ドラマ『ワンダーマン』全話ネタバレ解説&考察 ラストの意味は? シーズン2はある? MCUの小ネタもチェック | VG+ (バゴプラ)

ドラマ『ワンダーマン』全話ネタバレ解説&考察 ラストの意味は? シーズン2はある? MCUの小ネタもチェック

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『ワンダーマン』配信開始

MCUドラマ最新作『ワンダーマン』が2026年1月28日(水) よりディズニープラスで配信を開始した。ワンダーマンは1964年にコミック『アベンジャーズ #9』で初めて登場した人物で、元はMCUでもお馴染みのバロン・ジモからスーパーパワーを与えられるキャラクターだ。

原作でのワンダーマンことサイモン・ウィリアムズの本職は俳優で、この設定はMCUドラマにも引き継がれることになる。今回は、全8話が一挙配信されたドラマ『ワンダーマン』について、第1話から最終話の第8話までの内容をネタバレありで解説し、考察していこう。以下の内容は結末までの重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ワンダーマン』第1話から第8話の内容に関するネタバレを含みます。

『ワンダーマン』ネタバレ解説&考察

“厄介な俳優”としてのサイモン

ドラマ『ワンダーマン』では、ハリウッドでスクリーンデビューを目指してもがく俳優のサイモン・ウィリアムズの姿が描かれる。冒頭では、本作が「マーベル・スポットライト」枠の作品であることが示されている。

「マーベル・スポットライト」はドラマ『エコー』(2024) から始まったMCU内のブランドで、他の作品を予習せずとも単独で楽しめるという触れ込みになっている。『ワンダーマン』は「マーベル・スポットライト」第2弾の作品ということになるが、ここまで2作ともに全話一斉配信という点も「マーベル・スポットライト」の特徴となっている。

ドラマ『ワンダーマン』の作中には、過去にブレント・ウィラードという俳優が主演を務めた『ワンダーマン』という映画が存在している設定になっている。ある日サイモン・ウィリアムズは俳優のトレヴァー・スラッタリーと出会い、有名監督のフォン・コヴァクが手がけるリメイク版『ワンダーマン』のオーディションに挑むことになる。

『ワンダーマン』で興味深い点は、サイモン・ウィリアムズが現場で厄介な俳優として扱われている点だ。ちょい役でも登場人物の背景や脚本、小道具にまで想いを巡らせるサイモンは、せっかく入った『アメリカン・ホラー・ストーリー』の仕事をおろされてしまう。

サイモンは背景をしっかり理解した上でキャラを演じるメソッド演技法を取り入れているのだが、どうもその背景には育った環境やサイモン自身の生き方が関係しているように思える。そんなサイモンにとって、人生を変えるきっかけとなったのが、トレヴァー・スラッタリーとの出会いだった。

トレヴァー・スラッタリーとは誰か

『ワンダーマン』で最もMCUのユニバース感を感じられる要素であったトレヴァー・スラッタリーは、映画『アイアンマン3』(2013) でやテロ組織テン・リングスのボスであるマンダリンの偽物を演じる俳優として初登場を果たしたキャラクターだ。初登場から約13年が経過した古参キャラである。

トレヴァー・スラッタリーは短編シリーズ「マーベル・ワンショット」の「王は俺だ」(2014) にも登場。トレヴァーはシーゲート刑務所に捉えられていたが、本物のテン・リングスによって拉致され、事実上の“脱獄”状態となっていた。

ちなみに、「王は俺だ」ではテン・リングスのメンバーであるジャクソン・ノリスが記者を装って獄中のトレヴァーに接触するのだが、その時も、『ワンダーマン』でも、トレヴァーは亡き母からの影響について話している。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) では、本物のマンダリンことウェンウーに捕えられていたことが明らかになる。そこでは別次元の生き物であるモーリスを相棒にしていたが、どうやらトレヴァーは同作で解放された後、再びアメリカへ舞い戻ってきたようだ。

