ネタバレ解説『ほんとにあった怖い話』「怨みの代償」ラストの意味は? 綾瀬はるか主演の名作、可奈の背景を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ほんとにあった怖い話』「怨みの代償」ラストの意味は? 綾瀬はるか主演の名作、可奈の背景を考察

(C)フジテレビ

2009年放送の「怨みの代償」

2009年に放送された『ほんとにあった怖い話 10周年記念 京都パワースポットツアーSP』で放送された「怨みの代償」は、『ほん怖』で多くの作品を手掛けてきた三宅隆太と鶴田法男がそれぞれ脚本と演出を担当した作品。主演を、こちらも『ほん怖』の常連である綾瀬はるかが務めている。

今回は、『ほん怖』の中でも傑作の一つとして知られる「怨みの代償」について、ネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は「怨みの代償」の結末までのネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『作品タイトル』の内容に関するネタバレを含みます。

『ほん怖』「怨みの代償」をネタバレ解説

ある百貨店での物語

『ほんとにあった怖い話』の「怨みの代償」では、現代の神奈川県某所が舞台になる。主人公の篠崎まゆみは百貨店で働く販売員で、優秀な成績を収めていた。一方で、別の店員のお客を横取りする米山可奈は周囲から怨みを買っていた。何度か外見も映し出される百貨店は、2017年3月に閉店した三越千葉店で撮影されている。

『ほん怖』の「怨みの代償」で主演を務めた綾瀬はるかは2009年当時24歳。この2年前の2007年には日本テレビ『ホタルノヒカリ』で連続ドラマの初単独主演を務め、4年後の2013年には『八重の桜』でNHK大河ドラマ初主演を務めている。ちなみに綾瀬はるかは『ほん怖』では、2003年にも「闇からの電話」に出演し、2004年にも「横断歩道奇譚」で主演を務めている。

「怨みの代償」で怨みを買う米山可奈を演じるのは入山法子。2017年にはフジテレビのリメイク版『きみはペット』で主演を務めている。りえ役は市川由衣、先新堂美奈子役は折山みゆが演じた。

可奈を心配していた篠崎まゆみだったが、心配して可奈に声をかけた翌日から、可奈からと思われる嫌がらせが頻発。毎日嫌がらせが続く中、まゆみは可奈から海外からのお土産として高級そうな財布をもらうと、それから毎晩「死ね」と囁く女の姿を部屋の中で見るようになる。

ラストの意味は?

眠れない夜を過ごすまゆみはやつれていき、体調を崩して仕事を休むことに。ある日、見舞いに来たりえが可奈からもらった財布をもらって帰ると、財布の中の接着されていたところに紙が入っていたことを知る。まゆみはその紙を見せてもらうのだが、そこには血で書いたと思われる「死ね」という文字があったのだった。

紙を見つけたのはりえだが、財布は可奈から直接渡されているので、紙を入れた犯人は加奈だろう。まゆみは不調の原因は呪いであると考え、お祓いをしてもらうと見事に回復。職場に復帰するが、一方の可奈は体調を崩して仕事を辞めたという。

数ヶ月後、まゆみはやつれた姿で歩く可奈の姿を街中で見かけ、「怨みの代償」が可奈を蝕んでいたと悟るのだった。だが、まゆみにはなぜ可奈にそこまで恨まれたのかが分からない。まゆみは「知らないうちに傷つけていたのかもしれない」と思い至るが、可奈はなぜそこまでまゆみのことを怨んだのだろうか。

『ほんとにあった怖い話』「怨みの代償」ネタバレ考察

生きた人間の怨み

2009年に放送された『ほんとにあった怖い話』の「怨みの代償」は、15分足らずの作品だが綾瀬はるかをはじめとする俳優陣の好演もあり、満足度の高い作品だった。『ほん怖』作品としては珍しく、死者や幽霊が絡まないストーリーという点も特徴的だ。

「怨みの代償」で描かれるのは、生きた人間の怨みが生んだ呪い、そしてその代償である。可奈は「死」と書いた紙でまゆみに呪いをかけ、まゆみは「死ね」と囁く女の姿を見るようになった。その女は可奈の姿をしていることから、可奈の生霊だったと考えられる(「怨霊」はこの世に怨みを持って死んだ人の霊を指すが、生きている人の怨霊は「生霊」と呼ぶ)。

だが可奈には「怨みの代償」が降りかかり、最終的には可奈が体調を崩して職場を辞めることになった。一方的に怨んだ相手を簡単に陥れられるほど、「呪い」というのは便利なものではないのだろう。

なぜ可奈はまゆみを怨んだ?

