2013年公開の映画『モンスターズ・ユニバーシティ』
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』は2013年に公開されたディズニー・ピクサーの作品で、2001年公開の映画『モンスターズ・インク』の続編にして、主人公マイクとサリーらの大学時代を描く前日譚だ。厳密には2002年の短編「マイクとサリーの新車でGO!」に続くシリーズ3作目の作品だ。
今回は、映画『モンスターズ・ユニバーシティ』について、特にそのラストに焦点を当てて解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『モンスターズ・ユニバーシティ』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『モンスターズ・ユニバーシティ』ネタバレ解説&考察
マイクとサリーの出会い
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』の舞台は、マイクとサリーが子ども達を怖がらせる会社“モンスターズ・インク”で働き出すよりも前の時代。二人が暮らすモンスターワールドの暮らしは、人間世界の子どもの悲鳴をエネルギーに変える技術によって成り立っており、モンスターズ・インクでは日夜、モンスター達が子ども達を怖がらせる仕事に励んでいる。
マイクは幼い頃から怖がらせ屋になることに憧れており、念願のモンスターズ・ユニバシティの怖がらせ学部に入学する。そこで出会ったのがエリート一家であるサリバン家のサリーだった。
意外にも出会った当初の二人の仲は険悪だった。元から人を怖がらすことに長けた素質を持つサリーと、素質はないが努力し続けるマイクは正反対の性格だ。そしていつしか、二人の成績はウサギとカメのように逆転していく。
『モンスターズ・インク』&『ワーク』に繋がるキャラクター達
良いとこの坊ちゃんだったサリーは入学当初から学生団体のロアー・オメガ・ロアーへ誘われる。これは北米の大学特有の社交団体で、男子の団体をフラタニティ、女子の団体をソロリティと呼ぶ。団体が男女で分かれているのは、男子寮と女子寮の集まりから発展した経緯があるためだ。アメリカではファイ・ベータ・カッパなどの組織が知られ、成績優秀者に組織への招待が届くことになっている。
注目したいのは、他のシリーズ作品と共通するキャラクター達の存在だ。ロアー・オメガ・ロアーのリーダーであるジョニー・ワーシントンは、アニメシリーズ『モンスターズ・ワーク』(2021-) にも登場する。
ジョニー・ワーシントンは、モンスターズ・インクのライバル会社であるフィアー・コーポレーションの御曹司で、後にフィアー・コーポレーションを引き継ぐことになる。ジョニーの腰巾着である、カニのような一つ目のチェット・アレキサンダーもフィアー・コーポレーションで働くことになる。また、「怖がらせ大会」の運営と司会を担うグリーク・カウンシル(自治会)の三つ目のクレア・ウィーラーは、後にジョニーと結婚し、こちらもフィアー・コーポレーションで働くことになる。
そして、言わずと知れたランドール・ボッグスだ。第1作目『モンスターズ・インク』ではサリーをライバル視して貶めようとしたが、大学時代は意外と気弱で流されやすい性格だったことが明かされている。
ランドールは『モンスターズ・インク』ではサリーを毛嫌いしていたが、マイクは最初のルームメイトでもあり、それほど強い感情を抱いていなかった。お馴染みのキャラクター達の若き日の姿を見ることができるのは、『モンスターズ・ユニバーシティ』の魅力の一つである。
モンスターの共通点は?
