星新一「ああ祖国よ」が『世にも奇妙な物語』で実写化
2024年12月14日(土) にフジテレビ系で『世にも奇妙な物語’24冬の特別編』が放送される。その中で、星新一の短編「ああ祖国よ」が尾上松也主演で実写化される。脚本は相馬光、演出は植田泰史が手がける。「ああ祖国よ」は『おみそれ社会 星新一短篇集』(1970) に収録された作品。日本がアフリカの小国から宣戦布告を受け、テレビ局で働く主人公が奔走するというストーリーだ。
今回は、星新一「ああ祖国よ」が半世紀を超えて実写化されることの意味について、原作のネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は原作の結末部分のネタバレを含むのでご注意を。
以下の内容は、星新一の小説「ああ祖国よ」の内容に関するネタバレを含みます。
星新一「ああ祖国よ」ネタバレ解説
「ああ祖国よ」の主人公は名前がついておらず、『世にも奇妙な物語’24冬の特別編』の告知でも「私」と呼ばれている。民放のテレビ局に務める主人公は、上司から戦争が始まったので担当番組を特別報道番組のシリーズに変更すると言われ、情報を集めながら番組作りに奔走することに。この辺りはインターネットで調べ物ができない時代のスピード感が感じられ、実写ドラマ版でどう改編されるのかは気になるところだ。
日本に宣戦布告したのはアフリカの架空の国・パギジア共和国。米ソどちらかの支援をあてにして独立宣言をしたが小さな船2隻と少しの武器しかもらえず、腹いせに日本に宣戦布告したという。主人公はわずかな情報と、パギジア共和国に行ったことがあるという商社員のコメンテーターを頼りに番組を編成し、この件の報道について他局に差をつけることに成功する。
ここからパギジア共和国が日本に着くまでの40日間、日本国内ではくだらない責任の押し付け合いや稚拙な外交がめくるめく展開し、同時にテレビを利用した新しい商売も次から次へと登場する。そのコミカルだが日本の現実を映したシニカルな展開は、まさに星新一の真骨頂と言える。
変わったことと変わらないこと
今から50年以上前の作品というだけあって、日本が宣戦布告された理由について、日本からの海外旅行者のせいではないか、日本人観光客は目にあまる行動が多いと指摘される場面もある。今では日本の人々が海外旅行にも行けなくなり、インバウンド需要に頼りながらも観光客に不満を漏らしていることを考えると、隔世の感がある。
さらに、様々な陰謀論も噴出する連日のお祭り騒ぎに対し、テレビ局が煽っているだけではないかという見方も出てくる。だが主人公は、「いまは、戦時下なのだ」と言い聞かせて、寄せられた意見を検閲で没にしてしまうのだった。この展開には、SNSで陰謀論が渦巻く一方でメディアの信憑性についても議論が起きている昨今の状況が重なる。
また、宣戦布告に際して日本は他国の協力を得ようとするが、ことごとくこれを断られてしまう。注目は、「アラブのある国にたのむと、イスラエルと断行して来いと言う」という一文。パレスチナへの侵攻は1948年から始まっており、イスラエルの戦争犯罪を非難できない日本政府の弱腰は、当時から何も変わっていないということである。
事なかれ主義への警鐘
このように星新一「ああ祖国よ」は、戦争とメディアを扱った作品として現代でリメイクされるには要注目の作品だ。開戦を認めず、「いざとなったら誰かがうまくまとめてくれる」という事なかれでやり過ごそうとする日本の人々の姿も現実で既視感がある。「まじめに叫べば、ひとからやぼと思われる」という人任せな感覚。タブーには触れずに金儲けだけはしたいという厄介な考えが、この「祖国」に根付いた最大の問題なのかもしれない。
原作の「ああ祖国よ」のラストでは、日本側は“おもてなし”で相手国を懐柔し、莫大な金銭を支払う。国内向けには、相手国の勝利宣言を意図的に平和宣言のように誤訳して事態を収束させる。だが、直後に別の小国がパギジアと同じように米国と中立同盟を結んで日本に宣戦布告。日本が再びカモにされることを示唆して物語は幕を閉じる。実写版ではこのクライマックスはどんな風に描かれるのだろうか。
『世にも奇妙な物語’24冬の特別編』での「ああ祖国よ」の実写化で注目したいのは、パギジア共和国の女性司令官ガボア・ポキンの実写化だ。『おみそれ社会』にはポキン司令官の挿絵も掲載されているのだが、「世にも奇妙」の実写版ではFenix D’Joanが同役を演じることが発表されている。
#世にも奇妙な物語 ’24冬の特別編まで
あと3日!! #ああ祖国よ #尾上松也 #星新一 原作 はなんと奇妙では20年ぶり!! ドラマ化の帯の巻かれた原作が書店に出ております 読んでから見るか?見てから読むか? 14日まで、もう少しお待ちください!! pic.twitter.com/WJe9yem49w— 「世にも奇妙な物語」公式アカウント✨😎 (@yonimo1990) December 11, 2024
公開されている画像では、原作小説での描写通りに白い海軍服を着ている。出演が発表されている津田寛治と共にどんな立ち回りを見せるのかにも注目だ。主人公の“私”を演じるのは、ドラマに映画に大活躍中の歌舞伎俳優・尾上松也。現在劇場公開中の『モアナと伝説の海2』では主要キャラの一人であるマウイ役を演じている。
半世紀以上の時を経て星新一「ああ祖国よ」を実写化する『世にも奇妙な物語’24冬の特別編』は、2024年12月14日(土) に21時よりフジテレビ系で放送。
星新一の原作小説「ああ祖国よ」が収録された短編集『おみそれ社会』は新潮文庫より電子書籍版が発売中。
戦争をテーマにした作品では、小松左京の「戦争はなかった」も『世にも奇妙な物語」で実写化された。同作の詳細はこちらから。
