『ジェン・ブイ』シーズン2第2話配信開始
Amazonプライムビデオの人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) から生まれたスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』は、2023年に配信されたシーズン1に続き、2025年9月17日(水) からシーズン2が配信されている。『ジェン・ブイ』シーズン2では、『ザ・ボーイズ』シーズン4のその後を舞台に物語が展開していく。
今回は、初回3話が一斉配信された『ジェン・ブイ』シーズン2より第2話についてネタバレありで解説し、考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、本作は16歳以上を対象とした作品で、過激な暴力描写と性描写を含むためご注意を。
以下の内容は、ドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2第2話の内容に関するネタバレを含みます。
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『ジェン・ブイ』シーズン2第2話「正義の味方は忘れない」ネタバレ解説
大学へ戻るマリー
『ジェン・ブイ』シーズン2第2話「正義の味方は忘れない」の監督を務めたのは第1話に続いてスティーヴ・ボーヤム。『ザ・ボーイズ』のショーランナーを務めるエリック・クリプキの『スーパーナチュラル』(2005-2020) と、『ザ・ボーイズ』でも指揮をとっている。脚本を担当したのは『ザ・ボーイズ』、『ジェン・ブイ』シーズン1でも脚本を手がけたジェシカ・チョウだ。
前回のラストでケイトを見捨てて逃げてしまった逃亡中のマリーだったが、エマの提案により、SNSで先んじて大学への復帰を宣言して安全を確保するという策をとる。すべての罪はインジェラ前学部長に押し付けられたため、マリーの罪も無効になったのだ。マリーが入っていたのが司法を介した刑務所ではなく、リハビリセンターだったということも、脱走が重罪にならずに済んだ理由の一つだろう。
マリーは乗り気ではなかったが、クレバーなやり方で復学。動画内で引用されるブレネー・ブラウンの言葉は、字幕では原語のまま「芯は強く、優しくワイルドに」となっているが、吹き替えでは「強さとは弱さの裏返し」と、ブラウンの書籍の邦題『本当の勇気は「弱さ」を認めること』を意識したものになっている。
マリーと面会したサイファーはエルマイラにいたことを自ら認めると、アンドレが隠していた症状の書かれたカルテをマリーへ手渡す。マリーにとっては、アンドレが自分たちに弱さを見せていなかったことへの戸惑いと悔しさがあったはずだ。
加えて、マリーにはケイトが一命を取り留めて入院していることが告げられる。テレビでは、『ザ・ボーイズ』シーズン4からセブンのメンバーになったファイアクラッカーのニュース番組「ザ・ボム・ウィズ・ファイアクラッカー」でケイトの被害をヒーローへの「ヘイトクライム」として報じている。ちゃっかり「ホームランダーとイエス・キリストと私」の加護があるとして、イエスとスープスを同列に扱っている(本当のキリスト教徒ならそんな不敬なことはしないはずだ)。
サムはケイトの見舞いに行き、ケイトが重傷を負った事件にエマらが絡んでいることに勘づき始める。エマはケイトのマインドコントロールで変わってしまったサムに怪訝な視線を送っていたが、そのやり取りも含め、サムは自分を守ってくれるケイトにエマが危害を加えたのではないかと疑う辛いすれ違いが起きている。
「トラッド・ワイフ」とは
アンドレの父ポラリティはというと、ゴドルキン大学のマーケティング担当副学部長のポストに応募。サイファーは、これまでロクな応募者がいなかったといい、英語ではその例として「ヴォートコインを売っていたDリストヒーロー」を挙げている。ヴォートコインは『ザ・ボーイズ』シーズン4で言及されたヴォート社が発行する仮想通貨だ。
ゴドルキン大学の「インフルエンサーの発信力」のクラスでは、キラ・ガローイン演じるモデスティ・モナークが授業を行っている。「トラッド・ヒーロー運動を2018年に始めた」として、フェミニズムを敵視し、「夫の世話をして子どもを産む幸せな生活」を掲揚している。
モデスティ・モナークのモデルはおそらく料理レシピ系インフルエンサーから「トラッド・ワイフ」の代表格となったナラ・スミスだ。「トラッド」とは「Traditional(伝統的な)」の省略で、つまり「トラッド・ワイフ」とは「伝統的な妻」のこと。米国では第1次トランプ政権成立以降、「社会に出て働く女性」という価値観に逆行する保守的な“ワイフ像”が復権の動きを見せている(背景にはコロナ禍で特に女性が職を失ったという要因もある)。
この動きを日本に輸入したのが極右勢力である参政党だ。一方で、ナラ・スミスのようなインフルエンサーは家にいながら動画を配信するという“仕事”を通して収入を得ているわけで、いわゆる「伝統的な妻」の生き方との矛盾も抱えている。
ゴドルキン大学の学生達は、そんな内容はお構いなしにモデスティ・モナークの力を借りてインフルエンサーになれるかもしれないと色めき立っている。思想は関係なく、“今”の流行りに向かって打ち込めばフォロワーが増える、その流行りに乗ろうとする人々が社会をより悪い方へと動かしていくというのは万国共通の現象のようだ。
再びインフルエンサーとして輝くことを要請するモデスティ・モナークに対し、エマは「もう誰にも影響(インフルエンス)を与えたくない」と拒否。しかし、その要請はサイファー学部長によるものだった。エルマイラへの送還とケイトの事件、エマ達は二つの要因で自由を失った状態に置かれている。
元ネタはソー?
