映画『スーパーマン』公開中
ジェームズ・ガン監督がおくる新たな『スーパーマン』が2025年7月11日(金) より劇場で公開されている。公開初週末の全世界興収は早くも2億2,500万ドルの製作費に迫る2億1,700万ドル(約320億円)という大ヒットスタートを切っており、日本でも週末の興行収入で洋画No.1を狙える動員を記録している。
『スーパーマン』は、ジェームズ・ガンがDCスタジオの共同会長兼CEOに就任してから初めて公開された、DCユニバース第1弾の映画作品だ。ユニバース全体の世界観が作り直され、『スーパーマン』では、人類は300年前からメタヒューマンと呼ばれる特殊能力を持った存在と共存しているとされている。
中でも今回注目したいのは、劇中での活躍で人気急上昇中のミスター・テリフィックだ。実写映画作品では初登場となったミスター・テリフィックだが、今後、単独作品を含むスピンオフでの登場はあるのだろうか。
以下の内容は、映画『スーパーマン』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『スーパーマン』のミスター・テリフィック
ジャスティス・ギャングの頭脳
完全新作映画『スーパーマン』におけるミスター・テリフィックは、ヒーロー集団のジャスティス・ギャングに所属している。ジャスティス・ギャングは一見、グリーン・ランタンがリーダーのように見えるが、演じたエディ・ガテギによると、グリーン・ランタンは自分がリーダーだと思い込んでいるだけだという。ジャスティス・ギャングの頭脳としてチームを支えているのがミスター・テリフィックだ。
ミスター・テリフィックはTスフィアと呼ばれる空飛ぶ球体を操り、実に洒落た戦い方を見せる。顔面の中央を「テリフィック=Terrific(素晴らしい/恐ろしいの意)」のイニシャルである「T」の形に黒く塗っているように見えるが、原作コミックでの設定はこれはナノテクノロジーを使用したマスクである。ジャケットには「フェアプレイ」という文字が書かれている。
中でもハイライトはテリフィックとロイスがポケット・ユニバースへ向かうシーンで、テリフィックはロイスをバリアで守りながら次々と敵を倒していく。この時流れる曲はNoah and the Whaleの「5 Years Time 」(2007) で、「太陽が私たちの身体に降り注ぐ」と歌われる陽気な歌だ。
ミスター・テリフィックことマイケル・ホルトは、スーパーマンが侵略者として槍玉に挙げられ、窮地に陥った時もスーパーマンを見捨てなかった。ロイスと共に様子を見に行ってくれるのだが、ちゃっかり最後までスーパーマンを助けてポケット・ユニバースの後始末まで買って出ている。真面目に見えて自分の正義を貫くタイプの人物なのだ。
DC版アイアンマン?
ミスター・テリフィックが所属するジャスティス・ギャングは、『ワンダーウーマン1986』(2020) のヴィランでもあったマクスウェル・ロードがスポンサーになっている。おかげでジャスティス・ギャングにはお揃いのユニフォームもあって、ホール・オブ・ジャスティスという立派な基地もあるのだが、実はミスター・テリフィック自身もホルト・インダストリーズという企業を経営している。
『スーパーマン』の劇中では犬のクリプトがTスフィアをオモチャだと思って壊してしまうシーンがあるが、ミスター・テリフィックはTスフィアの高額さを嘆いていた。ミスター・テリフィックの乗り物であるTクラフトもロイス達に自由に使わせている様子を見るに、これらのガジェットはおそらくミスター・テリフィックの持ち出しなのだろう。
ムック本『Begin+ 完全新作スーパーマン&DC大特集』に収録されているインタビューでは、ミスター・テリフィック役のエディ・ガテギは、「DC版のアイアンマンを思い浮かべてほしい」と、ミスター・テリフィックという人物について解説している。天才的な頭脳と経営手腕、そして戦闘スキルの三拍子が揃ったスーパーヒーローがミスター・テリフィックなのだ。
ミスター・テリフィックのスピンオフが検討中
構想中の二つのドラマシリーズ
『スーパーマン』では一際存在感を見せた魅力たっぷりのミスター・テリフィックだが、今後もDCユニバースでその姿を見ることはできるのだろうか。米The Wall Street Journalによると、ジェームズ・ガン監督は『スーパーマン』を起点とした二つのスピンオフを構想しているという。
一つはミスター・テリフィックを主人公としたもので、もう一つはデイリー・プラネット社のジャーナリストであるジミー・オルセンを主人公とした作品だ。共に映画『スーパーマン』で活躍を見せた二人だが、映画ではなくドラマシリーズの制作が検討されているそうだ。
映画『スーパーマン』ではミスター・テリフィックはポストクレジットシーンにも登場。テリフィックが閉じた次元の裂け目の“ズレ”についてスーパーマンが言及すると、ヘソを曲げて立ち去ってしまうというコミカルなシーンが挿入された。
演じたエディ・ガテギが米The Hollywood Reporterに語った内容によると、このシーンはポストクレジットシーン用に撮影されたものではなく、本編の一部として撮影されたものだったという。この判断からも、ジェームズ・ガン監督がミスター・テリフィックをスーパーマンに次ぐ印象的なキャラとして扱おうとした意図が読み取れる。
ミスター・テリフィックの過去
では、ミスター・テリフィックのスピンオフドラマが制作されるとして、その内容はどんなものになるのだろうか。米Entertainment Weeklyでは、エディ・ガテギはミスター・テリフィックが妻を亡くした過去について語っている。
彼は正義を信じる無神論者です。彼は妻を失い、知識に意味を見出しました。宇宙は残酷かもしれないが、知性・科学・イノベーションが宇宙を良くすることができると考えたのです。彼は妻を失った絶望に屈するよりも、希望となることを選びました。
