ネタバレ解説&感想『映画ラストマン -FIRST LOVE-』最後の意味は? ドラマとの繋がりを考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『映画ラストマン -FIRST LOVE-』最後の意味は? ドラマとの繋がりを考察

©2025映画「ラストマン」製作委員会

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』公開

2023年にTBS「日曜劇場」枠で放送され、全話12%超えという高視聴率を記録したドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』。その映画版である『映画ラストマン -FIRST LOVE-』が2025年12月24日(水) より全国の劇場で公開された。監督は平野俊一、脚本は黒岩勉が手掛ける。

『ラストマン』は、福山雅治演じる目が見えないFBI捜査官・皆実広見と、大泉洋演じる孤高の刑事・護道心太朗の二人によるバディコップの活躍を描く。毎回、現実の社会課題を反映した事件を展開しつつ、皆実と心太朗(シンディ)の過去に徐々に迫っていくストーリー、何より二人の絶妙にチグハグなコンビが人気を呼んだ。

12月28日(日) には、スペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』の放送も決まっている『ラストマン』。映画版ではどのような物語が描かれたのだろうか。今回はネタバレありでラストの展開を中心に解説し、感想を記していこう。なお、以下の内容は結末のネタバレを含むため、必ず本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、『映画ラストマン -FIRST LOVE-』の結末に関するネタバレを含みます。

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』ネタバレ解説

時系列は?

ドラマ版の『ラストマン』では、皆実広見と護道心太朗は血の繋がった兄弟であったことが明らかになった。元々は心太朗の父が皆実の両親を殺したと思われていたが、再捜査の結果、皆実の養父が二人の母を殺し、後に心太朗の養父となる護道清二が皆実の養父を殺害、二人の実父・鎌田國士が罪を被ることで、二人は離れ離れで暮らすことになったという背景が明らかになった。

ドラマのラストでは皆実がFBIとしてアメリカに帰ることになったが、今度は心太朗が交換研修生としてワシントンに行くことが明かされた。『映画ラストマン -FIRST LOVE-』の冒頭では、皆実と心太朗のコンビがワシントン、そしてニューヨークでも活躍する姿が描かれている。

そして、『映画ラストマン -FIRST LOVE-』では、2025年12月28日(日) に放送されるスペシャルドラマ『ラストマン-全盲の捜査官- FAKE/TRUTH』での事件もダイジェストで描かれる。二人は東京でもう一山こなし、映画版『ラストマン』で新たな事件を担当することになるようだ。

この作りは非常に実験的で、2024年に同じく映画とスペシャルドラマが公開された「日曜劇場」作品「グランメゾン東京」シリーズは、連続ドラマ→スペシャルドラマ→映画と、時系列順に作品が公開されていた。「ラストマン」では時系列が前のスペシャルドラマを映画公開後に放送することで、観客をスペシャルドラマに誘導しつつ、スペシャルドラマを観た後の公開二週目に映画『ラストマン』をもう一度観るというパターンにまで誘導しているように思える。

映画は公開初週末の成績が重要とされるが、興収数十億円以上の大ヒットを狙うなら二週目以降の成績とリピート鑑賞も鍵になる。『映画ラストマン』の冒頭わずかなシーンだけでも「日曜劇場」ブランドとしての自信と、テレビをうまく利用した巧みな戦略が垣間見えた。

ユン、京吾、北海道

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』では、心太朗と佐久良がよりを戻していたり、新たな交換研修生としてロウン演じるクライド・ユンが来日したりと、テンポよく様々な新要素が紹介されていく。そんな中、宮沢りえ演じるナギサ・イワノワ月島琉衣演じる娘のニナ・イワノワとロシアから亡命するにあたって、元恋人の皆実の警護を依頼する。

武装集団に追われるナギサとニナを第三国に引き渡すまで保護するため、皆実は東京から心太朗を召集。永瀬廉演じる泉とユンの新コンビ、FBIと北海道県警と共に広大な北海道での要人保護もとい逃亡劇が幕をあける。

