ネタバレ解説&感想 映画『マッチング』ラストの意味は? 真犯人と吐夢の正体、家族の秘密を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想 映画『マッチング』ラストの意味は? 真犯人と吐夢の正体、家族の秘密を考察

©2024『マッチング』製作委員会

2024年公開の映画『マッチング』

内田英治が原作・脚本・監督を手がけた映画『マッチング』は、2024年2月に全国公開された作品。主人公・唯島輪花を土屋太鳳、マッチングアプリで輪花と出会う永山吐夢をSnow Manの佐久間大介、アプリ運営会社のプログラマー・影山剛を金子ノブアキが演じている。

本作が描くのは、マッチングアプリによる出会いをきっかけに、輪花が連続殺人事件と家族の秘密に巻き込まれていくサスペンス・スリラーだ。今回は映画『マッチング』について、特にラストの展開に焦点を当ててネタバレありで解説&考察し、感想を記していこう。以下の内容は映画『マッチング』の結末のネタバレを含むので、必ず本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、ストーキング、自殺、幼児虐待に関する描写を含むのでご注意を。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『マッチング』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『マッチング』ネタバレ解説&考察

アプリ婚連続殺人事件

映画『マッチング』で描かれるのは、マッチングアプリで出会って結婚した夫婦、または結婚間近のカップルが次々と殺されるという事件だ。一方で、ウェディングプランナーとして働く唯島輪花は、同僚の伊藤尚美に勧められ、半ば強引にマッチングアプリ「ウィルウィル」に登録することになる。

そして、輪花がマッチングしたのは永山吐夢という人物だった。会う約束を取り付けるメッセージは尚美が勝手に送っているが、二人はマッチング率97%と表示され、「いいね」を押したのは輪花自身だった。

水族館で初めて会った吐夢は暗く、出会っていきなり「生まれてすぐに駅のコインロッカーに捨てられた」と言い出し、自分と輪花は運命で繋がっていると主張する。その後も、吐夢は大量のメッセージを送り、輪花の自宅にまで姿を見せるようになる。

輪花が吐夢のストーカー行為に悩まされる中、ウィルウィルで出会って結婚した夫婦が次々と殺害される。被害者となった夫婦は鎖でつながれ、顔には十字状の傷が刻まれていた。しかも、被害者たちはいずれも輪花の勤務する結婚式場で式を挙げていたことから、警察は輪花と事件とのつながりを疑い始める。

そこで輪花が頼ったのが、ウィルウィルを開発したプログラマーの影山剛だった。異様な吐夢に対し、影山は穏やかで、輪花の話を聞いてくれる頼れる男性として登場する。映画『マッチング』は、見るからに怪しい吐夢と、輪花を支える影山を対照的に配置し、ストーリーを進めていくことになる。

二人の死と犯人の正体

一方、『マッチング』のもう一つのメインストーリーが、唯島家が抱える秘密の過去に関するものだ。輪花は幼い頃に母が去り、父・唯島芳樹と二人暮らしだったが、ある時を境に芳樹のもとに不審な電話がかかってくるようになる。輪花と同じく芳樹もストーキングに遭い始めるのだ。

芳樹は、かつて「マリア」を名乗る女性と不倫していたことを輪花に告白。母が家族を捨てたという認識が揺らぎ始めると、輪花が芳樹を突き放した直後に芳樹は首吊り遺体で発見される。さらに、輪花にマッチングアプリを勧めた尚美が吐夢と接触した後、マンションから転落して死亡する。

次々と輪花の大切な人が死んでいく状況で、輪花に寄り添ったのはやはり影山だ。だが、影山の優しさは輪花を支配するための演技だった。影山は、実は輪花の父の不倫相手・節子の息子で、芳樹と輪花の親子に復讐を誓っていたのである。

影山が輪花を見つけられたのは、輪花がウィルウィルに登録した自撮り写真の背景に、赤い服の人物と四葉のクローバーが描かれた絵が飾られていたからだ。赤い服は節子が気に入っていたものだ。四葉のクローバーの花言葉の一つは「復讐」である。

小説版では、節子は「影山家の復讐」を果たすために輪花に四葉のクローバーを渡したとされている。かつて節子は幼い輪花に四葉のクローバーを渡していたが、それを目印として将来息子が芳樹の娘を見つけられるようにしておいたのだろう。

ある日、節子が芳樹のことを刺して逮捕され、影山は施設に送られることになった。芳樹を刺した節子が「兄弟ができるのよ」と言っていることから、芳樹と節子の間に子どもが出来たことで二人は揉め、節子が芳樹を刺すに至ったのだろう。やはり芳樹もなかなかにクズである。

映画を観ていると、影山が輪花の自撮りを最初に見たのは、序盤でウィルウィルの登録者の情報を覗き見していた和田を注意した時だと思われる。だが、原作小説では、ウィルウィルとナガタウェディングのタイアップ企画会議に主任コーディネーターの輪花を参加させるよう提案したのは影山だったとされており、輪花がウィルウィルに登録した直後に影山が輪花を発見、タイアップ企画を進めて接近した可能性もある。