では、篠崎まゆみはなぜ米山可奈から怨まれたのだろうか。他の販売員のお客を奪うなどして周囲から嫌われていた可奈。可奈の陰口を言っていた周囲の人々とは違い、まゆみは可奈から焦りを感じ取っており、責めるような態度を見せなかった。

可奈からまゆみへの嫌がらせが始まったのは、まゆみが仕事の帰りに可奈を食事に誘った時だ。まゆみは可奈に無視され、翌日から可奈の嫌がらせが始まるのである。最初は可奈による犯行にカモフラージュした別の人間による仕業かも、とも思ったが、財布のプレゼントによって可奈がまゆみに嫌がらせをしていたことが決定的になる。

まゆみは可奈と仲良くはなかったはずだが、終始、可奈のことを「ちゃん」付けで呼んでいた。個人売上が2位と仕事ができるまゆみは、その“順風満帆”な姿から、自然と逆怨みされていたのだろう。周囲に愛され、何でも器用にできて、人の心配までするまゆみが、お節介にも自分が“可哀想な人”であるかのように同情して皆との食事に誘ってきた……可奈の視点ではそんな風に見えたのかもしれない。

可奈の背景を考察

一方で可奈は手段を選んでいない割には売り上げが上がっておらず、個人売上は11人中9位という状況だった。明らかに可奈はこの仕事を苦手としており、努力しているにも拘らず結果が出ない状態にあったのだ。

想像するに、可奈は現代社会を生きるにあたって、これまでも様々な困難に直面し、怒られ、嫌われ、避けられて生きてきたのではないだろうか。そういうミスマッチが続くと人は大抵、サバイバルするために少しズルをしたり、嘘をついたり、他者を出し抜いてでも嫌な思いをすることを回避するようになる。

そうした人への救済策は、上司が職場の仕組みや雇用形態を変えたり、そもそも得意不得意に応じた職場選びが出来るように誰かがサポートしたりと、周囲の理解が必要になる。可奈は不幸にも均一の条件で個人売上を争う職場で自由競争に晒されてしまったのだ。

しかし、可奈にも非はある。可奈がまゆみを標的としたのは、反撃してこない相手だと判断したからだろう。こうしたシチュエーションで問題解決よりも他者に矛先を向ける場合、怒りや怨みをぶつけても反撃しないと思われる相手が標的に選ばれることが多い。端的に言って、攻撃者にはその標的への“甘え”があるのだ。

まゆみは最後まで可奈を責めることはなかったが、可奈は自らの怨念によって身を滅ぼしてしまった。「怨みの代償」からは、怨みは自らの魂を澱ませるという教訓が得られる。一方で、まゆみに対する可奈の行動は普通にハラスメントにあたるので、同じようなことをされたら我慢せずに会社の人に相談しよう。

2009年という時代背景

『ほんとにあった怖い話』「怨みの代償」は、2009年に放送された作品だ。2009年とえいば世界的な経済危機を引き起こしたリーマンショックの翌年で、経済が停滞していた時期である。日本でも派遣切りの憂き目にあった人々が「年越し派遣村」で援助を受けるなど、経済的な不安と職場での首切りのプレッシャーは高まっていた。

「怨みの代償」が2009年8月25日に放送された5日後の8月30日、第45回衆議院選挙で民主党が大勝して政権交代が実現。経済的な不安によって世の中が大きく動いていた時期だったのである。人を蹴落としてでも成果を出そうとしていた可奈には、そうした時代の犠牲者としての側面もあったと言える。

2025年現在では、人手不足という背景や、個々の働き手の特性に関する知識やマネジメントの知識の共有も広がってきたことから、職場の景色は変わってきているかもしれない。「怨みの代償」はまさにあの時代だったからこそ生まれた作品だったのだろう。

いずれにせよ、職場の人間関係という身近な題材で「怖い話」を完成させた『ほん怖』の「怨みの代償」。今後も語り継がれていくであろう作品だ。

『ほんとにあった怖い話』はFODチャンネル for Prime Videoで配信中。

『ほんとにあった怖い話』公式サイト

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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