『映画ラストマン』では、心太朗と共に育った義理の兄の護道京吾が北海道県警本部長に「栄転」している。ドラマ版では護道京吾は警察庁次長で次期警察庁長官の最有力候補だったが、父・清二が逮捕されたことで秋田県警本部長に異動となり、事実上の失脚を味わっていた。相変わらずポーカーフェイスの京吾だが、映画版では心太朗と正義のためにしっかり動いてくれている。

一方、ナギサとニナの警護チームの動きが二人を狙う雇われのテロ集団ヴァッファに流れており、内部にスパイがいるというミステリ要素も本作の見どころの一つ。いっちばん怪しいのは尊大で気ままな態度を見せるユンで、けれど一生懸命なだけにも見える(心太朗が東京の時点でそう評価していたのは流石だ)絶妙な演技をロウンが見せている。

また、北海道を舞台にした『映画ラストマン -FIRST LOVE-』では、映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(2024) を想起させるように北海道の様々な名所や食べ物が紹介される。同作にも声優で出演した北海道出身で実兄が函館市長、北海道テレビのバラエティ『水曜どうでしょう』から全国的な人気を得た心太朗役の大泉洋が北海道愛を見せる姿もメタ的なギャグになっていて面白い。

皆実の過去とナギサの秘密

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』の最も重要な要素が、皆実広見の大学時代を描く過去パートと、ナギサの亡命をめぐる国際パートだ。アメリカのブリストン大学で出会った皆実とナギサは、共に幸せな時間を過ごしており、若い頃の皆実を濱田龍臣ナギサを當真あみが演じ、見事な演技を見せている。

ナギサは皆実と別れてロシア政府の研究機関で働き、画像解析ツールの開発を進めたが、骨格や人相から個人を特定できるその技術は政府により軍事利用されてしまう。共に開発していた妹が組織を抜けようとしたが殺されてしまったことで、ナギサは娘と亡命することを決意したのだった。

目が見えない皆実は最新の技術を利用して高難度の捜査もこなしているが、技術は軍事にも利用され得るという現実を映し出す設定だ。さらに残酷な事実は、ナギサがヴァッファに連れ去られた後に発覚する。

そもそもナギサと思われていた人物はナギサではなく妹のシオリで、狙われていた開発者Xの正体はシオリの娘ニナだったのである。確かにラッキーピエロではヴァッファはナギサではなく真っ直ぐにニナに向かっていた。『映画ラストマン』では、紺吉有限会社が手がけた印象的なアニメーション追ってくる魔の手から逃げる母娘の姿が描かれるが、この映像はニナの主観で描かれており、早い段階からニナが開発者であったことは示唆されていたのだ。

同じく皆実も、ナギサがシオリであることは北海道で再会した時点で気づいていたが泳がせていたのだという。思い出の映像では皆実はビーフシチューを作っていたが、カレーを作っていたという嘘の思い出話を語り、それに同意したナギサの正体が思い出を共有していないシオリであることを証明していたのだ。

その後、肝心のナギサはすでに亡くなっていたことが分かるが、それでも皆実はナギサがニナに皆実は正義の人だから助けてくれると言ってくれていたこと、その言葉に応えるためにもニナを守と誓う。そして『映画ラストマン』はクライマックスへと突入していく。

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』最後をネタバレ解説

裏切り者の正体は?

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』の終盤では、シオリ奪還作戦が実行されるが、警護チーム内部の裏切り者が谷田歩演じるCIAのトニー・タンであったことが明らかになる。FBIと北海道警の衝突からは距離を置いていたトニーだったが、実は両組織の衝突は皆実が仕掛けた罠だった。

貸別荘が銃撃された際、トニーは窓の死角になる場所に陣取っていた。皆実はトニーの咳でトニーがどこに座っているのかを把握しており、トニーが怪しいと踏んでいた。そこで、函館に移動する際にトニーにだけニナたちの移動ルートを教え、その道中で襲撃されたことからトニーが内通者であることを確信していた。