トレヴァー・スラッタリーの名演技もあり、サイモン・ウィリアムズは二人の出会いが運命的なものだと感じ始めるが、そこには裏があった。トレヴァーは米国に戻るなり逮捕されており、ダメージ・コントロール局との司法取引に応じて、スーパーパワーを持っている可能性があるサイモンの調査に協力していたのである。

これまでのMCUにおけるダメージ・コントロール局についてはこちらの記事に詳しい。

なお、トレヴァーはモーリスとは別れたようだが、ダメージ・コントロール局のクレイアリー捜査官からの着信を誤魔化す際には「異次元(pocket dimension)にいた頃の友人だよ」と、モーリスの存在を示唆する発言をしている。

MCUの要素も続々

MCU的なユニバース要素でいうと、第1話で登場するスタジオには、ニューヨークで上演されていた「ロジャース・ザ・ミュージカル」の看板が掲げられている。このミュージカルはドラマ『ホークアイ』(2021) で本編が描かれた他、看板は映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) とドラマ『シー・ハルク ザ・アトーニー』(2022) にも登場している。

『ホークアイ』と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はニューヨーク、『シー・ハルク』と『ワンダーマン』はロサンゼルスが舞台。「ロジャース・ザ・ミュージカル」は西海岸でも東海岸でも人気のようだ。

また、サイモン・ウィリアムズが実家で行われた母の誕生日パーティーに出席した際には、参加客が「キャプテン・アメリカが好き」と発言するシーンも。サイモンは「盾を投げる普通の男だろ」と返しているのだが、このやり取りは、スーパーパワーを持たないサム・ウィルソンがキャプテン・アメリカとして世間に受け入れられていることを示している。

ダメージ・コントロール局が「最先端の厳重警備刑務所」と誇っているのはドラマ『シー・ハルク』と『ミズ・マーベル』(2022) に登場したダメージ・コントロール局 最高警備レベル刑務所のことだと思われる。スーパーパワーを持つ人物を収容する刑務所で、シー・ハルクことジェニファー・ウォルターも収監されたことがある。

ドアマンの歴史

ドラマ『ワンダーマン』では、ベン・キングズレー演じるトレヴァー・スラッタリーとヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世演じるサイモン・ウィリアムズの化学反応が凄まじい。二人の掛け合いが演技としても、メタ的な演出としても絶妙なハーモニーを奏でている。

二人は(仕組まれていたとはいえ)バディものの映画『夜中のカーボーイ』(1969) が上映される映画館で出会う。同作はバッドエンドと捉えられる結末が用意されており、それが『ワンダーマン』の伏線にもなる。

サイモン・ウィリアムズにはスーパーパワーがあったが、それを隠して生きており、自分の心を他者にさらけ出せずにいた。その背景にあるのが、スーパーパワーを持った人間の映像業界への参入に大きな障壁をもたらした“ドアマン条項”だ。

ドラマ『ワンダーマン』の第4話「ドアマン」では、丸々1話を使ってデマール・“ドアマン”・デイヴィスの物語が描かれる。ドアマンことデマール・デイヴィスは原作コミックにも登場したキャラクターだ。

デマール・デイヴィスの物語はモノクロで描かれるのだが、デマールを芸能界に引き上げたジョシュ・ギャッドの、イマジン・ドラゴンズの「レディオアクティヴ」が「ここ3年の名曲」というセリフから、同曲が発表された2012年から2014年の間のストーリーだと考えられる。つまり、ドアマン条項ができたのも10年以内の話なのだろう。

デマールが能力を得たのは、「ROXXON」のロゴが入ったゴミ箱からこぼれ落ちた液体が作った穴に落ちてからだ。ROXXON=ロクソンはマーベルの原作コミックにも登場する石油会社の名前で、MCUでも映画「アイアンマン」シリーズ、ドラマ『シー・ハルク』などに名前が登場している。また、ドラマ『ロキ』(2021-) では、グループ会社と思われるロックスカート(ROXXCART)という大型スーパーも登場した。