理論で高評価を得ながら実技はうまくいかないマイク、実技は得意だが理論は苦手なサリーは、ある日、ハードスクラブル学長を怒らせたことで共に怖がらせ学部を追放される。そんな二人が学長と交わした約束が、クラブ対抗の「怖がらせ大会」で優勝できれば復帰、できなければ退学というものだった。
マイクとサリーは落ちこぼれの集まりであるウーズマ・カッパ(OK)と共に大会に挑むことになり、訓練の日々を過ごす。マイクとサリーが自分だけ勝とうとし、マイクが仲間を上から目線で導こうとするとチームは迷走するが、その中でも二人は本当のチームワークというものを学んでいく。それぞれの個性を活かすことで勝利を手にするのだ。
しかし、ロアー・オメガ・ロアーの罠で「カワイイ」写真を拡散されたウーズマ・カッパは意気消沈するが、マイクは一同を連れてかつて自分が見学に行って憧れたモンスターズ・インクに侵入。プロのモンスターたちが働く姿を見て、一同は息を吹き返す。
ウーズマ・カッパが勇気づけられたのは、モンスターズ・インクで働くモンスターたちが皆、それぞれに違う個性を生かして仕事に取り組んでいたからだ。共通点は「違うこと」。“変”な能力のメンバーばかりが揃っていたウーズマ・カッパは、それでいいのだと前を向くことできたのだった。
マイクとサリーたちは朝早くからトレーニングに取り組む日々を過ごし、大会を勝ち進んでいく。朝練が徐々に苦でなくなっていくサリーらの成長を見るのが楽しい。一方でサリーはマイクの力に限界を感じるようになる。
『モンスターズ・ユニバーシティ』ラストをネタバレ解説&考察
サリーの弱点
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』の終盤では、シミュレーターを使用した怖がらせ大会の決勝で、マイクが最後の戦いに勝利してウーズマ・カッパが優勝を掴む。なお、ランドールはこの試合でサリーと戦い、サリーの声で起きた揺れのせいで床のマットのハート模様に擬態してしまい、皆から嘲笑されている。ランドールは「この借りは返す」と発言しており、『モンスターズ・インク』でサリーにライバル心を抱いていた背景が明らかになっている。
これで一同の怖がらせ部入りが決定するが、マイクはサリーがシミュレーターの計測機を操作する不正に手を染めていたことを知る。勝利が自分の実力ではなかったこともそうだが、サリーに信頼してもらえなかったことも辛かったのだろう。マイクは人間界に繋がるドアを研究している部屋に立て篭もると、自らの力を証明しようと人間世界へ行ってしまう。
駆けつけたサリーも人間界を訪れるが、その先は多くの子どもが眠る部屋で、しかも騒ぎを聞きつけた警官の大人たちも集結してしまう。ここでサリーは、自分自身が怖がりであったことを明かしてマイクに詫びている。
サリーは人を怖がらせる才能はあったが、自身が怖がりだという弱点があった。不正をしたのも、友人を信じて全てを賭けることに怖気付いたからだ。
マイクはこれまでに蓄積した怖がらせる技法を全て注ぎ込むと、場の緊張感を最高に高め、最後にサリーが大声を出したことで最高潮の叫び声を得ることに成功する。モンスターの世界ではすでにドアの電源が切られていたが、人間世界側からの異様な量のエネルギーによってドアは開かれ、二人は元の世界に戻ったのだった。理論と実践で二人が組めば怖いものなしであることが証明されたのだ。
なお、事態の収拾にやって来た子ども検疫局=CDAの隊員には、前作でCDAのボスであったことが明らかになったロズの姿も確認できる。ロズもここから偉くなっていったようだ。
ラストの意味は?
二人は共にモンスターズ・ユニバーシティを退学処分になるが、サリーはマイクに「お前は怖くないが怖いもの知らずだ」と伝える。サリーの強みは「怖いこと」、マイクの強みは「怖いもの知らずなこと」だったのである。
そこにやって来た学長も二人を激励すると、マイクはモンスターズ・インクの郵便係の募集に目をつけて、郵便係からのしあがることを決める。ちなみに中盤でマイクらに皮肉で郵便係になることを勧めたのは、ロアー・オメガ・ロアーのリーダーのジョニー・ワーシントンだった。
郵便係になった二人は目の前の仕事に楽しく一生懸命に取り組んでいくのだが、これも二人が一緒にいるからだろう。「手違いがあるとヒマラヤへ追放されるぞ」と脅かすイエティは、『モンスターズ・インク』でヒマラヤに追放されていたモンスターだ。後に「手違い」があったのだろう。
一方のマイクとサリーはポジティブなバイブスで清掃チーム、カフェテリア、ボンベ係を渡り歩き、怖がらせ屋の適正テストをパスして怖がらせ屋になったのだった。マイクとサリーは二人で一組。こうして『モンスターズ・インク』でお馴染みの二人のルーツが明らかになったのだった。
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』ネタバレ感想&考察
その後に繋がる物語
映画『モンスターズ・ユニバーシティ』では、個性を生かしてチームで何かを成し遂げることの大切さをテーマに、マイクとサリーの成長の過程が描かれた。誰もが知る人物であっても、その裏には挫折と挑戦の日々があるのだ。
『モンスターズ・ユニバーシティ』を観て興味深く感じるのは、後日譚のアニメシリーズ『モンスターズ・ワーク』では、サリーはモンスターズ・インクの新社長となり、マイクは共同代表に就任するからだ。『モンスターズ・インク』で叫び声のエネルギーから笑い声のエネルギーの活用に転換した同社は、マイクとサリーによる新体制で業務に臨む。
つまり、『モンスターズ・ユニバーシティ』は後にモンスターズ・インクのトップに就任する二人のオリジンになったのだ。合わせて、すでに触れたようにライバル会社のフィアー・コーポレーションの社長にはオラー・オメガ・ロアー出身のジョニー・ワーシントンが就任する。なんだかすごい人ばっかりだ。
ジョニーはマイクたちに郵便係を最初に勧めた人物で、結果的に二人をライバル会社のトップに押し上げるアシストをしてしまったことになる。そして、変化したモンスターズ・インクに戸惑う新人や、フィアー・コーポレーションによる引き抜きなど、『モンスターズ・ワーク』ではさらにモンスター・シティの世界が面白くなる物語が展開されていく。
モンスターに男性が多い理由?