ちなみに小説では覗き魔の和田は連続殺人事件の第一容疑者となり降格、輪花のストーカーになったが、何者かから制裁を受けている(後述)。映画では主要キャラから外れることになったが、その分命拾いしたキャラでもある。

そして、影山がアプリ婚連続殺人事件の犯人であることも示唆される。母の節子はキリスト教徒で、「マリア」という名もキリストの母の名から取られたものだと思われる。被害者の顔につけられていた切り傷も「×」ではなく、十字架だった。

そして、影山が輪花に復讐を果たそうとしたところで登場したのが吐夢である。ここで一度、吐夢についての印象が反転する。ストーカーだった吐夢が命を懸けて輪花を救い、誠実に見えた影山が復讐犯だったことが判明するのだ。吐夢が輪花を助けると、最後は輪花が影山を倒して制圧。影山は逮捕されるが、物語はこれで終わらなかった。

映画『マッチング』ラストをネタバレ解説&考察

二人の母

輪花は、母も父も同僚も支えとなっていた人も失った。そんな中、吐夢からまだ終わっていないという旨のメッセージを受け取った輪花は、吐夢とともに影山の母・節子に会いに行く。

そこで輪花は、かつて節子からもらった四葉のクローバーのしおりを見せ、父がしたことを謝罪するとともに、愛する人たちを奪ったことを断罪する。だが、車椅子に乗る赤い服の女性は反応を見せない。その人物は節子ではなかったのである。

節子の正体は、車椅子の女性の世話をしていた人物だった。節子を演じるのは『スケバン刑事』(1985) などで知られる斉藤由貴で、世話係としての優しい表情から、影山節子としての恐怖の表情まで、さすがの演技を見せている。

節子は芳樹を殺したことは否定するが、一方で芳樹は車椅子の女性の姿を見て死にたくなったのではないかと語る。赤い服を着た車椅子の女性は、25年前に行方不明となった芳樹の妻で輪花の母、美知子だったのである。

輪花は母が家を出て行ったと聞かされていたし、小説版では母に裏切られたと感じているということも記されている。家族であっても裏切られるのだという思いが、輪花の中に他者との壁を作っていたのだろう。けれど、美知子は娘を捨てたのではなかった。節子に連れ去られ、長年にわたって監禁されていたのである。

節子は美知子の世話をする善良な介護者を装いながら、実際には彼女から自由も家族も奪った加害者だった。一方、赤い服を着せられ、正体不明の不気味な女性として登場していた美知子は被害者だったのだ。

節子は輪花にも刃物を向けるが、吐夢が身を挺して輪花を守る。節子は逮捕されるとともに、輪花と吐夢の距離は近くなり、輪花は助け出した美知子と一緒に暮らすことになった。輪花には、母と吐夢という大事な存在が残されたのだった。

吐夢と輪花の本当の関係

だが、これでもまだ物語は終わらない。節子との面会に現れた吐夢は、自身が生まれて間もなくコインロッカーに捨てられたこと、輪花のあとを追っていると、自分の母親にたどり着いたことを節子に明かす。

コインロッカーに捨てられた吐夢には、四つ葉のクローバーが入ったロケットペンダントが残されていた。節子は芳樹を刺した時に、二人の間に子どもができたこと、影山の弟が生まれることを示唆していた。節子が産んだのは吐夢で、吐夢の母は節子だったのである。

つまり、吐夢の父親は輪花の父・芳樹ということでもある。吐夢と輪花は父親を同じくする異母姉弟だったのだ。なお、影山も節子の息子だが、節子と芳樹が出会う前に違う男性のもとに生まれた子どもであり、唯島家とは血がつながっていない。関係を整理すると、影山と吐夢は母親が同じ異父兄弟、輪花と吐夢は父親が同じ異母姉弟となる。

影山が輪花を探していたように、吐夢もまた自分を捨てた母親と、自分につながる家族を探していた。吐夢が輪花とマッチングしたのは、アルゴリズムが偶然選んだ運命の相手というだけではない。輪花の背後にある家族関係へ吐夢自身が引き寄せられていたのである。

しかし、輪花は吐夢との血縁関係を知らない。自分を二度も救ってくれた吐夢に心を許し、最後には自ら彼の手を取る。輪花にとって吐夢は、恐ろしいストーカーから、自分を守ってくれた大切な人へと変化していた。

ラストの意味は?