ドアマンの能力は、身体がドアのようになり、自分が壁をすり抜けたり、自分を通して他人を壁の向こうに送ることができるというもの。火災から人々を救い知名度を得たデマールはジョシュ・ギャッドの付き人になると、そこから俳優に転身することになる。

ドアマンが決め台詞で放つ「Ding dong, mother…」という言葉は、MCUでニック・フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンが映画『パルプ・フィクション』(1994) をはじめとする多くの作品で「mother fxxxer」と発言することのオマージュだろう。映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) のラストでは、ついにニック・フューリーもこの言葉を言いかけて塵になるという演出もあった。

役者として活躍を見せるドアマンだったが、意外とSNSを気にする派で、一発屋の誹りを受けて徐々に酒に溺れていくようになる。自分のファンを「ドアノブの皆さん」と呼んでいるのが笑える。

しかし、ドアマンが酔った状態で挑んだ撮影で、ドアマンをすり抜けようとしたジョシュ・ギャッドが行方不明となってしまう。ダメージ・コントロール局副長官のヘイエルダールは、ドアマンを生涯監視下に置くことを表明、大手スタジオも再発防止のためにドアマン条項を制定したのだった。ヘイエルダールは『ワンダーマン』で初登場。サディアス・ロスが大統領就任からの失脚を迎えた今、敵となる連邦組織高官キャラは貴重だ。

なお、ドアマン条項はスーパーパワーを持つ人物の俳優業を禁じるものではなく、保険料が莫大な額になり、スーパーパワーを持つ人物が俳優業を行うことは事実上不可能となった、ということのようだ。流石に職業選択の自由を完全に制限することはできなかったのだろう。

そうして父との思い出から映画への出演を夢見てきたサイモン・ウィリアムズの俳優キャリアは、突然閉ざされることになる。いや、サイモンは夢を諦めることなく、けれど今までより一層怯えながら、本来の自分を隠しながら生きていくことになったのだ。

初めての友達

そんな中でサイモン・ウィリアムズに巡ってきたチャンスが、リメイク版『ワンダーマン』のオーディションだった。スパイとしてサイモンに近づいたトレヴァー・スラッタリーは、サイモンの人間性や周囲の人々、そして過去に触れ、徐々にサイモンに心を寄せていくことになる。

サイモンの母が「サイモンの友達に会うのは初めて」と喜ぶシーンは泣ける。サイモンの母は「映画に夢中で孤独を気にしてないと思ってた」というが、実際にはそうではないことにも気がついていた。トレヴァーはサイモンが本当にスーパーパワーを持っていることを知ると、その証拠を握りつぶして、時間稼ぎをするのだった。

その矢先に『ワンダーマン』のオーディションの“コールバック”が入り、二人はフォン・コヴァク監督のオーディションに挑むことに。なんだかトレヴァーがサイモンを大事にした時に俳優としてのキャリアが前に進むという、不思議な運命が駆動しているようにも思える。

コメディとしては傑作だった第5話ではトレヴァーが『シャン・チー』に続いて車のクレイジーな運転に付き合うことに。そして、『ワンダーマン』はクライマックスへと突入していく。

『ワンダーマン』ラストをネタバレ解説&考察

トレヴァーの光と闇

『ワンダーマン』の終盤では、本当の自分を見つけて欲しい、フィクションとノンフィクションの狭間を探検しよう、と呼びかけるフォン・コヴァク監督の要求にサイモン・ウィリアムズは苦悩することになる。

「本当の姿なんか見せられない」と、スーパーパワーを念頭に置いて話すサイモン。しかし、トレヴァー・スラッタリーは、本当の姿は能力じゃない、積み重ねてきた喪失、喜び、悲しみ、傷ついたこと、それが本当の姿であり、自然に鏡を立てかけるのが私たちの仕事だとサイモンを説得する。「役者の仕事は人生を経験すること」。トレヴァーは本当に良い助言者だ。

