川野芽生の掌編・短編小説の朗読ライブが開催
photo: 荒川れいこ (zoisite)
2025年2月23日(日)、24日(月・祝)の2日間、東京都御茶ノ水のRITTOR BASEで、川野芽生『月面文字翻刻一例』(書肆侃侃房)に収録された掌編や短編の朗読ライブ「月面文字朗読一例」が開催された。朗読者は、川野本人と「舞台芸術創造機関SAI」所属の俳優、ぜん。Jammy、Tokageによるオリジナル音楽に乗せて、音楽系出版社リットーミュージック運営ならではの、こだわりの高音質空間で小説を味わう、贅沢な体験だ。
現在アーカイブ配信を販売中。3月7日まで、こちらから購入することができる。
物語の場に臨席する贅沢な体験
photo: 荒川れいこ (zoisite)
全4回行われた公演のうち、23日に上演された「掌編選集」では、『月面文字翻刻一例』表題作の他、「砂の両手」、「棲まうもの」、「不寝番」、「遠き庭より」、「いつかゆく水辺へ」「さよなら鳥たち」「桜前線異状なし」が朗読された。
photo: 荒川れいこ (zoisite)
朗読を聴くと、普段文字を目で追って読むときにはうっかり見落として(聴き落として?)しまうかもしれない端正な言葉の響きが、音を手に入れて体の中に染み渡るような、物語に没入する体験ができる。今回の上演では、とくに「遠き庭より」の、一段一段階段を降り、庭に向かい、色とりどりの芳しい薔薇を愛でる描写がとても心地よく、目を閉じて聴くと目の前に薔薇園が広がっているようだった。
photo: 荒川れいこ (zoisite)
また、声質のまったくちがう川野とぜんの声は、ときに老人と子どもの語りとなり、ときに不穏な鳥の鳴き交わしとなる。二人で朗読された「さよなら鳥たち」の奥行きは、とくに印象的だった。
聴き入っている最中にふと目を開けると、舞台上のテーブルに置かれた羽根が照明に合わせて色をうつろわせ、天井に螺旋状に吊り下げられたクリスタルの飾りがきらめいている。百物語、千夜一夜物語、デカメロン、ディオダディ荘の怪奇談義……ひとが物語を語る、ほかのひとがその場に集まり、息を詰めて物語を聴く、という営みの豊かさと、そこで起こる摩訶不思議な出来事のかずかずに思いを馳せながら、朗読会を楽しんだ。
photo:荒川れいこ (zoisite)
アーカイブ配信販売中! ロングレポートはマガジン『Kaguya Planet』に掲載予定
「月面文字朗読一例」は、こちらからアーカイブ配信を購入して視聴することができる。
また、詳細なライブレポートは4月発売のマガジン『Kaguya Planet No.5』に掲載予定。
「月面文字朗読一例」開催概要
開催日時:2025年2月23日 (日) 開演13:00 (掌編選集)/19:00 (短編集)
2025年2月24日 (月・祝) 開演13:00 (掌編選集)/19:00 (短編集)
出演:川野芽生、ぜん
音楽:Jammy、Tokage
原作:川野芽生「月面文字翻刻一例」(書肆侃侃房 刊)
構成:嬉野ゆう(PSYCHOSIS)
音響:嬉野ゆう
照明:千草ちゆ
配信撮影:國崎晋(RITTOR BASE)
宣伝美術:森永理科(PSYCHOSIS)
写真:嬉野ゆう/荒川れいこ(zoisite)/千草ちゆ
企画制作:RITTOR BASE/嬉野ゆう
制作協力:書肆侃侃房/PSYCHOSIS/舞台芸術創造機関SAI/琴音/大津澄怜/木原春菜
配信アーカイブはこちらから(2025年3月7日まで購入・視聴可能)