SFを通した日韓の交流 『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』刊行記念トークイベントの開催レポート | VG+ (バゴプラ)

SFを通した日韓の交流 『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』刊行記念トークイベントの開催レポート

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』のトークイベントがSFカーニバルで開催

30名上の日本と韓国のSF作家が参加し、フェミニズム・創作と闘病・障害・SFの魅力・作家になるまでとなってからなど、様々なテーマについて語り合った『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』がKaguya Booksから好評発売中!

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『日韓SF交換日記』の刊行を記念して、2026年4月11日・12日の2日間にわたって代官山 蔦屋書店で行われたSFカーニバルにて、2つの刊行記念イベントが開催されました。ここではそのイベントの様子をお届けします。

SFカーニバルの1日目に開催された「『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』書籍発売記念トークイベント」には、『日韓SF交換日記』で2人1組になって交換日記を交わした作家たちが登壇。イ・ソヨンさん&池澤春菜さんデイナさん&揚羽はなさんホン・ジウンさん&溝渕久美子さんイ・サンファさん&林譲治さんの4組が、それぞれの交換日記について語り合いました。通訳を担ったのは、韓国SF作家連帯代表のへ・ドヨンさん。

『日韓SF交換日記』では「韓国/日本女性SFについて」というテーマで日記を執筆したイ・ソヨンさんと池澤春菜さん。労働と女性というテーマで、労働の自己実現と消耗の両面を描くイ・ソヨンさんと、世界中でフェミニズムへのバックラッシュがある中で旗を掲げる人たちで「ズッ友」になろうという池澤さんとの間で、お互いのエンパワメントがあったと話しました。もし他にペンネームを選ぶなら?という池澤さんの質問に、イ・ソヨンさんは、男性でも女性でもない名前として、成人向け小説を書いた時に使った「モチ」というペンネームを紹介しました。

デイナさんと揚羽はなさんは「個人的なこと・日常的なこと」というテーマで日記を執筆しました。揚羽さんは、自身の双極症と向き合いながら執筆や生活することを綴ったデイナさんの日記を「自分を深く掘り下げながら社会にも目を向ける、素晴らしい日記」と紹介。デイナさんは、揚羽さんの短編小説「シルエ」(『NOVA 2023年夏号』収録)を紹介。死別というテーマに向き合う本作を通じて、自分たちが小説を書いたり読んだりする理由や、「嘘をつくこと」と「別の可能性を見せること」の違いは何かなど、創作の核になるようなお話が交わされました。

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ホン・ジウンさんと溝渕久美子さんは「サブカルチャーと歴史」について日記を執筆しました。溝渕さんは、日本のサブカルチャーへの愛と、その受容の歴史的・政治的背景に真摯に向き合うホン・ジウンさんの日記について、日韓文化交流の上で日本の植民地支配を含めた歴史的背景の問題は避けて通れないと語りました。ホン・ジウンさんは、邦訳されている自作として、済州島四・三事件をモチーフにした「九十九の野獣が死んだら」(『七月七日』収録)を紹介しました。また、溝渕さんが交換日記で使った「女子供のもの」という表現に注目。蔑視的に使われるその言葉から革命的な原動力を発見した溝渕さんと、ご自身のサブカルチャーのパワーという関心の共通点を話しました。

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イ・サンファさんと林譲治さんのテーマは「日本と韓国のファンダム」。科学的な正しさが重視されて社会的な構造に関する議論が置き去りにされることに疑問を抱き、男性中心主義的なファンダムや業界との軋轢を経験してきたイ・サンファさんと林さん。業界やファンダムの世論が受け入れられない方向に向かった時にどうすればいいか、宇宙やテクノロジーといったSF的題材に依存せず、歴史や社会、マイノリティの問題を描きながら読者にSFらしさを伝えるにはどうしたらいいかなど、社会とSFの関係について話し合いました。林さんからは、歴史とSFらしさを両立している作品として、イ・ソヨンさんも寄稿している『蒸気駆動の男 ―朝鮮王朝スチームパンク年代記―』への言及もありました。

2日目には「韓国SF作家連帯トークイベント」が開催。韓国SF作家連帯からホン・ジウンさん、イ・サンファさん、通訳としてヘ・ドヨンさんが登壇。日本SF作家クラブの溝渕久美子さん、林譲治さんと共に、記念イベントでは語り尽くせなかった話題を語り合いました。オススメ「B級映画」から始まり、歴史をサブカルチャーで扱う時の手法の差や、「革命」に対する日韓のイメージの違い、お互いから見た相手のイメージとそのギャップなど、話題が広がるごとに大いに盛り上がりました。

日本SF作家クラブのPixiv FANBOXでは、SFカーニバル全体の様子がレポートされています。カーニバルの様子が知りたい方はこちらから。

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』好評発売中!