オーディションで名演を見せた二人は『ワンダーマン』の主役と準主役の座を手に入れる。しかし、トレヴァーにはダメージ・コントロール局のスパイという任務がある。そしてその事実が、ニューヨーク・タイムズの密着取材で二人のもとを訪れたジャーナリストのキャシー・フリードマンによって指摘されてしまうのだった。

トレヴァーがダメージ・コントロール局のスパイだったという事実を知ったサイモンは、『真夜中のカーボーイ』も、オーディションも、母の誕生日も全て演技だったのかと絶望。「友達かと思った」からの「名演技だったよ」は泣ける……。

ようやくできた友達、そして掴んだキャリアの第一歩。サイモンは怒りのエネルギーで『ワンダーマン』のスタジオを破壊してしまうのだった。これにダメージ・コントロール局が食いつき、サイモンが絶体絶命のピンチを迎え、ドラマ『ワンダーマン』は最終回の第8話を迎える。

トレヴァーの大芝居

『ワンダーマン』最終回の第8話では、ついにダメージ・コントロール局が現場入り。しかし、「自分で責任をとる」と、スタジオ爆破の犯人として名乗り出たのはトレヴァー・スラッタリーの方だった。

トレヴァーは『アイアンマン3』のテロリストとしてカムバックすると、犯行声明の映像を公開。サイモンの暴走を資本主義に抵抗する自らの仕業であるように見せかけたのだ。ちなみにその映像にはテン・リングスのロゴが使われており、またややこしいことになりそうな気はする。

ダメージ・コントロール局のクレイアリー捜査官はトレヴァーの策に乗ることを決断。ポイントは、ダメージ・コントロール局が強い信念のもとに運営される機関というよりは、次期の予算が減らされないような成果を求める機関だったという点だ。必ずしもサイモンを捕まえずとも、代替になる成果があればそれで良かったのである。

トレヴァーは逮捕されたが、「芝居はやめろ」という言葉に「今までが芝居だ」とうそぶく姿がカッコいい。あんた、本物の役者だよ。

トレヴァーがサイモンのために動いた時には状況は好転する。映画『ワンダーマン』は撮影を続行し、サイモンには過去にブレント・ウィラードがかけていた本物のグラスが届けられる。完成した映画は高い評価を得てサイモンはスターの仲間入りを果たしたのだった。

リメイク版『ワンダーマン』でトレヴァーの代役を務めたのは、トレヴァーの旧友で、本人役で本作に出演したジョー・パントリアーノだ。ジョー・パントリアーノは本作でも触れられるように映画『マトリックス』(1999) のサイファー役などで知られる。マーベル作品では、映画『デアデビル』(2003) でベン・ユーリックを演じたこともある。

サイモンにきつくあたっていた兄も映画を観て涙。ワンダーマンとして成功を収めたサイモン・ウィリアムズには、もう次の作品についての話も出ている。一方で、逮捕されたトレヴァーの情報はないままだった。

ラストの意味は?

サイモンが自分だけ成功を掴んで終わりにするはずはなかった。サイモンはチャック・イーストマンという人物に、作品の情報は伏せた状態で密着取材を行うと、チャックがパキシル(抗うつ剤)を服用しながら、大病を患った妻の医療費を支払続けていること、子ども達に満足に食事を食べさせてやれていないこと、仕事のせいでうまく眠れていないことを知る。

このチャック・イーストマンという人物は、ダメージ・コントロール局の最高警備刑務所で働いており、サイモンは取材として偽名で刑務所内に潜入することに成功。サイモンが身分を疑われた時に歌う曲はウェイロン・ジェニングス&ウィリー・ネルソン「Mammas Don’t Let Your Babies Grow Up to Be Cowboys」(1978)。自由に生きるカウボーイを愛してしまった人の立場で、「子ども達をカウボーイに育ててはいけない」と歌われる曲だ。