ジョーダンはマリーがサイファーから受け取ったアンドレのカルテを発見。ジョーダンがエルマイラで鉄の扉を動かそうとするアンドレを止めようとした時、アンドレは死ぬ覚悟で能力を使っていたことを知る。一人で逃げたマリーと、アンドレの死を止められなかったジョーダンの間には、まだ溝がある。
そうこうしている間に、マリー達はヒーロー強化セミナーを受けさせられる。「多様性・平等センター」だった場所が訓練場に作り替えられたという設定は、現実において第2次トランプ政権以降、一部組織がDEI(多様性・公平性・包括性)推進を取り下げたことを想起させる。
ちなみにこのセンター、英語では「ビッグ・チーフ・アパッチの多様性・平等センター」となっており、『ザ・ボーイズ』シーズン4第5話のV52エキスポで紹介されたビッグ・チーフ・アパッチの名前が冠されていたことが分かる。ビッグ・チーフ・アパッチはネイティブアメリカンの格好をしているがどう見ても白人というネタキャラである。
ヒーロー強化セミナーは自分の能力の仕組みを理解するためのプログラムで、学生達はハンマーを武器とするバイコーに挑む。原作コミックに登場するバイコーは、マーベルコミックのソーをモデルにしたキャラクターだ。バイコー(Vikor)という名は「バイキング (Viking)」と「ソー (Thor)」を合わせたものである。
学生の一人はバイコーが批評サイトのロッテントマトで高評価4%だった『ヴァルハラ3』に出ていたと指摘するが、英語ではこの映画の題名は『Valhalla 3:Lust and Lightning』となっている。「ヴァルハラ」とはオーディンの宮殿のこと。「Lust」は性欲、「Lightning」は稲妻を意味する。つまり、『ヴァルハラ3:ラスト&ライトニング』というのは、「ソー」シリーズの第4作目『ソー:ラブ&サンダー』を揶揄したタイトルなのである。イジリの細かさよ……。
映画の低評価をイジられたバイコーはハンマーを振り回して大暴れ。マリーはバイコーの体内の血を操って倒そうとするが、なんとバイコーはセルフ心臓マッサージで対応する。しかし、そうしている間にジョーダンがスイッチを押してクリア。チーム戦ならなんとかなるが、マリーはまだ自分の能力を使いこなせていない。
「反ファシストには容赦しない」
『ジェン・ブイ』シーズン2第2話の後半からは、大学のカフェテリアで働く非能力者と、何者かによって貼られる反体制派のフライヤーをめぐるストーリーが描かれる。非能力者ということで客の学生から詰められる店員は、現実における外国人労働者の姿を想起させる。
フライヤーに描かれているのは、「RESIST(抵抗)」という文字に黄色い星マークというシンプルな表象。だが、それだけでスターライトに希望を抱く反体制派のシンボルとしては十分だ。ルーファスは店員に「反ファシストには容赦しない」と無茶苦茶なことを言っているが、英語では「反ファシスト=Antifa」と言っている。
第1次トランプ政権は特定の組織ではない「アンティファ」をテロ組織に指定する謎の動きを見せた。第2次トランプ政権でも『ジェン・ブイ』シーズン2の配信が始まった翌日、トランプ大統領は「アンティファ」を再び“テロ組織”に指定した。そのルーファスを止めたエマが「ペ◯スないのに」と言っているのは、『ジェン・ブイ』シーズン1でルーファスがマリーに性器を破裂させられたからだ。
一方、ポラリティがマーケティング服学部長として大学にやってきたのは、エマのおかげで死んだ息子のために行動しようと思えたからだった。酒に溺れていたポラリティは、アンドレが「世界一賢い」と評していた昔のポラリティに戻るべきだとエマから助言を受け、二人は一緒にオデッサ計画の資料を探ることになる。若者の青春と共に、息子を失った父の姿が描かれるのが『ジェン・ブイ』シーズン2の特徴の一つだ。
強化セミナーでジョーダンに助けられたマリーは、ようやく一人で逃げたことを謝罪。ジョーダンもアンドレの死はマリーのせいではないと庇うと、二人はアンドレは頑固で誰も止められなかったと思い出を語り、和解を果たしたのだった。