ところが、映画『マッチング』では、輪花が知らない更なる事実が観客に提示される。影山が自供したのは、アプリ婚連続殺人の5件目と尚美の殺害だけだった。なお原作小説では、影山は失踪した和田の殺害も認めている。

さらに原作小説では、吐夢は節子と面会した際に、心の中で節子が誰も殺していないことを認めている。アプリ婚連続殺人の1件目から4件目は吐夢による犯行だったのだ。

5件目の殺人の被害者は、輪花が式を担当した恩師の片岡とその妻だ。輪花はかつて片岡に想いを寄せており、その片岡が死んだことで輪花は警察から疑われ、マスコミに追われることになった。そこに影山が輪花を守るようにして寄り添うことで、輪花を支配したのである。

なお、小説版では、影山が輪花の悪評を流して週刊誌を利用したことも指摘されている。また、輪花の同僚だった尚美については、輪花に近づけなくなった吐夢が影山の正体について尚美に教え、尚美がそれを輪花に伝えようとしたところ、スパイアプリで輪花のスマホを乗っ取っていた影山が先回りして尚美を殺害したということが、小説版では詳細に記されている。

そして、影山が拘束された後にも、同じ手口による6件目の事件が起きる。1件目から4件目、そして6件目の夫婦を殺した人物は別に存在していたのだ。映画『マッチング』のラストでは、公衆トイレで凶器を洗う吐夢の姿が映し出され、吐夢が殺人犯であることが示される。

吐夢と輪花は水族館で手を繋ぐが、そこで泳ぐおよぐミズクラゲの器官は四葉のクローバーが浮かび上がっているように見える。まるで四葉のクローバーで繋がれた二人の運命を暗示しているかのようだ。そして、映画『マッチング』は吐夢の不敵な笑みとともに幕を閉じている。

映画『マッチング』ネタバレ感想&考察

反転する愛

映画『マッチング』のキャッチコピーは、「ラスト1秒、あなたの愛が反転する」だった。つまり観客には「反転する」という情報はもたらされているので、重要なのはその反転がどこで止まるか、ということになる。

当初はストーカーとして恐怖の存在だった吐夢、寄り添ってくれる存在だった影山は、ともにその印象を反転させる。輪花の唯一の家族だった父・芳樹も過去の罪が明らかになる。「マリア」の正体かに思われた車椅子の女性は輪花の母・美知子で、親切そうな世話係が節子だった。

それぞれのキャラクターが二面性を持ち、その印象を反転させていく。ラストで輪花は、自分を守ってくれた人物を信じることを選ぶ。しかし観客は、その人物が最も重大な秘密を隠していることを知っている。吐夢が殺人鬼であること、二人が血のつながった姉弟であることは、輪花は知らされずに本作は幕を閉じるのである。

小説版で明かされた事実

一方で、映画『マッチング』では吐夢が明確に殺人犯であるという証拠は示されなかった。その答えは小説版で出ている。小説版では、アプリ婚連続殺人の殺害シーンが明確に描かれ、吐夢が犯人であることが示される。

吐夢はマッチングアプリを通して結婚したカップルを拘束した上で、二人にどちらが死ぬべきかを選ばせ、二人が互いに迷うことなく自分自身を選ばなければ殺す、というルールで殺人を行なっていた。その背景にはキリスト教由来の思想があり、「出会いは自然でなければならない」という考えと、自分を犠牲にできない偽りの愛には裁きを与えなければならないという考えが、小説では示されている。

コインロッカーに捨てられ、家族から愛される経験を持たなかった吐夢は、無条件に信じられる愛を知らなかった。だからこそ、命を差し出せるほど極端な自己犠牲を「本物」と考えるようになったのだろう。

輪花への執着も同じである。吐夢は輪花の意思や恐怖を尊重せず、一方的にメッセージを送り、行動を監視し、危険から守ろうとする。あくまで自分の価値判断で愛を証明したり、示したりしようとするのだ。

映画『マッチング』では、影山と吐夢の母・節子がキリスト教の信者で、それが由来でネットで「マリア」という名前を使っていたことが示唆された。気になるのは、吐夢が生まれてすぐに節子に捨てられたにもかかわらず、吐夢もまたキリスト教の思想とともに活動し、被害者に十字架の傷をつけていたことだ。その疑問への答えを示す吐夢の出生の秘密は、続編『マッチング TRUE LOVE』で描かれることになる。

続編『マッチング TRUE LOVE』へ

『マッチング』はマッチングアプリの恐怖を描いた作品に見えて、最終的には「愛する相手のことを、本当に知ることはできるのか」という問いへたどり着く。プロフィールを確認し、直接会い、時間を過ごしても、その人物が見せていない顔までは分からない。

輪花が出会ったのは、ストーカーで、殺人犯で、命の恩人で、血のつながった弟だった。その全てが永山吐夢という一人の人間である。

愛する相手の真実を知ったとき、その愛は終わるのか。それとも、全てを知った上でなお相手を選ぶことが「真実の愛」なのか。映画『マッチング』がラスト1秒で反転させた問いは、そのまま続編『マッチング TRUE LOVE』へと持ち越される。

続編の映画『マッチング TRUE LOVE』は2026年9月25日(金)より公開中。

「マッチング」公式

小説『マッチング』は発売中(Amazon)。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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