つまり、皆実はナギサがシオリであり、Xがニナであり、内通者がトニーであることをラッキーピエロの駐車場で確信していたのである。そして皆実はFBIと道警に喧嘩する芝居を打たせ、両組織を率いてヴァッファの拠点を叩いたのだった。

日米連合チームとヴァッファの銃撃戦はド派手で、FBIと国際テロ組織の戦いであるという設定がうまくアクションに生きている。同じく年末に映画版が公開される刑事モノのテレビ朝日『緊急取調室』は銃の扱いを慎重に扱う設定が特徴だが、その真逆を行くエンタメに振り切った演出だった。

vs アラキに見たメッセージ

しかし、ヴァッファのリーダーであるグレン・アラキはニナを連れて船で逃走。アラキを演じる寛一郎は『グランメゾン東京』でも芹田公一役で好演を見せていたが、『映画ラストマン』ではヴィランを見事に演じ切っている。

皆実が心太朗の声を頼りに出航した船に向かって全力疾走し、海に向かってジャンプする姿はなんだか泣けた。目が見えない状態で全力疾走し、しかも海を進む船にジャンプするなんて相当な勇気がいることだが、皆実にニナを守る強い気持ちがあったのはもちろんのこと、指示を出す心太朗に皆実が自身の全てを預けているということを示すシーンでもあった。

援護のない戦いでアラキに苦戦する皆実だったが、やはりそこに船で駆けつけたのは心太朗だ。心太朗はアラキの船のライトを撃って暗闇を作り出すと、皆実は無双状態に。アラキが愛されていた過去に関する気になる描写を挟みつつ、皆実はアラキを制圧したのだった。

心太朗の「暗闇なら、世界一強えんだよ。 俺の兄貴は」という言葉も泣ける。ドラマ版では、「俺の兄は護道京吾だけだ」と京吾への敬意を示すシーンもあったが、やっとお兄ちゃんって呼んでくれたね……。

それにこの戦闘シーンは、皆実を助けがないと戦えないと馬鹿にしていたアラキが、自身も光を頼りにしていたことも示している。真っ暗闇の自然状態なら皆実に分があるとすれば、実はアキラや私たちは誰かが作ってくれた電灯や電力に頼るだけの、弱い存在なのかもしれないのだ。

ラストの意味は?

皆実はニナを助け出すも、ボートは防波堤に突っ込み爆散。皆実とニナは死亡したとシオリは告げられるが、これは天才科学者であるニナを各国の魔の手から逃すための偽装死だった。この偽装を日米の立場から手助けしたのが皆実の元妻で在札幌米総領事のデボラと、北海道警察本部長の護道京吾だった。

京吾はドラマ版で警察長官の座及び護道家の名誉と、正義の追求の間で葛藤していた過去がある。ドラマ版でも正義を貫いた京吾だが、映画版でもしっかり正しい権力の使い方を選んでくれた。こっちのお兄ちゃんもカッコいい。

偽装の事実を知らされたシオリは、皆実にナギサの遺品であるフロッピーディスクを渡す。大学時代に皆実に渡すよう頼まれていたが、これを渡すと皆実はナギサにプロポーズし、ナギサがアメリカに残る道を選ぶと危惧して渡せなかったものだという。

そのフロッピーディスクには、衝撃の真実……などではなく、ただただ幸せそうであたたかい、大学時代の皆実とナギサの思い出の映像が記録されていた。兄の思い出の一端に触れつつ、そっと席を外すシンディーの気遣いが良い。プロポーズできなかったことを後悔しているという皆実の言葉を、佐久良さんとこっそり付き合っている心太朗はどう受け止めたのだろうか。

エンディングで流れる曲は主演の福山雅治が歌う「木星 feat. 稲葉浩志」。「愛された記憶だけを見つめてるよ」と歌われており、皆実の“ファーストラブ”に重なる歌詞が並んでいる。“過去”というのは『ラストマン』のテーマの一つだが、皆実は鎌田家の記憶に続いてまた一つ、過去を大事な思い出に変えることができたようだ。