息子の死を受けて酒に溺れていたポラリティにしてもそうだが、自分の死が生き残っている者の堕落や分裂を生んでしまうのだとしたら、その死者は報われない。涙を流しながら「君に怒りをぶつける方が楽だった」と語るジョーダンの姿は、シーズン1後に事故で急死したアンドレ役チャンス・パードモの死を乗り越えようとする俳優陣による追悼のようにも見える。
「正義は忘れない」
そうしてマリーが女性の姿のジョーダンと結ばれた一方で、ポラリティとエマはリメンバラーが管理する資料倉庫を訪れる。名前の通り超人的な記憶力を持つリメンバラー。昔リメンバラーの番組を観ていたエマはファンだと言ってリメンバラーを気持ち良くさせ、例外的に倉庫に入れてもらうことに成功したのだった。
エマは普段外交的な性格ではないが、この時はドラッグを服用していて上機嫌。その原因は前回ジャスティンにマウントを取られ、変わり果てたサムの姿を見て、さらにケイトを見捨て、再びインフルエンサーとして発信することを要求されたという何重ものをストレスを抱えているからだろう。
リメンバラーは昔の番組が打ち切られる時に、それをマデリン・スティルウェルに言い渡されたと話している。マデリンは『ザ・ボーイズ』シーズン1に登場したヴォート社の元副社長だ。そしてリメンバラーが言う決めゼリフ「正義は忘れない(Justice Never Forget)」は、『ジェン・ブイ』シーズン2第2話のタイトルになっている。
この「正義は忘れない」というタイトル、エマたちがこの後、歴史資料を通じて真実に近づいていくことにもかかっているのではないだろうか。陰謀論と歴史修正が蔓延る時代でも、きちんと一次資料にあたれば、そこに正義があるというメッセージを投げかけているようでもある。
ディープが仕切る集まり
『ジェン・ブイ』シーズン2第2話には前回写真で登場したディープの本物が登場。学生団体の儀式に参加している。ディープはこの団体は1961年にミシシッピで誕生したと話しているが、1961年といえば米国が奴隷制廃止派と維持派に分かれて戦った南北戦争が始まった年で、ミシシッピ州は奴隷制維持の南側に属していた。
ディープは、「北部の侵略者(=奴隷解放派)」から自らの価値を守ることがこの組織の目的であり、トーマス・ゴドルキンもその一員だったと話す。ナチスに奴隷制支持派と、ヴォートの源流は複数存在しているのだ。
エマとポラリティは秘密の部屋を発見。そこにはナチスドイツの表象であるハーケンクロイツ(鉤十字)や白人至上主義集団KKKの白装束と三角頭巾などが飾られており、三角頭巾を被った下着姿の男性4人組の写真も。先ほどの学生団体の源流だろうか。
エマはオデッサの資料を発見し、興奮したことで巨大化してしまう。エマは「自分で大きくなれた!」と喜んでいるが、シーズン1ではエマが嘔吐して小さくなる一方で、暴食することで大きくなるという機能が明かされていた。シーズン2第2話のエマはドラッグは服用しているものの、食事に頼らずに精神状態の変化によって巨大化することができたのだ。
マリーと結ばれたジョーダンは、オリバー・ガーデンでデートすることを提案。オリバー・ガーデンはアメリカの有名なイタリアンレストランのチェーン店で、学生でも気軽に入れるカジュアルなお店だ。ここでジョーダンが言う通り、食べ放題のパンが提供される。
ファミレスに行って、ドラマを見て、ゲームをして……マリーとジョーダンが夢見るのは、普通の大学生の青春だ。そしてジョーダンは今度は男性の姿になるが、マリーの「愛してる」の言葉に引っ掛かりを覚えるのだった。
サムは、病床のケイトがエマの名前を呼んでいたことと、重症のケイトが見つかったウィーホーケンにエマが向かっていたこと、ケイトが入院してマリーとエマが大学に復帰したことからエマに詰め寄る。しかし、エマからはケイトに洗脳されているだけで、サムもいずれ報いを受けると反論されてしまう。
サムはケイトという精神安定剤を失った状態にある。それにシーズン1で支えてくれたエマからも嫌われてしまった。サムはシーズン1で兄ルークを失っている。孤立しつつあるサムのそばにいてくれる人物は現れるのだろうか。
ラストの意味は?