チャック・イーストマンには匿名で大金の振り込みが行われる。サイモンがチャックの人生を助けるために振り込んだのだろう。スターとしての財力もサイモンのスーパーパワーと言えるかもしれない。

サイモンは単独行動に出ると、監視カメラを触れずに破壊。一方のクレイアリー捜査官は、スタジオでの爆発を分析した結果、全ての物質でイオンの異常が確認されたと話す。そして、サイモンがイオンエネルギーを制御できるとすれば、サイモン・ウィリアムズはとてつもない脅威か、戦力になると指摘する。

サイモン・ウィリアムズ=ワンダーマンがイオンを操れるという設定は原作通りだ。原作コミックでは、バロン・ジモのイオン線実験を受けてこの力を得たが、ドラマ『ワンダーマン』では、サイモンは力を得た経緯は何も分からないとしている。

ちなみにイオンとは原子が電気を帯びた状態のことを指す。イオンを操ることで、サイモンが監視カメラを破壊したように電磁パルスで機械を無力化したり、水を電気分解して爆発を起こしたりすることもできるだろう。

サイモンの目的はもちろんトレヴァーを解放することだった。トレヴァーのもとに辿り着いたサイモンは、「放っておけない」とトレヴァーを抱えて空を飛んでいったのだった。ラストで流れる曲はハリー・ニルソン「Everybody’s Talkin’(邦題:うわさの男)」(1966)。映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌に起用された曲である。

『ワンダーマン』ネタバレ感想&考察

バディものの新たな傑作誕生

ドラマ『ワンダーマン』は全8話で二十数分から30分程度でテンポよく、コミカルかつエモーショナルなストーリーで、しっかりMCUのヒーローものとしての設定も絡められている優れた作品だった。一気見するとやや長めの映画くらいのサイズで、まだまだ続きが見たくなるような魅力も感じられた。

特にサイモンとトレヴァーの二人の化学反応が素晴らしかった。トレヴァーという旧来のキャラクターに、DC映画「アクアマン」シリーズのブラックマンタ役でもお馴染みのヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じるサイモンが絶妙にマッチしていたし、トレヴァー役のベン・キングズレーと合わせて、二人とも本当に上手い役者なのだということを再認識させられた。

トレヴァーには不思議な魅力があるのだが、トレヴァーが善行をすると物事が良い方向に進むというのは、もはやスーパーパワーの一種なのかもしれない。思えば『シャン・チー』でもモーリスの言葉を理解して通訳していたので、トレヴァーはやっぱりただものではないのだろう。

映画『真夜中のカーボーイ』のバッドエンドに対し、「Mammas Don’t Let Your Babies Grow Up to Be Cowboys」で「子ども達をカウボーイに育ててはいけない」と歌い、ハッピーエンドで終わらせつつ、『真夜中のカーボーイ』の主題歌で締めるというラストも乙だった。自由に生きること自体は否定できない、ということだろうか。

また、『ワンダーマン』ではメタ的に「スーパーヒーロー疲れ」を扱うような宣伝もあったが、「隠された意味や脚本家の意図を分析するのではなく、生きるんだ」「役者が痛みや喜びを共有すれば、観客は一人じゃないと思える」といったメッセージは、メタ的にMCUや映画・ドラマの役割を改めて訴えているようにも聞こえた。作品を単に“ハリウッドあるある”で終わらせず、観客との接点を意識していた点も好印象だった。

職業選択の自由は?