日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯編『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』は総勢三十名以上のSF作家・翻訳者が集って、「SFの魅力」「フェミニズム」「病気や障害と創作」「作家として大切にしているもの」「クリエイターと政治」など、様々なトピックについて綴った一冊です。

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冒頭には、『僕の狂ったフェミ彼女』などで知られるミン・ジヒョンによる講演録「フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか」を収録。

続く〈日韓SF交換日記〉では、両団体の作家24名が二人一組になって、「韓国/日本女性SF」、「フェミニズムSFと韓国/日本のマンガ」、「韓国SFの歴史と傾向」、「闘病経験を作品に盛り込む」、「ハードSFとテクノロジー」、「SF作家になるまで/なってから」など、社会的な話から個人的な話まで、様々なテーマについて執筆しています。

対談「わたしとあなたのエンカレッジ!」では、『となりのヨンヒさん』などで知られるチョン・ソヨンと、池澤春菜が、作家団体の代表をする苦労や翻訳と執筆の相互影響、複業の秘訣や大好きなSF作品などについて語り合います。

座談会「日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性」では、ソ・ユンビン、ファン・モガ、へ・ドヨン、ミン・ジヒョン、藤井太洋、そして司会の堀川夢が会場からの意見や質問も交えながら、楽しく、そして真剣に討論しました。

そして、最後に収録された短編小説、かかり真魚「エコーズ」は、〈日韓SF交換日記〉への応答として書かれたSF短編小説です。

SF、フェミニズム、みみっちい喧嘩、醜くなる自由…… 韓国と日本、社会と個人、フィクションと現実。あなたとわたしの間で呼応する、よりよい明日を目指すためのたくさんの言葉たちを詰め込んだ一冊、ぜひお手に取ってみてください。

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』
編:日本SF作家クラブ・韓国SF作家連帯
イ・コンヘ/イ・サンファ/イ・シド/イ・ソヨン/ソ・ユンビン/チェ・イテク/チョン・ソヨン/チョン・ドギョム/チョン・ヘジン/チョンイェ/デイナ/ファン・モガ/へ・ドヨン/ホン・ジウン/ミン・イアン/ミン・ジヒョン/揚羽はな/池澤春菜/井上雅彦/白井弓子/上田早夕里/かかり真魚/吉良佳奈江/立原透耶/田場狩/中野伶理/長谷敏司/林譲治/廣岡孝弥/藤井太洋/堀川夢/溝渕久美子/八島游舷
サイズ:四六判
ISBN:978-4-911294-09-3
ページ数:304ページ
刊行:2026年5月1日
価格:2700円+税
デザイン:アトリエヤマグチ
装画:otama

収録しているコンテンツ
講演:フェミニズムとSFは韓国でどう出会い、広がったのか ──ミン・ジヒョン
日記:韓国と日本のSF作家24人12組による交換日記
対談:わたしとあなたのエンカレッジ! ──チョン・ソヨン×池澤春菜
座談会:日本から見た韓国SF、韓国から見た韓国SF ──フェミニズム、男性性、兵役、連帯の可能性
小説:かかり真魚「エコーズ」

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立役者のお一人、ファン・モガさんにインタビュー

『日韓SF交換日記 あなたの言葉を聞くための対話』は、韓国SF作家連帯と日本SF作家クラブの交流企画の一環として始まりました。企画の立案から書籍の刊行まで、中心的な役割を果たしたうちの一人がSF作家のファン・モガさんです。

ファン・モガさんは、2019年、他人の記憶が取引される仮想空間を舞台にした短編「モーメント・アーケード」で第4回韓国科学文学賞中短編部門で大賞を受賞しデビュー。その後も社会におけるさまざまな不平等や問題をSF世界に昇華しつつ、人々の生へとまっすぐ目を向けた作品を発表しています。

『日韓SF交換日記』では、日本SF作家クラブと協力してそれぞれの作家の作風や経歴に合わせて『日韓SF交換日記』の十二組の著者をマッチングし、通訳や調整役など、企画に欠かせないコミュニケーションの役割を積極的に担ってくださいました。

そんなファン・モガさんに、この企画に込めた思いや企画に至った経緯、韓国の文化事情についてお聞きしたインタビューを、ウェブマガジンKaguya Planetに掲載しています。

『日韓SF交換日記』に、SF作家の中野伶理さんがフィクションで応える

また、〈日韓SF交換日記〉への応答として書かれたSF短編小説、中野伶理「表裏世界のアナグノリシス」をウェブマガジンKaguya Planetに公開しています。「表裏世界のアナグノリシス」は、『日韓SF交換日記』の中でも、チョン・ドギョム「発見した人たちに捧ぐ」への応答として書かれた作品。女性差別的な事件を通して、世界は必ずしも正しくはないのだと気がついてしまった人たちに捧げる物語です。(日記とは独立した小説としてお読みいただけます)。

 

長谷敏司さんに更に聞く、「創作と病気と老いと介護」

『日韓SF交換日記』には、SF作家の長谷敏司さんとミン・イアンさんがそれぞれの難病の体験と創作活動について綴った、長谷敏司「病気と創作」とミン・イアン「あなたのためのエッセイ」を収録しています。

ウェブマガジンKaguya Planetではこれと関連して、長谷敏司さんのロングインタビューを掲載。難病である潰瘍性大腸炎にかかったご自身の経験や、父親の介護をしていたご自身の経験を反映したSF小説を書かれている長谷さんに、物語を通した病気や死との向き合い方、そして重たいテーマをSF作品として表現するための力やスキルについてお聞きしました。

VG+編集部

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