一方、キャンパスではケイト襲撃犯が報いを受けたとお祭り騒ぎに。前回マリーを捕えられなかったドッグノットが、ガソリンスタンドでマリーにお金を出してくれたスターライターの黒人青年をケイト襲撃の犯人ということにして殺したのだ。
学生による「人間はクソ」コールが巻き起こる中、マリーは「何もしなかったからこうなった」と責任を受け入れる。人間/非能力者はそのまま現実における外国人に置き換えることができる。マジョリティであってもマイノリティの気持ちを知ることができるこの設定は、SFの想像力を用いた優れた設定だ。
そこにファイルを持って現れたエマは、オデッサの正体はなんとマリーだったと明かす。資料倉庫のファイルは死んだ赤ん坊の情報ばかりだったが、唯一無事に生まれて生き延びたのがマリーだったのである。そして、『ジェン・ブイ』シーズン2第2話のラストは、ケイトが目を覚ましてサイファーと再会したところで幕を閉じる。
『ジェン・ブイ』シーズン2第2話ネタバレ考察&感想
現実との接点とサイファーの狙い
『ジェン・ブイ』シーズン2第2話では、マリーが大学に復帰。オデッサ計画とアンドレの死、サイファーの目的をめぐるミステリー、エマやジョーダンらの青春譚、そして“ホームランダーのアメリカ”の物語が同時進行していく。
能力者であるマリー達は、自分たちに着せられた濡れ衣が非能力者の人間に被せられることで守られていく。物語としてはシーズンが更新され、主人公たちをある程度安全な地帯に戻すという目的を果たしながら、能力者であるが故の特権をマリーらに自覚させる巧い構成だ。
現実を振り返れば、いわゆる“国民”とされる人々は法律や社会的地位によって安全を保障され、“外国人”の人々は厳しい立場に立たされている。アメリカの状況を少し遅れて後追いする日本では、“日本人ファースト”という名の排外主義が流行し、ちょうど『ジェン・ブイ』シーズン2での非能力者への迫害がリアルタイムで外国人への差別が蔓延する現実に重なる状況となっている。
ストーリー上の謎は、サイファーがなんだかんだでマリーを守り続ける理由だ。シーズン2第2話では、オデッサ計画で生まれたのがマリーだということが示唆された。やはりマリーを育てて最強の兵器にしようというのがヴォート社の狙いだろうか。
シーズン2第2話から登場した強化セミナーは結構良さげ。下ネタばっかり言ってるサイファーのおっさんが言うから説得力に欠けるが、自分の能力の仕組みを理解するというコンセプトはマリーやエマにとって重要な課題だ。
シーズン2が終わる頃にはマリーはニューマンのように任意の相手の頭を破裂させられるようになっているかもしれない。そうなれば、『ザ・ボーイズ』の世界にはホームランダーを倒せる新たなヒーローが誕生することになる(闇堕ちしないという前提で)が、果たして……。引き続き初週に配信された『ジェン・ブイ』シーズン2第3話を観ていこう。
ドラマ『ジェン・ブイ』シーズン2はAmazonプライムビデオで独占配信中。
『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
『ジェン・ブイ』のベースになったチャプター〈We Gotta Go Now〉(23話〜30話)は日本語版の第2巻に収録されている。
『ジェン・ブイ』シーズン2第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。
シーズン2第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。
『ジェン・ブイ』シーズン1最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。
キャストが登壇した2025年のサンディエゴ・コミコンの『ジェン・ブイ』パネルの模様はこちらから。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。