『ワンダーマン』は、スーパーパワーが登場する作品としては、かなり地に足のついたドラマで、ダメージ・コントロール局の組織としての性格や映画界の規制についても触れられた。注目したいのは、MCUの世界ではドアマン条項によってスーパーヒューマンの作品への出演に障壁が設けられていたという設定だ。

映画『サンダーボルツ*』(2025) では、バッキー・バーンズが下院議員に就任していた。スーパーソルジャー血清を打たれたバッキーは他の人よりも長寿で若々しいため、定年や再選規定がない議員という仕事は永遠に続けることもできてしまう(何より人気者だ)。また、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』では、ヒーロー名の商標登録を巡り、長く名前を使用しているヒーローに権利を認める判決が下った。

こうした、スーパーヒーローと法律の運用をめぐる解釈を考えるのは、なかなか楽しい。ドアマン条項に関しては、おそらく高額な保険料を支払えばスーパーパワーを持っていても撮影に参加できるが、そもそもオーディションを受ける若手俳優に払える額ではないため、事実上門戸が閉ざされているということなのかもしれない。

であれば、ドアマン条項は職業選択の自由を事実上疎外していると考えることもできる。日本では憲法第22条で職業選択の自由が保障されているが、アメリカでは修正第14条の営業の自由や契約の自由を根拠に職業の自由が認められている。一方で、安全を目的とした合理的な規制も認められるというのが現在の解釈だ。

例えば危険がない「能力」であっても一律に規制するというのは合理的とは言えないので個別の審査を受ける権利を保障するべき、といったラインでジェニファー・ウォルターズ(シー・ハルク)あたりが戦ってくれるとルール改定の可能性はある。しかし、そもそも「俳優になりたいスーパーパワーを持った人」が少ないため、なかなかムーブメントは起きづらいだろうか(ミュータントが増えれば別かもしれないが)。

抜け道としては、今回のサイモンのように主役級に抜擢された後で、俳優自身かスタジオが高額な保険料を負担する、という方法も考えられる。しかし、ダメージ・コントロール局が忍び寄る中で、サイモンはどこまで俳優業を続けていくことができるのだろうか。

シーズン2はある?

となると、気になるのは『ワンダーマン』のシーズン2があるのかどうかというところだ。MCUドラマは伝統的にシーズン2への更新がほとんどない点が特徴でもあるが、『シャン・チー』監督のデスティン・ダニエル・クレットと共に『ワンダーマン』のショーランナーを務めたアンドリュー・ゲストは、本作の配信日にシーズン2の内容について触れている。

The Directによると、アンドリュー・ゲストはファンの視聴数が十分にあれば『ワンダーマン』はシーズン2への更新が検討されると話している。さらに、その内容についても、ダメージ・コントロール局がサイモンの能力に辿り着いたため、サイモンは俳優業に戻ることが困難になる、というアイデアを共有している。

一方で、能力者であることを世間に知られたくないサイモンに対し、ダメージ・コントロール局が取引を持ちかける可能性についても言及している。つまり、トレヴァーにやったように、ダメージ・コントロール局はサイモンにも自分たちの指示に従うように仕向けるのだ。

確かに、クレイアリーは、サイモンを「脅威」または「戦力」になると話していた。強力な力を持つサイモンが、政府の言いなりにならないスーパーヒーローたち、例えばヤング・アベンジャーズに差し向けられるとすれば、なかなか厳しい展開になりそうだ。加えて、ダメージ・コントロール局はドアマンのような能力者を管理下に置いているならば、政府御用達のチームが誕生する可能性もあるだろう。

トレヴァーはまたも脱獄することになったが、やはりテン・リングスのブランドを再利用してしまったことが気になるところ。『シャン・チー』ではシュー・シャーリンによる新生テン・リングスが動き出していた。また悪評を拡散され、シャーリンも黙ってはいないかもしれない。

2026年最初のMCU作品として堂々のデビューを果たした『ワンダーマン』。MCUからは3月25日(水) からはドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』(2025-) シーズン2が配信を開始する。『ワンダーマン』の今後の展開と共に期待して待とう。

ドラマ『ワンダーマン』は2026年1月28日(水) より全8話がディズニープラスで配信中。

『ワンダーマン』配信ページ

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『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』予告編第4弾の解説&考察はこちらから。

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』ラストの解説&考察はこちらから。

ドラマ『ヴィジョンクエスト(原題)』についてはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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