ネタバレ感想&考察『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』町おこしと特撮の胸熱コラボ ラスト解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ感想&考察『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』町おこしと特撮の胸熱コラボ ラスト解説

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映画『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』公開

2004年から2005年にかけて放送された『特捜戦隊デカレンジャー』の20周年記念作品である『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』が、2024年6月7日(金)に劇場公開された。本作はVシネマ作品を劇場で先行公開するVシネクスト作品で、2024年11月13日にBlu-rayやDVDの発売が予定されている。

10周年を記念した『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』(2015)も製作された人気の高い「特捜戦隊デカレンジャー」シリーズだが、『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』は高知市の地域活性推進課職員(地域おこし協力隊)であるデカブレイク/姶良鉄幹役の吉田友一が町おこしの一環として企画とロケ誘致を行ない、デカピンク/胡堂小梅役の菊地美香とデカグリーン/江成仙一役の伊藤陽佑がアソシエイトプロデューサーを務めている作品である。

そのため、特捜戦隊デカレンジャーたちが『特捜戦隊デカレンジャー』をつくったとも言える『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』は、ファンにとっては胸が熱くなる作品とも言える。本記事では『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』のラストの展開について解説&考察していこう。以下の内容は、本編の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』の内容に関するネタバレを含みます。

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』ネタバレ解説

謎の爆破事件と新人デカレッド

ファイヤースクワッドに転任したデカレッド/赤座伴番が新人のプレミアデカレッド/江戸川塁を連れて地球に帰還。デリートされた銀河広域指定麻薬組織のドンであるチーマ星人タレワラーネの大いなる計画を捜査する塁だったが、バンは20年の歳月を経て40歳となり、後進の育成をしていた。

ファイヤーボールと呼ばれていたバンが後進を教育する立場になるというのは20年の月日の長さを感じさせる。子供の頃、デカレンジャーを観ていた筆者としてもデカブルー/戸増宝児と同じように感慨深いような、自分も年を取ったと感じるような不思議な感覚に陥る。また、自分の職場がブラックなのではと考えるウメコにも、大人になった現在の方が感情移入してしまう。

悪魔の黒い粉と呼ばれるパラトニウムをまき散らす爆破事件の捜査のため、バンと塁、ウメコはタレワラーネの妻であるラエンジョを追ってエイリアン特区へ向かう。逆立ちのシンキングポーズで閃いたセンちゃんとテツは高知県、タレワラーネの痕跡を追ってホージーとデカイエロー/礼紋茉莉花はチーマ星に飛ぶ。ここでセンちゃんがテツのことを市役所の人みたいと言うのはテツ役の吉田友一が高知市の地域活性推進課職員であることのメタネタである。

テレビシリーズ『特捜戦隊デカレンジャー』へのオマージュと成長

爆破事件の犯人だと思われていたラエンジョを追うことに焦りを覚えていた塁は、刑事の勘を信じて捜査するバンやウメコに苛立ちを募らせていく。ボスであるドギー・クルーガーも20年の時を経て、各々の捜査方針に口を出さないことも塁を焦らせる。塁はラエンジョが起爆スイッチを押したのを目撃したマープルの証言のもと、教会に乗り込んでいった。

ラエンジョを追い詰めた塁だったが、情報を集めていたバンとウメコがそれを止め、塁の誤射にウメコが倒れる。防弾チョッキを着ていたことで無事だったウメコだったが、ウメコは捜査の中でラエンジョは怒りと喜びの感情表現が地球人とは正反対のヨシワ星人だったことに気付いたと解説した。

この発言と行動が正反対というのはテレビシリーズ『特捜戦隊デカレンジャー』Episode.24「キューティー・ネゴシエイター」に登場したバリス星人を想起させる設定である。

センちゃんとテツは高知県の牧野植物園で学芸員をしているリドミハ星人モクミスから地球に落下した隕石が宇宙麻薬植物ネヒルモの種であることを突き止める。タレワラーネの大いなる計画とは地球にパラトニウムをばら撒き、巨大なネヒルモの苗床にすることだったのだ。

火薬が肥料になるというのは現実でもあり得ることで、肥料としてポピュラーなアンモニアは硝酸アンモニウムになると爆薬となるのだ。

また、リドミハ星人はテレビシリーズ『特捜戦隊デカレンジャー』Episode.06「グリーン・ミステリー」にカーサスというアリエナイザーとその妹のカーミアが登場している。

Episode.06「グリーン・ミステリー」によればリドミハ星人はベジタリアンの多い種族で、故郷の惑星を砂漠化によって失っている。故郷が滅んだ後は水のある惑星を探して侵略活動を続けており、植物学者モクミスは同胞の侵略活動に協力せず、人類との共存を選んだ1人のようだ。

