なぜ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は人々の心を打ったのか~SNS時代に贈る手紙の物語~【解説】 | VG+ (バゴプラ)

なぜ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は人々の心を打ったのか~SNS時代に贈る手紙の物語~【解説】

©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』2週連続放送!!

日本テレビ系「金曜ロードショー」にて『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が2週に渡って連続放送される。2021年10月29日にはTVシリーズ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2018)を再編集した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 特別編集版』が、翌11月5日には劇場版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』(2019)が放送される。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は暁佳奈による第5回京都アニメーション大賞の大賞受賞作、およびそれを原作としたアニメ作品である。『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)、『氷菓』(2012)、『響け!ユーフォニアム』(2015)などで知られる京都アニメーションによる美麗なアニメーションや胸を打つストーリーで多くのファンを持つ作品だ。改めて作品の魅力を振り返ってみよう。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はなぜ人々の心を打ったのか

唯一の通信手段

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は戦場で「兵器」として扱われたヴァイオレット・エヴァーガーデンが、戦後手紙を代筆する”自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)”として働く中で感情を取り戻していく物語。自らを育ててくれたギルベルトの最後の言葉、「愛してる」の意味を知ろうともがきながら、兵器として人を殺した過去と向き合いながらも成長するヴァイオレットの姿は観る者の胸を打つ。

『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の舞台設定は、現実世界で言えば丁度第一次世界大戦の終結した後の1920年代前半頃だろうか。劇中には携帯電話もパソコンも、それどころかテレビすら登場しない。勿論インターネットは存在しない。だが、ヴァイオレットが戦場で失った両腕は、機械の義手に置き換えられている。

科学的に正確な時代考証はさておき、物語がこのような技術レベルの世界で綴られることには理由がある。それは「手紙」がほぼ唯一普及した遠距離を結ぶ通信手段であるということだ。今や誰もがスマホを持ち、SNSで他人と繋がる時代にあって、敢えて手紙を書く人というのは稀だろう。確かに、手紙よりもメール、メールよりもLINEの方が遥かに手軽に人と通信できる。ツイッターを開けば、一度も会ったことのない相手とも気軽に言葉を交わせる。

SNS時代のコミュニケーション

しかし、SNSにおけるリプライのやり取りは基本的には誰に対しても公開されているものだ。勿論設定の変更によって許可された相手にしかリプライを見せないようにすることや、そもそも非公開設定の所謂「鍵アカウント」にすることもできる。けれど、ネット上のやり取りというのはどこかにやはり他者の目を感じざるを得ず、余程例外的な状況でない限り本人しか目を通さないことを期待できる手紙のような純粋に私的な通信とは異なる。

ツイッターは他人の目を意識する準公的なものだからとLINEで私信を送ったつもりでも、後日そのスクショがツイッターで拡散されるというようなことも最早日常茶飯事だ。インターネットはこのように人々を結び付け易くしたが、反面私的関係の確かさや信頼というようなものを築き難くさせもしたのではないだろうか。

だからと言って我々はもうインターネット以前の世界に後戻りすることはできない。しかし、そのように四六時中どこかで「他者の目」を意識させられる生活空間に、無意識に抑圧を感じていることも確かだろう。そのような「時代の痛み」とも呼べるものに、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品はアクセスすることができたのではないだろうか。

「誰にも邪魔されない」関係

即ち、「手紙」によって結び付く私的な、「誰にも邪魔されない」関係への人々の無意識の憧憬を刺激すればこそ、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品はこれだけ多くの人の支持を集める作品となったのだろう。

「感情を持たない少女が感情を取り戻す」という王道の物語だけであれば、それは結局個人の小さな物語として受け取られるに留まったかも知れない。しかしそこに「人々が手紙によって繋がる」という設定を導入したことにより、SNSベースの人間関係に無意識に疲弊する我々の心に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という物語は深く染み渡ったのだ。

 

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の声優キャストまとめはこちらから。

腐ってもみかん

普段は自転車で料理を運んで生計を立てる文字通りの自転車操業生活。けれど真の顔は……という冒頭から始まる変身ヒーローになりたい。文学賞獲ったらなれるかな? ラップしたり小説書いたりしてます。文章書くのは得意じゃないけどそれしかできません。明日はどっちだ!
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