天才で経営者でもあるミスター・テリフィックがヒーローになった背景には、妻の死があったのだ。『Begin+ 完全新作スーパーマン&DC大特集』では、テリフィックの妻は事故で亡くなったということにも言及されている。
また、エディ・ガテギはミスター・テリフィックは感情面で問題を抱えているが、その理由として妻を亡くした心の傷と向き合っているという背景を明かしている。確かに映画『スーパーマン』のミスター・テリフィックは、少々気難しい雰囲気があったが、その背景には妻の死があったのだろう。ガテギは「完璧ではない、欠点のある人間」とも話しており、スーパーマンと同様の脆さを抱えていることが分かる。
ミスター・テリフィックのスピンオフが作られるなら、妻を失った過去にフォーカスした作品になる可能性もあるだろう。頭脳も財力も兼ね備えているテリフィックが、なぜスポンサー付きのチームでヒーローをやることになったのかという背景も気になるところだ。
アニメではジャスティス・リーグに所属することもあり、ドラマ『アロー』(2012-2020) ではマイケル・ホルトをベースにしたカーティス・ホルトが登場(このバージョンのテリフィックはゲイの人物として描かれた)し、チーム・アローに所属した。エディ・ガテギはわずか3人で構成されるジャスティス・ギャングを「『寄せ集め感』のあるグループ」と形容しており、今後テリフィックは別のグループに所属することになるかもしれない。
というのも、8月22日からMax on U-NEXTで配信を開始するドラマ『ピースメイカー』シーズン2には、ジャスティス・ギャングからグリーンランタンとホークガールが登場することが明かされている。しかし、配信前の段階ではミスター・テリフィックの登場は予告されていない。『スーパーマン』でもスーパーマンを助けるために単独行動に出たテリフィックが、ジャスティス・ギャングを離れている可能性もあるだろう。
また、妻の死を乗り越えてヒーローとして活動するミスター・テリフィックの存在は、スーパーマンにとっても重要になるはずだ。旧DCEUでも示唆されたように、スーパーマンはロイスの死によって暴走したり悲劇を生んだりする展開も知られている。テリフィックは愛する人を失った経験を持つヒーローとして、スーパーマンにとってのキーマンになる展開もあり得るかもしれない。
スピンオフの条件は?
様々な展開が考えられるが、一方でジェームズ・ガン監督のDCユニバースは、良い脚本が出来てから制作にゴーサインが出るという方針を採用している。プロジェクトありきで制作が進行するわけではないため、一つの作品でサブキャラクターの人気が出たとしても、単独作の制作までは時間を要するという点はDCUのネックではある。
The Hollywood Reporterでは、エディ・ガテギはミスター・テリフィックの今後については、「この映画(スーパーマン)の成功を待っている」ところだと話している。やはり「脚本が準備できていないプロジェクトが急いで制作に入ることはない」というジェームズ・ガン監督の意向にも触れている。
一方で、ガテギ自身は将来について「楽しみにしている」とし、DCユニバースのスーパーマン映画や他の映画でミスター・テリフィックを様々な面で探求したいと意欲を示している。『スーパーマン』の好スタートも合わせて考えれば、誰もが期待しているミスター・テリフィックの再登場は、脚本さえ揃えばいつでも実現できるだろう。
「X-MEN」での不遇を乗り越えて
ミスター・テリフィックを演じたエディ・ガテギも苦労人だ。映画『スーパーマン』公開時点で46歳を迎えるが、映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011) では、環境に応じて身体を変化させるミュータントのダーウィンことアーマンド・ムニョス役を演じたことで知られる。
エディ・ガテギがThe Hollywood Reporterに語ったところによると、同作の数少ない黒人キャラであるダーウィンが早々に死んでしまう展開について、当時ガテギはエージェントを通して問題があると考えていると伝えたという。製作陣は、ダーウィンはコミックと同じように後に復活させると説明したそうだが、実際には同作限りのキャラとなってしまった。ガテギはこの件については何年も前に和解したと話しているが、スーパーヒーロー映画で主要な役割を得てカムバックを果たすまでに14年を要した。
ジェームズ・ガン監督はミスター・テリフィックのキャスティングに最も苦労したといい、200人以上をオーディションした末にエディ・ガテギが選ばれたという。ガテギがオーディション用の動画を送った翌日、ジェームズ・ガン監督からInstagramのDMで「君はこのオーディションを仕留めたね」というメッセージを受け取ったのだとか。
そしてジェームズ・ガン監督は黒人キャラクターのミスター・テリフィックに大きな見せ場を用意し、多くのファンがその虜になった。エディ・ガテギとミスター・テリフィックは、きっと新生DCユニバースを牽引するヒーローの一人になってくれることだろう。ミスター・テリフィックの今後の活躍にも期待しよう。
映画『スーパーマン』は2025年7月11日(金) より大ヒット公開中。
本記事の筆者がドラマ『ピースメイカー』のコラムを書いた『Begin+ 完全新作スーパーマンとDC大特集』には、『スーパーマン』の監督・キャスト&スタッフ総勢16名のインタビューやキャラ紹介、充実のコラムを収録。好評発売中。
『DC シネマティック・ユニバース DC映画大全』も発売中。
Source
The Wall Street Journal / Entertainment Weekly / The Hollywood Reporter / 『Begin+ 完全新作スーパーマンとDC大特集』
映画『スーパーマン』ラストの解説&考察&感想はこちらの記事で。
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