ポストクレジットシーンでは、ニューヨークにいる皆実と心太朗の姿が描かれる。時系列的には過去の映像なのかと思いきや、北海道料理の話をしていることから、北海道の事件後に心太朗が再びニューヨークを訪れているものと考えられる。二人のバディが今後も続いていくことを示唆する映像で『映画ラストマン』は幕を閉じている。

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』ネタバレ感想&考察

エンタメに振り切った意欲作

事件を必ず終わらせる最後の切り札「ラストマン」は、映画版でも事件を解決に導いた。映画としてはしんみりしたシーンを挟みつつ、アニメーションと過去パートを交え、アクションをふんだんに取り入れてテンポ感を損なわないようにしていた印象だ。アクションシーンは劇場版『名探偵コナン』の実写版かと思うほど力が入っていた。

登場人物が多く、ストーリーの要素としてもやや詰め込みすぎな感は否めないが、敢えて要素を多くすることでリピート鑑賞とロングヒットを狙う戦略のようにも思える。韓国の若手スターをゲスト俳優に入れるというのは、興収40億円超の大ヒットを記録した『映画グランメゾン★パリ』に続く演出で、今回もロウンの存在感が良いスパイスになっていたように思う。

冒頭20分以内に派手なアクションシーンを入れるというのは現代映画の黄金セオリーだが、随所で見られた銃撃戦も、皆実がFBI捜査官という設定、米国が日本に治外法権をゴリ押しできるという現実をうまく取り入れてエンタメ作品に仕上げている。目が見えない主人公と強大な公権力という組み合わせは、目が見えない弁護士が主人公の『デアデビル』とは違う、『ラストマン』をエンタメ性に溢れるダイナミックな作品にしてくれる最大の要素だと言える。

ミステリー要素については、(ドラマ版からそうだったが)やや先が読めるようになっており、考察のハードルを敢えて下げているようにも見える。特にナギサ=シオリが「私たち(姉妹)が両親」と発言したり、大学時代のナギサがわざわざ「妹のアパートに戻る」と言っていたりと、現在のナギサの正体が妹であるというネタは正直なところ読めてしまった。

それでも、ミステリー要素以上に個々のキャラクターの人間関係をしっかり描いてくれた点に惹きつけられた。皆実と心太朗、ユンと泉、心太朗と佐久良、泉と吾妻、京吾と心太朗、皆実とデボラなど、バディ単位で関係性を描いていく演出が良かった。贅沢を言うなら、皆実と心太朗のやり取りをもっと観たかった、というかいつまでも観ていたいのだけど……。

今後はどうなる?

そして気になるのは、テロ組織ヴァッファについて。スペシャルドラマで登場する組織ということのようなので、詳細はスペシャルドラマを観て改めて考察しよう。アラキは気を失ったまま乗っていたボートが爆散したが、やはり明確に死んだという描写及び言及がないため、今後も登場する可能性はある。

救急医療モノの『TOKYO MER』でもテロ組織LP9が登場したが、その後シリーズは今のところ災害救助の方向に舵を切り、そのストーリーラインは広げられていない。警察モノである『ラストマン』では、国際テロ組織ヴァッファは日本の警察とアメリカのFBIの協働を描くのにもってこいの存在にも思える。

また、今回の映画では交換研修生の制度が継続していることで、新たなキャストとバディを紹介できることも証明された。佐久良や京吾の今後も気になるし、まだまだシリーズは継続してほしいところ。ドラマ『VIVANT』のような大きな予算を投下しての海外ロケを含むシーズン2にも期待したい。


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『映画ラストマン -FIRST LOVE-』は2025年12月24日(水) より公開中。

『映画ラストマン -FIRST LOVE-』公式サイト

北海道を舞台にしたSF短編集『北海道SFアンソロジー:無数の足跡を追いかけて』は2026年1月15日発売で予約受付中。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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