そのことを考えると、地球に来た際に植物学者モクミスを地球の警察が殺そうとしたというのはリドミハ星人の侵略を疑ったデリート未遂だったと考察できる。

ラエンジョの身辺捜査をしていたホージーとジャスミンによって事件の真相が明らかになっていく。ファイヤースクワッドがタレワラーネをデリートした一斉捜査の際、情報をリークしたのはタレワラーネの妻のラエンジョだったのだ。理由はタレワラーネのDVから娘を守るためで、その娘をタレワラーネの右腕であるロットメンに人質に取られたことでラエンジョは爆破事件の犯人を演じていた。

DVに麻薬と『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』の犯罪は生々しく、観客が大人になっていることを意識した展開となっていることが考察できる。

デカレンジャーロボ、出動

すべての黒幕は縮小化能力でエイリアンの子供を演じていたためタレワラーネの右腕のアリエナイザーであるジウジッソ星人ロットメンだった。ロットメンは起爆スイッチを押し、それによって宇宙植物ネヒルモが発芽し、たちまち巨大化していく。

その姿は『ウルトラQ』(1966)のマンモスフラワー(ジュラン)を、爆破によって成長するという設定は『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)の草体を想起させる。

デカレンジャーたちはデカレンジャーロボを出動させ、植物学者モクミスから譲り受けたウィルスベクターを幹に撃ち込もうとする。『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』ではデカレンジャーロボは過去映像からのライブラリー出演だったが、『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』では当時のスーツを修復したのか、それとも新規造形したのか、どちらにしてもデカレンジャーロボの新規映像を観ることが出来るという豪華な展開となっている。

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地上でロットメンと戦っていたバンの窮地に、ホージーが駆けつけてデカマスター/ドギー・クルーガーの愛刀ディーソード・ベガを渡す。そして、40歳になったからといって前線から一歩引いた立場にいるバンに喝を入れるのだった。それによってバンは新人だった頃のファイヤーボールとして再起する。

還暦になっても、格好悪くても、ファイヤーボールであり続けるバンの姿から観客は「これでこそ『特捜戦隊デカレンジャー』のバンだ!」という思いを抱くことが出来る。それだけではなく、自分もまだまだ現役だという20年分の熱量を与えてもらえる。

マーフィーK9型のウィルスベクターを撃ち込み、宇宙植物ネヒルモを枯らすことに成功したデカレンジャーロボ。そして塁から強引に奪取したSPライセンス1で変身したプレミアデカレッドのバンによって、すべての黒幕のロットメンはデリートされる。

『特捜戦隊デカレンジャー』としての20年目のアンサー

塁は地球署にデカレンジャーの6人以外のメンバーが赴任しても、すぐに他の署に異動する理由について、「型破りでパワフルな地球署でパワーアップして他の署で活躍していく」という答えを出す。これはある意味で特撮作品から卒業していく子供たちへのアンサーでもあると考察できる。

そして観客たちは疲れたら特撮作品に帰ってきてパワーアップして、再び現実世界へと立ち向かっていくことを、高知市の町おこしとクラウドファンディングで制作された『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』は表現しているのではないだろうか。

また、地方の町おこしとのタイアップ作品として2時間サスペンスなどが例に挙げられるが、宇宙警察の刑事たちが主人公の『特捜戦隊デカレンジャー』は町おこしとの相性も良いと考えられる。

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』感想&考察

デカレンジャーロボと町おこしによる続編の可能性

デカレンジャーロボの新映像が制作されるなど、デカレンジャーロボのスーツやプレミアデカレッドといった新装備もお披露目された『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』。

『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』が制作された後に「スペーススクワッド」シリーズが制作されたように、『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』の続編にも期待してしまう。

特にデカレンジャーロボの新映像の登場の反響は大きく、改修か新規造形か、どちらにしても今後も『特捜戦隊デカレンジャー』の作品を製作していこうという思いを感じることができる。

また、マーフィーK9が登場しないというところに不安もあったが、最後にウィルスベクターとしてマーフィーK9型のシルエットが登場したのは嬉しかった。

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』では、劇中でも過去の出来事として前日譚の『特捜戦隊デカレンジャーwithトンボオージャー』の映像も差し込まれている。そのことからも続編制作の可能性は大いに期待できる。

今回は町おこしとのコラボにより製作されているため、今後の新しい『特捜戦隊デカレンジャー』の制作方法にも期待していきたい。

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』は2024年6月7日より劇場公開。2024年11月13日からBlu-rayとDVDが発売予定。

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』公式サイト

『特捜戦隊デカレンジャー 20th ファイヤーボール・ブースター』のBlu-rayとDVDは現在予約受付中。

 

同じく20周年記念作品の『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』のラスト解説&考察記事はこちらから。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の続編の可能性の考察記事はこちらから。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の草加についての考察記事はこちらか。

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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