『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』好評発売中!
Kaguya Booksの人気シリーズ《地域SFアンソロジー》の第一弾として刊行された、『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』(社会評論社)は、2045年の大阪を舞台にしたアンソロジー。大阪万博の20年後というのが一つのコンセプトになっており、万博が開催されている今こそ読みたい一冊です。
北野勇作や牧野修といったベテランの作家から、紅坂紫や青島もうじきといった新鋭の作家まで、大阪にゆかりのある作家が大阪を舞台にした作品を描く、というコンセプトの『大阪SFアンソロジー』。実はその中には、コテコテの大阪らしさが詰まった作品はありません。しかし、大阪をよく知る作家がつむぐ物語たちからは、ことさらに「らしさ」を強調しなくても、土地の歴史やそこで営まれてきた/営まれている生活の香り、蓄積されてきた文化が滲み出ています。
そんな『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』のコンセプトを端的に表現した、編者の正井による「はじめに」を全文公開します。
『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』
編者:正井
発行:Kaguya Books/発売:社会評論社
価格:1,500円(税込1,650円)/サイズ:文庫版
ページ:242頁/ISBN:978-4-7845-4148-5
収録作品
- 北野勇作「バンパクの思い出」
- 玖馬巌「みをつくしの人形遣いたち」
- 青島もうじき「アリビーナに曰く」
- 玄月「チルドボックス」
- 中山奈々「Think of All the Great Things」
- 宗方涼「秋の夜長に赤福を供える」
- 牧野修「復讐は何も生まない」
- 正井「みほちゃんを見に行く」
- 藤崎ほつま「かつて公園と呼ばれたサウダーヂ」
- 紅坂紫「アンダンテ」
『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の「はじめに」
『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』は、二〇四五年の大阪を舞台にしたSF小説と俳句を集めたアンソロジーです。「二〇四五」という数字を見てピンと来た方もいるでしょう。この年は、レイ・カーツワイルによってAIの知能が人間を超える「シンギュラリティ」の年であると予言されています。
この年にはもう一つ、いえ二つの意味があります。二〇二五年開催の大阪万博の二十年後であり、またアジア太平洋戦争の敗戦(第二次世界大戦の終結)から百年を経た年が、二〇四五年なのです。
二十年の間、あるいは百年の間、人類はどれほどの蓄積ができたでしょうか。コンピューターと比べれば、一人の人間が蓄積できる経験や知識はごくごく少量と言わざるを得ません。その上、人の営みとは儚いもので、死んでしまえばその経験や知識はなくなってしまいます。しかし一方で、人間は、記録を自らの言葉で伝えるという形でその蓄積を共有し、教育によって、「巨人の肩に乗る」ための梯子を整備することもできます。祝祭や建造物という形で、歴史的事件に意味づけを行うのも、そうした記録する行為の一つでしょう。
第一回の大阪万博が開催されたのは、一九七〇年のことでした。テーマは「人類の進歩と調和」、終戦の二十五周年記念事業の一環として行われたものでした。当時のパビリオンはほとんど解体されてしまいましたが、その跡地は万博公園となって住民の憩いの場として残され、その象徴たる岡本太郎「太陽の塔」も、今なおその地に立ち続けています。
この万博のコンセプトに示されるように、一九四五年、アジア太平洋戦争は終わりました。しかし、終わったということは、なくなったということを意味しません。大阪市立北野高校の校舎には、大阪大空襲時の弾痕が保存されています。戦時中の不発弾が発見されたというニュースは今でも耳にします。
都市の来歴は、その地形や地層に痕跡として残されています。もとは湿地帯で、埋立てによって土地を広げていった大阪では、特に中心地においては海抜が低く、坂が少ないこともその痕跡の一つでしょう。近世に張り巡らされた堀やそこにかかっていた橋は地形や地名に残り、道頓堀は今や観光地となっています。文楽、菊人形、落語、漫才、中之島近代建築群や大阪城、難波宮跡や古墳といった有形無形の文化財や遺跡が各地に保存されています。
さて、ここでもう一度尋ねましょう。二〇四五年までに、人類はどれほどの蓄積ができたでしょうか? どのようなものを蓄積できたでしょうか? その上に立って、どこまでを見はるかし、どれほどの地点まで到達できるのでしょうか?
想像してみましょう。
良きことも、悪いことも。
それもまた、何かの蓄積になるでしょう。
なるでしょうか?
正井
地域SFアンソロジー第5弾『北海道SFアンソロジー』予約受付中
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