジナルの演出で、よりドラマチックな雰囲気になっている。
桃と健の出会いと、二人と怪奇との出会いを描いた『ダンダダン』第1話。ここから物語はどのように展開していくのか、どんな都市伝説が扱われるのか、この先の展開にも注目だ。
アニメ『ダンダダン』は10月3日より毎週木曜深夜0:26~ MBS/TBS系28局「スーパーアニメイズムTURBO」枠にて全国同時放送。
漫画『ダンダダン』は16巻まで発売中。
最新刊の17巻は11月1日発売予定で予約受付中。
アニメ『ダンダダン』オリジナルサウンドトラックは予約受付中。