『モンスターズ・ワーク』での変化で言うと、2021年から配信されている同作では、以前よりも女性のキャラクターが増えている。『モンスターズ・ユニバーシティ』では、女性キャラは事務職や母親など補助的な役割を担うか、CDAのボスであるロズや学長のハードスクラブルなどの怖い人物にまとめられていた。特に“仕事”を担う怖がらせ屋は男の世界のように描かれていたのである。
『モンスターズ・ユニバーシティ』では、ある意味でその源流が描かれた。大学の怖がらせ学部を卒業して怖がらせ屋になるというルートは、男子寮と女子寮の伝統をベースに構成されるクラブでの活動と地続きのものであることが明らかになったのだ。
モンスターズ・インクの怖がらせ屋が男性中心になる理由は、大学での男子寮を中心としたクラブの構成が影響しており、男性のロールモデルに憧れる男の子が怖がらせ屋を目指すという再生産のループが生まれていたものと考えられる。大学を退学になったマイクとサリーがモンスターズ・インクのトップになったこと、怖がらせ屋の時代から笑わせ屋の時代に転換したことは、そうした流れを変える要因になったのかもしれない。
もっとも、『モンスターズ・ユニバーシティ』が公開されたのは2013年のことで、ハリウッドで性加害の告発が始まり、ジェンダー平等をはじめとするポリティカル・コレクトネスが浸透していく2015年よりも前のことだ。当時は意識しないジェンダーバイアスがあったか、あるいは意図的に男児向けの戦略が取られていたのだろう。
『モンスターズ・インク3』はある?
そして、2026年3月にはシリーズ最新作となる『モンスターズ・インク3』が制作中であることが明らかになった。そこではどんな物語が描かれることになるのか、今から楽しみだ。また、「モンスターズ・インク」シリーズといえばサリー役をホンジャマカの石塚英彦、マイク役を爆笑問題の田中裕二が演じて見事なハマり役となったが、『モンスターズ・ワーク』ではそれぞれ楠見尚己と高木渉に交代している。声優陣にも注目だ。
なお、ピクサーとしては2026年に『トイ・ストーリー5』、2028年に『Mr.インクレディブル3』、2029年に『リメンバー・ミー2』が公開される予定だ。2026年3月公開の『私がビーバーになる時』、2027年公開の『ガットー』といったオリジナル作品も継続して制作されており、『モンスターズ・インク3』の公開はもう少し先のことになりそうだ。
未見の方は、『モンスターズ・ワーク』で物語の続きを楽しんでみてはいかがだろうか。
『モンスターズ・ユニバーシティ』はMovieNEX(ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド)が発売中。
豊富なイラストと共に制作の裏側に迫る『ジ・アート・オブ ズートピア2』は4月24日発売。
【ネタバレ注意】『ズートピア2』ラストの解説&感想はこちらから。
『インサイド・ヘッド2』ラストのネタバレ解説&感想はこちらから。
『インサイド・ヘッド』ラストの解説&感想はこちらから。
『トイ・ストーリー3』ラストの解説&感想はこちらから。
【ネタバレ注意】『私がビーバーになる時』の解説&感想はこちらから。
